2016年03月20日

映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を観てきた感想

映画「マネー・ショート 華麗なる大逆転」を観てきた。
公式サイト: http://www.moneyshort.jp/
160320 マネー・ショート 華麗なる大逆転.JPG

「マネー・ショート」は、サブプライム危機が起きるのを事前に察知し大儲けした投資家たちを追った「世紀の空売り」を映画化したもの。原題は「The Big Short」。


リーマン・ショックの原因となったサブプライム・ローンと呼ばれる低所得で信用力の低い人たちへの住宅ローンをまとめて証券化した金融商品(MBS)が、皆が「住宅市場はずっと右肩上がりで堅調だ」と信じていた中で、あまりにもクソなローン債権がパッケージされ、高い信用格付けを得て、投資家に販売されていた。サブプライム・ローンは家を担保にして、住宅価格が右肩上がりであるので、住宅自体を売却すればローンは回収できる、という前提で、本来ローンの返済が出来ない人へどんどん貸し出されていった。そういった借り手たちは、どうしようもない低所得者たちだった。映画では、犬の名前でローンを借りているいかにもみすぼらしい黒人や、下品なストリッパーが出てきて、ローンの契約条件なんてまるで分かってないし、ローンを返せるかどうかもまるで分かってないことや、現場のローン斡旋会社は借り手の信用力を無視して自分たちの成績のためにどんどん貸していく様子が出てくる。投資家は「バブルだ」と確信する。
さらに、サブプライム・ローンは現場を知らない投資銀行で数学が出来る人たちの計算で、まとめられて、デフォルトによる損失負担順位をトランシェ(階層)に切り分けられ、利回りを求める世界中の投資家にバラまかれていった。ローンが、まとめられ、切り分けられていくことによって、どの債権の実質的なリスク負担者がどうなっていくか誰にも分からなくなっていき、さらに、バーチャルなCDO(債務担保証券)などという商品等に転嫁されていって、どんどん膨らんでいった。
住宅市場がバブルで、サブプライム・ローンは焦げ付くに違いない、そうするとサブプライム・ローン債権をパッケージにした金融商品の価値はなくなる。つまり、もしバブルでいつかは破綻するであろうということを事前に察知していれば、「空売り(ショート)」すれば大儲けすることが出来る。
サブプライム・ローンをパッケージした金融商品自体は市場性もなく空売りが出来ない。そこで、投資家たちが目に付けたのは、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を買うこと。CDSは、債権がデフォルトした際に額面(元本)をもらえる代わりに毎年一定の料率の手数料(保険料)を支払うというもの。デフォルト確率が上がっていけば元本がもらえる確率が上がるため、CDSの契約保有者の契約の価値が上がることになり、契約価値が上がったところで売れば儲けることが出来る。CDSは、通常は、債権保有者がデフォルト時の損失をカバーするために保険として購入するものだが、債権を持たずにCDSを買えば、その債権のショートポジションを持つことになる。
CDSの売り手は、サブプライム関連商品を売りまくっていた投資銀行で、投資銀行を相手方としてCDSを買うことになる。映画でも、ゴールドマン・サックス、ドイチェ証券、ベア・スターンズ、JPモルガンといった投資銀行の会議室でCDS契約をするシーンが出てくる。投資銀行の金融マンたちがCDSを売る時に、「安全」な住宅ローンのCDSを買うなんてまるで理解できない、保険料が儲けものだ、という様子で契約を締結する。
詳しい解説は、「世紀の空売り」を読むとよく分かる。同時期の「史上最大のボロ儲け」も同じような内容の本があり、本ブログでも当時紹介している。
(参考リンク)
2010/12/28 世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち マイケル・ルイス/著 東江一紀/訳
2010/12/24 史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか グレゴリー・ザッカーマン/著 山田美明/訳

世紀の空売りは文庫本も出ている。
世紀の空売り―世界経済の破綻に賭けた男たち (文春文庫)
マイケル・ルイス
文藝春秋 (2013-03-08)
売り上げランキング: 218


映画は、実話をもとにしたドキュメンタリーといったまとめ方になっている。
何人かの金融関係者が「マネー・ショート」を観てきたというSNSでの事前情報では、一様に「面白かったけど用語の意味とか仕組みが分かってないとよく理解できないのでは」という感想だったが、そうかもしれない。
個人的には楽しめた。「世紀の空売り」を読んで面白かったという人は映像で見る楽しさがあるし、金融ビジネスに興味がある人には面白いと思う。大儲けして派手に騒いだりということもなく意外と真面目な内容になっていて、映像的には、そんな派手なシーンがあるわけでもなく、映画館で見る必要があるかどうか、後日DVDで観ればいいかも、という気はしなくはない。
サブプライム・ローンをパッケージしたMBSや、サブプライム・ローンを加工したCDO(債務担保証券)などは、バスタブに入った美女が語ったり、料理人が料理に例えたり、カジノゲームに例えたり、途中で趣向をこらした短時間の解説が入る。まあ。その解説が分かりやすいわけでもないけど(笑)。

登場人物は皆、個性的で面白い。
サイオン・キャピタルという自分のファンドを運用するマイケル・バーリ(クリスチャン・ベール)、JPモルガン参加のヘッジファンド・マネージャーのマーク・バウム(スティーブ・カレル)、変わり者でサブプライムのショートに賭けたドイチェ証券の投資銀行マンのジャレド・ベネット(ライアン・ゴズリング)、11万ドルを3000万ドルにしたという大学生のような年齢の個人投資家にCDSを買うためにISDA同意書を協力をする元金融マンのベン・リカート(ブラッド・ピット)ら豪華俳優陣が登場する。ISDAとは、大きな取引をするのに必要なライセンスらしい。
これらの登場人物が同じ時間軸で、それぞれの動きを追った構成になっている。住宅ローン市場がバブルと気付き、CDSを買っていく。途中、読み通りにデフォルトが増えているのにCDSの価格が上がらず当惑する様子。そして、サブプライム危機、リーマンショックが起きて、ついにCDSが莫大な利益をもたらす。儲かったところのシーンは意外とあっけない。
誰もが堅調だと思っている住宅市場の逆に賭けるマイケル・バーリが途中でファンド出資者の投資家に詰め寄られたり賛同を得られないシーンもなかなか見ごたえがあった。

最後に、字幕のテロップで、2015年に銀行が凝りもせず新たなハイリスクデリバティブ商品の販売を始めた、というのが出てくる。これは、具体的に何だか分からなかった。
また、マイケル・バーリはファンドは解散し、(恐らく個人資産を)小規模に運用していて、今の投資対象は「水」だと出てくる。「水」って何だ。少し気になる。

全体的には、こういう金融映画に興味がある人には面白いし、ない人にはつまらない映画でしょう(笑)。

また、個人的には、いつか、何かのタイミングで、ディープ・アウト・オブ・ザ・マネーのプットオプションを仕込めるなら仕込むことには興味がある。現時点で具体的な投資アイデアはないし、投資対象も見出してはいないが、何かないか、ということにはアンテナを立てておきたいと思っている。
この投資法は、一定の支払の損失は発生するが、場合によってはもし起こった時には莫大な儲けが期待できるため、私は勝手に「宝くじポジション」と呼んでいる。
「宝くじポジション」は悪くない。ただ、人生は短いので、人生の中で数回はある頻度のオポチュニティーに賭けなくてはならない、ということには注意を払わないといけない。もし、そのオポチュニティーが決まれば、「一生ものの儲け」の可能性があり、損失が限定される範囲内なら、悪くない。
宝くじは、1等を当てるためには人生何回過ごさないといけないか分からないので、宝くじを買い続けることは現実的ではないが、歴史は繰り返すのであれば、金融危機は人生で何度かはやってくる。
【参考】2015/5/4 宝くじを買うことは経済合理的に正しい事である2つの理由【宝くじの経済学】






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