2015年10月04日

おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1) アセットクラス別のリスク・リターンの計算と分析

資産運用では、アセットアロケーション(どのような資産配分で資産運用していくかを決めること)が大切だと言われます。
これは、どのような資産構成で資産運用していくかということを考えることで、投資タイミングやアセットクラス(投資対象)の中での銘柄選定よりも、何にどのように資産配分をしようかというアセットアロケーションをどう決めたかが資産運用の成果の測定での影響度が大きかったとするファイナンス分野のアカデミックな研究成果報告が根拠になっています。

確かに、私の資産運用の実務経験からしても、長期運用という観点からは、例えば日本株に投資をするとしたら、どのタイミングでどの銘柄に投資するかよりも、そもそも日本株に投資すべきかどうかや、資産全体のうちからどれくらいのリスクを日本株に取っていくべきか、ということを考える方がパフォーマンス上では重要なような感覚があります。

資産運用の実践の第一歩は、アセットアロケーション(資産配分)を考えること。
そして、定期的にポートフォリオを見直して、将来の自分の目標とする方向性からズレていないか、特定のリスクに偏りすぎていないかを検証し、メンテナンスを行っていくことです。

アセットアロケーション(資産配分)を考えるにはどうしたらいいでしょうか。
アセットクラス別のリスク・リターンや、自分の考えたアセットアロケーションによるポートフォリオのパフォーマンス推移の過去の実績はどうであったか?というのは、1つの手掛かりになるのではないかと思います。
しかし、個人投資家に向けて、十分にそのためのツールや情報がまだまだ足りないのではないか、とASK資産運用実践研究会は考えており、読者の皆さんの資産運用におけるアセットアロケーションを検討するために有用なツールを開発できないかと考え、本シリーズを企画しました。

○使用するベンチマーク等の前提条件
各アセットクラスの2001年以降取得可能な月次データの終値の増減により月次損益を算出し、年率換算により表示。外貨建ての指数は全て円換算後の値を使用。月次データを使用のため、年度ごとの年率換算の算出値は少々計算が粗い部分はあるかもしれません。
各アセットクラスのベンチマークとなる指数は、国内債券=野村BPI総合指数、国内株式=東証株価指数(配当込み)、外国債券=シティグループ世界国債指数(除く日本)、先進国株式=MSCIKOKUSAI指数、新興国株式=MSCI新興国株式指数、国内リート=S&P JapanREIT指数、外国リート=S&P DevelopedREIT指数、商品(コモディティ)=CRB指数、米国ハイイールド社債=Barclays US Corporate High Yield TR指数、新興国債券=JPGCCOMP指数、短期金利=無担保コール翌日物を使用しています。配当がある指数は配当込みを使用。為替ヘッジはなし。

○アセットクラス別のリターン(年間利回り)
まず、アセットクラス別の年別及び全期間の平均リターンです。大よそ、株式の方が債券よりもパフォーマンスが良く、また、日本及び海外REITも健闘していることが分かります。利回りが高くないが、実績で安定しているのは国内債券です。
アセットクラス別のリターン実績を見て分かる重要な視点は、毎年の利回りの変動は大きく、また、値の大小もバラバラで、事前に何が上がるかを予測することは難しそうだということ、毎年勝ち続けるものではなく上がる年もあれば下がる年もあるということです。ただし、10年以上の長い目で継続していけば、平均すると、投資したお金は成長しそうだ、ということです。
151010 アセットクラス別のリターン.jpg

○アセットクラス別のリスク(変動率)
資産運用の世界では、「リスク」というのはボラティリティ(変動率)の大きさを言います。これは標準偏差という計算方法で行います(計算の詳細は本稿では省略します)。
アセットクラス別のリスク(変動率)を見て分かる重要な視点は、株式・REITは債券よりも変動率が大きく、また、リターンの振れ幅に比べると、比較的一定の水準に収まっている、ということです。すなわち、リターンの値がどうなるかは事前に分からないし傾向を予測するのは難しいが、リスク(変動率)は大よそ想定できる、ということが読み取れます。
151010 アセットクラス別のリスク(標準偏差).jpg

標準偏差は、正規分布という形状により損益が発生することを前提に、大よそ1標準偏差は約68%、2標準偏差は約95%に収まると言われています。2標準偏差は95%なので、20年に1度程度、2標準偏差以上の損益の振れ幅があってもおかしくない、という解釈が出来ます。国内株式は全期間を通じての1標準偏差が17.9%、2標準偏差は35.78%(17.9%×2)という計算です。各アセットクラスの損益は、通常の場合で、2標準偏差はあり得る、と思っておけばいいでしょう。現実のマーケットは正規分布に従った損益が発生するわけではなく、正規分布で発生を想定する以上の確率で、特に損失側の事象が生じるということが過去の歴史からは明らかになっています。実務上は、統計的な標準偏差の数値を見るだけ以上に注意を払う必要があります。

○アセットクラス別のリスク・リターン表
リスクとリターンから、大よそどのくらいの価格変動がありそうかをビジュアルにしたのが下のグラフです。
μ(ミュー)は期待リターン、σ(シグマ)は標準偏差を指します。
シャープレシオは、リターンをリスクで割ったもので、リターン発生の安定度を図る尺度です。シャープレシオが1以上だと、前年の利益以上に年間の変動で損失が発生しずらいので安定的に儲かる、と言えますが、残念ながら通常1は超えません。株式よりも債券のシャープレシオが高いことが窺えます。
151010 アセットクラス別のリスク・リターン表.jpg

次回へ続く「おすすめのアセットアロケーションを考えよう(2) ポートフォリオのリスク分散効果ってなに?」







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2015年09月27日

「日本の投資家の皆さまが成功する投資家になるためのバンガードの4つの基本原則」(byバンガード)はインデックス投資のためのエッセンスが詰まっている良コンテンツ(何よりも無料!)

バンガードより、投資哲学がぎっしりと詰まった投資教育資料「日本の投資家の皆さまが成功する投資家になるためのバンガードの4つの基本原則」がリリースされました。(平成27年9月付)
「日本の投資家の皆さまが成功する投資家になるためのバンガードの4つの基本原則」を読む(PDF)

バンガードは、個人投資家向けインデックス商品の生みの親とも言えるジョン・C・ボーグル氏が設立した運用会社で、世界のETF運用会社御三家の1社です。
投資家への資産運用のコンセプトとして、「長期・分散・低コスト」を提唱し、それにふさわしい商品を提供していることで知られています。
日本のネット証券で最も買われている海外ETFのトップ3は全てバンガードが押さえています。
(参考)2015/8/8 海外ETFのネット証券大手3社の残高ランキング ダントツ1位はVTで残高299億円、上位20本の合計残高は1178億円
http://money-learn.seesaa.net/article/423812856.html

もとより、バンガードでは、「投資家の皆さまが成功する投資家になるためのバンガードの4つの基本原則」という冊子を公開していましたが、本書は、今般、内容を日本円と日本籍投信のデータを極力用いて日本人投資家向けカスタマイズしたのが趣旨のようです。旧版と内容自体に大きな変更はないようです。
ボリュームは本編が26頁ほどとコンパクトに、長期運用を学ぶための基本的必須事項が凝縮されています。
まだ読んでいなくてこれから読んでみようという方は、日本向けの同書を読むのが良いでしょう。
電車に乗りながらスマホで読めるようなボリュームで、無料コンテンツとしては非常にお勧めと言えます。

コンパクトな分、全くファイナンスの前提知識や投資経験がないと理解が難しいところはあるかもしれません。分からないところは流しながら、入門書も合わせて読んで実践に入っていけば良いでしょう。
重要なことは、シンプルなルールで始め、継続し、目標となる成果を出すことです。ルールを深く理解することが、長期的な継続への自信になり、結果へ結びつきます。
受け入りだけだと、途中で脱落してしまう可能性が高まります。人間、「分からないことを続ける」ことは大きなストレスだからです。さらに都合が悪いことに、人は長期的な先よりも目の前で起きていることに捉われやすいことも手伝い、得てしてマーケットが悪い時に諦めてしまう人が多いのは、このためです。
そういう意味でも、是非、多くの個人投資家(特に資産形成世代で長期運用の必要が高い方)が、本書を読んで、理解を深めて頂くと、本人にとってもハッピーなゴールになるかもしれませんし、ひいては金融リテラシーの向上が日本の資産運用サービスの健全な発展に繋がるものと思います。

・バンガードの4つの基本原則 〜「投資家の皆さまがコントロールできることに注力してください」〜
多くの人が、マーケットや経済、運用会社ランキング、個々の株式や運用戦略のパフォーマンスといった、本来コントロールすることのできない要素に目を向けがちで、見過ごされがちな、投資で成功するために最良の機会をもたらす不朽の基本原則が下記の4点として挙げられています。
目標(明確で適切な投資目標の設定)
バランス(幅広く分散しているファンドに投資し、適切な資産配分を)
コスト(コストの最小化)
規律(規律ある長期的な視点を)


詳細はコンテンツを読めばいいのですが、私自身の理解の整理のため、重要だと思った要点をピックアップしてみました。

・目標(明確で適切な投資目標の設定)
適切で、達成可能な目標を定めることが重要。長期の投資計画がないと、投信格付けといった一時的な要因に左右され、「高値づかみ・安値売り」といった非効率な投 資に陥る可能性が高まる。
どれくらいのリスクを取るか認識する→具体的で達成可能な投資額と、ポートフォリオを見直す時期や頻度を決めるというのが正しい手順。リターンから追わない。

基本的な投資計画例で考えること(p3に計画例があり)
・目的
・前提条件や制約
・貯蓄や拠出額の目標
・資産配分の目標
・補完する資産クラスの エクスポージャー
・パッシブかアクティブか
・リバランスの方法
・確認方法

知っておくべき事実(図表やグラフあり)
・好成績を維持出来るファンドは少ない(p5)
・投資信託への資金流入はパフォーマンスの後追いである(p5)

・バランス(幅広く分散しているファンドに投資し、適切な資産配分を)
アセットアロケーションは、合理的なリスクとリターンの予測に基づいて決定する必要があり、資産を不必要なリスクから守るために、分散させる必要がある。
株式や債券、その他の投資対象の組入れ割合によって、そのポートフォリオのリター ンとボラティリティ(変動性)はほぼ決まる。ボラティリティや短期的な損失をおそれるあまり、株式への投資を最小限に抑えると、 インフレに対応できない、また、投資目標に到達できないといった他のリスクが生じる可能性がある。
アセットアロケーション(資産配分)の決定にどのような前提条件を用いるかということは、ポートフォリオの資産の組み合せと同じくらい重要。
ある特定の時点でのマーケット環境が、投資家のリターンに大きなプラスやマイナスになりうる。長期的な過去の実績データを分析することで、ある程度リターンを予測することは可能だが、同時に、マーケットは常に循環しているので、ある一定のリターンを前提とするのは 非現実的である。
損失に対する保険をかけることにはならないが、必要以上に大きな損失を防ぐことには役立つ。

なぜ分散なのか?
トップパフォーマー銘柄は、絶えず、そして素早く入れ替わり、事前に当てることは困難である。

投資をしないことのリスク
・機会費用 ・・マーケットで利益を上げられる機会 があるのに、何もしないことによって生じる損失。
・インフレリスク ・・インフレ経済では、投資家は長期的に購買力を失う可能性がある。

知っておくべき事実
・株と債券の組み合わせ比率の違いが運用成果に違いをもたらす(p8)
・投資カテゴリーごとの年率リターンには規則性がない(市場のベスト・パフォーマーは不規則に毎年変わる)(p12)

・コスト(コストの最小化)
マーケットは予測不可能で投資家がコントロール不能だが、コストは常に発生しコントロール可能な要素である。投資コストが低ければ低いほど、リターンに対する投資家の手元に残るお金は増える。学術的な調査によると、低コストの投資は高コストの投資をアウトパフォームする傾向があると指摘されている。
特に2%を超える高い信託報酬のファ ンドが高いリターンをあげる可能性は非常に低いことがデータからも明らかである。

知っておくべき事実
・投資の年間コストの大小がポートフォリオ残高に与える長期的な影響(p16)
・コストが高いと運用結果は悪化することがパフォーマンスに対する影響を検証した様々な調査により立証されている(p18)

*ファンドラップのコストはどうなのでしょうか?(笑)
(参考)2015/9/22 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その3)http://money-learn.seesaa.net/article/426530132.html

・規律(規律ある長期的な視点を)
自制心と長期的な視点を持ち続けることで、たとえマーケッ トが不安定なときでも、投資家は投資目標の達成に向けて、焦点を定めることができるようになる。
アセットアロケーションの決定は、目標を達成するための重要な礎の一つであると同時に、時間の経過に伴い、資産の比率が変わった場合、投資目的達成のために設定した当初の資産配分へと戻すには、定期的なリバランス が必須。ジャコネッティ、キニリおよびズィルベリングは2010年の論文で、最も幅広く分 散投資されたポートフォリオの資産配分を毎年または半年ごとに確認し、当初の配分目標から5 パーセント以上乖離した場合はリバランスする必要がある、と結論づけている。
ファイナンスの学術研究では、アクティブ運用のファンドが常にベンチマークをアウトパフォームし続けるのは極めて困難であることが示されている。

定期的なリバランスを通じて、ポートフォリオのリスクを管理することができる。
ポートフォリオの見直しを怠ると、大きな損失を被る場合がある。
マーケットを出し抜こうとすると、たいてい損失につながる。

知っておくべき事実
・規律を維持することの重要性:リバランスを怠ると、投資家は意図しないリスクにさらされることがある(p21)
・規律を維持することの重要性:市場の変動に反応してしまうと、マーケットの後追いをしてしまう結果、リターンを損なうことがある(p22)
・トップ・パフォーマーはすぐに変わる(p25)
・貯蓄率・資産運用への拠出率(拠出額)を増やすと目標資産額達成までの年限が短縮される(p26)

・「市場が乱高下しているとき、何をすべきか?それは「何もしない」こと
加えて、2015年8月の株価下落に際して、2015年9月1日付では、バンガードCEOビル・マクナブ氏からのメッセージが出されています。
・バンガードCEOビル・マクナブからのメッセージ
https://www.vanguardjapan.co.jp/retail/articles/resources-learning/saving-investing/what-to-do-about-market-volatility.htm

ここでは、市場の熱狂を上手く切り抜けるためのシンプルなルールが言及されています。
第1のルール:ボラティリティと周期的な調整は株式市場ではよくあることであると認識すること。
第2のルール:雑音を消して、投資から感情を追い払うこと。
第3のルール:ボラティリティを味方にすること。
「何もしない」という計画を立てること。(ポートフォリオが既に広く分散されていて、投資家の投資目標、投資期間、リスク許容水準にとって適切なバランスがとれているのであれば、それを堅持することが賢い選択である)

*わりと、私も本質的には近いような考えかなと思います。
(参考)2015/8/25 日経平均下落や世界同時株安に長期投資家はどう対処すべきか
http://money-learn.seesaa.net/article/424782159.html

・まとめと感想
読んでいるとピックアップの箇所が多くなってしまい、長くなってしまいました。。
いわゆるインデックス投資(こつこつ積み立てながら長期志向でインデックス投信やETFによるグローバル分散投資を行う方法)のエッセンスが詰まっています。
目標を持つことと、規律が大事、というのは、重要であるものの、この大事さは、実際にやっていかなければ深く分かるようにならないし身に付かない、という要素ではあるのですが、客観的な現状把握に則った「目標設定」が全ての根幹ではあります。
また、バンガードの原則はシンプルで誰でもやりやすい方法ではありますが、知っておくべき事実をファクトとして理解し、ここにあるような原則はしっかりと知りつつ、あとは好みで自分の型を作っていけば良いのだと私は思います。資産運用の正解は、自分の目標に達することが出来るかどうかだけで、投資法がインデックス運用でもアクティブ運用でも、そこに善悪はありません。(パフォーマンスの低い高コスト商品は投資家にとって「悪い」と言えますが)

あとは、具体的なアセットアロケーションの方法論、商品選択、ネット証券の使い方、税金(特定口座を使えば基本は不要)などの理解を徐々に深めていけば良いでしょう。

【関連記事】
・2015/9/12 「やり直し相場ではじめるETF超入門」週刊東洋経済(2015年9月19日号)を読み解く
http://money-learn.seesaa.net/article/425852864.html
・2015/7/25 [感想・書評]全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド 山崎元 水瀬ケンイチ/著
http://money-learn.seesaa.net/article/423002177.html
・2010/12/31 ウォール街のランダム・ウォーカー 株式投資の不滅の真理 バートン・マルキール/著 井手正介/訳
http://money-learn.seesaa.net/article/177621542.html






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