普通に暮らしていて「骨肉の争い」というものはあまり実感がないものではありますが、相続での争いは普通の家庭でも「争続」が発生する可能性はあります。相続争いと言うと、お金持ちで起こるものだと思いがちですが、相続争いになったケースでは「5000万円以下」が増加してきているとのことです。
本書「モメない相続」では、相続のあらましや、気を付けておく点、弁護士で相続の案件に経験豊富な著者が相続争いの現場で見てきた事情などについて平易で分かりやすく説明がされています。
モメない相続 (朝日新書)
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長谷川裕雅
朝日新聞出版 (2012-05-11)
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初版発行日 2012年5月30日
全196ページ ・新書
相続でモメる状況は、心情の問題、自分たちの生活の問題、配偶者たちの意見など様々な事情が絡み合っているもののようです。
大きく分けると原因は3つ。
・親が生きているうちの行動(親の介護、親からの生活援助、育てられた過程での不公平感)
・不動産など、分けられない財産(相続財産が不動産といったお金で分けられないものが過半の場合には誰が引き継ぐかや評価の問題)
・「全員合意ルール」を乱すトラブルメーカー(遺産分割協議は全員合意が必須。相続人の配偶者などの意向がややこしくする。親子や兄弟の仲が悪い、愛人、連れ子の存在、養子縁組をした)
メモ/
・法定相続の基本は配偶者が1/2、子どもが1/2を均等分割。(子どもが2人の場合は1/2を均等に分ける)
・配偶者の有無、子どもの有無によって、親・兄弟へ相続される。相続される割合はそれぞれの場合で異なる。
・遺言によって被相続人の意思により相続を分けられるが、遺留分は保証される。相続人が配偶者と子どもの場合、遺留分の割り合いは1/2(配偶者1/4、子ども1/4)。
・両親のうち片方が亡くなったときの一時相続より、残された親が亡くなった二次相続の時がメモやすい。
・相続人の間で相続財産の分け方の話し合いをすることを「遺産分割協議」という。全員合意が必須。(⇒1人の「モンスター」がモメる原因を作る)
・相続財産の調整⇒
−「特別受益」・・親(被相続人)から結婚資金、子どもの進学資金、マイホーム購入資金等の援助の援助は特別受益として、被相続人の財産に含める。相続人の間での遺産を分ける不公平を解消のため。生前贈与でもらった財産も相続財産の一部とみなし、生前贈与された財産と親が亡くなったときの財産を調整して財産を分割することがある(特別受益の持ち戻し)。(p63)
−「寄与分」・・親(被相続人)の事業を手伝ったり、財産の維持もしくは増加に特別の貢献をした場合などに認められ、その分、他の相続人よりも多めに財産を相続できる。(p67) ハードルは高い。例えば、仕事の傍らで通って介護した程度や自宅で同居しながら家事分担程度では、親族として当然の協力の範囲として、認められない。
・不動産を複数人で所有する「共有」はデメリットが多い。共有者の同意がないと売却できない、共有者がさらに相続していくことによって関係者が広がっていき意思統一が難しくなる。
著者が指摘している通り、身内との話し合い、遺言の作成、財産の把握、生命保険の利用など、家族間での理解や事前の対策が大切です。
本ブログでも、相続は重要な勉強テーマとしていきたいと思います。
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