2012年12月18日

海外ETFの活用方法 具体的に何に投資し、どのようなポートフォリオを組むといいのか【ETFカンファレンス2012より】

2012年12月16日(日)に開催されたモーニングスター主催のETFカンファレンス2012〜新たなる成長ステージへ突入するETF〜 に参加してきました。

私は、投資セミナーの類のものはほとんど行ったことがなかったのですが、今回は、興味のある海外ETFがテーマということで参加してきました。
数年前までは海外ETFは取扱いも少なく、「もっと選択肢を増やしてくれよ」という状況だったのですが、ここ数年で各ネット証券が取扱い銘柄を大幅に増やしてくれたおかげで選択の幅に困ることはあまりなくなった一方で、「どうやって最適なものを選んだり探したらいいか整理された情報をちょうだいよ」という状況に変化してきています。
海外ETFは、長期志向かつ能動的な個人投資家が購買層となるため、まだまだマイナーです。証券会社にとっても儲かる商材でもないでしょう。メインストリームとはなっていないため、長期志向による海外ETFの活用のための信頼できる情報は、あんまり充実していません。そのため、自分で証券会社のサイトやモーニングスターでせっせとスクリーニングして信託報酬を比べたり、私にとって役立つメインの情報源は投信ブロガーの方々のブログ記事となっています。
ETFカンファレンスは、内容としても、基本的すぎて退屈ということもなく、代表的な海外ETF銘柄の確認なども出来て、有意義なものでした。また機会があれば、こういうイベントに参加してブログにエントリーするのも良いかと思いました。

場所は東京国際フォーラムで日曜の午後だったのですが、広いホールがほぼ満席で、800人を超える来場者でした。海外ETFに関心のある人たちもこれだけいるのかと少し驚きました。
来場者層は、シニア層や退職世代がほとんどで、20代〜40代は多分全体の1割に満たない印象でした。カンファレンス中に楽天証券での海外ETF購入層のデータが示されていましたが、楽天証券で海外ETFを購入している65%が30代・40代であるとのこと。海外ETFのメインの購入層と参加者層が不整合であり、その要因は私にはよく分かりませんでしたが、何故なのだろうかと思いました。

カンファレンスの内容は、まず、モーニングスター代表取締役、朝倉智也社長による「混沌の時代を乗り切る新しい資産運用法」〜海外ETFを活用して自立した投資家を目指す〜というテーマでの基調講演。
次いで、ETFの運用会社としては世界でトップ3であるバンガード・インベストメンツ・ジャパン、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、ブラック・ロック・ジャパンのご担当者による特別講演(各社のアピール)。
そして、モーニングスター朝倉社長がモデレーターのもと、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏と、楽天証券マーケティング本部副本部長の新井党氏によるパネルディスカッションでした。

海外ETFを使って実際にどう運用するかという点で、参考になりそうな箇所についてまとめます。




【モーニングスター朝倉社長「混沌の時代を乗り切る新しい資産運用法」】
色々な金融・経済のデータとともに説明がされ、参考になるところも多かったです。

日本を中心に考えた経済情勢は、円高デフレの継続と円安インフレへの転換がどちらに転ぶか分からない不安定な状況にあり、分散投資を行うにしても、@先進国の低成長、A世界的な超低金利、Bアセット間の連動性の高まりという状況が重なっている「混沌の時代」にあって、今までとは違った新しい分散投資が必要だと提言がされました。

今までとは違った新しい分散投資としては、日本株・先進国株といった大きな括りでの単純なアセットクラスの分散ではなく、分散の対象を広げ、また中身もアセットクラスの特徴を考えながら様々なブレンドをしていきましょう、という文脈で理解をしました。

具体的な投資アイデアとしては、
・特定の国や業種に大きく影響を受けない投資を考える。
→MSCIエマージングの国別構成比は、中国・韓国・ブラジル・台湾・南アフリカで約7割。
うち、韓国・台湾は26%の組み入れ比率があるが、ハイテク比率が高いので、先進国経済との連動性が高い(対先進国株式との相関係数は韓国 0.85、台湾 0.81)。
そこで、グローバル経済に比較的影響を受けない国の株式として、タイやインドネシアが挙げられる(対先進国株式との相関係数はタイ 0.76、インドネシア 0.76)
○ 新興国株式 → VWO(バンガード・MSCI・エマージング・マーケットETF)*米国株
○ インドネシア株式 → EIDO(iシェアーズ MSCI インドネシア・インベスタブル・マーケット・インデックス・ファンド)*米国株

・中国は外需から内需型の経済成長へシフト
→MSCI中国の業種別構成比率は金融が37.4%となっているが、一般消費財等の内需を中心とした企業への投資比率を上げるのは、どうか。
○ 中国A株(一般消費財) → 03025(db x-trackers CSI 300 CONSUMER DISCRETIONARY INDEX ETF)*中国株

・新興国株式への投資も成長性の高い小型株を組み入れる
*ただし、小型株の方がボラティリティは高い

・債券は多様な種類を組み合わせる
→債券と一口に言っても、米国の債券種類では、米国アセットバック証券、米国モーゲージ証券、米国債、米国投資適格社債、ハイ・イールド債とさまざま。
○ 米国債券 → BND (バンガード・トータル・ボンド・マーケットETF)
○ ハイ・イールド債券 → JNK (SPDR バークレイズ・キャピタル・ハイ・イールド債券 ETF)

・他の資産との相関の低い「金」を組み入れる
→金は年率リターンで過去3年では12.9%、過去5年では8.5%。いずれの主要アセットクラスとの相関係数は0.5を下回り、低い。
金投資のメリットは、インフレに強い、信用リスクがない(有事の金)、ドルに対峙して動くので円高ヘッジとなる、株式や債券との相関性が低いという点。デメリットは利息や配当がつかない点。
○ 金 → IAU( iシェアーズ・ゴールド・トラスト)

また、海外ETFの優位性は、流動性の高さを反映してベンチマークとの乖離率が低い(トラッキングエラーが低い)という点と、エクスペンスレシオ(ファンドの平均資産残高に対する運用その他の経費の比率)が低いという点にあるということです。

最後に、混沌とした時代を乗り切るためのアドバイスとして、
@ リスクを抑えた運用
A 債券の種類を多様化
B デフレを勘案しつつ、インフレに備える
C 最大限にコストを抑える(低利回りの今の時代に高いコストを払うのは割に合わない)
D 自分自身でポートフォリオを作る
という点が挙げられました。(結構難しい事を言ってますがw)

朝倉社長の新刊も読んでみようかと思っています。
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【パネルディスカッション「個人投資家のETF活用術を考える」】
マネックス証券の広木氏は、効果的に運用するには、単にベンチマークを追えばいいというわけではないと良い、その理由は、マーケットではベンチマークが効率的なリスク・リターンではなく、個別株も含めたインデックスから離れたポートフォリオを構築すべし、ファーマ・フレンチの3ファクターモデル(マーケット、割安株効果、小型株効果)も考慮していくべきと推奨しました。
また、長期投資が前提であっても、買った銘柄を持ち続けるということではなく、長期的に運用を続けることが大切であるとしています。
モーニングスター朝倉氏は、「インデックスかアクティブかではなく、コストが高いか低いかが重要だ」とも付け加えていました。

そういった中、広木氏は、ポートフォリオに組み込むのに軸となる代表的な海外ETFとして、
VOO :バンガード・S&P500 ETF
EFA :iシェアーズ MSCI EAFE インデックス・ファンド
VWO :バンガード・MSCI・エマージング・マーケットETF
BND: バンガード・トータル・ボンド・マーケットETF
IGOV :iシェアーズ S&Pシティグループ世界国債(除く米国)・ファンド
EMB :iシェアーズ JPモルガン・米ドル建てエマージング・マーケット債券ファンド
が紹介されました。
これに味付けとしては、
JNK :SPDR バークレイズ・キャピタル・ハイ・イールド債券 ETF
GSG :iシェアーズ S&P GSCI・コモディティ・インデックス・トラスト
IYR :iシェアーズ ダウ・ジョーンズ米国不動産インデックス・ファンド
あたりが良いのではと紹介されました。
なお、個別の参考配分割合も示されていましたが、パネルディスカッションのスライド資料は配られておらず、実際にポートフォリオを組む各人の性向や経済観念、リスク・リターンの見通しもなく一律に示すことには意味がないと思うので(参考配分割合を出す際に同様の趣旨のことを広木氏もおっしゃっていましたが)、メモを取っていません。
全体としては、株式:債券=7:3といった配分が良いのではということです。債券は買われ過ぎで注意ということでした。
大事なのは、幅広く、より分散の効いたポートフォリオを作ろう、ということです。

楽天証券では、エマージングのニーズが強い、債券型の売買が増えてきているということです。
2012/4-9の売買代金上位としては、GLD(ゴールド)が1位というのが特徴的とのこと。以下、VWO、DIA(スパイダー・ダウ・ジョーンズ・インダストリアル・アベレージ・イーティーエフ・トラスト)、VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF)、EWZ(iシェアーズ MSCI ブラジル・インデックス・ファンド)が上位のようです。中国株では、ベトナム、中国(A50)、香港、インドのインデックスが売買上位のようです。
また、30代・40代の間で、積み立て投資で残高を増やしてからETFに乗り換えるという売買行動が一定程度見られるということです。

パネルディスカッションでの他の話としては、国内ETFは3兆円と小さいが、マーケットメークが機能していない、ストラクチャーで機関投資家が出掛けにくくなっているという問題が指摘されました。

ネット証券としての今後の取り組みとしては、日本語での情報提供を増やしていく、新しいETFの発掘、ETFの魅力を伝える取り組みに力を入れていく、ということです。
私としても、ネット証券として、今の20代・30代・40代の資産形成のための長期運用のニーズを掘り起こし、実行に移すのをサポートすべく出来ることはたくさんあるかと思います。是非、個人投資家にとっての便益向上に引き続き努めて頂ければと思います。

サーチナにて、当カンファレンスの様子が記事になっています。
・【ETFカンファレンス2012】新しい分散投資手段=海外ETF
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1217&f=business_1217_053.shtml
ネットで身近になった海外ETF
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1217&f=business_1217_079.shtml
多様化し拡大を続ける海外ETF
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2012&d=1217&f=business_1217_077.shtml

また、下記にも参加者の感想が上げられています。
ZUU OMLINE 【イベント参加報告】モーニングスターETFカンファレンス2012
http://zuuonline.com/archives/1217
インデックス投資日記@川崎「モーニングスター海外ETFセミナー 第1部基調講演のレポート」
http://longinv.blog103.fc2.com/blog-entry-955.html


【関連記事】
・2012/11/30 フロンティア市場へ投資する海外ETFが登場 投資妙味を考える
http://money-learn.seesaa.net/article/304461469.html
・2012/11/19 「投信ブロガーが選ぶ Fund of the Year 2012」に投票しました!
http://money-learn.seesaa.net/article/302477817.html
・2012/7/12 長期の資産形成と自分年金の作り方を考える(1)
http://money-learn.seesaa.net/article/280414842.html
・2012/8/23 マネックス証券の新ツール「MONEX VIEW β」と資産管理ツールへの今後の期待
http://money-learn.seesaa.net/article/288023689.html

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モーニングスター海外ETFセミナー 第1部基調講演のレポート
Excerpt: TOKYO International forum. / MJ/TR (´・ω・) 本日、東京国際フォーラムで開かれたモーニングスターETFカンファレンス2012の無料セミナーに行ってきました。..
Weblog: インデックス投資日記@川崎
Tracked: 2012-12-18 21:17
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