2012年09月06日

海外債券の為替ヘッジの超過利回りは、「海外長短金利差 − 日本長短金利差」

吊られた男の投資ブログさんの2012/9/4付の記事「イールドカーブがスティープ化している外国債券+為替ヘッジでアルファを狙う」では、為替ヘッジが有利になる状況について解説がされており、関連する記事に目を通しました。

吊られた男さんの解説にある通り、「長期的には為替レートが両国のインフレ率に応じて調整されるので、名目金利は違っても期待リターンは同じ」になり、「外国債券と国内債券の期待リターンは同じ」というのが基本的な理解で構わないと思います。

高配当ETFで戦略的インデックス投資日記さんの2012/9/5付の記事「外債不要論は為替ヘッジなしに限る」では、吊られた男さんの記事を噛み砕いて説明がされており、
・海外債券ヘッジなしリターン = 海外長期金利 - (海外長期金利 - 国内長期金利)⇒海外債券ヘッジなしリターン = 国内長期金利
・海外債券ヘッジありリターン = 海外長期金利 - (海外短期金利 - 国内短期金利)
というのが(長期で見た場合には)基本的な関係として成り立つという意味が説明されています。

このあたりの説明が、山崎元「ホンネの投資教室」 > 第116回 外国債券の期待リターンで詳しくされています。山崎元氏は、この基本原則をもとに、海外債券と国内債券の長期的な期待リターンは同一であり、個人投資家は海外債券は必ずしも必要ないのではというスタンスのようです。

吊られた男さんは、「以下の2つの条件が満たされている場合には、外国債券を買う超過リターン狙い戦術」もあると説明しています。
(1)日本が低金利でイールドカーブがフラット化
(2)対象の外国債券のイールドカーブがスティープ化

イールドカーブのスティープ化とは、短期金利と長期金利の差が大きくなった状態で、イールドカーブの傾斜角度が急な右肩上がりになった場合、すなわち、短期金利と長期金利の金利差が大きくなった状態です。
*SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集「スティープ化/スティーブニング (スティープか/スティープニング)

例えば、
・日本円:短期金利0%、長期金利1%
・外国通貨:短期金利0.5%、長期金利5%
といった状態のとき、長期的な為替変動による期待リターンは-4%/年。「対象通貨の残存期間が長い国債を保有しつつ短期金利で為替ヘッジをすると」、「100%為替ヘッジすれば為替変動の影響は0」になり、「短期金利差は0.5%なので、短期金利で為替ヘッジをすれば0.5%のヘッジコストで-4%の為替変動を無しにできます」と説明がされています。




社会保障審議会年金数理部会資料 - 23ページを参考とされており、当該資料では為替ヘッジについて下記の通り説明がされています。
ヘッジ外債利回り=海外長期金利 − ヘッジコスト
ヘッジコスト=(スポット為替レート − フォワード為替レート)/スポット為替レート≒海外短期金利 − 日本短期金利
ヘッジ外債の超過利回り=ヘッジ外債利回り − 国内長期債利回り=海外長短金利差 − 日本長短金利差

海外長短金利差 > 日本長短金利差の時には、ヘッジ外債の超過利回りに投資妙味がありそうということになります。
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーさんの2012/2/7付の記事「いま、「為替ヘッジあり」の外債ファンドが儲かる!?」では、図表などが引用されより分かりやすい解説がされています。

日経の「いつかは経済自由人!」2012/2/7付「「円高でも為替リスクなしで海外高金利」の謎」では、いずれヘッジコストが上がる場合に備え、「その際の様々な運用対象商品の日米金利差と、ヘッジコストとの差が縮まってしまわないかどうか」はよく見る必要があると解説されています。なお、新興国債とかハイ・イールド債の、ヘッジコストより運用対象の金利が高い状態は信用リスクを含んでいる点にも注意が促されています。

近年の為替ヘッジ付の海外債券の投信のパフォーマンスが良好のものがあるようですが、ヘッジ外債の超過利回りに理由の1つがありそうです。
・2012/8/11 長寿の投資信託はパフォーマンスも良い!?専門家の注目する投資信託を検証

Bloombergの2012/8/10付の記事「PIMCOエラリアン氏:利回り曲線のスティーブ化に留意を」では、米国債市場でのイールドカーブのスティープ化に投資家は留意すべきとし、「年限が8年以下の米国債利回りは金融当局の政策により抑えられているが、より長めの国債については投資家は注意が必要」で、「利回りの水準よりも、イールドカーブの形」に留意すべきで、「ロングエンドの方がずっと大きなリスクにさらされている」とのコメントが報じられています。
ラベル:為替ヘッジ
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2012年09月02日

消費増税でも財政収支はマイナス、国の対GDP債務残高は改善せず

政府は8月31日、2013年度からの財政運営の基本指針と、中長期の財政見通しを閣議決定しました。

日経(2012/8/31付)の記事「財政黒字化、増税でも15兆円不足 20年度政府試算」では、「財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)をめぐり、赤字幅を国内総生産(GDP)比で半減する目標は達成できるものの、20年度に黒字にする目標には届かない」とし、「黒字には最大で15.4兆円足りず、10%への消費増税後のさらなる歳入面での改革と、成長力強化への取り組みが必要となりそう」と報じています。
ただ、 この目標は「財政再建に向けた通過点にすぎない」(財務省)とのコメントを伝え、「PB黒字化という目標達成に向けて追加増税に関する議論が活発になる可能性が高い」との見通しを伝えています。

産経新聞(2012/08/31)は、「経済成長と消費増税に伴う税収増だけでは財政再建が進まない事態も浮き彫りになった」と報じています。




消費税増税が行われて税収増がされても、国の赤字のマイナスが減るだけで、国の支出は収入を上回る状況が続き、国の借金(国債残高)は減らないということです。
一方、消費税増税のタイミングについて「経済状況の良くない時に増税するのは反対だ!」という声もありますが、国家予算のあり方や社会保障の根本自体を見直さないでそのような声だけあげたところで、耳あたりの良いポピュリズムとしか思えません。(増税されたり給付が削減されたりして個人的には全く嬉しいことではありませんが)
日本の現状は既得権益の温床による無駄や、産業のイノベーションや新陳代謝を歪める政策が多いと国民の多くは感じているはずです。
改善できることは徹底的にやってもらわないと、増税や給付削減はやはり国民感情としては納得出来ないでしょう。
メディアの報道の仕方や、政治・政策に無関心の国民にも責任はあるのですが。
きちんと現状を伝え、改革に断固とした姿勢で臨むリーダーは果たして現れるのでしょうか・・・

内閣府の試算のデータを見ていきます。

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posted by ASK at 03:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース/データmemo | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする