2015年08月08日

海外ETFのネット証券大手3社の残高ランキング ダントツ1位はVTで残高299億円、上位20本の合計残高は1178億円

2015年7月29日付の日経新聞夕刊「ETF番付 海外商品、低コストで分散投資」でネット証券3社(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)の合計での海外ETFの預かり資産残高の上位ランキングが掲載されていました。
私が知る限りネット証券での海外ETFの残高は今までどこでもデータの開示がなかったので、初めて海外ETFの残高を確認しました。

記事によると、ネット証券での残高が多い海外ETFは下記となっています。(ランキング集計日は2015年7月17日時点)
なお、記事ではティッカー(米国上場銘柄のコード。日本で言う証券コード)・信託報酬の記載がなかったので、筆者にて追記しています。もしかしたら間違いがあるかもしれませんのでご了承下さい。。。

1.299億円 VT − Vanguard TOTAL WORLD STOCK ETF(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)  ・バンガード 信託報酬 0.17%
2.126億円 VWO − Vanguard FTSE Emerging Markets ETF(バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF) ・バンガード 信託報酬 0.15%
3.93億円 VTI − Vanguard TOTAL STOCK MKT ETF(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)(米国市場全体のUSトータル・マーケットに連動)・バンガード 信託報酬 0.05%
4.90億円 TOK − iシェアーズ MSCI コクサイ ETF 信託報酬 0.25%
5.85億円 IVV − iシェアーズ・コア S&P 500 ETF 信託報酬 0.07%
6.63億円 SPY − SPDR S&P 500 ETF 信託報酬 0.0945%
7.59億円 EFA − iシェアーズ MSCI EAFE ETF信託報酬 0.34%
8.53億円 EEM − iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF 信託報酬 0.67%
9.49億円 PFF − iシェアーズ 米国優先株式 ETF 信託報酬 0.48%
10.39億円 VOO − バンガード・S&P 500 ETF 信託報酬 0.05%
11.38億円 VGK − バンガード・FTSE・ヨーロッパETF 信託報酬 0.12%
12.26億円 LQD − iシェアーズ iBoxx米ドル建て投資適格社債ETF信託報酬 0.15%
13.25億円 HYG − iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債 信託報酬 0.50%
14.21億円 ACWI − iシェアーズ MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス 信託報酬 0.34%
15.20億円 GLD − SPDR ゴールド・シェア 信託報酬 0.40%
16.20億円 IYR − iシェアーズ 米国不動産 信託報酬 0.46%
17.19億円 BND − バンガード・米国トータル債券市場 信託報酬 0.07%
18.18億円 QQQ − パワーシェアーズ QQQ 信託シリーズ1(ナスダック100指数の価格と利回りに連動) 信託報酬 0.20%
19.18億円 IBB  − iシェアーズ NASDAQバイオテクノロジー 信託報酬 0.48%
20.17億円 HDV − iシェアーズ・コア 米国高配当株 信託報酬 0.48%

上位20本の合計残高は1178億円。上位銘柄3本は全てバンガードで、518億円なので、人気の上位3本が全体の半分の残高を占めていることが窺えます。
VTは全世界の時価総額加重平均に連動、VWOは新興国指数に連動、VTIはアメリカ株式市場全体に連動するETFで、幅広いグローバル分散を可能にする商品設計とバンガードの競争力のある低コストでの提供が評価された結果と考えられます。
運用会社別には、上位20本のうち、バンガードが6本・計614億円、ブラック・ロックが11本・計463億円、ステート・ストリートが2本・83億円、インベスコ・パワーシェアーズ・キャピタルが1本・18億円となっています。iシェアーズシリーズはブラック・ロックで、SPDR(スパイダー)シリーズはステート・ストリートが運用会社になります。1本だけランクインのインベスコは18位のQQQの運用会社です。
現時点で、日本でネット証券で海外ETFを買い付けるのは、投資リテラシーが高く自分で調べたり投資判断を行える層であると想定されますので、上位ランキングは海外ETFの商品選択に迷った時の参考にしても差し障りはないと思います。海外ETFの残高が1千億円を超えているのは個人的には意外でもっと少ないと思っていましたが、海外ETFのポテンシャルから見ると、まだまだ普及していないと評価できます。

ダントツで残高1位のVT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)は「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year」でも2014年は2位、2013年は1位と、上位の常連です。
世界中の株式指数に手間いらずに1本で投資が出来、時価総額比重になるよう適宜リバランスもしてくれて、信託報酬(経費率)が0.17%というコストの低さが人気の理由と思われます。
また、世界中の株式に分散ということで、「何か1本だけに投資するなら」という例えでよく識者がVTを紹介している影響もありそうです。

バンガードのマーケティング担当者もVTを一押ししていますし。
・2015/7/5 インデックス投資ナイト2015無事に終了!【当日の様子】
http://money-learn.seesaa.net/article/421837387.html

VTは、バンガードの資料によると設定日は2006年6月24日、設定来トータルリターンは年率5.32%です。VTの中身の構成は先進国や新興国市場を含む約47ヵ国の約8,000銘柄での運用です。国別には、世界の株式時価総額で米国が大きいので、米国が51.7%を占め、続いて、日本が8.1%、英国6.9%、カナダ3.2%、ドイツ3.1%となっています。新興国では、中国が9位で2.2%です。現時点の株式時価総額比重なので、概ね先進国が投資対象と言えます。保有銘柄は1位がアップルで構成比率1.7%、次いでエクソン・モービル0.8%、グーグル0.7%、マイクロソフト0.7%、ウェルスファーゴ0.6%となっており、個別銘柄ベースでは十分な分散がされていると評価できますね。
(バンガードのVTの商品情報ページより)
https://www.vanguardjapan.co.jp/docs/FS_VT_JP.pdf

私もグローバル分散投資の実践の中で、海外ETFも組み込んで活用をしています。
上位20銘柄で保有しているのは、VWO、SPY、EFA、EEM、PFF、IYRといったあたりです。私の場合、さらに新興国などの特定の国のインデックスのETF等を買っているのですが、上位ランキングでは圏外です。自分の志向に応じてポートフォリオを組みたいので、VTは良い商品だと思いますがユニバース(投資対象の範囲)が広すぎて個人的には投資対象としては検討していません。
海外ETFの魅力は商品ラインナップが国内ETFより圧倒的に多い事と、米国ではETF残高が多いために低コストでの提供が可能になっていることです。一方、日本の証券会社からのアクセスでは、為替手数料が取られたり、確定申告の手間(楽天証券とマネックス証券で特定口座対応がされたのは最近です。また、分配金に現地課税と日本での二重課税があり取り戻すには外国税額控除を確定申告する必要があり、面倒です)があることです。また、注文時間も国内株と違ったりして面倒です。
国内ETFもここ数年でようやく商品ラインナップやコスト面も含めて充実してきていることから、先進国指数とか新興国指数といったレベルでは、国内ETFでもいいかなと思っているところでもあります。

外国株式の使い勝手は、為替手数料の引き下げ、税金(特定口座非対応は論外、外国税額控除も制度上で何とかして欲しい)、インターフェースや注文のしやすさの改善(さらに、アラート機能や、長期的な自動買い付け機能など)など、まだまだ改善できるところも多いと思いますので、もっと外国株式が個人投資家に普及してサービスに競争が起こって、ユーザーにとって改善されていくと嬉しいところであります。
また、マネックス証券はアメリカの証券会社を買収して米国株取引がトレーダー仕様になってしまい私のような素人にとっては非常にインターフェースが悪くなったこと、SBI証券は特定口座対応を2015年内に行うとアナウンスされていますが未対応です。
現状では私は海外ETFは楽天証券を中心として使用しています。過去の買付分が一般口座ですが・・
また、コスト面・商品面等で最も有利なのは、インタラクティブ・ブローカーズ証券(通称・IB証券)というアメリカ証券会社(日本語対応あり)を使うことですが、特定口座非対応はもちろんのこと、インターフェースがプロ仕様なので使いこなしのハードルは高いです。(誰か教えて!w)

【関連記事】
・2015/1/11 個人投資家が買いたい投信と金融機関が売りたい投信は全然違う 〜投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2014より〜
http://money-learn.seesaa.net/article/412140543.html
・2014/12/23 モーニングスターETFカンファレンス2014に行ってきました。2015年の投資スタンスは「用心深く、楽観的に」(朝倉智也社長)で
http://money-learn.seesaa.net/article/411149960.html
・2014/12/21(株)お金のデザインの新サービス「ETFラップ」の説明会に行ってきました。
http://money-learn.seesaa.net/article/411045614.html
・2015/1/3 【謹賀新年】2014年末のポートフォリオ・保有銘柄・パフォーマンスなど
http://money-learn.seesaa.net/article/411707647.html
・2015/7/25 [感想・書評]全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド 山崎元 水瀬ケンイチ/著
http://money-learn.seesaa.net/article/423002177.html







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2015年07月11日

インデックス商品(ETF及び投資信託)による長期志向でのグローバル分散投資のメリット・デメリット

資産運用の方法は様々ですが、私は資産運用において、主に、インデックス商品による長期志向でのグローバル分散投資を行っています。投資対象は、世界中の株式・REIT・債券が中心です。
インデックスというのは、株で言うと日経平均とかダウ平均とか上海総合指数といった、マーケット(市場)をまとめた指数のことで、ETFや投資信託がパッケージとして市場を買うことが出来る金融商品として売買が可能です。
(参照)
2015/1/3 【謹賀新年】2014年末のポートフォリオ・保有銘柄・パフォーマンスなど
http://money-learn.seesaa.net/article/411707647.html

本稿では、私が考える「長期志向によるグローバル分散投資」の実務上のメリット・デメリットを3点ずつ挙げていきたいと思います。

<メリット>
・時間・手間が掛からない(経済成長に任せてほったらかしにしておけばよい)
この点は、私が現在最も重視している点です。平日の日中は仕事のため、仕事時間中にマーケット動向が気にならないようにすることと、資産運用のメンテナンスやチェックの手間も最低限にして労力をミニマムにしたいという意向があります。リスクポジションをどう取っていくかという点も極めて重要ですが、ここは別途書いていきたいと思います。
長期投資と言う心構えをもって実践していくことは簡単ではありませんが、きちんとした方法を身に付けば、心の余裕も生まれ、長期的にはパフォーマンスも出して行けます。
資産運用に必要以上に時間を掛けるよりも、本業での自身のファンダメンタルズバリュー(自身の稼ぐ力やキャリア向上)を上げる方が良いという考えです。私の場合は単に面白いのでマーケットをウォッチしているというのはありますが、資産運用のキャッシュフローやリターンは努力に対する成果が不確実ですが、相対的には仕事のキャッシュフローは努力に応じて安定するので、このバランスが大切と考えます。私の目標は、インカムゲインで最低限の生計を立てられる状態がフィナンシャルゴールと設定していますが、現在は仕事の比重が重視される状況です。

・特定の企業や地域の個別要因により値下がりする影響を最小限に抑えることができる
長期での運用の中では何が起こるか分かりません。例えば、東京電力という会社は、2011年の東日本大震災を機に、超優良配当銘柄から一気に政府支援がないと存続できないクソ株となり、株価が1/10になりました。東日本大震災以前に、原発問題が顕在化すると本気で思っていた人はほとんどいないでしょう。
個別銘柄は、このように、時として激しいリスクの顕在化に直面することがあります。
特定の企業・国・地域という個別要因をなくすためには、分散投資により個別要因の影響を抑え、なるべく個別のニュースにあたふたしないでおくことが肝要となります。

・誰にでも実現可能で、長期(何年、何十年という期間)で続けるほど効果が出る可能性が高い
自分の投資先のファンダメンタルが長期で成長することが見込まれ、時間の経過とともにその成長が実現していけば、途中経過の上げ下げはあれ、インフレ率を超えた投資の成果(リターン)を享受することが出来る可能性は高いです。
これは、誰にでも出来る再現性のある方法で可能であり、特殊スキルは必要ありません。

<デメリット>
・他人を出し抜く高いリターンは望まない方がいい(数年や短い期間で投資額を数倍、数十倍にしたい人には向かない)
これは、メリットによるリスク分散の逆ですが、長期にわたるインデックス運用は安定運用を行うものである以上、個別株投資のように短期間や数年のうちに一財産を築くことは困難です。
世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏は、誰よりも長期志向ではありますが、個別企業への集中投資により財を成しています(ただし、バフェット氏ですら金融マーケットで他人を出し抜くことは容易ではなく一般人にはインデックスの分散投資を推奨しています)。
これは、アクティブ投資家が「インデックス投資は面白くない」と批判する理由でもあるかなと思います。ポートフォリオや投資法にもよりますが、バフェット氏は1990年から2012年まで年率平均19.7%の運用利回りを得ていますが、超長期でインデックス商品中心のグローバル分散投資で実現可能なリターンは、複利で3〜7%程度かなと推測しています。

・短期的には利回り以上の資産価格の変動がある(心理的に「長期」というのが長すぎるので利回りの実感が難しい)
長期グローバル分散投資というのは、5年単位・10年単位・何10年という長いスパンで投資の成果を上げていく運用手法です。
株式の期待リターンよりも変動率の方が大きく、10年で年率5%のリターンが出ても、そのプロセスでは年率の変動率は通常20〜40%程度生じます。そのため、長期で放置している過程では、必ず前の年よりも損をするという事態に直面します。
人間は、遠い将来よりも明日、明日より今日という、近視眼的に物を見る生き物なので、口では言えても、腹の底からは、なかなか「長期志向」にはなりきれません。
これにより、特に投資初心者は、パフォーマンスの悪い時期に耐えられなくなって離脱してしまい、うまくいかなくなるというパターンが発生します。積み立て投資をしている場合で、投資対象が間違っていないという前提ですが、マーケットが悪い時にこそ新規投資を継続すべきなのですが、目先の成果が出ないから止めてしまう、という行動が見られます。
逆に、現在のようなアベノミクスによる上げ相場は、あたかもどこまでも続くかのように、新規投資の参加者が増えることになります。
積み立て投資をするなら機械的に長期間やっていけばいいのですが、このような心理バイアスにより、長期に続けるのは意外と難しいということは実行面でのデメリットになります。

・マーケットが暴落すれば損をする(*リスク管理によりゲームオーバーを回避することが重要)
長期で買いポジションを持っていると、マーケットの暴落時には損失が発生します。こつこつと成果を上げていっても、マーケットの暴落時に換金ニーズがぶつかると、今までの成果は水泡に帰すことになります。
マーケットには金融ショックというものが定期的に訪れます。マーケットが良い時には、「金融システムの近代化により金融ショックは起きずらくなった」だの「時代は変わった」だのと喧伝されますが、過去、それが実現したことはありません。「時代は変わった」という論調が増えると、むしろバブルを疑うべきです。
せっかく長期に渡って資産形成を続けて行っても、換金するタイミングの出口で資産価格が暴落していたら元も子もありません。また、タイミングを間違えると、ゲームオーバーになる可能性があるので、ゲームオーバーは絶対に回避しないといけません。1番いけないのは、退職金の全額をいきなり投資商品に回す、というような行動です。
そのため、運用ポジションのリスク管理は怠ってはいけませんし、生活上の大きなキャッシュアウト(子どもの学校の入学金や住宅購入の頭金)が数年内に見込まれる場合は、早めにキャッシュを準備しておく必要があります。このようなリスク管理には一定の習熟度と金融リテラシーが必要なので、実務上の留意点として挙げておきます。


また、長期運用を志向すればするほど、金融商品のコストというのはリターンを下げる要因として重要になるので、低コストの商品(ETFやインデックス投信)を選択することが合理的です
相場感や商品選択眼に自信があれば、個別株やインデックス投信よりも手数料の高いアクティブ投信を買うことは構わないと思いますが、アクティブに動けば動くほど時間や手間の労力は増えますが、結局、凡人には長い目で低コストのインデックス運用よりも優れたリターンを再現性をもって出すことは容易ではないことを認識した上で、アクティブに動くことが良いでしょう。

【関連記事】
・2014/12/27 アベノミクスの行く末と、個人投資家としての中長期の投資スタンスを考える
http://money-learn.seesaa.net/article/411362434.html
・2014/12/23 モーニングスターETFカンファレンス2014に行ってきました。2015年の投資スタンスは「用心深く、楽観的に」(朝倉智也社長)で
http://money-learn.seesaa.net/article/411149960.html


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