2014年10月23日

国税庁の所得税の調査結果から見る、富裕層の個人課税や海外取引はどこまで補足されているのか

所得税は主に個人事業者が対象になる税目にはなりますが、どの程度の調査や追徴税額がされているのでしょうか。

個人事業者で最も税務調査で申告漏れが見つかっている業種(無申告の脱税が多い?)は、風俗・キャバレー・バーがトップ3となっています。風俗業の1件当たり申告漏れ所得 3,329万円、追徴税額 1,089万円、2位キャバレー1件当たり申告漏れ所得 1,972万円、追徴税額 433万円を大幅に超えて申告漏れ所得が多いという結果です。平均申告漏れの個人所得が3,000万円以上ってなかなかすごいです。風俗・水商売はやはり儲かるんですね。

近年注目の海外での申告漏れは、年間3,000件前後が税務署・国税庁に見つかっています。
海外不動産や有価証券の投資では689件、申告漏れ所得の平均は1,898万円です。海外へお金を移せば、監視も難しいので見つかりにくいという向きも多いようですが、海外積立保険でも満期にそれなりの額になっていれば十分に補足対象になり得るレベルです。689件なので現在は挙げられている件数が世の中の富裕層の数からしたら多いとは言えませんが、後述の通り、GATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)というOECD諸国間の自動的情報交換制度も数年後には始まるので、「海外はバレない」という安直な時代は終わりつつあるとは言えるでしょう。




国税庁より、「平成25事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」が公表されています。
これは、所得税及び消費税調査等の概要と結果についてまとめたものです。

平成26年10月 国税庁「平成25事務年度における所得税及び消費税調査等の状況について」
https://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2014/shotoku_shohi/index.htm

まずはじめに、税務調査は下記の形態に分かれます。
・実地調査→高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に深度ある調査(特別調査・一般調査)を優先して実施する一方、申告漏れ所得等の把握を実地により短期間で行う着眼調査を実施
・簡易な接触→文書、電話による連絡又は来署依頼による面接により、計算誤りや所得(税額)控除の適用誤りがあるものを是正するなどの接触を実施

事案に応じた的確な調査等(「実地調査」及び「簡易な接触」)を実施し、適正・公平な課税に努めているとされています。

調査件数は下記の通りで、対象の65%(59万/89.9万)で申告漏れ等が発見されています。圧倒的に、簡易な接触の件数が多く、申告書を見れば分かるようなミスや漏れが発見されていることが窺えます。
特別調査・一般調査が4万6千件(前事務年度4万6千件)
着眼調査が1万6千件(前事務年度2万4千件)
簡易な接触の件数については83万7千件(前事務年度61万2千件)
これらの調査等の合計件数は89万9千件(前事務年度68万2千件)で、そのうち申告漏れ等の非違があった件数は59万件(前事務年度42万4千件)

金額にすると、所得で4,137億円、追徴税額は全体で1,020億円です。うち、加算税は110億円。税務署の所得税調査の'売上'は1,020億円ということですね。
実地調査による申告漏れ所得金額(実地調査の対象となった全ての年分の合計)は、全体で4,137億円(前事務年度4,550億円)、追徴税額は全体で696億円(前事務年度704億円)、うち特別調査・一般調査によるものは3,702億円(前事務年度3,894億円)、追徴税額は665億円(前事務年度661億円)
着眼調査によるものは436億円(前事務年度656億円)、追徴税額は324億円(前事務年度296億円)

ただし、簡易な接触での1件当たりの所得漏れは49万円、追徴税額は4万円なので、1件当たりは小さいですが、簡易な接触は83万件なので、相当な件数が対象になっています。



また、消費税(個人事業者)については、課税事業者又は課税事業者と認められる者を対象に、原則として所得税の調査等と同時に実施することとしておりますが、消費税のみが無申告である納税者に対しても、適正な課税に努めているとのことです。

消費税(個人事業者)の実地調査の件数は、所得税に比べると少ないですが(個人事業者に限られるため)、7万6千件が対象になっています。
特別調査・一般調査は2万5千件(前事務年度2万5千件)
着眼調査は7千件(前事務年度1万件)
簡易な接触の件数は4万4千件(前事務年度4万8千件)
調査等の合計件数は7万6千件(前事務年度8万4千件)、うち申告漏れ等の非違があった件数は5万2千件(前事務年度5万8千件)

金額では、合計209億円(前事務年度211億円)となっています。税務署の消費税(個人事業者)調査の'売上'は209億円ということですね。
追徴税額(実地調査の対象となった全ての年分の合計で加算税を含みます。)は、全体で169億円(前事務年度172億円)、うち特別調査・一般調査によるものは155億円(前事務年度149億円)、着眼調査によるものは14億円(前事務年度23億円)
簡易な接触によるものは40億円(前事務年度39億円)

業種別の上位は
1.風俗業(1件当たり申告漏れ所得 3,329万円、追徴税額 1,089万円、申告漏れ割合 88%)
2.キャバレー(1件当たり申告漏れ所得 1,972万円、追徴税額 433万円、申告漏れ割合 77%)
3.バー(1件当たり申告漏れ所得 1,226万円、追徴税額 213万円、申告漏れ割合 77%)
となっており、前年と1〜3位は同じですし、毎年の申告漏れ常連の職種です。風俗やキャバクラでは、無申告だったり申告をごまかしている人が多いようです。

風俗では1件当たり申告漏れ所得3千万円超とはすごいです。追徴税額1千万以上で、追徴税額割合が30%程度あることから、無申告加算税及び重加算税が課せられている人が多いと思われます。
風俗嬢やキャバクラ嬢も対象なのでしょうが、よっぽど稼いでいないと、源泉徴収されている風俗嬢やキャバクラ嬢でここまでの追徴税額にはならない気がします。1件当たり申告漏れ所得から見ると、いずれもトップ級でないと風俗3千万円超、キャバクラ2千万弱の所得にはならないでしょうから、ホステス個人というよりは、風俗やキャバクラを営む経営者自身が対象となっているケースが多そうです。悪質な風俗やキャバクラだと源泉徴収漏れを指摘され、風俗嬢やキャバクラ嬢も芋づる式にバレるということもありそうです。
税務署はどうやって探しているのでしょうか。風営法の届けの事業者から無申告を探すのか、そもそも悪質な業者は風営法の届けすら出さずに、実地に店やネットを探索して探すのか分かりませんが、律儀に風営法の届けをしていて無申告でいると、まず見つかる、と思っておいた方がいいですね。
(参考)2013/1/20 キャバ嬢を喜ばせるお話!? そうだ!確定申告をしよう
http://money-learn.seesaa.net/article/314475515.html

4位以下は、くず金卸売業、特定貨物自動車運送、プログラマー、畜産農業(肉用牛)、一般貨物自動車運送、建設、設備工事労務者、冷暖房設備工事と続きます。
それなりに稼いでいて、全くの無申告はそれなりに補足される可能性があることが窺えます。

平成20年頃までは貸金業も上位の常連でしたが、過払いブームと共に上位からは姿が消えています。おれおれ詐欺業者等は、所得を申告なんてしているはずがありませんが、どうなのでしょう。警察の摘発すら逃れているので、やはり税務署が追いかけるのは難しいのでしょうか。それとも上位に来るほどの件数はないのでしょうか。
無申告の調査件数は6,512件(前年は7,873件)が補足されています。申告漏れ所得の平均は1,127万円なので、平均値だと申告漏れの大きい方に引っ張られるはずで、中位数は数百万だと思いますが、500〜1000万の所得があって無申告でいると、税務署がやってくる可能性は高くなってくると見て良いでしょうね。

所得税のうち譲渡所得に係る調査等の件数は、2万8千件(前事務年度3万1千件)となっています。これは、不動産や有価証券(株式の売却)の利益によるものです。
うち申告漏れ等の非違があった件数は、1万9千件(前事務年度2万2千件)
申告漏れ所得金額(調査等の対象となった全ての年分の合計)は、1,357億円(前事務年度 1,443億円)

譲渡所得は、調査件数が全体で27,918件で、不動産(土地建物等)23,606件、株式等が4,312件で、9割弱から申告漏れが見つかっています。ちゃんと申告してれば問題ないのでしょうが、不動産は金額も大きいので、誤魔化そうとしたりミスがあったりすると、見つかりやすいと言えます。
不動産が動くと必ず税務署からお尋ねも来る通り、不動産の動きは専門的に注視されていると見ていいでしょう。

また、富裕層への対応として、「国税庁では、有価証券・不動産等の大口所有者、経常的な所得が特に高額な者などの、いわゆる「富裕層」に対して、資産運用の多様化・国際化が進んでいることを念頭に調査を実施しており、平成26事務年度においても積極的に取り組んでいきます」とされています。
平成25事務年度においては、4,177件(前年比101.4%)の調査を実施し、追徴税額は総額で103億円で、また、1件当たりの追徴税額は246万円で、所得税の実地調査(特別・一般)1件当たりの追徴税額145万円の約1.7倍となっています。
具体的な「富裕層」の定義はよく分からず、税務調査がそもそも調査すれば税額をたくさん取れる「富裕層」を狙いにいくのが当たり前で、こういったタイトルでデータを出すことにより「富裕層」へのきちんとした申告を促したいという牽制効果を狙っているのが趣旨なのだと推察されます。

最近では関心の高まっている海外取引ですが、「経済社会の国際化に適切に対応していくため、有効な資料情報の収集に努めるとともに、海外取引を行っている者や海外資産を保有している者などに対して、国外送金等調書、国外財産調書、租税条約等に基づく情報交換制度などを効果的に活用し、平成26事務年度においても積極的に調査を実施」するとされています。
平成25事務年度における海外取引を行っている者に対する実地調査(特別・一般)の調査件数は、2,717件(平成24事務年度3,114件)となっています。
1件当たりの申告漏れ所得金額は1,698万円(平成24事務年度1,551万円)となっており、実地調査(特別・一般)全体の申告漏れ所得金額810万円(平成24事務年度839万円)の約2.1倍となっています。また、申告漏れ所得金額の総額は461億円 (平成24事務年度483億円)に上ります。

海外には日本のようには税務調査権限が及ばないので、税務署でも難しいとされる海外取引への課税ですが、確かに、高額な海外取引には力を入れていっているようです。
海外取引の課税漏れが見つかっている2,717件の内訳と1件当たりの申告漏れ所得金額は、
・輸出入488件 申告漏れ所得平均909万円(事業に係る売上及び原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)
・役務提供323件 申告漏れ所得平均1,510万円(工事請負、プログラム設計など海外において行う、労力、技術等の第三者に対するサービスの提供)
・海外投資680件 申告漏れ所得平均1,889万円(海外の不動産、証券などに対する投資(預貯金等の海外での蓄財を含む))
・その他1,217件 申告漏れ所得平均1,956万円(海外で支払いを受ける給与など、上記に該当しない取引等)
となっています。

海外取引は税務当局としても監視が難しいので、比較的大きいところから探っていることが窺えます。
海外投資で見ると申告漏れが見つかっているのが年間680件というのはそんなに多い、そもそも海外投資をする人が日本全体からしたら少ないわけで、
申告漏れ所得平均1,889万円ですから、ハンサードやフレンズプロビデント、スタンダードライフといった海外積立投資(海外年金保険)の積立をカードで支払い、受け取りを海外金融機関にしてクレジットカードでお金を使えば税務署は分からないと言っている人もたまにいるらしいですが、十分にリスキーだと認識した方が良いと言えます。

また、GATCA (Foreign Account Tax Compliance Act)というOECD諸国間の自動的情報交換制度(Automatic Exchange of Information)というのがスタートします。参加国には、香港やシンガポールはもとより、BVIやケイマンまで入っているらしく、海外金融機関を経由した取引は全て国税庁へ情報が流れることになります。2015年にもスタートという話ですが、システム連携などが大変なので、さらに1〜2年後になりそうだという観測を聞いています。

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・2012/10/8日本の給与 年収1000万円超は178万人 2500万円超は9万2千人、全体の2.2%も給与所得税総額へ13.8%の貢献
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・2012/10/8 消費税の簡易課税制度が見直しの方向か!? 簡易課税制度で中小企業は20億円を節税している
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2013年01月20日

TOB価格を上回る株価 PGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフへの敵対的TOBは不成立に 旧村上ファンドのレノが暗躍

2013年1月17日をTOB応募期限としていたPGMホールディングスによるアコーディア・ゴルフへの敵対的TOBが不成立に終わりました。
TOBへの応募が、アコーディアの発行済み株式の20%に相当する買付下限の209,224 株に届かず、16.68%相当の174,580 株にとどまりました。

PGMが設定したTOB価格は8万1000円で、TOB発表直前のアコーディアの株価5万3200円(2012年11月15日終値)に対し50%超ものプレミアムがつけられていましたが、2013年1月に入り、「レノ」が1月7日に関東財務局長に提出されたアコーディア株の大量保有報告書を提出し、かつての村上ファンドのグループのファンドということで思惑を誘い8万円を超える水準となり、その後のレノによる追加取得やレノによるアコーディアへの要請等の報道等を受けアコーディアの株価は1月17日は高値の83,800円となり、TOBの不成立が公表された1月18日終値においても、82,800円となっています。

下記に状況についてのアップデートを記していますが、当面、こう着状態が続きそうで、今後の株価推移は興味深いところであります。
私の感覚ですと、このまま新しい動きがなければ、TOB期待が薄らいでいき、TOB発表直前の株価とTOB価格の間くらいを彷徨いながら株価が下がっていく気はしますが、どうなりますでしょうか。




アコーディアは、「公開買付価格の不十分性、本公開買付けの目的の不当性(利益相反構造の意図的な創出)、方法の不当性(強圧的買収手法の採用)、当社の中期経営計画の優位性等を理由として反対してまいりました。当社といたしましては、多くの株主の皆様に当社の考えをご理解頂けたこと、また、多くの関係者の皆様から本公開買付期間中にご支援を頂戴いたしましたことに深く感謝いたします」と表明。
・アコーディア「PGM ホールディングス株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果について」
http://www.accordiagolf.co.jp/file/pdf/ir_20130118131345.pdf

PGMホールディングスは、「頂いた応募に係る同社株式の数が、本公開買付け成立のために必要な数にわずかに満たなかったため、残念ながら不成立に終わりました。ご支援賜りましたアコーディアの株主の皆様方には、心より厚く御礼申し上げますと共に、お詫び申し上げます」と表明。
また、TOBが不成立となった要因を、「公開買付期間の最終日である昨日(1月 17 日)の正午過ぎに、一部報道機関が流した、「アコゴルフ:10 ゴルフ場売却検討、150 億円規模−自社株買いで」と題する記事(アコーディアが国内で保有している 10 のゴルフ場を総額 150 億円で売却して、それによって得た資金を自社株買いに投じることを検討している旨の記事)が大きく影響しているものと分析」しているとしています。
「当該記事は、アコーディアの株価を大きく押し上げるような内容を、本公開買付けへの応募が集中する公開買付期間の末日の市場が開いている時間帯の最中に流すものであって、本公開買付けの成立を妨害する目的で何者かが行った極めて悪質な情報操作に踊らされたものではないかと考えざるを得ません。実際、当該記事が流された直後から、アコーディアの株価は急騰し、一時公開買付価格を上回る8 万 3,800 円にまで達するなどしており、アコーディア株主の皆様が、本公開買付けに応募するか否か(応募を撤回するか否か)を決断する最終段階でこのような記事が流されたことが、本公開買付けの成否に大きな影響を与えたことは明らか」として、「証券取引等監視委員会に、被疑者不詳のまま、上記記事が流された過程において金融商品取引法違反に該当する事実がないかどうか直ちに調査するよう求める書面を提出」したと表明しています。
・PGM「アコーディア・ゴルフ株式についての公開買付けの結果と証券取引等監視委員会への調査要請について」
http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1028695

PGMホールディングスは「経営統合が必要という考え方は変わらないとしながらも、TOB最終日の株価の動きについて証券取引等監視委員会に調査を要請していることもあり、当面は慎重に考えていくとの姿勢を示した」とロイター(2013/1/18)は伝えています。
ロイターと東洋経済の記事によると、PGMホールディングスの神田有宏社長は記者団に下記のように語っているようです。
・ロイター(2013/1/18)「アコーディアとの経営統合、当面は慎重に考えていく=PGM社長」より
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE90H07520130118
・東洋経済(2013/1/18)「アコーディア買収攻防、PGM“敗戦の弁”」
http://toyokeizai.net/articles/-/12565
(PGMホールディングスの神田有宏社長による記者会見コメント)
・TOBが不成立に終わったことについては「結果は結果として粛々と受け止める。最後の2―3日が勝負の中で、通常のTOB案件に比べるといろいろなことが起き、われわれも最後まで対応できなかった」。「いろいろなこと」とは、旧「村上ファンド」の流れをくむ投資会社のレノ(東京都港区)が突如アコーディアの大株主に浮上したこと。そして、アコーディアがレノの要望に応える形で「自己株式取得」を行う可能性を16日に発表したこと。
・TOBをアコーディアとの経営統合に向けたステップと位置付けていたが、「その(経営統合が必要という)フィロソフィー(哲学)は微動だに変わっていない。しかし、今後は、アコーディアの動向と証券取引等監視委員会の調査の進ちょく状況を慎重に検討しながら考えていきたい。今後のプロセスは臨機応変に考えていきたい」。証券取引等監視委員会への調査要請を行ったこともあり、「統合に向けた時間軸が延びるのは間違いない」
・再度TOBを実施することについても「今のところ、その考えはない」。「まず、今回のTOBについて総括するのが先」
・アコーディアの18.12%の保有が明らかになっている投資会社レノは、アコーディアに対してPGMとの交渉に付くよう要請しているが、「アコーディアが経営統合の交渉の席に着くとしたのは、自発的か、非自発的か分からない。レノの要請で無理に行った回答で、非自発的なものならば、交渉しても経営統合は難しいだろう」との見解
・17日の正午過ぎに報じられた記事内容とその後の株価動向を踏まえ、TOB不成立を狙った情報操作の可能性があり、「結果的に、それが原因でTOBが不成立になったと言っても過言ではなかった。移管した口座数は、TOBが成立して十分に余りある数だった」。「個人投資家からの応募数だけでもTOB成立に十分と見ていたが、報道を受けて応募手続きをしていた個人投資家からキャンセルが相次いだ。市場での株価がTOB価格を上回ったことから、機関投資家も受託者責任から応募しにくくなった」

TOB期間中の後半の2013年1月13日付では、株式会社レノが13.75%から18.12%に引き上げた大量保有報告書が出されたことが明らかになりました。
レノは、旧村上ファンドのグループ出身者が多く在籍していることで知られている。PGMがTOBを発表した2012年11月15日直後の11月19日からアコーディア株の保有を開始。2013年1月7日には、他2社と共同でアコーディア株13.75%を保有していることが大量保有報告書で明らかになっていました。
「アコーディアの潜在株式価値は大和証券やPwCの算定に近いとした上で、「潜在株式価値を実現できるかどうかは経営陣の手腕にかかっている。経営陣の考えを聞いた上で、対応方針を最終判断する」としている。仮に、現経営陣の下で株式価値の向上が期待できるなら、TOBには応募せずに、中長期的に株式を保有する。一方、現経営陣で潜在株式価値の実現が困難と判断した場合には、TOBに応募する」と揺さぶりを掛けていました。
・ロイター(2013/1/15)「「レノ」がアコーディア<2131.T>株保有を18.12%に引き上げ、PGMとの経営統合交渉などを要請」
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK059101520130115

レノは、PGM との買付価格を含めた諸条件について交渉の場につくよう、また、株主還元策の継続的な実施および明確な基準の策定を求めています。
レノの要請とアコーディアの回答は下記にようになっています。
アコーディア(2013/1/16)「当社株式大量保有者からの書簡の受領およびこれに対する当社の考え方について」
http://www.accordiagolf.co.jp/file/pdf/ir_20130116134527.pdf

・買付価格を含めた諸条件について交渉の場につくことについて
○レノの要請
「今回の PGM による TOB が終了した時点で、PGM との買付価格を含めた諸条件について交渉(PGM によるデューディリジェンスの受け入れを含む)の場につくことをご表明いただきたいと思っています。」
○アコーディアの回答(抜粋)
PGM との間の経営統合(以下「本経営統合」といいます。)自体については、その内容・条件等が
当社の株主の皆様の最善の利益に資するものであれば、事業戦略上の有力な選択肢の一つとして検討を行うことを否定するものではなく、また、検討を行う必要があると考えております。
従いまして、当社としては、本公開買付けが終了した際には、当社の株主の皆様の最善の利益の実現という観点から、本経営統合についても検討を行う用意がある旨表明させていただきます。そして、本経営統合の検討を行うに際しては、双方において相手方に対しデューディリジェンス(但し、両者は競合他社の関係にあることから事業運営に支障の生じるおそれのある企業秘密などの一定の情報は開示できない可能性があります。)を実施しあう用意もあり、また、PGM 側との間で、本経営統合の内容や条件等(本経営統合の方法や統合比率、本経営統合後の少数株主の利益保護のための方策を含みます。)について交渉の場につく用意もある旨、付言させていただきます

・株主還元策の継続的な実施および明確な基準の策定について
○レノの要請
「株主還元策の継続的な実施および明確な基準の策定をお願いいたします。昨年 12 月 3 日に発表された貴社中期経営計画にて連結の配当性向 90%を目処とする旨発表されておりますが、配当性向を高めるだけではなく、フリーキャッシュフロー(貴社事業計画上は年間100億円レベル)を最大限に活用して、PBR1倍(または貴社が割安だと考えるレベル)までは自己株取得を徹底的に行っていただくといった骨太な株主還元策を実施されることを希望します。」
○アコーディアの回答
当社においては、国内におけるゴルフ場売買市場の縮小傾向など、新規投資の機会が乏しい現在の外部
環境を踏まえ、余剰キャッシュ・フローを積極的にゴルフ場の買収に投下してきた従前の方針を転換し、当社において取得済みの資産の質を一層高め、優良資産による収益力の最大化を追求する段階(すなわち、内部成長を目指す段階)に移行する必要があると考えております。また、当社の財務体質は、継続的に有利子負債を返済したことにより年々向上しているため、資本政策の観点からも、資本効率性を重視することが可能な財務状態となってまいりました。
そこで、当社は、今後、余剰キャッシュ・フローを積極的かつ継続的に株主の皆様に対して還元することにより、当社の真の企業価値を資本市場において顕在化させることこそが、株主の皆様の最善の利益に資する施策であると考え、2013 年 3 月期における期末配当金(予想)を1株当たり 5,500 円に修正し、また、来期以降、連結配当性向 90%を目処とする株主還元策を発表いたしました。
自己株式取得は、このような当社の株主還元重視の方針と方向性において合致しており、当社としても、当社の株主の皆様の最善の利益に資する可能性のある有力な選択肢の一つと認識しております。特に、PBRが1 倍を下回っている局面では、一株あたり純利益及び一株あたり純資産の改善にもつながることから、自己株式の取得を行うことは、株式の潜在価値を実現し、株主様の利益の向上に資する有効な手段であり、当社が置かれた状況において、合理的な選択肢であると認識しております。
かかる自己株式取得に際しては、減価償却費及びのれん償却費から必要な設備投資などを控除した投資
若しくは借入金返済のためのバッファーとして確保可能な資金、又は、当社が中期経営計画でお示ししているアセットライト手法(注)により確保可能な資金等を充当することがありうると考えております。
(注) アセットライト手法とは、保有するゴルフ場等のアセットを切り離すことで資産として自社で保有することなく、ゴルフ場の運営事業に特化することにより、投資効率を高める手法のことをいいます。

【関連記事】
・2012/12/4 PGMによるアコーディアへの敵対的TOB アコーディアは反対を表明 反対の論拠を読む
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・2012/11/26 M&AのFA費用 のれん計上から一括費用計上へ改正の方向性
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・2012/10/16 ソフトバンクはSprintを1兆5千億で買収 報道で株価21%下落も「今が買い」とアピール 成功に「自信があります」
http://money-learn.seesaa.net/article/297612019.html
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