・2015/10/1 マイナンバー対策 マイナンバーで副業がバレる心配への有効な対応策 〜キャバクラ嬢・ホステスのためのマイナンバーと確定申告講座〜
個人事業主や副業をされているサラリーマンの方々にとって頭の痛い確定申告の時期になってきました。
確定申告の時期になると必ず思い出す、私が長い間気になっていることがあります。
それは、「キャバクラ嬢やクラブのホステスさんって確定申告すればお金が戻ってきて入るはずだけど、多分してないよな。ふつうは、どうしてるんだろう?」という疑問です。
この問題は、国民の義務である納税手続きを正しく行うという、極めて社会的意義のあるテーマです。
「え?こいつ何言ってるの?」と思う方も多いと思いますので、ちょっと詳しく説明いたしましょう。
国のルールにより定められた仕事や特定の職業への報酬の支払いは、源泉徴収といって、支払い者が税金を差っ引いて支払うことが義務付けられています。もう少し具体的には、特定の職業や仕事に対してお金を払う人は、予め収入の原則10%(*1)相当について差し引いて報酬を支払い、お金を払う人の方で先に国に納付するという手続きをしないといけないこととなっています。これは、国が税金を取りっぱぐれないための措置で、支払いをする側に義務付けられています。税務調査等で源泉徴収すべきものをしていなかったことがバレると、支払い者は、後から支払った人に源泉分を返してもらって納付するか、源泉徴収すべき金額を上乗せして税金を納めさせられることになるという厳しいルールになっています。
(*1)平成 25 年1月1日から平成 49 年 12 月 31 日までの間に生じる所得については、復興特別所得税により、原則10.21%が源泉徴収税率となります。
源泉徴収される人(報酬をもらう人)は、支払われたお金の10%程度が既に国に納付されている、ということですね。キャバクラのお給料で100万円をもらう場合には、10%の10万円が差し引かれて、90万円を手取りでもらうことになります。お店がきちんと税金の手続をしている限り、少なくとも、そうなっているはずです。
ちなみに、より正確には、お給料の計算期間が30日だとすると、クラブ・キャバクラのホステスさんは給料の計算期間×5千円を報酬から引いて源泉徴収額を計算しますので、(100万円−5千円×30日)×10%=85,000円が源泉徴収され、91万5千円を手取りでもうらことになります。以下、話を簡略化するため、給料の計算期間×5千円は考慮せずに話を進めます。
(参考)国税庁タックスアンサー No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金等
http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2807.htm
さて、そもそも、どのような仕事や職業の場合に源泉徴収されるかということは、きちんと法律で定められています。
国税庁のホームページの「報酬・料金等の源泉徴収事務」の説明には、「次の1から8までの表に掲げる報酬・料金等の支払をする者は、その支払の都度それぞれ次の表に掲げる額の所得税を源泉徴収しなければなりません(所法204、205)」と記載があり、その「1から8まで」の仕事や職業への支払いは源泉徴収しなくちゃいけないよ、ということになっています。
「1から8まで」の中の6番目に、きちんと下記のように定められています。
(抜粋)
ホステス、バンケットホステス・コンパニオン等の業務に関する報酬・料金
(1)キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ、又は客に接待をして遊興や飲食をさせるものにおいて、客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の人のその業務に関する報酬・料金
(国税庁ホームページより)
第5 報酬・料金等の源泉徴収事務
http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/aramashi2006/mokuji/05/01.htm#a-07
キャバ嬢やクラブのホステスさんはお金をもらう時に源泉徴収というのをされているはずだ、ということはお分かり頂けたと思います。
一方、お金をもらっている個人には所得税という税金が課せられます。(源泉徴収されているものも内容は所得税ですが)
会社等の従業員は、会社が、所得税について計算してくれて毎月の給料から差し引かれ、年末調整できちんと確定して調整する、という作業をしてくれています。
キャバ嬢やクラブのホステスさんがどのような雇用形態かは分かりませんが、多分「従業員」ではなく、バイトや業務委託のような扱いで、お店が年末調整なんてしてないと思うんですよね。
例えば、バイトでお店で働いて年間270万円をもらっている女の子は、年収300万円で10%分の30万円が源泉徴収されて、270万円となっているはずです。源泉徴収は国が税金を取りっぱぐれないための制度だと説明しました。本当は確定申告はしないといけないのですが、30万円分の税金は既に支払っていることになるので、実際に確定申告をしないで大変なことになったという話もあまり聞きません。年収がもっと多ければ話は全く変わってきますが、国も人間が対応していますから労力には限界があり、いちいち一人一人まで捕捉していられません。
多くのキャバ嬢やクラブのホステスさんは、恐らく、確定申告をしていないのではないか、というのが私の仮説です。
さて、所得税という税金は、業務報酬については必要経費を差し引いた後の「所得」に対して税金が掛かります。
必要経費というのは、事業のために直接要した費用であって、キャバ嬢やクラブのホステスさんの仕事における経費は、出勤前の美容代、お仕事に必要な衣装代や化粧代、同伴やアフターの行き帰りのタクシー代(食費は自分で持たないと思うけど)、お客さんとの通信費やお客さんへのプレゼント代、接待のゴルフ代などなどが想定されます。真面目に仕事をしていれば、それなりに、営業上の支出もあるのかと思われます。
源泉徴収は売上の10%をされていて、所得税は「売上」から「経費」を差し引いた「所得」に対して掛かる税率(所得額に応じて異なる)によって決まるので、所得税の金額は、「売上」を基準として算出する源泉徴収されている金額とは異なることとなります。
そのため、源泉徴収額は確定申告によって自分の所得税の額と調整することになります。
源泉徴収と税金(所得税)の関係は下記の図のようになっています。
さて、収入と経費がどのようになっていると、確定申告により納付または還付になるのかというのを具体的なイメージでご理解頂くため、下記の表を作成しました。
横軸が収入で、縦軸が経費の金額です。例えば、収入300万円の場合に200万円の経費を使っていたなら、還付額は25万円になる、という表です。表は、それぞれの収入の10%から源泉徴収額から各所得に応じた所得税を差し引いた金額が掲載されています。
この表をご覧頂けば分かると思いますが、だいたい、それなりに経費を使っていれば、還付になりますね。表では、年収700万or800万で経費100万円の時だけ、還付ではなく追加で納付することになるという計算結果になっています。
そう、恐らく確定申告をしていないであろうキャバ嬢やクラブのホステスさんは、確定申告をすれば還付になる可能性が高いのです!
*上記表は一般的な場合の計算表になっています。クラブ・キャバクラのホステスさん、コンパニオンへの支払いは報酬から5千円×計算期間の日数の金額を引いた額の10%が源泉徴収されます。そのため、キャバクラ嬢やクラブのホステスさんにおきましては、源泉徴収額を単純に報酬×10%として算定している上記表よりも還付の金額は少なくなりますのでご留意下さい。
なお、「自分」を商品とするビジネスの全般に言えることですが、収入が多くなるにつれ比例的に増える経費というのは通常は多くないため、収入が多くなるほど確定申告によって源泉徴収分に追加で納付となる可能性は高くなりますが、収入が数百万の場合は、確定申告により還付を受けられる可能性が高いであろうと一般論として言えることであります。
お店はきちんと源泉徴収と税務手続きをしているのか?(キャバ嬢やクラブのホステスさんに確定申告で必要な書類である源泉徴収の支払調書をちゃんと渡しているのか?)
キャバ嬢やクラブのホステスさんは実際にどの程度営業上の経費を使っているのだろうか?(確定申告する場合、龍収書等の記録をどうするかは別問題としてありますが)
キャバ嬢やクラブのホステスさんはどれだけ確定申告しているのだろうか?
確定申告していない場合、「還付になるよ」という話にどの程度関心を示すのか?
本件を調査すべく、私は、フィールドワークをしたいとずっと思っているのですが、これだけの社会的意義を帯びながらも、いかんせん機会がなく、なかなか対象者へのヒアリングが出来ないという残念な状況に陥っています。
そこで、別件の目的で、自発的にフィールドワークを行っている友人の何人かに依頼をして本件のリサーチを快く引き受けてもらっているのですが、なぜか皆、フィールドワークの現場になると本件の重大な社会的使命についてうっかり忘れてしまうようで、なかなかフィードバックが得られません。(というか、有効なサンプル結果が全く得られておりません)
是非、本記事に基づいてフィールドワークをされた方がいらっしゃれば、調査結果をお寄せ頂けますとまことに幸甚でございます。
また、私は業界事情に精通していないため、事実誤認がありましたら、是非お知らせ頂けますと幸いです。
キャバ嬢やクラブのホステスさんからのご意見・ご質問等も大歓迎しております!
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