日経(2012/8/31付)の記事「財政黒字化、増税でも15兆円不足 20年度政府試算」では、「財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)をめぐり、赤字幅を国内総生産(GDP)比で半減する目標は達成できるものの、20年度に黒字にする目標には届かない」とし、「黒字には最大で15.4兆円足りず、10%への消費増税後のさらなる歳入面での改革と、成長力強化への取り組みが必要となりそう」と報じています。
ただ、 この目標は「財政再建に向けた通過点にすぎない」(財務省)とのコメントを伝え、「PB黒字化という目標達成に向けて追加増税に関する議論が活発になる可能性が高い」との見通しを伝えています。
産経新聞(2012/08/31)は、「経済成長と消費増税に伴う税収増だけでは財政再建が進まない事態も浮き彫りになった」と報じています。
消費税増税が行われて税収増がされても、国の赤字のマイナスが減るだけで、国の支出は収入を上回る状況が続き、国の借金(国債残高)は減らないということです。
一方、消費税増税のタイミングについて「経済状況の良くない時に増税するのは反対だ!」という声もありますが、国家予算のあり方や社会保障の根本自体を見直さないでそのような声だけあげたところで、耳あたりの良いポピュリズムとしか思えません。(増税されたり給付が削減されたりして個人的には全く嬉しいことではありませんが)
日本の現状は既得権益の温床による無駄や、産業のイノベーションや新陳代謝を歪める政策が多いと国民の多くは感じているはずです。
改善できることは徹底的にやってもらわないと、増税や給付削減はやはり国民感情としては納得出来ないでしょう。
メディアの報道の仕方や、政治・政策に無関心の国民にも責任はあるのですが。
きちんと現状を伝え、改革に断固とした姿勢で臨むリーダーは果たして現れるのでしょうか・・・
内閣府の試算のデータを見ていきます。
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内閣府ホーム > 経済財政政策 > 中長期の経済社会の展望と取組 > 経済財政の中長期試算
「経済財政の中長期試算(平成24年8月31日)(PDF形式:307KB)」より
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/shisan.html
成長戦略シナリオと慎重シナリオという2つの前提の下で試算が行われています。
(1) 成長戦略シナリオ
堅調な内外経済環境の下で「日本再生戦略」において示された施策が着実に実施され、2011〜2020年度の平均成長率は、名目3%程度、実質2%程度となる。消費者物価上昇率は、2012年度にプラスとなった後、中長期的には2%近傍で安定的に推移。
(2) 慎重シナリオ
慎重な前提の下で、2020年度までの平均で名目1%台半ば、実質1%強の成長。消費者物価上昇率は、2012年度にプラスとなった後、中長期的には1%近傍で安定的に推移。
と定義されています。
経済成長率の実質成長率と名目成長率は下記のように予測しています。
名目成長率からインフレ率を修正したものが実質成長率です。
ぱっと見では、○○危機のような事態はなく安定した経済成長が見込まれていますが、実質成長率はそんなに高い成長率を見込んでいるわけでもないように見えますが、名目成長率はちょっと強気な印象もありますね。
それはそう、消費者物価上昇率がプラスを見込んでいます。
長年のデフレ脱却が果たされ、「慎重シナリオ」においても、安定した成長が果たされることが想定されているようです。
基礎的財政収支(プライマリーバランス)は徐々に減っていますが、図表の1番上が0%なので、いずれにしてもマイナスが続くことになります。
成長率の見通しがプラスで分母が増えるため、国の債務残高は「成長戦略シナリオ」では何とか微減、「慎重シナリオ」では増え続ける、という状況です。
なかなか厳しい状況であります。国民としては将来不安は拭えませんね。
下記の記事で伊藤元重教授のかなり手厳しい改革の必要性が訴えられています。
マネーのネタ帳:「消費増税でも日本は増税・かなり突っ込んだ社会保障費の抑制が必要」(2012/8/23)
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/08/blog-post_9924.html
マネーのネタ帳関連記事:
・日本の国債相場が安定している理由(2012/8/15)
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/08/blog-post_6211.html
・消費増税法を巡る与野党調整の難航に市場は敏感に反応(2012/8/20)
http://moneyneta.blogspot.jp/2012/08/2012811-100.html
ラベル:財政収支 プライマリーバランス
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