2012年06月19日

絶対リターンを狙うファンドは「絶対に」儲けないといけないのか?(日経記事『AIJ社長、破綻状態で利回り約束「絶対のリターン」 』より)

2012/6/18付の日経新聞の社会面で、年金消失問題でAIJ投資顧問が「絶対リターン」を謳っていた事自体を問題視するような記事がありました。

日経『AIJ社長、破綻状態で利回り約束「絶対のリターン」 』より
・AIJ投資顧問(東京・中央)による年金消失問題で、同社の浅川和彦社長(60)が年金基金に投資信託を売り込む際、「絶対リターン商品」などと確実に利回りが得られるかのような勧誘をしていた
・自ら運用実績を水増しした虚偽の運用成績を説明。「絶対のリターンが得られる」などと契約を促していた
・基金の担当者は取材に対し「まことしやかな説明を受け、期待利回りが高かったので選んでしまった」などと話している

運用の世界では、例えば日本株式で運用する場合にはTOPIXなど日本株式を代表するベンチマークと比べて買ったか負けたかを重要な指標とします。そこでは、「相対的」な評価がされます。
しかし、投資家にとっては、お金が増えたか減ったかが重要です。TOPIXが20%下がった期間に「うちのファンドはマイナス10%だから勝ちました」という話になっても嬉しくないわけです。
ただ、株式の現物のみの売買で運用していればどうしても相場全体の影響を受けます。相場全体の影響と個別の力量を分けて成果を考えるというのが趣旨になります。TOPIXが10%上がった期間に「うちのファンドはプラス10%だから勝ちました」と言われてもそれはそれでダメなわけです。

そこで、ヘッジファンドをはじめとして、相場変動に関わらず、リターンを上げることを目指す運用手法が行われています。それらは、株式の買いだけでなく空売りをして相場全体の影響をなくしたり、オプションを使ってリスクヘッジしたりという方法を取ります。
ここでは、「相対的」な評価ではなく、相場全体がどうであっても、プラスだったかマイナスだったかの「絶対的」な評価がなされます。
これを「絶対リターン」と言い、「絶対リターン」を目指しますというのは全く悪い話ではありません。

「相対リターン」の対義語として「絶対リターン」と言う訳ですが、日経の記事では「絶対リターン」を「確実なリターン」と説明しているように読めます。
AIJでは、要は、ウソをついて勧誘していたのが悪いわけで、「絶対リターン」を謳っていたことが悪いわけではないのが本質です。
日経の記者も「絶対リターン」の意味は分かっていて、悪質性を強調するための言い回しをしたかったのだと思いますが、このようなことを知らない人を勘違いさせるような書き方をするなあと思いました。




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