2012年06月11日

粉飾決算(財務諸表の虚偽記載)による上場廃止ルールの変更見通し

2012/6/9付の日経新聞で、東京証券取引所が粉飾決算(財務諸表の虚偽記載)による上場廃止ルールを見直す見通しが伝えられています。
「今後はすべて、企業統治に問題があることを示す特設市場に移し取引を継続、3年間で状況が改善しない場合に上場廃止にする。手続きを透明にし売買もしばらく継続することで、投資家の信頼を高める考え」であるとのことです。「東証は金融庁との協議を進めたうえで今夏の取締役会で上場廃止基準の改正を決めたい考え」で「年内にも実施」の方向のようであります。

現行では、上場企業の財務諸表に虚偽記載があり、東証が「影響が重大」と判断した場合に上場廃止となるというルールになっています。
ただ、この「影響が重大」という判断が明確でないため、憶測を伴い株価が乱高下する要因となったり、過去の事案との整合性が図られていないなど、特にオリンパスの件において批判が起こったことに対応したようです。オリンパスの件では外国人投資家も多く、諸外国では日本のような粉飾決算による上場廃止ルールはないらしく、上場維持の要望が多く寄せられていた経過もありました。

財務諸表の信頼性が保たれていることは株式市場の信頼性のインフラであるため、重要な粉飾決算を行った企業は市場から排除することによって、株式市場全体の信頼性を確保するというのが現行ルールの趣旨であったのかと思われます。しかし、粉飾決算をしたことで悪いのは不正を働いた企業の経営者であり、そのことを知り得ずに株式を購入した投資家は粉飾決算が明らかになった時点で株価の値下がりという損失を受け、さらに、上場廃止により流動性がなくなるという二重の損失により、「虚偽記載を理由とした上場廃止という措置は、不正を働いた企業だけでなく、その被害者ともいえる株主も厳しく罰せられるという側面も持つ」ことになります。
「株式市場が「不正に甘い」という印象を持たれてはいけない」ため、虚偽記載を行った企業は「特設注意市場銘柄」に割り当てられます。「「特設注意市場銘柄」銘柄に指定された企業は毎年、内部管理などの体制をチェックされ、3年たっても改善が不十分と東証が判断した場合、上場廃止となる。上場廃止の判断ポイントが虚偽記載の悪質性から、再発防止に向けた企業の取り組みへと移る」ということです。




方法論としては、一部や二部・マザーズとは別に「特設注意市場部」といったような特別市場を設け、全く別の取引の場へ移すというのもあり得るのかと思います。個人的には、事情はあれ、上場廃止という措置はいったん上場している企業の取引の機会を完全に奪うものであるため、結果、現に取引をしている株主の保護にならないと思います。上場廃止が決定した時点で流動性がなくなることが嫌気されて取引機会が確保されている場合よりも低い株価になってしまい、必要以上の損失を受ける場合もあるように思えます。虚偽記載以外での上場廃止銘柄も同じような取扱いでも良いのではないかと思わないではないです。

*「」は日経記事の引用部分になります。

【本ブログでの関連記事】
・2012/1/21 オリンパス上場維持決定!
http://money-learn.seesaa.net/article/247509665.html
・2011/12/6 オリンパス第三者委員報告と大量保有報告書
http://money-learn.seesaa.net/article/239071441.html
・2011/12/4 オリンパス 上場廃止か維持かの可能性についての論点まとめ
http://money-learn.seesaa.net/article/238620624.html

【関連記事】
・ダイヤモンドオンライン 保田隆明 株ニュースの新解釈(2011年12月9日)
http://diamond.jp/articles/-/15257
・ロイター 訂正:焦点:オリンパスの上場維持・廃止、東証判断に複数シナリオ(2011年11月21日)
http://jp.reuters.com/article/economicPolicies/idJPJAPAN-24249420111121

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