2011年08月31日

為替動向について 〜中長期的に考えた時の円高の3つの理由:円高は止まるのか?〜

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為替のドル/円のレートが円高に進行しています。
自動車や家電など日本を代表する大企業は、輸入より輸出が超過している企業が多いので、円安になった方が円ベースで見た場合の収益が改善するため、経済界では円安が歓迎されます。
輸出企業は、輸出先の通貨(例えばドル)で売上を上げますが、1ドルの売上に対して為替が80円/ドルだと売上80円、円安になってて為替が85円/ドルだと売上85円になります。
グローバル企業は為替の影響を小さくするために仕入や生産を現地化や外貨建て債務を持ったり円高になると有利なポジションを持つなど様々な方法により為替の影響をなるべく少なくする努力をしていますが、日本全体で見ると円安の方が収益が向上するようです。

中長期的に考えた時の円高の要因は何なのでしょうか?
主に3つの要因が考えられます。
1.通貨供給量
2.資産逃避先としての円
3.購買力平価

為替は複数国間の相対的な通貨の価値であり、為替の動きは、短中期的には、ニュースやテクニカル指標等に基づく投機的な思惑、政策金利差、各国中央銀行による通貨供給量の増減、国際収支等に基づく国際的なマネーフローをはじめとした様々な要因が働いています。
国際収支は長期的な動向とも言えると思いますが、経常黒字か赤字か、対外純債権国か債務国かということが関わってきます。
長期的には、結果として、購買力平価(PPP)の水準と相関関係をもって収束していく傾向にあるようです。

現在、最も円高の要因として説明されるのが、アメリカの中央銀行(FRB)による通貨供給量の増加によりドルが大量供給され、ドル安を招いているというものです。
リーマンショック前後は金利差が大きな説明力を持っているように見えましたが、リーマンショック後、日米共に事実上のゼロ金利政策を採用し、金利差があまり縮小してからは、マネーの総量が大きな影響力を与えるようになっているように見えます。

2011年7月22日の日経新聞によると、「ドルの発行残高を示すワールドダラー(米国内の流通量と他国による外貨準備高)は現在約5兆ドルと10年間で約4倍に膨らんだ」とあり、近時では「2010年11月以降で8000億ドルも膨らみ、過去最高の水準にある」(2011年6月9日の日経新聞)状況です。
米国の中央銀行であるFRBが量的緩和(QE2)で国債購入を増やしそのバランスシートを拡大させたことが主な要因です。

110831 ワールドダラー推移 日経110609.jpg
2010年6月から1年間のワールドダラー推移(2011/6/9日経新聞より)

円高の次の要因は、米ドル、ユーロという国際的流動性が高い通貨の中で、ドルは大量供給により相対的な価値が下落し、ユーロはユーロ加盟国の財政懸念の高まりにより嫌気されている、そのため相対的に日本円が消去法的に(一時的な)資金逃避先として選ばれているというものです。今般の円高は、日本経済の盤石さに魅かれたものではないと考えられています。
そのため、主要通貨の中で総合的に円が買われ、円高を招いています。
結果的には、金、スイスフラン、円が「逃避先」となっており、足元ではこれらは軒並み価値が上昇しています。

110831 日経:円の実効為替レート(110728日経).jpg
円の実効為替レート推移(2004-2011中)(2011/7/28日経新聞より)

3つ目が、購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)です。
購買力平価は、ある時点を起点とした物価水準の相違に基づき通貨の価値を測定するものです。例えば、起点において1ドル100円の時に100円で販売されていたモノが、デフレの日本では95円、アメリカでは110円になっていたとすると、そのモノの価値が同じになるように為替相場が調整されるとすると、1ドルは約86円(100円×95/105)の円高になるわけです。
購買力平価は次のように計算されます(「これから10年外国為替はこう動く」(国際通貨研究所 2009/9) P40より)。
相対的購買力平価=基準時点の為替相場×(日本の物価指数/外国の物価指数)

購買力平価から見た為替相場は、経験則からは、為替相場はCPIベースを上限、輸出物価を下限として動くこととして知られています。
公益財団法人国際通貨研究所の下記によると、CPIベースの購買力平価によるドル円レートは132.50円、PPIベースの購買力平価によるドル円レートは100.72円、輸出物価ベースの購買力平価によるドル円レートは64.45円です(2011年5月)。
このため、円高要因に購買力平価を論拠とする場合、デフレである日本の通貨は高くなるのが自然であり、むしろ今までが円安だったのであり、現在の円高は適正な水準であると説明されることも多く見られます。

110831 PPP 国際通貨研究所.jpg
ドル/円購買力平価と実勢相場(2011年5月)(国際通貨研究所HPより)
(参考)公益財団法人国際通貨研究所 購買力平価(PPP:Purchasing Power Parity)とは?
http://www.iima.or.jp/research_gaibu.html

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「デフレから脱却するために、純粋にデフレ対策を実行することで、日本円の価値を落とすつまり円高を食い止められることにつながります。デフレ対策は、日本経済の悪い構造の1つを除去することになりますから、日本経済を改善させるとともに結果論的な円高対策にもなっているということで、望ましい方向であるといえます。」 (『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』2011/8/30配信 慶應義塾大学経済学部教授:土居丈朗氏より引用)

モーニングサテライト(2011/7/27)でのJPモルガン・チェース 佐々木氏のコメントが興味深くメモをしましたので、こちらにアップしておきます。
メモ/「ドルは史上最弱通貨に?」
アメリカの下記状況から、ドル安の流れとなっている。
1.経常赤字(ドルのフローの基本。アメリカの経常赤字から1日平均17億ドル位のドル売りが毎日ある)
2.過剰流動性に支えられたリスクテイク嗜好(世界景気も緩やかに回復→リスク性資産への投資増→ドルは資本調達通貨に)
3.ゼロ金利継続(2の状況の中でアメリカが金利を上げられない)
⇒円も強い通貨ではない。2、3は日本も同様だが1に関して日本は経常黒字で円買いの動きはある。
マクロ的に日本の貿易構造は変わっている。アジア向け輸出は半分円建て。日本企業全体の通貨別の貿易収支を見るとドル/円は買いの方が多くなっている。ドル/円の企業収益に与える影響は小さくなってきている。通貨別の貿易収支(兆円):ドル △10.7、円 13.3、ユーロ 2.3、その他 1.8)。
佐々木氏の見解としては、緩やかにドル安トレンドが継続していくとしています。
(同時に出演していた)三菱UFJモルガン・スタンレー 藤戸氏コメント:日経平均への為替の影響として、企業の合理化による為替の耐性強化、日経平均に44%寄与する上位20銘柄のうち9銘柄が内需ディフェンシブ系(ソフトバンク、ファーストリテイリング、KDDI、セコム、テルモ etc)であることも着目できる

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2011年08月12日

モノの「価値」と「価格」 −価格はどのように決まるか

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私たちの現実の日常生活では、多くの場合、売り手が価格を決めています。
多くのモノは、売り手から売値を提示され、買い手が買うかどうかを示すことによって価格が価値に見合ったものかどうかを表明します。
売り手は、買い手の反応を見ながら価格を調整していきます。

売り手はどのように売り値を考えるのでしょうか。
価格付け(プライシング)をどのように行うかは、様々な考え方がありますが、代表的なものをいくつか考えていきます。

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ラベル:価値 価格
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