ブラックロック 2012年11月15日のプレスリリース:
海外ETF3銘柄を日本市場に投入、新興国市場・フロンティア市場に新たなアクセスを提供−フロンティア・マーケット、エマージング・マーケット小型株のETF2銘柄は国内初、現地通貨建てエマージング・マーケット債券のETFも届出 −
http://jp.ishares.com/newsroom/pr_2012_11_15.htm
今回取扱い開始になった3銘柄は下記の3本。
・[FM]iシェアーズ MSCI フロンティア 100 インデックス・ファンド 信託報酬 0.79%
http://jp.ishares.com/product_info/fund/overview/NYSEARCA/FM.htm?qt=FM
・[EEMS]iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット小型株インデックス・ファンド 信託報酬 0.69%
http://jp.ishares.com/product_info/fund/overview/NYSEARCA/EEMS.htm?qt=EEMS
・[LEMB]iシェアーズ 現地通貨建てエマージング・マーケット債券ファンド 信託報酬 0.60%
http://jp.ishares.com/product_info/fund/overview/NYSEARCA/LEMB.htm?qt=LEMB
*リンクはETFの運用会社であるブラックロックの商品概要ページ
1番の注目は、フロンティア市場の有望会社100社で構成されるインデックス「MSCIフロンティア・マーケット100インデックス」に投資するETFでしょう。MSCIは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルの略で、色々な指数を算出していますが、その総称となっています。
「フロンティア」市場とは、BRICsに代表される新興国市場のさらに次に有望とされるマーケットです。低所得国で構成され、その資本市場は「先進国」はもとより、「新興国」と比較しても多かれ少なかれ未成熟な市場と言えます。
フロンティア市場のポイントは、エマージング・マーケット以上に流動性はなく、金融危機のような際には大きな下落の可能性はある。成長性について不確実性もあるが、世界経済の成長の中でフロンティア市場の伸びしろも大きいと見込まれ、流動性のなさとマーケット規模から、巨額の資金を運用する多くの機関投資家はなかなか投資対象にしずらいので、割安である今のうちに成長期待を先取りできる可能性がある、というところであるかと思います。
長期投資という観点から考えると、MSCIのフロンティア指数とエマージング・マーケット指数の間で「格上げ」「格下げ」がされるため、現在は未知数のフロンティア市場の国や企業が本格的な成長軌道に入った際にはエマージング・マーケットへ格上げされてしまい、結局は、確度の高い段階での成長過程はエマージング・マーケットへ投資している方が無難なような気もします。個別には格上げに至る時点で期待値が事前に織り込まれ株価も上がっているかもしれませんが、大きなリターンを狙うにはフロンティア指数の中の個別の国・地域を狙っていかないといけないのかもしれません。
あとは好みでしょうが、フロンティア市場への投資は、新興国株式への投資配分のうちのさらに1〜2割程度が無難な感じがしますね。
私としては、おいおい新興国株式への追加投資の時にでも、少し割り振るかどうかを考えたいと思います。
MSCI エマージング・マーケット小型株インデックス・ファンド[EEMS]は、新興国のインデックスは金融セクターが中心であるなどもありますので、あえて小型株を狙うという妙味はあるかもしれません。信託報酬が、MSCI エマージング・マーケット・インデックスに連動するバンガード・エマージング・マーケット ETF[VWO]の信託報酬0.2%と比べると、0.4%程高いため、0.4%分のマイナスを補って小型株のリターンが良好に期待できるのかという点をどのように評価するか、も考えるポイントです。
現地通貨建てエマージング・マーケット債券ファンド[LEMB]は、手数料を考えたら、新興国債券のインデックス投信の方で良いかなと思いました。
今回の3本のそれぞれの概要はファクト・シートに記載されています。
ファクト・シート(FM):http://jp.ishares.com/newsroom/pr_2012_11_15.htm
FM(フロンティア 100インデックス・ファンド)の2012/11/15時点での上位保有銘柄の国別内訳は
クウェート 31%、カタール 15%、アラブ首長国連邦 12%、ナイジェリア 12%、パキスタン 4.8%、カザフスタン 4.0%、オマーン 3.4%、アルゼンチン 2.9%、バングラデシュ 2.7%、米国 2.6%
となっています。
業種は金融が56.8%、電気通信が15.2%と金融と電気通信が大きな割合となっています。
個別企業で見る組入れトップは NATIONAL BANK OF KUWAITというクウェートの銀行で、組入れ比率は8.21%。トップ10は、業種割合の通り、銀行・通信の会社が多くなっています。
フロンティア市場への投資妙味について検討するため、情報を調べてみたポイントを下記に挙げておきます。
シュローダーズのレポート「TalkingPoint」(2012年6月)ではフロンティア市場について解説されています。
PDF: http://www.schroders.co.jp/mt/p/pdf/marketreport/20120615/1417/FrontierMarket.pdf
レポートのポイント:
・MSCI指数では、「MSCI エマージング・マーケット指数」と「MSCI フロンティア・マーケット指数」は完全に区分されており、両方の指数に属する市場はなく、現在フロンティア・マーケットでも将来エマージング・マーケットへ変更というように、経済や市場の動向によって構成国は変わる。
・フロンティア株式市場について、アジア、東欧、アフリカ、中南米、中東など広範囲の地域の中の26ヶ国の株式市場で構成され、中でも中東地域のウェイトが全体の約 6 割を占める。 「フロンティア市場では、健全な経済運営を行っている中東諸国から、他地域に比べて未発達ながら高い成長を遂げているアフリカの国まで、その構成国の特徴は多岐にわたる」。
・地域ごとに経済成長の背景(成長の源泉)については下記の通り。
中東地域: 原油からの収益を軸に、経済成長の多角化を進める。
アフリカ地域:中国からの投資により電力網の設置などインフラ整備が行われており、天然資源の採掘が進むと期待される。
アジア市域: 低い労働コストを背景に、新たな生産拠点として注目されている。
東欧地域: コモディティ関連の産業の成長が期待される。
・フロンティア経済は、経済発展の初期の段階にあり、先進国経済や新興国経済よりも高い成長を遂げると期待される。ただし、エマージング市場以上に不確実性が高いとも考えられます。
○下記の点で投資魅力がある。
・MSCI フロンティア ・マーケット指数の予想収益に基づく2012年4月時点での予想PER は8.3倍、MSCI ワールド指数の11.8倍や MSCI エマージング・マーケット指数の9.5倍に比べ、大きくディスカントされた水準
・グローバルな視点で投資を行う投資家の中でも、実際にフロンティア市場へ投資を行っている投資家は、まだまだ少数派で、国際投資家のエマージング株式への投資額が約 6910 億米ドルと見積もられているのに対し、フロンティア市場への投資残高はその 1〜2%、110 億米ドル程度と推測され、「先行者利益」が期待できる。
・分散効果が高い。フロンティア株式は、MSCI ワールド指数や S&P GSCI 指数などに対し低相関を示す傾向にある。 フロンティア ・マーケット指数の構成する各市場間の相関も低い。 これは、各国の株式市場が、その国独自の状況によって変動する傾向にあるため
・フロンティア株式市場は、構成各国の経済水準と比べれば、著しく未成熟な状態にあるといえるが、フロンティア経済が世界の GDP の 4.4%を占めるに対し、株式市場のウェイトは世界の 0.4%に過ぎないため、上昇余力が大きい
海外のIPEというサイトに掲載されているレポート「Frontier Markets A Review for Investors」(2012/3/2)にも、上記のポイントを含むフロンティアマーケットの説明がされています。
また、新興株への投資で有名なフランクリン・テンプルトン・インベストメンツというアメリカの運用会社の新興国市場部門統括責任者で、「新興国投資の教祖(グル)」と呼ばれるマーク・モビアス氏は、日経ヴェリタス(2012/8/5)へのインタビューでフロンティア市場について下記のように語っています。
・フロンティア市場の魅力は経済規模が小さいため、GDPの伸び率が高まりやすいこと。2001年から2010年までの10年間で、世界各国を経済成長率が高い順に並べると、上位10カ国のうち9カ国がフロンティア市場、6カ国がアフリカの国だった。
・新しい技術をすぐに利用できる点も強み。新しい技術の利用は成長をさらに加速させる。例えば、最初から無線通信を使えるフロンティア国では電話線を引き固定電話を使う必要はない。
・フロンティア市場のなかでも投資割合が大きいのがナイジェリア。汚職がはびこっているものの、経済は非常に活気がある。貿易が盛んで人口も多い。ガスや原油など資源がとれる点も魅力。
ガーナにも投資をしている。同国の経済は価格の上下動が激しいココア頼みだ。政府は成長源の分散を図るため、民間投資を促そうとしていた。
・ケニアやバングラデシュ、スリランカなども面白い
・運用資産の7〜8割を先進国、2〜3割を新興国に投資するとよい。若い人なら100%株で運用しそのうち新興国株が50%以上でもよいだろう。そして毎月一定額を規則的に買う購入方法を勧める。とくに新興国株は、危機などで株価が暴落した後の戻りが大きい。定額購入だと下落局面でより多く買えるので、株価が上昇に転じた時により高いリターンを得られる
[関連記事]
・2011/7/19 BRICsから「グロース・マーケッツ(成長市場)」へ(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長 ジム・オニール氏)
http://money-learn.seesaa.net/article/215650534.html
・2010/12/28 BRICs、VISTA、NEXT11 、MENA とは
http://money-learn.seesaa.net/article/176427394.html
・2012/8/17 世界の各国指数のPERの指標はどこで見るか
http://money-learn.seesaa.net/article/287051544.html
・Facebookページ「ASK」もご参照下さいm(_ _)m
http://on.fb.me/ep0Def
【参考記事(マネーのネタ帳)】
・2012/11/18 フロンティア市場、エマージング債券のETFがSBI・楽天証券で取り扱い開始
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/11/etfsbi.html
・2012/11/18 新興国投資の教祖(グル)テンプルトン・インベストメンツのマーク・モビアス氏が語る新興国・フロンティア市場の魅力
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/11/blog-post_4001.html
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