2016年06月29日

Brexit(ブレグジット)ショックと僕の運用方針・投資行動は何か変わったか、長期投資家はマーケット変動にどう付き合うか

「Brexit(ブレグジット)」により、僕の長期志向でのグローバル分散投資の運用方針には特別な変更は必要ないと考えているが、少しながら投資行動が発生した。
イギリスのEU離脱問題での投資方針と僕の投資行動についての考え方を整理してみたいと思う。

2016年6月24日(金)のイギリスのEU離脱か残留かの国民投票の結果、「Brexit(ブレグジット)」(Britain(英国)とExit(退出する)を組み合わせた造語)が現実化する結果になり、世界中の金融市場が大いに動揺した。
離脱(Leave)か残留(Remain)か、ほぼ同数の投票結果が24日の昼前(日本時間)にどうやら離脱になりそうだと伝わると、24日の昼から午後にかけ、震源地のイギリス通過のポンドは対ドルで一時10%以上下落し、ポンド/円は150円台から130円台へ一気に真っ逆さまになった。
円高も進み、ドル/円で103円程から100円割れまで円高が進み、日経平均も1286円下落し、下落率はマイナス7.92%で、歴代9位の下げ率を記録した。
イギリスのEU離脱が決まれば、このようになるだろうという大よその予想通りにマーケットは暴落し、残留に賭けていた投資家を葬った。

今回のBrexit(ブレグジット)騒動はなかなか興味深いものだ。
イギリス自身もEU各国との自由で円滑な貿易で経済的な恩恵を受けるし、金融機関を始め多くの海外企業がEUとのハブでヨーロッパ現地法人をロンドン等に置きイギリスで経済活動を行っていて、イギリス経済はEU加盟の恩恵を受けている。実際にイギリスのGDPに少なくないマイナスの影響があることは多くの調査機関等が事前に予測していた。国家全体の経済合理性では離脱はあり得ない判断になる。
一方で、EUに加盟していると守らなくてはいけない膨大なルールには嫌気が差すし、EUに入っていると当てがわれ受け入れないといけない押し寄せる難民のせいで雇用が奪われているではないかという声、都市部と地方での経済格差といった不満や、自分たちの手でイギリスに主権を取り戻すんだという扇動的なPRが功を奏し、投票した過半数のイギリス国民が離脱(Leave)に票を投じた。
人間、国がどうなろうと大事なのは目先の自分の暮らしだ。自分の努力は棚に上げて、生活が苦しいのは他人のせいにしたいものだ。

EU離脱か残留かの事前予想が本当に半々だったり調査機関によっても異なるし、どっちに転ぶか分からないということで、金融マーケットは、どちらに決まっても大きく変動することだけが明らかだった。あのジョージ・ソロスのイギリスのEU離脱が決まれば大変なことになると不吉な予言も伝えられていた。
投票前の数日間で、マーケットの予想は、どちらかというと残留寄りに傾いていた。
投資家は、イギリス人も経済合理性で考えないほどバカじゃないだろうと思っていたし、投票日の1週間ほど前に熱心に残留を説いていたジョー・コックス議員が殺されたこともありイギリス人もセンチメンタルに離脱票を投じる動きも減るだろうと思っていた。

大きなマーケット変動のイベントはふいに襲ってくることが多い。今回は政治要因ということもあり、珍しくイベント日時が決まっていた。
残留に決まれば、離脱懸念払しょくにより、グローバルに株高、ポンド高、多分円安。残留を折り込みつつあったので、影響はそんなに大きくないだろう。
離脱に決まれば、残留を折り込みつつあったマーケットは大いに動揺し、グローバルに大幅株安、ポンド暴落、ドル/円は円高が進行することだろう。
そもそもなぜイギリスで起きることがドル/円を大きく円高に動かす材料になるのかは本当のところは誰にもよく分からないだろうが、離脱になれば、マーケットの不確実性が増すので「リスク回避の円買い」(海外投資家が円資産を引き揚げたり、日本国内投資家が海外資金を国内に引き揚げる動きと、煙に巻くような説明がよくされる)とか、米国利上げが遠のくので円に対してドルが弱くなる(震源地のユーロやポンドに対しては強くなる)、というような解説がされることが多い。実際の影響がどうというより、日々のボラティリティで勝負しているトレーダーの多くがどう思っているかがマーケットを動かすには重要な要因となる。

資産運用は長期投資をメインにしている僕は、どう考えたか。
まず、あらゆる情報から総合的には、残留・離脱はほぼ五分五分であり、投票が実際に行われるまで分からない。
残留に決まれば、既存のポートフォリオで利益が出るのでよし。
離脱に決まれば、既存のポートフォリオは損が出るがボラティリティの想定内であるので売却等はする気はないし必要もない。大暴落が起きれば手元キャッシュの追加投資のチャンスかもしれない。
イベントの日時は分かっているのだから、とりあえず、少し気にしておこうか、と思っていた。

離脱が決まり、確かにショックは起きたが、ただ、リーマン・ショックのような「大暴落」にまでは至らないんじゃないかと思う。
イギリス経済はGDP300兆円ほどで、アメリカ、中国、日本、ドイツに次ぐ世界5番目に大きな経済規模があり、イギリス経済が痛めば世界経済にも悪影響が及ぶことだろう。
ただ、実際のEU離脱の手続きには何年も掛かる。国民投票には法的拘束力もないし、実際にどのような条件決めや話し合いがされていくかは難しい調整が行われるのだから、すごい先のことだろう。従って、イギリス固有の事情としては経済的ダメージは大きいかもしれないが、経済的果実は他のところへ分散されて吸収されていくことだろう。EU離脱が実行されるまでの何年かの間に、ロンドンを欧州拠点にした企業は引き揚げていき、他の国に移っていくことだろう。
これから起きることにクリティカルなことがなければ、何年かしたら、「そういえばイギリスのEU離脱ってどうなったんだっけ?え、まだEUに残ってるの?」というような影響度なんじゃないか。

投票から3日経った今では、マーケットも少しずつ落ち着きを取り戻しつつあるように見える。
問題は、「Brexit(ブレグジット)」の問題の波及の影響ではないかと思う。EUに不満を持つ国民がいるのはイギリスだけではないので、今後、どのタイミングでどのような影響があるイベントが起きるかが分からない。
何しろ国民の半分は残留が良いと思っているわけでイギリスでも本当にEU離脱して良いのかという物議も大きくなって混乱も増大するかもしれないし、イギリスに次ぐ世界6位のフランスを始め国内のEU離脱分子がいる他の国々が騒ぎ出すかもしれないし、ドイツ・イギリス・フランスの強国で成り立っていたEUのパワーバランスに変化が起きることは必至だろう。
特にユーロに加盟している国ではもっとマーケットには大事かもしれない。
EU分裂・ユーロ崩壊、というシナリオも絶対ないとは言えない。

国民投票はやっぱりどうなるか分からない。
アメリカ大統領選挙では、本当にトランプ大統領が誕生するのではないか、そうなったら何をしでかすか分からないという問題もスポットライトを浴びてくるかもしれない。

これらの問題を受けて、各国の中央銀行や政府がどのような政策をいつ投入してくるかも分からない。
日銀も追加緩和の良い材料にはなったんじゃないかと思うが、そろそろネタ切れのところ、どう出てくるか。

長期投資家としては、このようなマーケットの変動は大らかで広い心で受容し、ここぞという時に備え、ここぞがあれば買い増しに動くだけだ。
今のところ、今回は残念ながら「ここぞ」ではないかなと思っている。
僕の投資行動としては、投票日の前日に久しぶりに証券口座を開いたら確認書類が溜まってて、うざいなーと思いながら、証券口座を開けたついでに長期投資から外そうと思っている日経平均インデックスの一部を外し(結果的には全部が正解だったがどうなるかは分からない)、離脱の結果が出て株が下がったのでアロケーションを増やそうと思っていた米国株式を少し買い増した、というくらいだ。
追加的なイベント発生等でお遊びトレーディングもあるかもしれないが、今のところは大きな動きはしなさそうだ。もう少し僕の目に離脱が見えていれば、プットオプションの1枚でも仕込んでおけば面白かったところだったが、マーケットは難しい。
個々のイベントに一喜一憂せず、長期的な目標から外さないよう、大損を避けながら、冷静・淡々と、合理的な振る舞いを続けていけば良い。

最後に、リスク許容度を超えてEU残留に張って退場になった投資家がいらっしゃいましたら、心よりお悔やみ申し上げます。

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