吊られた男さんの解説にある通り、「長期的には為替レートが両国のインフレ率に応じて調整されるので、名目金利は違っても期待リターンは同じ」になり、「外国債券と国内債券の期待リターンは同じ」というのが基本的な理解で構わないと思います。
高配当ETFで戦略的インデックス投資日記さんの2012/9/5付の記事「外債不要論は為替ヘッジなしに限る」では、吊られた男さんの記事を噛み砕いて説明がされており、
・海外債券ヘッジなしリターン = 海外長期金利 - (海外長期金利 - 国内長期金利)⇒海外債券ヘッジなしリターン = 国内長期金利
・海外債券ヘッジありリターン = 海外長期金利 - (海外短期金利 - 国内短期金利)
というのが(長期で見た場合には)基本的な関係として成り立つという意味が説明されています。
このあたりの説明が、山崎元「ホンネの投資教室」 > 第116回 外国債券の期待リターンで詳しくされています。山崎元氏は、この基本原則をもとに、海外債券と国内債券の長期的な期待リターンは同一であり、個人投資家は海外債券は必ずしも必要ないのではというスタンスのようです。
吊られた男さんは、「以下の2つの条件が満たされている場合には、外国債券を買う超過リターン狙い戦術」もあると説明しています。
(1)日本が低金利でイールドカーブがフラット化
(2)対象の外国債券のイールドカーブがスティープ化
イールドカーブのスティープ化とは、短期金利と長期金利の差が大きくなった状態で、イールドカーブの傾斜角度が急な右肩上がりになった場合、すなわち、短期金利と長期金利の金利差が大きくなった状態です。
*SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集「スティープ化/スティーブニング (スティープか/スティープニング)」
例えば、
・日本円:短期金利0%、長期金利1%
・外国通貨:短期金利0.5%、長期金利5%
といった状態のとき、長期的な為替変動による期待リターンは-4%/年。「対象通貨の残存期間が長い国債を保有しつつ短期金利で為替ヘッジをすると」、「100%為替ヘッジすれば為替変動の影響は0」になり、「短期金利差は0.5%なので、短期金利で為替ヘッジをすれば0.5%のヘッジコストで-4%の為替変動を無しにできます」と説明がされています。
社会保障審議会年金数理部会資料 - 23ページを参考とされており、当該資料では為替ヘッジについて下記の通り説明がされています。
ヘッジ外債利回り=海外長期金利 − ヘッジコスト
ヘッジコスト=(スポット為替レート − フォワード為替レート)/スポット為替レート≒海外短期金利 − 日本短期金利
ヘッジ外債の超過利回り=ヘッジ外債利回り − 国内長期債利回り=海外長短金利差 − 日本長短金利差
海外長短金利差 > 日本長短金利差の時には、ヘッジ外債の超過利回りに投資妙味がありそうということになります。
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーさんの2012/2/7付の記事「いま、「為替ヘッジあり」の外債ファンドが儲かる!?」では、図表などが引用されより分かりやすい解説がされています。
日経の「いつかは経済自由人!」2012/2/7付「「円高でも為替リスクなしで海外高金利」の謎」では、いずれヘッジコストが上がる場合に備え、「その際の様々な運用対象商品の日米金利差と、ヘッジコストとの差が縮まってしまわないかどうか」はよく見る必要があると解説されています。なお、新興国債とかハイ・イールド債の、ヘッジコストより運用対象の金利が高い状態は信用リスクを含んでいる点にも注意が促されています。
近年の為替ヘッジ付の海外債券の投信のパフォーマンスが良好のものがあるようですが、ヘッジ外債の超過利回りに理由の1つがありそうです。
・2012/8/11 長寿の投資信託はパフォーマンスも良い!?専門家の注目する投資信託を検証
Bloombergの2012/8/10付の記事「PIMCOエラリアン氏:利回り曲線のスティーブ化に留意を」では、米国債市場でのイールドカーブのスティープ化に投資家は留意すべきとし、「年限が8年以下の米国債利回りは金融当局の政策により抑えられているが、より長めの国債については投資家は注意が必要」で、「利回りの水準よりも、イールドカーブの形」に留意すべきで、「ロングエンドの方がずっと大きなリスクにさらされている」とのコメントが報じられています。
ラベル:為替ヘッジ
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