2012年07月12日

長期の資産形成と自分年金の作り方を考える(1)

本稿では、長期的な資産形成のための資産運用と「自分年金」について考えていきたいと思います。
前回前々回の記事では、J-REITの分配金利回りの状況について全体感を把握しました。
J-REITは日本国内の流動性ある投資対象の中では配当利回りが高く、不動産賃料収入というキャッシュフロー裏付けがあるため(個別には良い物件ばかりではない、スポンサーとの利益相反問題がある、公募増資による希薄化などの懸念はありますが)、基本的にはゼロになるような可能性は低く、個人的に興味のある投資対象でもあるわけですが、一方で2009年から2012年の値動きを観察する限りでは、J-REIT株価の値動きはTOPIX並みに変動しつつ分配金の増減に連動します。J-REITは資産運用の一部に組み入れるべきかどうかという観点であり、J-REITだけでどうこうしようと言うものではありません。

「自分年金」とは、老後の生活を維持するための資産形成や公的年金を補完するものとして自分で積み立てるものを総称です。
「自分年金」において考える点は大きく2つ、資産形成の段階と、取り崩していっても生涯十分な資産残高を得るか配当金等で生活を補完するキャッシュフローを生む資産を運用する段階があるかと思います。

J-REITのような分配金に着目する資産は、資産形成よりも、生活を補完するキャッシュフローを生む段階に適しているとも言えます。
また、分配金収入を期待するにしても、ひとつの資産クラスに大きく傾斜するよりも、国内外の高配当株式や債券など、様々な資産の組み合わせをすることにより、通常は安定度が増しますので、特定の投資対象ばかりを推すものではありません。

という前提を置き、例えばということで、自分年金、資産形成と分配金収入の作り方をイメージするために、J-REITで運用した場合を念頭に考えていきます。

まず、資産形成期間を20年間置き、残高を減らさずに配当金を月いくら得られるようになるかを見ていきます。

仮に、3%・4%・5%を毎年安定的に得られ続ける資産があるとします。
1000万円を当初元本として、一括で3%・4%・5%の配当or分配金(税引き後)のある資産へ投資し、分配金を20年間再投資により元本に組み込み続けた場合の累計資産形成金額と、21年後以降それぞれの利率において毎月得られる金額はいくらになるでしょうか?再投資とは、分配金は自分で使わずに運用資産へ投資することです。21年後以降得られる金額は、資産残高を減らすことなく、安定的に入ってくる金額です。
計算すると、
3%・・20年後の資産残高 18,061千円。21年以降に毎月得られる金額 45,153円
4%・・20年後の資産残高 21,911千円。21年以降に毎月得られる金額 73,037円
5%・・20年後の資産残高 26,532千円。21年以降に毎月得られる金額110,554円
となります。




毎月得られる金額は、それぞれの複利の利回りを20年後の資産残高に掛けて月額に換算した金額です。
3%と5%では随分変わってきます。20年後の資産残高は7.7百万円も異なり、毎月得られる金額も倍変わることが分かります。配当を毎年再投資するということは複利で運用するということなので、いわゆる「複利効果」が効いているためです。

もう少しイメージを持つために、当初元本と利回りを変更していくつかのパターンを作ってみます。
当初の元本を100万円、500万円、1000万円、1500万円、2000万円として、1%〜6%までそれぞれの利率で複利で20年間運用すると下の表の金額になります。
20年間複利で運用した場合の当初元本の20年後の金額.jpg
この場合に、21年後以降に、運用したのと同じ利率で配当として毎月入ってくる金額です。
20年間複利で運用し、21年以降に月額で得られる配当金収入.jpg


0%の場合には、資産残高はそのままですで、入ってくる分配や配当金もありませんから、20年後に元本はそのまま変わらず、毎月入ってくるお金は0円です。
5%だと、元本は2.6倍になり、当初元本の1%+ちょっとの金額が毎月入ってくる計算になります。
これが、長期的視点をもって資産形成を行うことの有効性とも言えます。
ちなみに、20年間で元本が2倍になる複利の利率は3.56%です。3.56%以上の利回りで20年間複利運用し続けると、元本は倍以上になります。72の法則で、72÷20で3.6と近似計算も出来ます。

どのくらいの目標利回りを目指すかは、自分の取れるリスクとの兼ね合いで考えます。1%の利回りにより20年後の元本はかなり変わってきますが、あまり欲張りすぎて大きなリスクを取り、短期的に痛い損失を蒙って「もう2度と投資はやめよう」となりかねないので、資産運用は計画的に行いたいところです。
(続く)


【本ブログでの関連記事】
・2011/1/8 単利 複利 現在価値 について(ファイナンスの基本)
http://money-learn.seesaa.net/article/179534122.html
・2010/12/30 72の法則 とは
http://money-learn.seesaa.net/article/177520727.html
・2012/7/2 J-REIT投資の分配金と資産形成について考える(2)  −J-REITの分配金と株価のトレンド
http://money-learn.seesaa.net/article/278575756.html
・2012/6/28 J-REIT投資の分配金と資産形成について考える(1)
http://money-learn.seesaa.net/article/277673639.html
・2011/5/18 パーソナル・ファイナンス(個人のお金の管理)について考えてみた
http://money-learn.seesaa.net/article/202102810.html
・2012/6/27 自分年金をつくる 岩崎日出俊/著
http://money-learn.seesaa.net/article/277491578.html
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