2012年10月16日

ソフトバンクはSprintを1兆5千億で買収 報道で株価21%下落も「今が買い」とアピール 成功に「自信があります」

ソフトバンクのIR 「Sprint社の戦略的買収について」(2012年10月15日)を見ました。
動画: http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20121015/index.html
プレゼンテーション資料: http://webcast.softbank.co.jp/ja/press/20121015/pdf/20121015_01.pdf
適時開示資料 当社によるスプリントの戦略的買収(子会社化)について: 
http://webcast.softbank.co.jp/ja/pdf/20121015_01/20121015_01.pdf

スプリント買収の概要は、ソフトバンクはSprint株式の70%を取得。
既存株式取得で121億ドル(9,469億円)、増資引受で80億ドル(6,240億円)で、計 201億ドル(1兆5,709億円)が買収資金。
既存株式取得は1株7.3ドルのプレミアム価格で買取り、増資の引き受けは報道発表前の株価をベースに1株5.25ドルで取得します。
財務アドバイザーはThe Raine Group LLC及びみずほ証券。
スプリント社への増資資金80億ドルは、ネットワーク強化・戦略的投資・財務体質の強化に充てるとのこと。
出資割合を70%にした理由は「Sprintが米国で上場企業のポジションを維持するため、30%は一般投資家が継続して持てるようにした。上場会社としてSprintが存続するほうが、投資家やユーザーから見ても透明性があるので、ベターであるという判断」と質疑応答で答えていますが、買収資金額と有利子負債のバランス等を考慮したと思われます。

買収資金は、手元資金、及び株式会社みずほコーポレート銀行、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱東京UFJ銀行、ドイツ銀行東京支店がアレンジし、引受を合意した新規のブリッジローンにより充当するとのこと。ボーダフォンの際の借入金利は4%だったが、今回は1.数%であり、孫社長は「格下げは覚悟の上」としながらも「リスクに敏感な銀行がボーダフォンの時より安心している」とアピールしました。
日経にてBNPパリバ証券チーフクレジットアナリスト中空麻奈氏は、「これまで改善を続けてきたソフトバンクの信用力が再び悪化することは避けられない。1〜2ノッチの格付け低下につながる可能性があり、今後は国内の格付け会社が、年金基金などの投資適格水準であるシングルA格を維持するかどうかが大きなポイントになる」と指摘しています。

スプリントの株価は、観測報道前の株価は5,04ドル、報道を受け5.76ドルへ上昇していました。
一方、ソフトバンクの株価は、買収報道前の2012/10/11の終値2,881円から、10/12 2,395円、10/13 2,268円と21%もの下落を見せました。(*1)
市場関係者からは、投資家が増資リスクをやや過大に警戒したのを反映して大幅に下落していたので、今回の買収に伴いエクイティファイナンスをしないことが分かったことはプラス材料という評価が多いようです。

孫社長はプレゼンテーション中の株主への配慮として、
・取得資金調達のための新株発行・転換社債等のエクイティファイナンスは一切行わない
・配当方針に変更なし
・純有利子負債を早期削減
を強調しました。
また、ソフトバンクの2012/10/15前場終了時点での時価総額2.5兆円から、ヤフージャパン、アリババ等の保有株式の時価が1.6兆円なので差し引くとソフトバンクの通信事業の価値を0.9兆円となる。これは現在の年間EBITDA が約0.9兆円なので1倍という評価と割安感をアピール。
「アップサイドを見るべき株主にとって今が株を買う最大のチャンスだ!」というパフォーマンスを言ってしまうところは流石です。
(*なお、決算短信では、2012年6月時点での有利負債は1兆5582億円で現預金は7581億円、純有利子負債は8001億円となっています)

ソフトバンクとのグループシナジーは下記のポイントが強調されました。
・スマートフォン戦略(ソフトバンクは日本国内でスマホナンバー1の実績)
・LTE戦略(米国は通信速度が遅い。インターネットソフトバンクには平均通信速度で日本国内ナンバー1のネットワークのノウハウがある)
・V字回復のノウハウ(日本テレコム、ボーダフォン、ウィルコムをいずれもV字回復をした実績)

プレゼンでは、「この投資は成功しますか?」「自信があります」、「借入金の返済は可能ですか?」「自信があります」と力強く展開。
また、「生きているうちに必ず世界一になる」と意欲を語っています。

プレスリリースでの公式文は次の通り。
「「今回の取引は、ソフトバンクがスマートフォンやLTE等の次世代高速ネットワークの知見を活用して、世界最大の市場である米国でモバイルインターネット革命を展開できる素晴らしい機会だと考えています。日本ですでに実証済みのとおり、ソフトバンクは既存事業者が大きな力を有していた市場に参入し、差別化された商品や革新的なサービスを投入することで、買収したモバイル事業の業績のV字回復及び飛躍的成長を実現させてきました。こうした革新の実績をスプリントの強力なブランド及び現地のリーダーシップと組み合わせることで、米国モバイル市場の競争を活性化させる前向きな一歩を踏み出すことができると確信しています。」

2012年10月15日の17時から会見が行われ、各メディアが一斉に報じています。
・東洋経済「米携帯3位買収で孫社長「目指すは世界一」」⇒会見での孫社長と報道陣とのやり取りを一問一答が掲載
http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/4ed3a4686fbbabe2f68f33a0e397fe7f/
・ロイター「ソフトバンク<9984.T>、米スプリントを1.6兆円で買収 売上高世界3位の携帯会社に」
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK052975520121015
・Bloomberg「ソフトバンク:米スプリント社買収−株7割を1兆5709億円で取得」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MBXD5B6JTSEP01.html
・c-net 「スプリント買収に“2つの疑問”--孫社長、解決に「自信がある」」
http://japan.cnet.com/news/business/35023088/
・c-net 「「孫正義の決意「私が生きているうちに必ず世界一になる」」
http://japan.cnet.com/news/business/35023085/
・マイナビニュース「「規模においてはドコモを抜いた」 - ソフトバンク孫社長がSprint Nextel買収について説明」
http://news.mynavi.jp/news/2012/10/15/133/index.html
・日経「ソフトバンク巨額買収 どうみる孫社長の戦略 プロの評価」

(*1)
M&Aでは買い手はプレミアムを支払って買収します。株式の大部分を買い集めるには1株単位で取引されている今の株価より上乗せして株主みんなが納得する価格を提示する必要があるためです。
この「プレミアム」には買収後のシナジー効果が見込まれています。
実際に買収前のシナジー効果のプランを実現することは難しかったり、高い買収価格を正当化するために無理なプランで買収をしてしまうことにより、結果として高値掴みをして、過去の多くのM&Aのケースで株主の価値が毀損されているという多くの研究報告がされています。
観測報道がされ、今回のケースのように買収額が巨額であり、高いプレミアムとなるのではないかという懸念や、ボーダフォン買収から順調に削減されていた有利子負債が増加し財務が悪化するという懸念、買収手法によっては株式の希薄化が行われるのではという懸念が重なり、詳細が分からないことも相まって株価の大きな下落になったと言えます。
思わぬ割りを食ったのは、大きなプレミアムで喜んでいたがまだ保有し続けていたイー・アクセスの株主かもしれません(イー・アクセスの株価は株式交換の実行まで株式交換比率でソフトバンクに連動することになります)。

関連記事:
2012/10/1 孫さんは損する?損しない? ソフトバンクがイー・アクセスを破格のプレミアム245%で買収 http://money-learn.seesaa.net/article/295065037.html

マネーのネタ帳:
2012/10/2 ソフトバンクによるイー・アクセス買収は孫社長の素早い決断 発表翌日の株式市場は高評価
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/10/blog-post_7174.html


ラベル:ソフトバンク M&A
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