2014年12月21日

(株)お金のデザインの新サービス「ETFラップ」の説明会に行ってきました。

・「ETFラップ」が登場
「ETFラップ」という新しい金融サービスがリリースされ、2014年12月17日水曜の夜にセミナーがあるというので遊びに行ってきました。
141217_お金のデザイン.JPG

(株)お金のデザインという会社と投資一任契約を結んで、設定されたいくつかの登録した項目に見合ったETFでのポートフォリオで運用を代行してもらい、残高に応じた手数料を支払うというサービスです。
投資一任契約というのは、取引の売買の判断や実行を代わり事業者にに行ってもらうというもので、事業者の側には金融商品取引業者(投資運用業および投資助言・代理業)の金融庁への登録が必要です。

私は、資産運用への時間とストレスを極小にしながら、長期志向でそこそこの成果を出すというインデックス運用でいいやと思っていて、国内外のETFを使ったグローバル分散投資を取り入れて以前からやってきました。欧米や機関投資家の間ではオーソドックスですが日本の個人投資家間ではあまり支持されない方法です。
こういうインデックス運用を顧客に推進するサービスがあってもいいのにと私も思ったことはありますが、日本ではほとんど低コストによるインデックス運用は個人の間で広がっていません。長くなるので詳しい説明はまたの機会にしようと思いますが、長期志向かつ低コストで運用する方法をお客さんにやってもらっても、業者(主に金融機関)は儲からないからです。また、金融規制のハードルが高いという金融行政の成果もあり、新規参入もなかなか難しく、既存のプレイヤーが高い手数料を享受しているのが、大よその日本の個人向け金融サービスの現状です。

・(株)お金のデザインの概要とサービスのコスト
(株)お金のデザインは、ライフネット生命の仕掛け人でも有名でヘッジファンド運営会社のあすかアセットマネジメントの谷家衛氏がまたも仕掛け人となっています。iSharesのETFブランドで有名なブラックロックの日本法人で営業部門の責任者だった廣瀬朋由氏が社長という体制で、金融出身者が中心となって2014年11月で14名ほどで構成されているようです。
(株)お金のデザイン
http://www.money-design.com/

2013年8月に会社設立、2014年5月に金融庁から金融商品取引業者(投資運用業および投資助言・代理業)の登録が済んだようです。廣瀬社長によると、準備に3年位掛かったとか。。。
谷家氏の支援の他、東京大学系のベンチャーキャピタル(UTEC:株式会社東京大学エッジキャピタル)、京都大学系のベンチャーキャピタル(みやこキャピタル株式会社)、有望なネット系ベンチャーに投資をしていることでベンチャー界隈に詳しい人には有名なEast Venturesから、3.5億円弱の資金も調達しているようです。

気になるお客さんが負担するコストは、基本は500万円からの資産運用が可能で、販売手数料(契約時の報酬)は0%。3,000万円以下の部分は年率1.00%(消費税別)、3,000万円超の部分は年率0.50%(消費税別)とのことです。年間運用報酬額の下限は5万円ということで、500万円以下でも5万円を負担するのであれば、拒否するわけでもないようです。なぜ500万円なのかというと、(株)お金のデザインの説明によると、500万円くらいないとETFでの効果的なポートフォリオ構築ができないから、だそうです。個人的には、500万円もなくても出来るんじゃないかという気はしますが、実際のところはよく分かりませんがオペレーション上の都合等もあるのかもしれません。
売買手数料やETF自体に掛かるコストはもちろん別途負担です。

・どういったポートフォリオが提案されるのか?
これが売りのようですが、京都大学大学院経営管理研究部の加藤康之教授が監修した、オンライン上で一人ひとりのライフサイクルに応じてプロファイリングをおこない、一人ひとりのライフサイクルに合わせて、「新しい資産運用の潮流とマルチアセット」による、200種以上のポートフォリオの中から最適なポートフォリオを提案するそうです。
従来の単一のリスク・リターンの分散ではなく、ロングターム・グロース、インカム、インフレ・ヘッジという要素ごとの3分類を組み合わせるポートフォリオという枠組みが取られています。

言いたいことは何となく分かりますが、実際どうなのか、見てみるのが早いということで、早速私も登録してみました。(登録無料)
プロファイリングの項目は結構簡単で、年齢、運用期間、退職時の想定年齢、運用益の受け取り方、日本のインフレリスクをどう思うか、投資経験等の7項目を選択します。(ロングターム・グロース、インカム、インフレ・ヘッジをそれぞれ意識した質問なのだなと理解できます。面倒だと途中で流出するので簡素にしたのでしょう。)
私の場合、目標ポートフォリオがロングターム・グロース62%、インカム18%、インフレ・ヘッジ20%と出てきました。これの想定される収益率は3.47%、標準偏差は17.8%、シャープレシオは0.2だそうです。(収益率には不満が残りますがw)
気前よく、各機能ポートフォリオ保有予定銘柄も提案してくれるということで、実際の投資予定のETF銘柄も機能別に3つずつ提示してくれます。かねてよりETFを投資対象としている私からしてもマニアックというか、何でそれ?って少し思うような銘柄と配分比率が出てきました。
例えば、ロングターム・グロースでは、Value ETF、UNITED KINGDOM、KANADAが上位推奨のようですが、VWO(新興国の配分が少ないだけ?)とかSPYとか出しても面白くないからなのか、バックデータをもとに最適化されているのでしょうが裏で回っているロジックが高度なのか。。。

個人的には、機能別より、統合してアセット別(株式、債券、REIT、オルタナティブの別)でも出てくる方が分かりやすいところはありますが、どういうサービスかは理解できました。投資対象は変えられるようですが、ポートフォリオの売買を実行し、リバランスも4か月に1回とか、1年に1回とかやってくれるそうです。

まとめると、とりあえず、大学教授の監修のもとに高度に最適化されたポートフォリオが提案されます、ってことでいいのでしょう。
難しい話をすると、多分想定顧客の普通のシルバー世代の資産運用初心者には分からないでしょうし。

(追記)2015/9/12「やり直し相場ではじめるETF超入門」週刊東洋経済(2015年9月19日号)を読み解くでも、お金のデザインのETF運用の解説があります。合わせてご覧ください。

そういえば、加藤康之教授のご著書「退職後の資産運用―超高齢化時代のリタイアメント・マネジメント入門」もセミナーで配布いただきました。ありがとうございます。



・想定顧客と課題は?
運用可能資産が数千万円くらい以上あって、大手の証券会社等での高コストの投資信託等はお好みではなく、別にアクティブ運用には興味がなく、通常のインデックス投信やETFでは飽き足らず、もっとマニアックにポートフォリオを組みたいが、自分でネット証券で売買したりポートフォリオを考えるのは面倒、それで、0.5〜1.0%くらいの手数料だったら払っても良いよ、というのが顧客像でしょうか。
インタラクティブブローカーというアメリカの証券会社とシステム連携して売買するようですが、インタラクティブブローカーには私は昨年口座開設だけしましたが、海外口座なので、ネットで開設手続きに30分くらいかかった上、手数料の安さや品ぞろえは抜群なんですが、プロ仕様で素人には扱うのが難しすぎる印象があります。税務申告手続きで特定口座がないというハードルもあります。
1.0%のコストをどう思うかは個々人の判断ですが、3000万円超の0.5%は許容可能な水準での設定と言えるのかなーとは思います(それ以上のリターンが出るんなら)。

ETFを主体とした運用が「いいもの」かどうかは置いておいて、個人的に興味があるところは、これをインターネットサービスと見るならば、どのように顧客を獲得していくかです。
ETFラップが今後どのようにマーケティングをしていく予定かは定かではありませんが、金融サービスの提供は、現状を見る限り、家電の販売のように単純にコストの安い方に流れるものではなく、ほとんどが対面によって成立しています。
野村証券は100兆円の預かり資産がありますが、ネット証券を全て足しても預かり資産は15兆円くらいです。
保険会社の年間保険料収入は、日本生命は5兆円弱、プルデンシャル生命は6千億円、ライフネット生命は75億円です。
個人年金保険は2000万件の契約件数がありますが、個人型確定拠出年金の加入者数は約20万人です。
(件数と人数で単純比較は出来ませんし、保険料収入は算入時期が違うから新規契約額で比べろとか制度の違いとかありますが、規模感の違いは分かると思います)

お客さんの経済的な個々の事情、心配事、将来のビジョン、金融リテラシーをはじめたとした諸要素を踏まえた全体的な最適解を提案し、かつ、お客さんの納得感を得られるというのが金融サービスの提供には必要です。「これが欲しい」ではなく、「そもそもどうしたいのか、どうしたらいいのか考えない」のが普通です。
金融の営業の世界でよく「ニーズ喚起」とか言われますが、自ら進んで解決しようという人は少ないのです。

ワトソンのようなAIが進化した先には、コンピュータがある程度のところまで代用できるかもしれませんが、金融サービス提供のうしろにある、お客さん個人個人と向き合い、潜在ニーズをきっちり引き出し、真摯に対応し、安心感をもってもらうというのは、まだまだ人を通さないと難しいように見えます。(金融の営業パーソンでこういうことが実際に出来ている人は限りなく少数ですが)

その中で、ファンドラップや、セゾン投信のようなバランスファンドとどのように差別化していくか。

余談ですが、結局のところ円ベースの収益率で見たアセットクラス間の相関ってマイナスなのは国内債券のみで、だいたい0.3〜0.6くらいあるので、どうポートフォリオを組むかの細かいところよりも、待機資金とリスク資産の配分の方をしっかり考えた方が良いのではと最近私は思っています。タイミングを見るのは難しいと言われますがね。
あと、分散投資って、リターンを上げるための投資方法ではなく、リスク管理のための方法ですから、つまらなく、地味ではあるんですよね。
ヘッジファンドでよく分からないけど年率10%を目指します、とか言う方が人々の気が引けるのもまた確かです。

自分でポートフォリオを組んで運用しようという人は世の中の1%位なので、残りの99%の人にとって分かりやすく使いやすいサービスが実現できるかどうか。
新しいサービスが出てきたということで、個人的には楽しみです。今後の動向にも注目していきたいと思います。

・日経 2014/10/5 ETFに特化した投資顧問の新会社 個人向けに低コストで(URL記事は有料会員限定)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO77999460V01C14A0NN7000/
・現代ビジネス 2014/11/30 低コストでグローバルな資産運用に向けて---「お金のデザイン」が日本初のETF特化型投資一任運用サービス「ETFラップ」を開始
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41244


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