個人事業者で最も税務調査で申告漏れが見つかっている業種(無申告の脱税が多い?)は、風俗・キャバレー・バーがトップ3となっています。風俗業の1件当たり申告漏れ所得 3,329万円、追徴税額 1,089万円、2位キャバレー1件当たり申告漏れ所得 1,972万円、追徴税額 433万円を大幅に超えて申告漏れ所得が多いという結果です。平均申告漏れの個人所得が3,000万円以上ってなかなかすごいです。風俗・水商売はやはり儲かるんですね。
近年注目の海外での申告漏れは、年間3,000件前後が税務署・国税庁に見つかっています。
海外不動産や有価証券の投資では689件、申告漏れ所得の平均は1,898万円です。海外へお金を移せば、監視も難しいので見つかりにくいという向きも多いようですが、海外積立保険でも満期にそれなりの額になっていれば十分に補足対象になり得るレベルです。689件なので現在は挙げられている件数が世の中の富裕層の数からしたら多いとは言えませんが、後述の通り、GATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)というOECD諸国間の自動的情報交換制度も数年後には始まるので、「海外はバレない」という安直な時代は終わりつつあるとは言えるでしょう。
国税庁より、「平成25事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」が公表されています。
これは、所得税及び消費税調査等の概要と結果についてまとめたものです。
平成26年10月 国税庁「平成25事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/shotoku_shohi/index.htm
まずはじめに、税務調査は下記の形態に分かれます。
・実地調査→高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に深度ある調査(特別調査・一般調査)を優先して実施する一方、申告漏れ所得等の把握を実地により短期間で行う着眼調査を実施
・簡易な接触→文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により、計算誤りや所得(税額)控除の適用誤りがあるものを是正するなどの接触を実施
事案に応じた的確な調査等(「実地調査」及び「簡易な接触」)を実施し、適正・公平な課税に努めているとされています。
調査件数は下記の通りで、対象の65%(59万/89.9万)で申告漏れ等が発見されています。圧倒的に、簡易な接触の件数が多く、申告書を見れば分かるようなミスや漏れが発見されていることが窺えます。
特別調査・一般調査が4万6千件(前事務年度4万6千件)
着眼調査が1万6千件(前事務年度2万4千件)
簡易な接触の件数については83万7千件(前事務年度61万2千件)
これらの調査等の合計件数は89万9千件(前事務年度68万2千件)で、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は59万件(前事務年度42万4千件)
金額にすると、所得で4,137億円、追徴税額は全体で1,020億円です。うち、加算税は110億円。税務署の所得税調査の'売上'は1,020億円ということですね。
実地調査による申告漏れ所得金額(実地調査の対象となった全ての年分の合計)は、全体で4,137億円(前事務年度4,550億円)、追徴税額は全体で696億円(前事務年度704億円)、うち特別調査・一般調査によるものは3,702億円(前事務年度3,894億円)、追徴税額は665億円(前事務年度661億円)
着眼調査によるものは436億円(前事務年度656億円)、追徴税額は324億円(前事務年度296億円)
ただし、簡易な接触での1件当たりの所得漏れは49万円、追徴税額は4万円なので、1件当たりは小さいですが、簡易な接触は83万件なので、相当な件数が対象になっています。
また、消費税(個人事業者)については、課税事業者又は課税事業者と認められる者を対象に、原則として所得税の調査等と同時に実施することとしておりますが、消費税のみが無申告である納税者に対しても、適正な課税に努めているとのことです。
消費税(個人事業者)の実地調査の件数は、所得税に比べると少ないですが(個人事業者に限られるため)、7万6千件が対象になっています。
特別調査・一般調査は2万5千件(前事務年度2万5千件)
着眼調査は7千件(前事務年度1万件)
簡易な接触の件数は4万4千件(前事務年度4万8千件)
調査等の合計件数は7万6千件(前事務年度8万4千件)、うち申告漏れ等の非違があった件数は5万2千件(前事務年度5万8千件)
金額では、合計209億円(前事務年度211億円)となっています。税務署の消費税(個人事業者)調査の'売上'は209億円ということですね。
追徴税額(実地調査の対象となった全ての年分の合計で加算税を含みます。)は、全体で169億円(前事務年度172億円)、うち特別調査・一般調査によるものは155億円(前事務年度149億円)、着眼調査によるものは14億円(前事務年度23億円)
簡易な接触によるものは40億円(前事務年度39億円)
業種別の上位は
1.風俗業(1件当たり申告漏れ所得 3,329万円、追徴税額 1,089万円、申告漏れ割合 88%)
2.キャバレー(1件当たり申告漏れ所得 1,972万円、追徴税額 433万円、申告漏れ割合 77%)
3.バー(1件当たり申告漏れ所得 1,226万円、追徴税額 213万円、申告漏れ割合 77%)
となっており、前年と1〜3位は同じですし、毎年の申告漏れ常連の職種です。風俗やキャバクラでは、無申告だったり申告をごまかしている人が多いようです。
風俗では1件当たり申告漏れ所得3千万円超とはすごいです。追徴税額1千万以上で、追徴税額割合が30%程度あることから、無申告加算税及び重加算税が課せられている人が多いと思われます。
風俗嬢やキャバクラ嬢も対象なのでしょうが、よっぽど稼いでいないと、源泉徴収されている風俗嬢やキャバクラ嬢でここまでの追徴税額にはならない気がします。1件当たり申告漏れ所得から見ると、いずれもトップ級でないと風俗3千万円超、キャバクラ2千万弱の所得にはならないでしょうから、ホステス個人というよりは、風俗やキャバクラを営む経営者自身が対象となっているケースが多そうです。悪質な風俗やキャバクラだと源泉徴収漏れを指摘され、風俗嬢やキャバクラ嬢も芋づる式にバレるということもありそうです。
税務署はどうやって探しているのでしょうか。風営法の届けの事業者から無申告を探すのか、そもそも悪質な業者は風営法の届けすら出さずに、実地に店やネットを探索して探すのか分かりませんが、律儀に風営法の届けをしていて無申告でいると、まず見つかる、と思っておいた方がいいですね。
(参考)2013/1/20 キャバ嬢を喜ばせるお話!? そうだ!確定申告をしよう
http://money-learn.seesaa.net/article/314475515.html
4位以下は、くず金卸売業、特定貨物自動車運送、プログラマー、畜産農業(肉用牛)、一般貨物自動車運送、建設、設備工事労務者、冷暖房設備工事と続きます。
それなりに稼いでいて、全くの無申告はそれなりに補足される可能性があることが窺えます。
平成20年頃までは貸金業も上位の常連でしたが、過払いブームと共に上位からは姿が消えています。おれおれ詐欺業者等は、所得を申告なんてしているはずがありませんが、どうなのでしょう。警察の摘発すら逃れているので、やはり税務署が追いかけるのは難しいのでしょうか。それとも上位に来るほどの件数はないのでしょうか。
無申告の調査件数は6,512件(前年は7,873件)が補足されています。申告漏れ所得の平均は1,127万円なので、平均値だと申告漏れの大きい方に引っ張られるはずで、中位数は数百万だと思いますが、500〜1000万の所得があって無申告でいると、税務署がやってくる可能性は高くなってくると見て良いでしょうね。
所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数は、2万8千件(前事務年度3万1千件)となっています。これは、不動産や有価証券(株式の売却)の利益によるものです。
うち申告漏れ等の非違があった件数は、1万9千件(前事務年度2万2千件)
申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、1,357億円(前事務年度 1,443億円)
譲渡所得は、調査件数が全体で27,918件で、不動産(土地建物等)23,606件、株式等が4,312件で、9割弱から申告漏れが見つかっています。ちゃんと申告してれば問題ないのでしょうが、不動産は金額も大きいので、誤魔化そうとしたりミスがあったりすると、見つかりやすいと言えます。
不動産が動くと必ず税務署からお尋ねも来る通り、不動産の動きは専門的に注視されていると見ていいでしょう。
また、富裕層への対応として、「国税庁では、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な者などの、いわゆる「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に調査を実施しており、平成26事務年度においても積極的に取り組んでいきます」とされています。
平成25事務年度においては、4,177件(前年比101.4%)の調査を実施し、追徴税額は総額で103億円で、また、1件当たりの追徴税額は246万円で、所得税の実地調査(特別・一般)1件当たりの追徴税額145万円の約1.7倍となっています。
具体的な「富裕層」の定義はよく分からず、税務調査がそもそも調査すれば税額をたくさん取れる「富裕層」を狙いにいくのが当たり前で、こういったタイトルでデータを出すことにより「富裕層」へのきちんとした申告を促したいという牽制効果を狙っているのが趣旨なのだと推察されます。
最近では関心の高まっている海外取引ですが、「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外取引を行っている者や海外資産を保有している者などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度などを効果的に活用し、平成26事務年度においても積極的に調査を実施」するとされています。
平成25事務年度における海外取引を行っている者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は、2,717件(平成24事務年度3,114件)となっています。
1件当たりの申告漏れ所得金額は1,698万円(平成24事務年度1,551万円)となっており、実地調査(特別・一般)全体の申告漏れ所得金額810万円(平成24事務年度839万円)の約2.1倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は461億円 (平成24事務年度483億円)に上ります。
海外には日本のようには税務調査権限が及ばないので、税務署でも難しいとされる海外取引への課税ですが、確かに、高額な海外取引には力を入れていっているようです。
海外取引の課税漏れが見つかっている2,717件の内訳と1件当たりの申告漏れ所得金額は、
・輸出入488件 申告漏れ所得平均909万円(事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)
・役務提供323件 申告漏れ所得平均1,510万円(工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供)
・海外投資680件 申告漏れ所得平均1,889万円(海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む))
・その他1,217件 申告漏れ所得平均1,956万円(海外で支払いを受ける給与など、上記に該当しない取引等)
となっています。
海外取引は税務当局としても監視が難しいので、比較的大きいところから探っていることが窺えます。
海外投資で見ると申告漏れが見つかっているのが年間680件というのはそんなに多い、そもそも海外投資をする人が日本全体からしたら少ないわけで、
申告漏れ所得平均1,889万円ですから、ハンサードやフレンズプロビデント、スタンダードライフといった海外積立投資(海外年金保険)の積立をカードで支払い、受け取りを海外金融機関にしてクレジットカードでお金を使えば税務署は分からないと言っている人もたまにいるらしいですが、十分にリスキーだと認識した方が良いと言えます。
また、GATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)というOECD諸国間の自動的情報交換制度(Automatic Exchange of Information)というのがスタートします。参加国には、香港やシンガポールはもとより、BVIやケイマンまで入っているらしく、海外金融機関を経由した取引は全て国税庁へ情報が流れることになります。2015年にもスタートという話ですが、システム連携などが大変なので、さらに1〜2年後になりそうだという観測を聞いています。
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