2012年09月19日

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々(藤沢数希/著)読後の感想

ブログ’金融日記’で有名な藤沢数希さんによる「外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」を読みました。著者は、外資系投資銀行のプロップ・トレーダーということです。

「外資系投資銀行」「グローバル金融」を題材とした経済エンターテイメントとして一級品の面白さだと思いました。
扱っている内容は堅いのに、時に本質を突きながら、面白い表現や言葉で語る文章力は凄いですし、ニュース記事等からの情報をよく整理されています。あんまり真面目に真に受けたり、やっかんだりせず、エンターテイメントとして面白おかしく読むには秀逸です。

外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々
藤沢 数希
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 29

初版発行日 2012年9月13日
全237ページ ・ソフトカバー

内容面では、「外資系投資銀行」と「グローバル金融・グローバル金融システム」に分けられる感じです。

○「外資系投資銀行」については私なりに下記のように著者の主張を解釈しました。
若くして上場会社の社長並みの給料を貰える外資系投資銀行は、給料という面ではサラリーマンのヒエラルキーの最高峰。
外資系投資銀行にも色々なお仕事があるけど、外資系投資銀行の中でのヒエラルキーのトップはプロップ・トレーダー。プロップ・トレーダーは投資銀行自身の巨額のカネを使って自らの判断でトレーディングを行い、金融市場で儲けるお仕事。稼いだ分の一部が報酬(主にボーナス)として反映される。
投資銀行の実態はヘッジファンドになっていて、今や収益の大半は自己資金とレバレッジを使ったトレーディングで稼いでいる。
けど、金融危機以降は世間からの風あたりが強くなって規制が厳しくなって、投資銀行自身の取れるリスクに制限がどんどん増えるわ、ボーナスが数年置きに分割払いになっちゃうわ、ベースがちょっと上がってボーナスが少なくされるわで、もらえるカネも少なくなってきた。ゴールドマンのグローバルの年収水準を例に見ると、サブプライムバブルの頃は平均7000万程度だったが、サブプライム危機以降はたったの3000万程度に減ってしまった。意味のない分割払いのせいで人は居残るようになって辞めなくなっちゃったし、年功賃金化してきた。それでも、言われたことを朝から晩までやんなきゃいけないサラリーマンにあって、外資系投資銀行が最高の給料をもらえる最高の仕事であるところに変わりはない。いきなり本社から人員整理の通知が問答無用で来たときは、誰かのクビが飛ぶから(使えない奴か上司の地位を脅かす奴であることが多い)、クビにはならないよう振る舞わなくてはいけない。
各機能で優秀な奴はどんどん独立していく時代になるだろう。インターネットにより実力があれば独立してもやっていける環境整備が出来てきているし、コングロマリットであるが故に個々では曲がったインセンティブになっていることが解消される。

○「グローバル金融・グローバル金融システム」では近年のグローバル金融・経済のお話が説明されています。
テーマは、
・マネーゲームが膨張している。損失額がニュースになるときの金額のケタがどんどん大きくなっている。
投資銀行は金融コングロマリットとなり、金融システムと複雑に絡み合っていて、レバレッジを掛けたトレーディングで失敗しちゃっても潰せない(Too big too fail)な状態である。
・トレーディングで成功すれば多大なボーナス、失敗してもクビになるだけのトレーダーのインセンティブ構造が良くないと、様々な規制が導入されている。
・欧州債務危機の発端となったギリシャがユーロに入れるようにゴールドマン・サックスが手ほどきしていた。
・借金を返せない貧乏人に住宅ローンのカネをじゃんじゃか貸して、証券化という仕組みで世界にバラまいた結果、サブプライム危機は起きた。その裏では、サブプライムのCDSでぼろ儲けしたヘッジファンドがいた。
といったあたりが扱われています。

最後の文章は、「僕も現在、ヘッジファンドの設立に向けて準備を進めているところだ」。どのようにやっていくのかが非常に興味深いものであります。

多少残念だった点は、内容の、94%位は一般情報でカバー出来るものであり、著者の独自の体験談や投資銀行での業務についてはあまり多くは書かれていないことでした。このあたりは、個人が特定されるリスクをヘッジする著者の意向かもしれません。

最後に1点蛇足ながら、「異常にケチの多いトレーダー」でのくだり。
好きな女の子に’1万円’程度のディナーは奢ってセックスがしたい藤沢さんと、デートを割り勘を貫き通したい友人の年収5000万円の山田君の会話で、「割り勘によってカネに目当ての女が去るかどうかでスクリーニングしている」と言う山田君に、「もっともでどこまでも正しい」と、あっさり引き下がったところに、違和感が。藤沢さんのキャラであれば、「なるほど、山田君は愛を確かめたかったということだ。女の子とスムーズにセックスというリターンを得るための最低限の投資をしている僕とは目的と価値観が違ったわけだ。冷静で合理的な判断を追及するトレーダーも血が通った人間なのだ。」くらいの返しがあっても面白かったかなあと(笑)。

目次は、金融日記 2012/9/14 「金融業界に激震:『外資系金融の終わり』ついに発売」にあります。
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/51927102.html#comments

参考記事:
マネーのネタ帳2012/9/20 リストラの嵐の外資系金融機関 厳しい雇用環境が続く見通し
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/09/blog-post_3577.html


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