2011年06月26日

公募増資に係る空売り規制について(PO投資についてのUp-date)

PO投資についての記事のアップデートです。
以前の参照記事:
PO投資についてまとめ(PO発表後の一般的な株価推移、儲け方、問題点、規制まで) 2011/1/18
http://money-learn.seesaa.net/article/181380755.html






以前の参照記事に記載の通り、公募増資発表前後に係る市場での価格形成に問題がみられるため規制が入る見通しが伝わっていましたが、金融当局より具体的な動きがあり報道されました。
規制の本案は、増資発表後、値決め日までの間に空売りし、「新株取得によって空売りのために借り入れた株式について決済を行う行為を禁止」することです。代替案として増資発表後の空売りを行うことを全面的に禁止することを検討していますが、本案が適当であると評価されています。

金融庁
政策評価について
「規制の事前評価書」平成23 年6月24 日
http://www.fsa.go.jp/seisaku/230624ria/02.pdf
*1 引用及びサマリーは以下に記載

増資新株を取得し、空売りの決済に充てることがどこまでなのかは、金融庁の資料を読む限り明らかではありません。
文言上は、「新株取得によって空売りのために借り入れた株式について決済を行う行為を禁止」となっています。増資発表後に公募の幹事証券で空売りを行い、新株の申込みを行い、新株で決済することはNGであると読み取れます。
例えば、空売りを新株で決済するのではなく空売りの買い戻しと新株の売りを別々に市場取引で行うことは、規制の趣旨には反すると思われますが、規制の対象なのかどうかは金融庁の資料を読む限りでは明確ではありません。遵守費用として、「増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った者について、空売りポジションの解消のため市場取引等により株式を買い戻す費用が発生する」とありますが、意味を正確に捉えきれませんが普通に読むと、新株の引き渡しで空売りと相殺であれば取引費用が発生しなかったところ市場取引による買戻しで新たな取引費用が発生するという意味であるとも解釈出来ます。(そうだとすると、実効性がどこまである規制なのか分からなくなってきますが・・・。ただ実際問題は、増資の応募の際に幹事証券から増資発表後の空売りはしていませんという確認をされ空売りをしている場合には新株の割り当てがされなくなるようになるのではないかと推測いたしますが)
また、CFDやオプションでの売買について明確ではありません。

増資発表後に空売りが増えて公正な価格形成が歪むことを防止するのが今回の規制の趣旨になります。
いわゆる問題の本丸である、一部ファンドにおいて増資公表前に空売りしている動きが見られるという「増資インサイダー」問題については、そのような取引が横行していることが本当であれば、インサイダー取引として既に規制の範囲内ですので、規制の問題でなく監視体制の問題の側面の方が大きいでしょう。
これは、増資だけでなく、例えばM&Aにおいても引け後の発表がされた場合の当日の値動きに不自然さが見られることもありますし、当局の体制と努力の強化の問題かと思われます。

規制後のPO投資の影響ですが、「増資新株の申込みと空売りとで別々の証券会社を使っても、増資発表後の空売りをした場合には新株の取得は出来なくなる」ことを前提とした場合、どういう点が考えられるでしょうか。
・増資発表後、今までのような急落は緩和されるでしょう。
・発行価格決定日(値決め日)以降に新株引き渡し時までのヘッジとしての空売りが増え、値決め日以降の需給が悪化し株価が下がる可能性がありそう。この場合、新たなPO投資の方法としては、新株は申し込まず、値決め日に空売りを行い新株引き渡し時までに買戻しを行うのが有効かもしれません。

不明点も残っていますし、規制の詳細と導入後の増資発表後の実際の値動きがどうなるかを見ていく必要がありそうです。

公募増資に係る空売り規制について、金融庁の「規制の事前評価書」、メディア、ブログの参考関連記事の引用及びサマリーは下記に記載しています。

続きは下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい(トップ画面からご覧の場合)。



*1<金融庁より 政策評価について>
規制の事前評価書 平成23 年6月24 日
http://www.fsa.go.jp/seisaku/230624ria/02.pdf
引用及びサマリー:
○現状及び問題点
上場会社が公募増資により資金調達を行う場合において、増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行い、新株を取得してその決済を行う行為は、公募増資手続中の短期間に、全体として市場に一方的な下落圧力を加えるものであり、市場の需給を崩し、公正な価格形成を歪めるおそれがある。
こうした取引が行われた場合には、我が国市場に対する内外投資家の信頼を損なうことにつながりかねない。
○目的及び必要性
上記問題に対応するため、公募増資に係る空売りについて規制を設ける必要がある。
○規制の新設又は改廃の内容
・本案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行い、新株取得によって空売りのために借り入れた株式について決済を行う行為を禁止する。
・想定される代替案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行うことを全面的に禁止する。
○遵守費用
・本案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った者について、空売りポジションの解消のため市場取引等により株式を買い戻す費用が発生する。
・代替案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間、新株取得を行わない場合についても空売りを行うことができなくなるため、保有株式等に係るリスクヘッジのための取引や裁定取引等を行う機会が制限される費用が発生する。
○行政費用
・本案
国において、金融商品取引業者等の規制の遵守状況を確認し、違反者に対して行政処分を課すなどの対応を行う費用が発生する。
・代替案
本案と同様の費用が発生する。
○社会的費用
・本案
新たな費用は発生しない。
・代替案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間の空売りが全体的に禁止されることにより、市場の流動性が減少するなど、却って市場の価格形成機能を害するおそれがある。
○規制の便益(代替案における便益も含む。)
・本案
増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行い、新株を取得してその決済を行う行為が抑制されることにより、このような決済を前提とした空売りが市場に蔓延することを防止し、公正な価格形成が保たれる。
・代替案
本案と同様の便益が発生する。
○政策評価
・本案による市場の公正な価格形成を歪める取引を予防するという便益の効果は、我が国市場に対する内外投資家の信頼性の向上に資するものであり、そのプラスの効果は、新たな費用の発生によるマイナスの効果を上回るものと考えられる。
・代替案については、本案と同様の便益が見込まれるものの、新株取得目的とは無関係の空売りについても禁止されることとなるため、本案を大きく上回る遵守費用及び社会的費用の発生が見込まれる。
・これらを総合的に勘案すると、本案の方が適当であると考えられる。




<メディア>
日経 2011/6/15
「増資インサイダー問題」は終わっていない
http://www.nikkei.com/news/article/g=96958A9C9F819488E3E7E2E0E38DE3E7E2E4E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2
引用及びサマリー:
・導入後に誰がその違反をチェックするのかという実務上の問題がある。増資を引き受けた主幹事証券は、新株を割り当てる投資家が自社に設定した口座から空売りを出していれば違反を見つけることができるが、別の証券会社を通じて空売りを出していればそのチェックは絶対に不可能だ。せいぜい証券会社にできるのは、投資家に新株を割り当てる際に「この銘柄には空売りを出していない」という誓約書の提出を求めることぐらいだろう。「確信犯の投資家は、主幹事証券を通じて空売り注文を出すようなことはしない」(ある証券会社の引受担当者)と想定される。
・自国の法律が直接支配する国内投資家が市場の売買の大半を担っている米国ならまだしも、市場の商いの約6割を海外投資家に占められているという日本だ。「日本版レギュレーションM」への過大な期待は禁物だろう。
・そもそもレギュレーションMが制限するのは「増資発表後」の空売りだ。昨年の大型増資で問題になったのは「増資発表前」のインサイダー情報の漏洩(ろうえい)とそれを悪用した空売りであって、こうした犯罪行為を直接取り締まるものではない。増資発表前のインサイダー取引の摘発は証券監視委の本業。現在、当局は昨年夏から秋にかけて実施された複数の公募増資銘柄について、大きな空売りを出していた国内外のヘッジファンドの特定を急いでいるという情報も漏れ伝わってくる。
・震災で収益の先行きに不透明さが増す中で、チャンスがあれば資本市場からリスクマネーを調達しようと考えている企業経営者も多いとみえる。複数の主要証券の引受担当者が「日本の株価の動向次第だが」と前置きをしながらも、今秋以降の日本企業のエクイティファイナンスの「復活」を予想する。

日経 2011/6/18
増資発表銘柄、空売り後の新株取得禁止 金融庁が今秋導入、不自然な急落防ぐ
http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819694E3E5E2E2978DE3E5E2E4E0E2E3E39797E3E2E2E2
引用及びサマリー:
・公募増資発表の翌日から発行価格が決まるまでに空売りをした投資家が、増資新株を取得することを禁止。取得した場合は金商法違反で30万円以下の過料。個人投資家も対象。
・売買を取り次ぐ証券会社にも、売買情報の管理の強化を求める。不正な利益を求める投資家は、空売りと新株購入を別々の証券会社で行うことが考えられる。証券各社に公募増資の際の顧客の売買情報について、証券取引等監視委員会などに情報提供できるような体制を整備するよう求める。
・金融庁は、証券会社がプレヒアリング(事前聞き取り)や株の営業などのために(機関)投資家と接触する場合、新規制の順守を通知するよう求める。取り締まりを強化する姿勢を示し、インサイダー取引の抑止効果を高めたい考え。

日本証券新聞 2011/6/21
増資銘柄の不正取引規制性 今秋導入で市場浄化期待 短期筋には不評の声も「不公平助長」の可能
http://www.nsjournal.jp/column/detail.php?id=260722&dt=2011-06-21
引用及びサマリー:
・市場では総じて歓迎の声。もちろん、発表前の空売りの方が「はるかに問題あり」(市場関係者)との声も少なくはないが、一歩前進との受け止め方。
・ちばぎんアセットマネジメント・奥村義弘調査部長「東京市場の現状を踏まえれば、『これをもって相場の刺激材料になる』というようなことは言えないが、不透明な取引が抑制されるのは、好ましい動きであることは間違いない」
・デイトレーダーなど、短期売買を得意とする個人投資家の間には不満も生じている様子。増資銘柄の多くで、発表直後に売り残が増加するなど、増資銘柄の信用売りは、いわば個人ご用達の投資手法の1つでもあったため。「売買の機会が減少する」という点のほかにも、「証券自己や機関投資家などとの不公平感」を唱える声も。(空売りを利用せずに)以前から保有している現物株を増資発表後に売却して、増資新株で補充するという手法が使えるため。また、例えば、日経平均採用銘柄の増資であれば、「当該銘柄を除いた224銘柄を買うと同時に先物を売り建てる」ことによって、実質的に「空売り」と同じポジションを作ることも可能と見られるため。

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<ブログ>
IPO初値予想・分析 IPOストライカーの日記
新空売り規制でPO投資はどうなる?
http://ipo-striker.com/archives/51732067.html
引用及びサマリー:
・値決め前の売り圧力が減ることで十分値がこなれないままPO価格決定に至る可能性がでてきます。(発行会社にとっては高いPO価格はおいしいでしょうが)
【現状】  (ツナギ売り圧力)→値決め→受渡し
【規制後】  値決め→(ツナギ売り圧力)→受渡し 
・今まで分散していたツナギ売り圧力が、値決め日翌日に集中することで、従来の3%弱の利ざやが縮小する可能性があるかもしれません。


株式市場は非常識 : 変化をつかめ! 2011/6/20
公募増資に関する新規制について
http://blog.livedoor.jp/mkubo1/archives/51269585.html
引用及びサマリー:
・新規制の問題点をいくつか指摘
1、公募増資に申し込みを行う際、その投資家が増資発表後に空売りをしていたかどうかの確認をどのように行うのか
⇒証券会社は調べるすべがありません。空売りしたい投資家は、公募増資の主幹事証券以外で空売りすることになるでしょうから、すぐには、その投資家の公募増資への申し込みが、公募増資の発表後の空売りの買戻しかどうかわかりません。さらに、このような空売り行為は、ヘッジファンドが中心だと思いますが、彼らの口座は海外にあり、国内だけを調べていたのでは、空売りの詳細がわからない可能性があります。
2、空売りを直接行うのではなく、SWAP(CFD)でショートを作っている投資家の取扱はどうするのか
⇒多分、空売りと同等の経済行為ですから、空売りと同じ扱いになるのではないでしょうか。ただ、これも、口座が海外にある場合は、調査が難しい場合があります。
3、増資発表後に空売りした投資家が、その後、買い戻した場合、公募増資に参加できるかどうか
⇒これは、公募増資、申し込み時点で、空売りのポジションがすでに買い戻されていれば、問題ないはずだと思います。


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