2013年03月15日

MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み(若林計志/著)を読みました。

MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み(若林計志/著)を読みました。

本書は組織をどうやってマネージメントするかということを体系的に記した本です。
書いてある内容は、ビジネスマンとしての経験があれば身に染みて分かっていることだと思います。
20代半ばくらいの若手ビジネスマンや、マネジメント層の方であっても、組織設計をどうするかに悩んでいて改めて体系的に考え直したいときにはヒントが得られるかもしれません。
人に効果的に動いてもらうということは大変で、やりがいをどう生み出すか、目標設定をどうするか、プロセスをどう評価するか、などなどの諸要素の組み合わせを効果的に考える必要がありますし、組織が大きくなればなるほど組織設計は重要です。

会社のビジョンを明確に定め、そのビジョンの実現に合った組織設計をして、個々人の業績評価にマッチした
リクルーティングはビジョンを共有できる人にフォーカスをする、というのをうまくやらないと強い組織は出来ないと思いますが、きちんと一気通貫に出来ていて、さらに浸透している会社は意外と多くないのではないでしょうか。
中にはビジョンと組織風土が全くちぐはぐだったりします。

ビジネスの成否は、戦略やビジネスモデルよりも、大事なのは実行(オペレーション)。
「何をやるか」ではなく「誰がやるか」が重要であるという側面があります。

本書の特長は、体系立って構成されているので、経験があれば書いてあること自体は「分かっていること」ですが、噛んで読むとなかなか味わい深いと思いました。

MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み (PHPビジネス新書)
若林 計志
PHP研究所
売り上げランキング: 6,034

初版発行日 2013年3月4日
全220ページ ・新書

著者の若林計志氏は、大前研一さんのビジネス・ブレークスルーで、海外オンラインMBAプログラムの設立、大前研一教授の「経営戦略」のティーチングアシスタントなどを担当とのことです。

本書は、戦略を実行に落とし込む際のマネジメントについてで、3つのマネジメントコントロールに分けて、何を重視すべきかはビジネスの内容や企業ステージによって異なるわけですが、それぞれのプラス面・マイナス面をピックアップして、3つのマネジメントコントロールを最適に配分するためのポイントを解説しています。
3つのマネジメントコントロールは、
・行動コントロール(マニュアルに従っているかといった行動を管理する)
・結果コントロール(定めたKPIの達成を評価し、KPIを達成する方法は各人に任せる)
・環境コントロール(組織の文化をつくる経営理念や雰囲気を提供する)
という要素に整理がされています。




*本書はレビュープラス様より献本して頂きました。ありがとうございました。
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2013年03月04日

[書評]統計学が最強の学問である 西内啓/著

個人的には勉強になったし、大変面白かった。

本書は、統計学の入門書等の類というよりは、統計学というものそのものについての物語です。
無味乾燥な統計手法をひたすら解説しているのではなく、いかに統計という手法をもって、ビジネスの役に立てたり、社会的に有益な知見を探り出すかという「統計の使い方」「統計では何が分かって何が分からないのか」について解説がされています。
統計学を学んだことがあるが、使い方があまり身に付いていない方や、統計的な素養である統計リテラシーを身に着けたい方が、モチベーションを上げるのには良い本であると思います。また、統計に限らず、このように、統計学というものを分かりやすく解説するというよりも、統計というツールを用いて実際にどう役立てていくのか、というのを興味をひく構成で伝えるというのはバリューがあると思います。

なお、私は、あまり統計リテラシーが高いわけではありません。
高校や大学の頃に確率・統計はやっていないし、中学レベルの確率も、ぶっちゃけ、未だによく分かっていないレベルです。資産運用やビジネスに役立てるために統計スキルは必要だと思い、1年半ほど前から少し勉強したりかじったりしている程度です。

冒頭の1/3くらいはいかに統計というツールを使ってビジネスや実生活に役立てれば良いかという内容で、全くの統計初心者で問題ありませんし、取っ付きやすい内容になっています。
本書の真ん中へんは、統計学の歴史とともに、フィッシャーのランダム化比較実験についてや、回帰分析という手法についてです。一応基本的なところから説明はされていますが、全く統計を勉強したことがない、回帰分析をしたことがない、という方には読解が難しいかもしれません。一応かじった私のレベルで、本質にどこまで近づいて理解しているかはともかく、書いてある内容は何とか分かった、というのが感想です。
個人的には、後半の「統計学の6つの分野」が知らない話も多くて大変面白かったです。オーバーオールに統計学が各分野でどのように応用されているのか、というのが分かります。
6つの特徴的な分野:
@ 実態把握を行う社会調査法
A 原因究明のための疫学・生物統計学
B 抽象的なものを測定する心理統計学
C 機械的分類のためのデータマイニング
D 自然言語処理のためのテキストマイニング
E 演繹に関心をよせる計量経済学

あとがきの、外科医の父親が睡眠時間を削ってまで働いている姿を見て、「全力」と「最前」の違いを考えるくだりも大変良かったです。

統計学が最強の学問である
西内 啓
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 44

初版発行日 2013年1月24日
全304ページ ・ソフトカバー

著者は、疫学研究の専門家であるので、疫学(病気や感染症など)での例えで使用されているところも多くあります。
個人的には、ファイナンスや経済で例示された内容の方が理解しやすかったのですが、逆に、全く知らない分野での例えでの話も多かったため、好奇心が広がって良かったとも思いました。

統計学が学問の中で最強であるかどうかは、身体の中でどこが1番大切であるかといったような話なので、それは置いておくとしても、タイトルの付け方は十分に目を引くもので上手だなと思いました。本の装丁も私好みです。なお、統計学が最強というのは、「どんな分野の議論においても、データを集めて分析することで最速で最善の答えを出すことができるから」であるからのようです。




著者の西内啓氏は、統計に関する素養の高い東京大学医学部卒(生物統計学専攻)で、東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ ハーバード がん研究センター客員研究員を経て、現在はデータに基いて社会にイノベーションを起こすための様々なプロジェクトにおいて調査、分析、システム開発および戦略立案をコンサルティングをされているということ。
本書は、定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes(ケイクス)」にて連載した原稿をまとめたものであるということです。
cakesの元ページ「統計学が最強の学問である」
https://cakes.mu/series/80
*cakesは定額課金(週150円)の有料コンテンツサイトです。このプラットフォームを通じて、同書のような書籍が多く出ていくようなら、週150円もリーズナブルなのかもしれませんね。それでも紙書籍でまとまった形で読む方が読みやすいですが、書籍化にcakes購読者特典みたいなものがあると良いように思いました。

IT化の進展やデータ量の増大に伴って「ビッグデータ」というキーワードが流行になっていますし、今後、統計解析の結果を読み解くための統計リテラシーの重要性はますます高まっていくのではないでしょうか。
ビジネスにおける複雑な事象の意思決定の是非は最終的には直観で決まることもありますから、統計的に物事を捉えることのみをもってビジネスを成功に結び付けるとは限らないとは思いますが、ファクトとロジックでもって客観的に情報を分析したり、明らかに間違った判断を避けるには、統計のスキルを持っていることは大きな武器になります。あと、他人の分析を見たときに、おかしな点や、相手が意図的かどうかはともかく、騙されたり、ミスリーディングに誘導されないようにするのにも役立ちます。
統計は、資産運用やIT・ネットビジネスとの親和性がとても高い分野です。
今後も、継続的に統計リテラシーを高めるよう励んで行こうと思います。

【参考】
ソフトバンクビジネス×IT :【西内啓氏インタビュー】日本が「統計先進国」に返り咲くための処方箋
http://www.sbbit.jp/article/cont1/25983

本書の目次は以下の通りです。続きは下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい(トップ画面からご覧の場合)。続きを読む
posted by ASK at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 本の紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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