2012年11月26日

M&AのFA費用 のれん計上から一括費用計上へ改正の方向性

M&Aの際の会計処理について、金融機関などのファイナンシャル・アドバイザー(FA)に支払った報酬を買収の当該決算期に費用処理するよう改めるという方向性にあるようです。
現行の日本の会計基準では、M&Aの際のFAへの報酬について、買収総額に含め、「のれん」に含めて計上しのれん償却を通じて、20年以内の会社がM&Aによる統合効果が及ぶと判断した償却期間にわたって費用として計上していく会計処理が行われています。
これを、「のれん」に含めず、M&Aを行った期の費用として計上するようにする方向性であるとのことです。

具体例では、
買収額 100・FA費用 5、買収された会社の純資産 80、のれん償却期間 5年
の場合、
現行の日本の会計基準では、
のれん 25(100+5−80)、5年間で5の'のれん償却費'をP/Lに費用として計上
となっていますが、
改正後の会計基準では
のれん 20(100−80)、買収した会計期間に5、5年間で4の'のれん償却費'をP/Lに費用として計上
となります。

日本の会計基準を作成する企業会計基準委員会(ASBJ)はM&A(合併・買収)の会計基準改正に着手するという方向性が日経で報じられたところで本決定ではありませんが、時期は、「強制適用は2015年4月からが有力で、前倒しを求める声もある」ということです。




国際会計基準(IFRS)や米国会計基準はすでに切り離して費用処理することになっており、基準を共通化するという理由とともに、基準の改正は昨年発覚したオリンパスの粉飾決算もきっかけとも報じられています。
2011年に世間を賑わせたオリンパスの過去の粉飾決算では、英医療機器メーカーのジャイラスの買収時に飛ばし損失の穴埋めのために巨額のFA報酬を支払ったことにしてのれん償却に紛れ込ませることにより損失を数期で計上することにより一時に大きな費用を計上しないことが事件の発覚させずらくした要因の1つとなったのではないかと一部で指摘がされています。

参照記事:
日経(2012/11/23)「FA費用を一括計上 M&A会計基準、改正へ」

マネーの知恵(仮)関連記事:
・2011/2/2 会計の基礎D補足 のれんとは
http://money-learn.seesaa.net/article/183841799.html
・2011/12/4 オリンパス 上場廃止か維持かの可能性についての論点まとめ
http://money-learn.seesaa.net/article/238620624.html

[参考]
日本の会計基準では、企業結合に直接要した支出額である企業結合を成立させるために取得企業が外部のアドバイザー(例えば投資銀行のコンサルタント、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士等の専門家)に支払った交渉や株式の交換比率の算定に係る特定の報酬・手数料等はのれんに含めると規定されています(企業結合会計基準第 26 項)。(ただし、社内の人件費(例えば社内のプロジェクト・チームの人員に係る人件費)等や契約に至らなかった取引や単なる調査に関連する支出額はのれんに含めない)
IFRSでは、企業結合に直接起因する取引コスト(FA報酬が含まれる)は、移転した対価に含めず、発生した時点又はサービスの提供を受けた時点で費用処理されると規定されています(IFRS3号53項)。

高値づかみをしないM&A

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2012年10月02日

日本企業へのIFRSの強制適用の判断は2013年以降に持ち越しとの観測

ロイター(2012/10/2付)「焦点:IFRSの強制適用、日本の判断は2013年以降に持ち越しへ」では、企業会計審議会で議論しているIFRS(国際会計基準)の上場企業への強制適用の是非をめぐる判断が、2013年以降に持ち越される可能性が高まっていると伝えています。
企業会計審議会は金融庁長官の諮問機関です。
金融庁・企業会計審議会: http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/top.html

IFRSの適用を巡っては、2009年に会計審がまとめた中間報告で、国際会計基準の上場企業への強制適用について2012年をめどに判断するとの考えが盛り込まれていました。
昨年2011年、当時の自見庄三郎金融相がIFRS導入のあり方を見直す方針を突然、打ち出し、日本での議論も流れが変わっています。
参考:IFRSフォーラム2011/06/21 「IFRS強制適用が延期、金融相が「2015年3月期の強制適用は考えていない」
http://www.atmarkit.co.jp/news/201106/21/ifrs.html

ロイターの記事では、「日本は、IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)のアジア・オセアニアにおけるサテライトオフィスの東京への誘致に成功した。それだけに推進派は、国内での議論が停滞するとアジア周辺国の台頭を招きかねないと懸念する」と指摘をしています。
一方、慎重派(米国の動向が最大の関心事だとする経済界など)は、日本の判断においては米国の動向を見極めることが最重要だとの立場を譲らず、意見は交錯しているということです。
「米国での適用の判断に向けた動きがあるのは13年央以降になるとの見方が出ている。日本の対応もそれに引きずられそうだ」と観測されています。

2012年7月には、中間的論点整理がまとめられていますが、「委員の意見になおかなりの隔たりがある」とし、審議を継続する考えを示されています。
金融庁・企業会計審議会 2012/7/12
「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についての これまでの議論(中間的論点整理)」の公表について
http://www.fsa.go.jp/inter/etc/20120702-1.html
「わが国会計基準のあり方を踏まえた主体的コンバージェンス、任意適用の積上げを図りつつ、国際会計基準の適用のあり方について、その目的やわが国の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさわしい対応を検討すべき」とされています。

ITpro(2012/10/2)「IFRS適用方針を議論する金融庁審議会が4カ月ぶり開催、議論の進展なし」によると、2012年10月2日に開催された総会・企画調整部会合同会議では、IFRSの設定主体であるIASB(国際会計基準審議会)や米国の動向説明が中心。議論の進展はほとんどなく、会議は予定時刻より20分早く終了したと伝えられています。
「委員の意見は「学者」「国内製造業」「投資家」「会計士」「業界団体」などそれぞれの立場に立脚したもので、議論をいくら重ねてもまとまる気配がない」とし、「早期に何らかの結論に至るのは難しそうだ」とされています。

参考記事:
・ロイター(2012/10/2付)「焦点:IFRSの強制適用、日本の判断は2013年以降に持ち越しへ」
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE89105B20121002
・ITpro(2012/10/2)「IFRS適用方針を議論する金融庁審議会が4カ月ぶり開催、議論の進展なし」
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20121002/427024/?top_tl1

関連記事:
・2011/3/5 IFRSによる連結財務諸表の事例・ひな型(UP-DATE) −日本板硝子
http://money-learn.seesaa.net/article/188946523.html
・2011/2/12 IFRSによる連結財務諸表の事例・ひな型
http://money-learn.seesaa.net/article/185588076.html
・2011/2/9 会計の基礎E IFRSについての基本(IFRSとは)
http://money-learn.seesaa.net/article/185151440.html

参考
トーマツ:日本のIFRSの動向
http://www.tohmatsu.com/view/ja_JP/jp/knowledge/ifrs/news/jp/index.htm




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