2013年03月04日

[書評]統計学が最強の学問である 西内啓/著

個人的には勉強になったし、大変面白かった。

本書は、統計学の入門書等の類というよりは、統計学というものそのものについての物語です。
無味乾燥な統計手法をひたすら解説しているのではなく、いかに統計という手法をもって、ビジネスの役に立てたり、社会的に有益な知見を探り出すかという「統計の使い方」「統計では何が分かって何が分からないのか」について解説がされています。
統計学を学んだことがあるが、使い方があまり身に付いていない方や、統計的な素養である統計リテラシーを身に着けたい方が、モチベーションを上げるのには良い本であると思います。また、統計に限らず、このように、統計学というものを分かりやすく解説するというよりも、統計というツールを用いて実際にどう役立てていくのか、というのを興味をひく構成で伝えるというのはバリューがあると思います。

なお、私は、あまり統計リテラシーが高いわけではありません。
高校や大学の頃に確率・統計はやっていないし、中学レベルの確率も、ぶっちゃけ、未だによく分かっていないレベルです。資産運用やビジネスに役立てるために統計スキルは必要だと思い、1年半ほど前から少し勉強したりかじったりしている程度です。

冒頭の1/3くらいはいかに統計というツールを使ってビジネスや実生活に役立てれば良いかという内容で、全くの統計初心者で問題ありませんし、取っ付きやすい内容になっています。
本書の真ん中へんは、統計学の歴史とともに、フィッシャーのランダム化比較実験についてや、回帰分析という手法についてです。一応基本的なところから説明はされていますが、全く統計を勉強したことがない、回帰分析をしたことがない、という方には読解が難しいかもしれません。一応かじった私のレベルで、本質にどこまで近づいて理解しているかはともかく、書いてある内容は何とか分かった、というのが感想です。
個人的には、後半の「統計学の6つの分野」が知らない話も多くて大変面白かったです。オーバーオールに統計学が各分野でどのように応用されているのか、というのが分かります。
6つの特徴的な分野:
@ 実態把握を行う社会調査法
A 原因究明のための疫学・生物統計学
B 抽象的なものを測定する心理統計学
C 機械的分類のためのデータマイニング
D 自然言語処理のためのテキストマイニング
E 演繹に関心をよせる計量経済学

あとがきの、外科医の父親が睡眠時間を削ってまで働いている姿を見て、「全力」と「最前」の違いを考えるくだりも大変良かったです。

統計学が最強の学問である
西内 啓
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 44

初版発行日 2013年1月24日
全304ページ ・ソフトカバー

著者は、疫学研究の専門家であるので、疫学(病気や感染症など)での例えで使用されているところも多くあります。
個人的には、ファイナンスや経済で例示された内容の方が理解しやすかったのですが、逆に、全く知らない分野での例えでの話も多かったため、好奇心が広がって良かったとも思いました。

統計学が学問の中で最強であるかどうかは、身体の中でどこが1番大切であるかといったような話なので、それは置いておくとしても、タイトルの付け方は十分に目を引くもので上手だなと思いました。本の装丁も私好みです。なお、統計学が最強というのは、「どんな分野の議論においても、データを集めて分析することで最速で最善の答えを出すことができるから」であるからのようです。




著者の西内啓氏は、統計に関する素養の高い東京大学医学部卒(生物統計学専攻)で、東京大学大学院医学系研究科医療コミュニケーション学分野助教、大学病院医療情報ネットワーク研究センター副センター長、ダナファーバー/ ハーバード がん研究センター客員研究員を経て、現在はデータに基いて社会にイノベーションを起こすための様々なプロジェクトにおいて調査、分析、システム開発および戦略立案をコンサルティングをされているということ。
本書は、定額課金型コンテンツ配信プラットフォーム「cakes(ケイクス)」にて連載した原稿をまとめたものであるということです。
cakesの元ページ「統計学が最強の学問である」
https://cakes.mu/series/80
*cakesは定額課金(週150円)の有料コンテンツサイトです。このプラットフォームを通じて、同書のような書籍が多く出ていくようなら、週150円もリーズナブルなのかもしれませんね。それでも紙書籍でまとまった形で読む方が読みやすいですが、書籍化にcakes購読者特典みたいなものがあると良いように思いました。

IT化の進展やデータ量の増大に伴って「ビッグデータ」というキーワードが流行になっていますし、今後、統計解析の結果を読み解くための統計リテラシーの重要性はますます高まっていくのではないでしょうか。
ビジネスにおける複雑な事象の意思決定の是非は最終的には直観で決まることもありますから、統計的に物事を捉えることのみをもってビジネスを成功に結び付けるとは限らないとは思いますが、ファクトとロジックでもって客観的に情報を分析したり、明らかに間違った判断を避けるには、統計のスキルを持っていることは大きな武器になります。あと、他人の分析を見たときに、おかしな点や、相手が意図的かどうかはともかく、騙されたり、ミスリーディングに誘導されないようにするのにも役立ちます。
統計は、資産運用やIT・ネットビジネスとの親和性がとても高い分野です。
今後も、継続的に統計リテラシーを高めるよう励んで行こうと思います。

【参考】
ソフトバンクビジネス×IT :【西内啓氏インタビュー】日本が「統計先進国」に返り咲くための処方箋
http://www.sbbit.jp/article/cont1/25983

本書の目次は以下の通りです。続きは下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい(トップ画面からご覧の場合)。
目次

第1章 なぜ統計学が最強の学問なのか?
01 統計リテラシーのない者がカモられる時代がやってきた
02 統計学は最善最速の正解を出す
03 すべての学問は統計学のもとに
04 ITと統計学の素晴らしき結婚
第2章 サンプリングが情報コストを激減させる
05 統計学が見たビッグデータ狂想曲
06 部分が全体に勝る時
07 1%の精度に数千万円をかけるべきか?
第3章 誤差と因果関係が統計学のキモである
08 ナイチンゲール的統計の限界
09 世間にあふれる因果関係を考えない統計解析
10 「60億円儲かる裏ワザ」のレポート
11 p値5%以下を目指せ!
12 そもそも、どんなデータを解析すべきか?
13 「因果関係の向き」という大問題
第4章 「ランダム化」という最強の武器
14 ミルクが先か、紅茶が先か
15 ランダム化比較実験が社会科学を可能にした
16 「ミシンを2台買ったら1割引き」で売上は上がるのか?
17 ランダム化の3つの限界
第5章 ランダム化ができなかったらどうするか?
18 疫学の進歩が証明したタバコのリスク
19 「平凡への回帰」を分析する回帰分析
20 天才フィッシャーのもう1つの偉業
21 統計学の理解が劇的に進む1枚の紙
22 重回帰分析とロジスティック回帰
23 統計学が極めた因果の推論
第6章 統計家たちの仁義なき戦い
24 社会調査法vs疫学・生物統計学
25 「IQ」を生み出した心理統計学
26 マーケティングの現場で生まれたデータマイニング
27 言葉を分析するテキストマイニング
28 「演繹」の計量経済学と「帰納」の統計学
29 ベイズ派と頻度論派の確率をめぐる対立
終 章 巨人の肩に立つ方法
30 「最善の答え」を探せ
31 エビデンスを探してみよう

統計学が最強の学問である
西内 啓
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 44





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