前回までに、アセットクラス別のリターン、リスク(変動率)の実績と、ポートフォリオのリスク分散効果を理解するためのアセットクラス間のリターンの相関係数の意味合いについて解説してきました。
ここで、実際の過去実績データに基づくアセットクラス間のリターンの相関係数を計算してみました。
データは2001年初〜2014年末までの各アセットクラスの月次リターン(円建)に基づき算出しています。
*アセットクラス毎に使用しているベンチマークの指数は「おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1)」にて記載しています。
相関係数は、相関関係の強さ(ここではアセットクラス間の値動きの連動の度合い)を下記のように示すと言われています。
0.0〜±0.2 ほとんど相関がない
±0.2〜±0.4 やや相関がある
±0.4〜±0.7 相関がある
±0.7〜±0.9 強い相関がある
相関係数が「より1に近いほど,直線性がある」(ex. 資産Aが1%上昇した場合に資産Bも1%上昇する)と言え、「0に近ければ,直線的な傾向がない」と言えます。
実務上で重要で注意すべき点は、相関関係はあくまで「そうなりやすいという傾向」であり、相関関係があることは因果関係があることではない、ということです。相関係数が0.5で相関があると言っても、必ずしも同じ方向に値動きするわけではありません。データの見た目に惑わされないよう、これはしっかり覚えておきましょう。
表を見ると、アセットクラス間のリターンの相関係数は概ねプラスであるということが分かります。唯一、相関係数が負になる組み合わせは、国内債券のみとなります。これは、過去実績を見る限りでは、例えば、日本株(国内株式)が下落した場合に、国内債券は上昇する傾向があった、ということです。「債券を保有することは株式の下落に対するヘッジになる」という説明を多く見ますが、このような根拠があるわけです。
リーマン・ショックのあった2008年、各アセットクラスは大幅な下落率となりましたが、国内債券はプラス3.4%を確保し、米国債はドル建てで13.3%というむしろ良好なパフォーマンスでした。ただし、2008年は。円高の進行により、米国債は円建てではマイナスリターンとなっています。
(ポートフォリオに債券を組み込むべきかどうか、私の個人的見解はまた別途論じたいと思います。)
相関係数を見る上で、もう1つ注意すべき重要なポイントがあります。
近年、グローバル金融市場のアクセスが容易になり一斉に資金が流出入しやすくなりアセットクラス間で同じような値動きをするようになったと言われています。特にリーマン・ショック後においては、世界の投資家がリスクに敏感になり、グローバルなリスクオン/オフと呼ばれる投資家行動により、投資家心理が改善しリスク許容度が高まると、株式などのリスク資産が一斉に買われ(同時に円安になりやすく、相対的に低金利かつ安全通貨とみられている円が売られると説明されることが多い)、逆に、投資家心理が悪化し、リスク回避姿勢が強まると、株式などのリスク資産が売られ(同時に円高になりやすい)、安全な国の債券等が買われやすい、という状況が起きています。
ここで、国内株式と主要なアセットクラス(J-REIT。国内債券。先進国株式。新興国株式。円ドル為替)の過去24ヶ月の月次利回りの相関係数の推移を取ってみました。
確かに、リーマン・ショック後に2009年以降から、相関係数は高い水準に寄っているように見えます。外貨資産は円建てなので、国内株式は円安になると上がりやすく、円高になると下がりやすい、為替の影響も受けています。
国内債券は、国内株式との低い相関が維持されています。
このことから、アセットクラス間の値動きの相関の高まりによりポートフォリオのリスク分散効果が低減する時代になってきている、ということが分かります。
分散投資すればリスク(変動率)が緩和されるのだ、と安易に考えるのはいかん、ということです。
とは言え、長期的にグローバル分散投資で着実に利益を上げようするときに、どのアセットクラスがどの年に勝って利回りが良いかというのを事前に予測して当てるのはやはり簡単ではありませんから、分散投資をしなくていい、というものでもありません。
次回(自分のアセットアロケーションの損益ってどうなの?という検証ツール@(一括投資の場合) おすすめのアセットアロケーションを考えよう(4))に続く
【おすすめのアセットアロケーションを考えようシリーズ】
・2015/10/5 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1) アセットクラス別のリスク・リターンの計算と分析
http://money-learn.seesaa.net/article/427190162.html
・2015/10/10 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(2) ポートフォリオのリスク分散効果ってなに?
http://money-learn.seesaa.net/article/427594244.html
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ラベル:アセットアロケーション 相関係数
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私は現在、内外株式アセット+BNDのポートフォリオを保有していますが、貴記事によると株式アセットと米国債との相関関係が低いことを知り、BNDを保有する意義をひとつ見出し参考となりました。米国の利上げを心配する向きもありますが、長期投資なのでのんびり構えていきます。(長期投資でもリスクが減るわけではないのでこういう考え方は危険?)