2012年07月14日

長期の資産形成と自分年金の作り方を考える(3) 実際に行う際のいくつかの留意点

前回と前々回では、資産形成期間を20年と置き、一定の利率で複利運用を行い、21年以後は自分年金として定期収入が入ってくる場合を前提として、運用期間の最初に一括で投資をするパターンと、毎年積み立て投資をするパターンでシミュレーションを考えました。

ただ、このようなシミュレーションだけでは、誤解や疑問が生じるとも思いましたので、私が考えるいくつかの留意点として、以下の点を補足しておきます。

・一定のリターンを上げ続けることは難しい
シミュレーションでは、0%〜6%までの一定の利回りを複利で20年間運用するという計算を行いました。
ところが、特に目標利回りを高く設定すればするほど、日本の現在の金利環境では、円建てで実際にその利回りを長期にわたって実現していくことは難しいのが現実です。「長い期間で1%の差は大きい」と指摘したものの、皮算用の計算にならないよう、目標は低めに設定することが安全です。上振れる分には困りませんから。準備と学習をした上でも目指すべき無理のないリターンは3〜5%程度だと思います。20年複利で2倍になる利回りは3.56%です。金融・投資が本業でない多くの人にとって、本業の仕事をしながら大きな労力を伴うことなく目指すリターンとしてはそんなところが妥当なのではないかと個人的には思います。

・元本の価格変動リスクを理解する
至るところで繰り返しハイリスク=ハイリターン、ローリスク=ローリターンだと説明されている通り、基本的には、金融商品はリスクとリターンが見合っています。
日本語の用語の定義が良くないと思いますが、リスクとは元本の価格変動の大きさを言います。
そして、基本的には、金融商品の価格変動の大きさはリターンより大きい。例えば、年間3%のリターンを見込まれる金融商品でも、元本の価格変動は普通に10%とか20%で起こります。
3%の目標利回りを持ったとして、いざ100万円の投資を行ったとします。1年という単位では、90万円や80万円になることはザラです(もちろん、110万、120万にもなり得るのですが)。そのような変動をしていきながら、長い期間で振り返ると年間3%ずつ増えることが期待できるということです。
リターンは結果論であり、コントロール出来るのはリスクだけだというのは、自分でやってみてそれなりの経験を積むまではなかなか身を持って分かりませんので、最初は、少ない金額で慣れていくことも必要ではないかと思います。

・長期的視点で取り組むことの難しさ
上記の価格変動リスクの大きさとも関連しますが、金融商品の価格は振れ幅は大きく、目標利回りに従って一直線に価格が上っていく金融商品は定期預金(ペイオフを考えなければ元本の価格変動がゼロの変わりにリターンも低い)くらいです。そのため、価格変動に翻弄されて今の方法が良いのか悪いのか迷いが出たり、短期的な値下がりで精神的にダメージを受けることがあります。それで、途中で継続を辞めてしまったりすることも多いかと思います。資産運用は長期で行うのが正しいとよく聞くし言葉で理解できても、長期的に正しいことをしているという確信を持つことは意外と難しいようです。年金が長期にわたって別途運用される理由も、このあたりに一つの理由があるのではないでしょうか。
「資産運用は長期で考えるのが良い」と謳われるほどには個人の資産運用に長期運用は根付いていないのかなという気がします。加えて、顧客の長期的な利益にコミットし、長期の資産運用について信頼出来るアドバイザーというのが日本に極めて少ないという事情もあるかと個人的には思っています。




・元本確保の信仰
「元本の価格変動リスクを理解する」「長期的視点で取り組むことの難しさ」にも関連しますが、日本人特有なのかどうかは分かりませんが、元本確保への信仰が非常に強いように見受けられます。リスク資産(株式・債券・為替等の全般)に投資をすれば、よほどタイミングよく投資を行わない限り、1年を通して、一度も元本を割れないということはなかなかありません。(だから仕組債のような商品がいつまでも売れるのでしょう)
絶対に元本を割るリスクを取りたくないという方は、残念ながら資産運用はしないか、資金を動かす自由度は減りますが保険商品等で検討するしかないかもしれません。むしろ怪しい勧誘に引っかからないような注意も必要です。
ですが、期待リターンがプラスの金融資産を適切に選んで「長期間」保有すれば、最終的に元本割れになる可能性はあまり高くない、ということはきちんと学習すれば理解できますし、必要以上に恐れることも減るのではないかと思います。

・信託報酬等は長い間に大きな金額を負担していることになる
資産運用の相談は、多くの人は、銀行や証券会社でされるのではないかと思います。銀行や証券会社は販売のコミッションで設けていて、年間の信託報酬の販売程が販売金融機関に渡るので、高コストになります。銀行や証券会社で低コストのインデックス商品やETFが勧められるとは聞きませんし、売れ筋を熱心に勧められるのが中心ですほぼ必ず投資信託か年金型保険商品が勧められると思います。まず、販売手数料があるので、買った瞬間におよそ3%程度が投資額から減ります。投資信託には信託報酬という自動的に差し引かれるコストがあり、年間1%〜2%差し引かれます。前回の記事で、年間1%の差は長い間に結構大きな差が出ることが分かりました。リターンは不確実でもコストは確実に掛かります。’プロに任せるコスト’としての費用対効果を認識する必要があります。
現在組成されている投資信託はほとんどが分配型投信ですが、分配の都度、税金が源泉徴収され、再投資しても利回りの低下の要因になります。
年金型保険商品は複利の利回りで何%分を回収できるか、きちんと計算してみましょう。運用というニーズだけで考えれば、保障なども付いていてかえって分かりずらいですが、他の手段を含めた自分の目標リターンと照らして考えたいところであります。

・資産を組み合わせる(ポートフォリオを組む)
自分にとって必要なリスクやリターンはどの程度で、株式か債券か不動産かコモディティか、国内か国外か、どの資産クラスをどの割合で組み合わせていくのかということから考えるのが長期資産形成での王道の方法です。絶対的な正解はありませんので、やるかやらないかの方が大事ですので、厳密に考えるよりも、特に最初はアバウトなイメージだけでも良いかもしれません。教科書的には、ポートフォリオを組むことによって、期待リターンに対して価格変動の大きさを抑えることが出来ます。
このあたりは別途おいおい本ブログでも考えていきたいと思っています。
不思議なことに、現状、金融機関では、「どのように金融資産を組み合わせるべきか」という提案は富裕層以外ではあまりされないように見受けられますが、今後サービスとしても増えていくのではないか期待します。


【本ブログでの関連記事】
・2012/7/12 長期の資産形成と自分年金の作り方を考える(1)
http://money-learn.seesaa.net/article/280414842.html
2012/7/12 長期の資産形成と自分年金の作り方を考える(2)
http://money-learn.seesaa.net/article/280577462.html
・2011/1/8 単利 複利 現在価値 について(ファイナンスの基本)
http://money-learn.seesaa.net/article/179534122.html
・2010/12/30 72の法則 とは
http://money-learn.seesaa.net/article/177520727.html
・2012/7/2 J-REIT投資の分配金と資産形成について考える(2)  −J-REITの分配金と株価のトレンド
http://money-learn.seesaa.net/article/278575756.html
・2012/6/28 J-REIT投資の分配金と資産形成について考える(1)
http://money-learn.seesaa.net/article/277673639.html
・2011/5/18 パーソナル・ファイナンス(個人のお金の管理)について考えてみた
http://money-learn.seesaa.net/article/202102810.html
・2012/6/27 自分年金をつくる 岩崎日出俊/著
http://money-learn.seesaa.net/article/277491578.html

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