2015年11月12日

IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当金の所得税課税は総合課税のみでなく分離課税適用可能です(確定申告で注意!)

(*訂正あり)当初の調査では海外金融機関で保有する海外ETFの配当金の所得税の配当所得は分離課税が適用できず総合課税になるという記事でしたが、その後、分離課税の適用は大丈夫だということが判明しましたので、訂正とともに再掲いたしております。

一部ネット等の情報では、海外金融機関で投資する外国上場株式の配当金の受領は分離課税が選択できず、総合課税のみであるという論説があります。
これについて、結論としては、総合課税若しくは申告分離課税を納税者が選択することが認められます。なお、海外金融機関の海外の現地国(IB証券であれば米国)で配当に対して源泉徴収された海外国での税金は、日本の確定申告の際に外国税額控除を行うことにより、日本で精算(日本で支払う税金から差し引くことができる)が可能です。また、日本の証券会社を通じないため、租税特別措置法に規定する特典である、譲渡損失が生じた場合における、配当との損益通算や翌年度への繰り越しは出来ませんので確定申告の際にはご注意ください。
海外上場ETFの配当金の米国での課税、また、日本での申告について日本の居住者が米国上場ETFの配当金を受領した場合、源泉地国(米国)において原則30%の源泉税が課されることとなりますが、日本の居住者がW-8BENを米国側に提出することにより日米租税条約で定める軽減税率(10%)が適用されることとなります(日米租税条約第10条第2項(b) )。総合課税、申告分離課税ともに、確定申告により外国税額控除を適用することで上記10%のうち一定金額の還付を受けることが可能となります(所法第95条)。

・上場株式配当の総合課税と分離課税について
分離課税を選択すると20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率が適用されます。
しかし、総合課税は超過累進税率が適用されます。総合課税の税率は、所得が195万円を超え330万円以下の部分は所得税10%・住民税10%で20%ですので、所得が330万超になると、総合課税が不利になります。最高税率はご存知の通り所得税・住民税合わせて55%になります。
総合課税の場合、配当控除もあります。外国上場株式等の配当では配当控除の適用はありません。
(参考)
・国税庁タックスアンサー No.1331 上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1331.htm
・国税庁タックスアンサー No.1250 配当所得があるとき(配当控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1250.htm

・IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当金が総合課税しか適用されなかったらどうなるか
IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当所得に分離課税しか適用できないとすると、インタラクティブブローカーズ証券(IB証券)を使って海外ETFを買うと、多くの個人投資家は、税金を引いた後の手取りを考えると、IB証券を使うよりも国内証券会社の海外口座で分離課税を選択する方が有利になります。(せっかくなので確定申告手続き軽減のため国内証券会社では特定口座対応の証券会社を使うことも必須)
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/home.php
従って、インカムゲイン狙いで海外ETF等の投資をする場合には、為替手数料・取引手数料が格安のIB証券を使うより、課税面で国内ネット証券を使う方が良さそうだということになります。
IB証券のプロ仕様の難しい取引ツールを使いこなせれば、手数料差について、イメージとして、国内ネット証券で米国株取引手数料が1番安いマネックスvs IB証券では、為替手数料は片道25銭vs 1銭、米国株取引手数料は取引1回あたり20ドルvs1ドルみたいな手数料差ですが、総合課税の最高税率で35%もの差があることを考えると、配当の手取りに関して言うと、課税の差の方が手数料差より遥かに大きいことになってしまいます。結論としては、分離課税が適用できますので、このような心配はいらないことになります。
IB証券で米国での源泉徴収はされているようですが、日本での確定申告で外国税額控除は取れるはずです。

・IB証券で分離課税が適用されない理由
上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く。)については、総合課税のほかに、申告分離課税を選択することができます。
外国上場株式等の配当等であれば総合課税と申告分離課税が選択でき、外国非上場株式等の配当等であれば、総合課税のみです。いずれも、配当控除の適用はありません。これが一般的な説明です。

訂正前では、当初調べた解釈により、下記のような見解から申告分離適用できず、との結論でありました。
租税特別措置法第8条の4第1項第1号によると、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」と記載があります。
また、租税特別措置法第8条の5第1項に、対象が「内国法人から支払いを受ける」と限定されていることから、外国金融機関で保有する株の配当は内国法人からの支払いには当たりませんので、分離課税は適用できないものと考えられます。
なお、このとき、国内証券会社経由だと、租税特別措置法第9条の2第5項第1号に「当該国外株式の配当等の国内における支払の取扱者から交付を受けるべき金額」、また、租税特別措置法第9条の2第5項第2号に「これを内国法人から支払を受けるものとみなす」とありますから、選択可能だと考えられます。

簡単にまとめると、こうです。
国内証券会社の米国株口座での売買では、米国籍口座の名義人は、証券会社の名義になっています。米国籍口座に配当金が日本の顧客に対してまとめて入金があり、それが国内に持ち込まれ、国内の個人口座に、振り分けられる際に、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」こととなります。
IB証券(海外金融機関)ではIB証券の米国籍口座の名義人は個人名義(自分の名義)になります。従って、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」に当たらなくなります。
そのため、分離課税を認める租税特別措置法に海外金融機関での自分名義での口座は該当しない、ということです。

ところが、さらなる調査の結果、下記のような見解が得られ、分離課税適用可との結論になりました。(なお、確かな筋より訂正情報を入手しており、こちらが最終結論と考えます)
租税特別措置法第8条の4第1項第1号、租税特別措置法第8条の5第1項での「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」との記載について、ここでの「内国法人」とは、株式の発行体の分類での「内国法人」としており、保管証券会社が「内国法人」か否かを指したものではない。その上で、この文言は、「内国法人」から配当を受ける株主で、その株式総額の3%以上を持つ大口株主は申告分離課税を選べないという文脈で述べられている(大口株主に関する規定)と解釈ができます。
また、租税特別措置法第8条の5第1項で、対象が「内国法人から支払いを受ける」と限定されていることから、外国金融機関で保有する株の配当は内国法人からの支払いには当たらないので、分離課税は適用できないものと考えられる、という理解について、上記の上で、この規定は、国内の金融機関が源泉徴収をする場合に限定して述べており、確定申告の要否を見極める際に考慮される配当額を決めるための規定となっている。
IB証券の場合はそもそも国内所得税の源泉徴収はされないので、この規定の対象には入らない、と解釈ができます。
よって、IB口座で受け取った配当は「上場株式等に係わる配当所得」であり、申告分離課税が選択でき、かつ「外国法人」からの配当であるので「内国法人」の大口株主規定も適用されないと考えられる、という結論になります。

・本件の調査経緯
本件、「IB証券でのETFの配当が総合課税と聞いたんだけど、マジすか?」という問い合わせを頂いたことから、調べたのですが、なかなか難航しました。

一般書籍では、どうも、日本国内の証券会社の証券口座の中の外国口座開設していることを念頭に、海外金融商品の税務の説明がされているように見えました。

手元にある「富裕層のための海外分散投資」(永峰潤、三島浩光)という本では、p148-149で、(海外の)現地の証券会社から購入した外国株式の配当に関する課税は、国内での源泉徴収はなく(海外金融機関なので当然ですが)、確定申告で申告分離と総合課税が選択できると記載があります。
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確認のため、国税庁の税務相談窓口に電話してみましたら、私の手元の本とは別の本を見ながら、海外金融機関の配当が上場株の配当であれば分離と総合の選択できるんじゃないですかねーという話でした。(外国が絡む証券税制に詳しいわけではなく、ふつうの職員です。「ETFって分かりますか?」って聞いたら、「なんか聞いたことはあります」という感じでした。)

これらは、租税特別措置法を読み解いた上での理解があるかどうかは微妙だしたが、結論としては正しかったわけです。

サイト自体の情報の正確性は不明ですが、下記等の一部のウェブサイトでは、海外金融機関からの株式等の配当は総合課税だという説明があります。また、確かな筋からの情報でも外国の金融機関の口座から受け取る配当の所得税は総合課税と回答が得らたため、当初、どうやらそのようだ、という結論でした。
・外国株式等の配当所得と損益通算」というタイトルのこのリンクのサイトで、外国の金融機関の口座から受け取る配当の所得税について、総合課税のみが適用されるとの説明があります。
http://www.carlos.or.tv/essay-j/foreign_stock_dividend.html
海外の株式等の配当の申告について
海外の金融機関を通じて買った株式等の配当については、国内証券分の申告に関して分離課税を選択したとしても、総合課税が適用となり、税制面から言えば、HSBC香港やFirstradeを通じて買った株式やETFに関して配当を受け取った場合は、国内証券の米国株口座を通じて買った場合に比べて不利
・水あめのブログ 「外国証券会社・外国証券投資の損益通算、繰り越しに追記」
http://blog.livedoor.jp/watersugar/archives/2014-09-02.html
・投資と資産運用のBB6ブログ 「平成26年度確定申告(その1)」
http://toushibb6.blog.fc2.com/blog-entry-268.html

色々と調べたり、方々からも情報収集し、ようやく解決しました。よかったよかった。
一部のウェブサイト等で解説されている、海外金融機関からの配当は総合課税のみ、とありますが、分離課税を選択して申告できますので、ご注意ください。
確定申告時期ということや、ご存じない方も多いのではないかと思い、本記事にて訂正の上、再掲をしております。お役に立ちましたら幸いです。

【関連記事】
・2014/10/23 国税庁の所得税の調査結果から見る、富裕層の個人課税や海外取引はどこまで補足されているのか
・2015/10/1 マイナンバー対策 マイナンバーで副業がバレる心配への有効な対応策 〜キャバクラ嬢・ホステスのためのマイナンバーと確定申告講座〜
・2012/10/8 日本の給与 年収1000万円超は178万人 2500万円超は9万2千人、全体の2.2%も給与所得税総額へ13.8%の貢献

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2014年04月01日

復興特別法人税の廃止が2014年3月31日に公布され、税効果会計の実効税率が変更に

復興特別法人税の前倒しでの廃止が決まり、税効果会計への影響に気が揉んで、廃止がいつ公布されるのかという話になっていましたが、2014年3月31日に復興特別法人税の前倒し廃止法(「所得税法等の一部を改正する法律」(法律第10号))等が公布されました。
今決算の平成26年3月期では、税効果会計の平成26年4月1日以降の実効税率は35.64%を使って計算することになります。

何が問題だったかと言うと、税効果会計では,改正税率が決算日までに公布され,将来の適用税率が確定している場合,改正後の税率を適用する(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針第18項)というルールになっているため、日本の会社の多くは3月決算であるため、復興特別法人税の廃止の公布日がいつかによって決算実務に影響があるためです。
公布日が3月31日までなら、決算財務諸表の税効果会計で使用する平成27年3月期に解消予定の一時差異の実効税率を35.64%にするものの、公布日が4月1日以降だと、決算財務諸表は同上期間の実効税率を38.01%にしつつ注記するものとされていましたが、公布日が3月31日に決まったので、決算財務諸表の実効税率を修正することとなりました。

以前の「平成23年税制改正による実効税率の変更後の税率、計算式、決算への影響」(2012/4/5)という記事にて、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については、復興特別法人税が課税されるため、復興特別法人税が適用される平成24年4月1日から平成27年3月31日までの3年間は実効税率が変わるため、下記のようになります。

・実効税率(復興特別法人税の廃止前)
40.69%:平成24年3月31日まで

38.01%:平成24年4月1日から平成27年3月31日まで

35.64%:平成27年4月1日以降

・実効税率(復興特別法人税の廃止
40.69%:平成24年3月31日まで

38.01%:平成24年4月1日から平成26年3月31日まで

35.64%:平成26年4月1日以降

なお、復興法人税の廃止を公布した該当の官報はこちらです。
http://kanpou.npb.go.jp/20140331/20140331t00006/20140331t000060385f.html

復興特別法人税は、東日本大震災の復興財源を確保するための期限付法人課税(復興財源確保法)。平成23年11月30日に成立,翌月2日に公布されたものです。復興特別所得税は平成25年から平成49年までの長期にわたって所得税額の2.1%の税金が上乗せされるものですが、復興特別法人税のみの廃止となったことは、法人税減税の現行の日本の税制の方向性とも一致するものです。

また、今回の地方税制の改正により地方法人税が創設されました。
平成 26 年 10 月 1 日以後開始する事業年度から適用される法定実効税率の算出式は、以下のとおりとなります。
法定実効税率 = 法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率 / (1+事業税率)
(注)事業税率には、地方法人特別税が含まれる。

ここで、会計上の取扱い(地方法人税法および地方税法等の一部を改正する法律の公布日と各地方自治体の改正条例の公布日の属する事業年度が異なる場合の取扱い)に関し,下記のいずれかの法定実効税率を適用することになります。
<連結納税制度を適用していない企業>
(a)地方法人税の税率を含めず,地方税法等改正法の改正前の住民税率および事業税率に基づいて算出した法定実効税率
(b)地方法人税法の税率および地方税法等改正法による標準税率の増減を織り込んだ住民税率および事業税率を用いて算出した法定実効税率(※超過課税により標準税率を超える税率は変更されないと仮定して,標準税率の増減のみを反映することとした)
<連結納税制度を適用している企業>
今回の地方税制の改正が繰延税金資産および繰延税金負債の金額に影響を与える可能性があり,地方税制改正の影響を織り込むことが適切であるため,上記の(b)の法定実効税率を適用する。

第284回企業会計基準委員会(平成26年3月27日開催)議事概要において、平成26年度地方税制改正に伴う税効果会計について、周知を図るため、以下を議事に残すこととされています。
・第284回 企業会計基準委員会議事概要(平成26年3月27日(木))
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20140327/20140327_284g.shtml
・平成26年度地方税制改正に伴う税効果会計についての議事
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/minutes/20140327/20140327_10.pdf

(本ブログでの関連エントリー)
・2012/4/5 平成23年税制改正による実効税率の変更後の税率、計算式、決算への影響
http://money-learn.seesaa.net/article/262303124.html
・2011/1/31 会計の基礎C補足 税効果会計・繰延税金資産とは
http://money-learn.seesaa.net/article/183446783.html


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