バイロン・ウィーン氏は、長年モルガン・スタンレーのストラテジストを勤め、2005年にヘッジファンドのピークス・キャピタル・マネジメントへ移籍、2013年初現在ブラクストン・アドバイザリー・パートナーズ副会長になっています。
びっくり予想は、ウィーン氏がモルガン・スタンレーに在籍していたときから毎年続けられていて、1986年から続き、今回28回目となります。
あくまでもサプライズやリスクシナリオを含む「大胆予想」なので、過去の的中率は必ずしも高くないものの、毎年必ずいくつかの項目が的中するということが、注目を集め続ける所以なのかと思われます。2012年は、「シェールガス、オイル生産が増え、原油価格は85ドルへ下落する」、「米企業の利益は上昇を続け、S&P500は1,400ドルを越える」「欧州が債務危機を乗り切るための維持政策を発表」「ハッカーが金融機関を襲う」などが的中しました。
ここでの「サプライズ」の定義は、「平均的な投資家は1/3程度の確率でしか起こらないと考えているが、 ウィーン氏は1/2超の確率で起こると信じている事象」とされています。
また、バイロン・ウィーン氏はCNBCで2013年も経済は4つの恐怖を引きずり続けると語ったようです。
4つの恐怖は、企業収益、財政の崖、中東の緊張、欧州危機で、2012年より2013年の方が深刻化するだろうという主張をしています。
軸としてはこの4点が重要で、どのようなシナリオを織り込んでいくのかを見ていくのがマーケットの流れのポイントになるとも言えるかもしれません。
下記がバイロン・ウィーン氏の2013年10大びっくり予想の内容です。
原文はこちら↓
Blackstone(2013/1/2)「Byron Wien Announces Predictions for Ten Surprises for 2013」
http://www.blackstone.com/news-views/details/byron-wien-announces-predictions-for-ten-surprises-for-2013
Byron’s Ten Surprises for 2013:
1.イランが核ミサイル用の濃縮イランの保有を認め、IAEAも確認するが、核武装をストップできない。
2.利益率・成長率の低下で、S&P500銘柄の1株あたり利益が100ドルを割る。S&P500指数は1300以下で推移。世界的に経済成長が鈍化する中、国際競争が激化し、企業は価格決定力を失う。
3.金融株は下落に転じる。競争が激化し、出来高が減ることが減益要因となる。金融界のレイ・オフは続き、給料も減る。規制は強化され、訴訟が重荷となる。
4.中東産原油への依存を2020年までに脱するための強力な施策が民主党から(一転して)出される。WTIは1バレル70ドルを切る。シェール・オイル/ガスの採掘について規制が緩和され、雇用が創出される。
5.移民政策について共和党が一転して主導権をとる。条件を満たす不法移民に市民権を与え、次の大統領選挙でヒスパニック票を獲得しようとする。
6.中国の新政権が改革を行い、汚職を排除、7%の経済成長を達成し、健保・年金制度を改善する。上海指数が生き返り、A株が20%以上の利回りを上げる。
7.天候不順が今年も農業に被害を与え、農産物価格が上昇する。新興国の生活水準が上がるにしたがい、新興国の穀物需要が上昇する。投資家がコモディティへの関心をさらに高める。
8.インフレは抑制されるものの、金価格は1オンス1,900ドルへ。 各国中銀は為替を操作し、金融市場が歪む。
9.日本経済は引き続きさえず、円は1ドル100円まで下がる。日経225は11月からの上げ基調を継続、12,000円を超え、輸出が回復、世界第3位の経済に投資家が戻ってくる。
10.欧州の構造問題は未解決のまま、2012年からの緩やかな不況が続く。弱い国が緊縮に転じるとともに世情不安は低まる。ギリシャは無駄な歳出を削減し、脱税してきた市民から徴税することに成功する。しかしながら、欧州株は米国市場と連動する形で10%下げる。
さらに、それほど重要でないもの、実現可能性がより低いもの5つを挙げられています。
・2012年には20以下だった恐怖指数(VIX Volatility Index)が30まで上昇し、市場参加者に恩恵を与える。S&P 500の低下が、市場のボラティリティを上昇させる。
・コネチカットの虐殺がとうとう議会を銃規制に同意させる。まずは、新規の銃購入を制限し、購入者のチェックを厳格化する。「レンタカーを借りるより銃を買うほうが簡単、ではなくなった」がスローガンに。
・所得税増税による歳入増が実現できないため、議会が手を変え、富裕税とともに付加価値税を検討、徐々に世論を醸成していく。
・高頻度取引・プログラム取引が個人投資家を不利にしていることを議会が認める。市場の行き過ぎた動き、クラッシュやダウンを避けるため、デイ・トレードに新たな取引手数料が設計される。
・地球において技術発展が飽和する。半導体、ソフトウェア、SNS、コンピュータの企業の利益が低迷し、株式市場全体が低迷する。ユーザは現状の製品が十分のスピード・通信機能であること、自分がしたいこと以上にアプリを持っていることを認める。アップルは海外で成功を続け、700ドル以上を維持することで市場を牽引する。
他にも様々な2013年の予測があります。
PIMCOの債券王ビル・グロス氏はツイッターで2013年を予測しているそうです。
2013年を臆せず予想すると
1 株式・債券のリターンは5%以下
2 失業率は7.5%以上で高止まり
3 金は上昇・・・
4 5年もの米国債利回りが年末に0.70%に
5 米ドル安
6 年内のある時期、原油が100ドル超に
ということのようです。浜町SCIコラムでは、「グロス氏は 米経済・財政の停滞が投資価値の成長を妨げ QEがドルの価値を奪うと考えていることがうかがわれる」と分析されています。
参考:
浜町SCIコラム「バイロン・ウィーン氏による「2013年のサプライズ」」 他
http://www.hamacho.net/column/archives/7341
日経では、マーケットの「不透明感の強さを映すように、市場では新年に向けて可能性が低いが実現した場合の影響が大きい世界経済の「びっくり予想」を出す動きがちょっとしたブームになっている」と伝えています。
ドイツ銀行が年末に「2013年の13の極端な予想」を発表しており、「米連邦準備理事会(FRB)が株式購入に動く」「ギリシャが債務総額を上回る価値のガス田を地中海底に発見する」「スウェーデンとトルコ、ブラジルが中東に平和をもたらす」といった項目が挙がっています。
参考:日経(2012/12/25)「NY株ハイライト びっくり予想がブーム」
また、ウィーン氏の古巣であるモルガン・スタンレーが同氏に敬意を表しつつも、類似の形式でびっくり予想を発表しており、下記のような項目が挙がっています。
・オーストラリアがリセッション(景気後退)に陥る
・米国は「財政の崖」に陥るが、米国人はそれを苦にしない。与野党協議は13年前半にずれ込むものの、政治家たちは金融市場に配慮して歩み寄る。
・日銀がCPIに基づくインフレ目標を導入するが物価指数は13年末時点でも前年比マイナスにとどまり14年以降も金融緩和を継続。
・イタリアで総選挙に向けて反緊縮運動が高まり、投資家はイタリアのユーロ圏離脱を心配し始める。イタリアは欧州安定メカニズム(ESM)に支援要請し、国債買い取りプログラム(OMT)の最初の支援対象国になる
・米英日の財務省が、量的緩和に伴って中央銀行に買い取らせた国債の棒引きを宣言する。中銀は債務超過になるが、各国政府の債務は減り、格付け会社は高く評価する
参考:マネックスラウンジより
http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2012/12/18.html
他にも、サクソバンクによる年末恒例の「大胆予測」が公表されています。
サクソバンク 2013年「大胆予測」: http://www.saxobank.co.jp/whatsnew/2012/12/2013.html
大胆予測@ ドイツのDAX指数は33%の暴落
大胆予測A 日本国内主要家電メーカーが国有化
大胆予測B 大豆価格が50%の急騰
大胆予測C 金価格が1オンス=1200ドルに暴落
大胆予測D 原油価格は1バレル=50ドルに暴落
大胆予測E 円は1ドル=60円まで上昇
大胆予測F 香港は米ドルペッグを終了し、人民元ペッグへ移行
大胆予測G 1ユーロ=0.95スイスフランに上昇
大胆予測H スペイン経済はデフォルト寸前、国債利回りは10%に高騰
大胆予測I 米国債は2013年中に30年国債利回りが倍に
年初に1年間を予想するというのは、1年間の途中で発生する年初時点で知りようもないイベントを織り込めないので当たるわけもないので本質的な意味はないと思いますが、予想が当たった、外れた、というのは楽しいものなので、楽しむためのものとしてあまり深く考えずに、シナリオパターンとして頭の片隅に入れておけば良いのかと思います。
では、あえて、私も日本市場に関係した「びっくり予想」を考えてみましょう。
・日本経済の景気回復が遅れ、消費税増税の延期が決定
・日本国債の長期金利がじわじわと1.5%に上昇
・日経平均は春に12000円台を付けた後に秋には9000円台に下落
・円安がどんどんと進行 ドル/円相場が100円に近付く
・大手家電メーカーの統合と再編が進む、一部メーカーは外資の傘下に
・ソーシャルゲームが海外で大流行 グリー・DeNAに再び注目集まる
てなとこですかねー。
【関連記事】
・2011/1/11 バイロン・ウィーン氏の2011年10大びっくり予想
http://money-learn.seesaa.net/article/180206948.html
・2012/12/31 2012年末のポートフォリオと各アセットクラスへの投資方針について
http://money-learn.seesaa.net/article/310846181.html
・2012/12/18 海外ETFの活用方法 具体的に何に投資し、どのようなポートフォリオを組むといいのか【ETFカンファレンス2012より】
http://money-learn.seesaa.net/article/308499793.html