インタビュー対象は米PIA、ドイツ銀系DBアドバイザーズ、英シュローダー、米系フィデリティの4名の日本株の運用に関わっている欧米機関投資家です。
記事内で、現状の日本株への平均的な見方として、下記が紹介されています。
・しばらく楽観できるし、期待もしたい。
・世界で勝ち残る企業は少なくない。
・もし構造問題を先送りするなら、やがて日本株を見放すだろう。
大方の見方は、メリルリンチストラテジストの菊地正俊氏の著書「外国人投資家が日本株を買う条件」に書かれている通りで、合わせて読むとかなり外国人投資家の日本株への目線の理解に繋がるものと思われます。今回のヴェリタスの記事は、個別の「顔が見えている」ところと、いくらかそれぞれの個性のある見解があるところが、興味深いものとなっています。
【本ブログでの関連記事】
外国人投資家が日本株を買う条件 菊地正俊/著
・http://money-learn.seesaa.net/article/182467447.html
ところで、日経ヴェリタスは、金融関係者のブログ等での評判はあまり芳しくないものが目に付くように見受けられますが(また、私の知人の何人かのマーケット関係者は「読んでいない」人が多い)、個人的には、他のものとはテイストの違う情報源として重宝しています。プロは業務において日常的に情報に接しているため、あえてヴェリタスを読む必要がないのかもしれません。金融マーケットのプロではない個人投資家やマーケットに興味のある方にとっては十分に価値のあるものではないかと思います。
インタビューに答えている各者の見解のサマリーメモは下記の通りです。
続きは下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい。
○各人の発言サマリー
(注)本ブログ運営者による引用メモです。詳細は必ず日経ヴェリタス誌面をご確認下さい。
【デイル・ニコルス氏(米系フィデリティで「フィデリティ・日本・アジア成長株投信」などの運用を担当)】
・足元の日本株上昇は、相対的に株価が安いのが要因。日本株は他の市場に比べ出遅れていた。新興国ではインフレの心配も出てきたが、日本はそうした心配はあまりない。昨年は特に円高が日本株の市場にマイナスの影響を与えたが、ここから一段の円高になる懸念が薄れてきたことも大きいだろう。
・アジア全体と比べて日本株がかなり安くなったとみたので、特に昨年の後半から、運用するファンドの中で日本株のウエートを上げてきた。ただ、ベンチマーク(*)に比べ日本株の比重はまだ低い。
*一般的に海外の機関投資家は、ベンチマーク(運用成績を評価する基準となる指標)として24の先進国・地域に投資する「MSCIワールド」や、これに中国やブラジルなど新興国を加えた45の国・地域で構成される「MSCIオールカントリー・ワールド」を活用しているとヴェリタス記事で解説されている。
・新日鉄と住金の合併方針は日本の株式市場にとって非常にポジティブだと思う。去年から言っているのが、日本株が上がるための大きなポイントの1つはM&A。日本にはまだ、再編が起こりうる業界がかなり残っているので、同様の動きが今後も続けば、株式市場にはプラス。
・特に安いと思うのが金融株。金融業界に大きな影響を与える不動産市況の底入れが近く、オフィスビルの空室率は今がピークだろう。例えばオリックスにとってこれまで不動産動向はリスク要因だった。その不動産市況が底入れすれば金融株にとってプラスになるだろう。
・不動産投資信託(REIT)の分配金利回りの高さには驚き。これだけ高いのに、日本の個人投資家があえて外貨建債券を買うのが不思議。日銀による買い入れもありREIT価格は回復した。銀行から不動産融資が出やすくなったことも要因だろう。ネット関連で日本が世界をリードしているのはモバイル。SNSにも注目している。
・フリーキャッシュフローを重視。日本には、かなりのキャッシュを持っていて明日にでも配当を倍にできそうな企業がある。もし投資機会が少ないなら、配当や自社株買いで株主に還元して欲しい。保有する不動産や有価証券を考慮すると、他のアジア企業に比べ割安感があるのではないか。日本はアジア経済とのつながりを強め、融合しつつあるので、投資もアジア全体の中で見ている。日本の占めるウエートは下がっているため、以前ほどの重要性はないが、世界で競争できる企業はかなりある。まだまだ大事な市場。
・財政リスクや人口減少といった問題は成長性に影響する。運用するファンドがもともと日本株をアンダーウエートしているのも、そうした点があるから。新興国の場合、戦略をちゃんと実行したら会社が3倍、5倍に大きくなるようなチャンスがかなりあるが、日本では間違いなくチャンスは少なくなる。日本企業はバランスシートを考慮すると割安だというのは間違いない。カタリスト(反転材料)としてはM&Aと配当だと思う。
・政治にはもともと期待していない。政局がどう動こうが、世界で勝ち続けられる会社は、世界で勝ち続ける。法人税率の引き下げには前向きに注目。税率を下げる分は企業の利益が増えるので、日本株には間違いなくプラス。
【ジェームズ・パルスフォード氏(ドイツ銀行グループの機関投資家向け運用会社DBアドバイザーズで日本株を担当)】
・日本は、内需の成長が限られ、海外景気に左右されやすい経済。ここ3〜5年でみると、日本株の値動きは世界経済の動向と規則正しく連動してきた。特にアジア経済から受ける影響は大きくなっている。ここ3〜4カ月で日本株が上昇しているのは、世界経済の強さを示す指標が増えたため。
・日本株は長年割高だったが、今ではPBRが1.1倍ほどに落ち着き、割高ではなくなった。ROEは海外に比べると高くはないが、低すぎる水準でもなくなった。日本企業は財務レバレッジがさほど高くなく、過剰負債のない適度で健全なROEといえる。
・現金を効率的に生み、配当性向を高めている。配当利回りは10年物国債利回りの水準を上回っており、この点からも日本株は割安だと判断している。たしかに日本国内では企業間の競争が激しいし、支配的なビジネスモデルを持つ企業は少ないといえる。しかし、PBRやROEを海外の企業と比べると魅力的。
・株価はある程度上昇しましたが、我々はまだ日本株に対して強気。アジアの経済成長と米国景気の持ち直しによって、世界景気の回復が続くという見方に基づく。日本企業は金融危機後にコスト管理の能力を発揮し、今後も業績拡大は続くだろう。
・ポートフォリオを占めているのは景気敏感株。(輸出関連では)商社や機械、(内需関連では)小売株をオーバーウエートしている。小売株は個々の価格分析に基づくと割安な企業が多い。なかでもコンビニエンスストアは経営環境が改善し、安定成長している。家電販売のケーズホールディングスやヤマダ電機も割安。ディフェンシブ株は通信を除きアンダーウエートしている。
・10年前まで日本企業の競争相手は国内や米欧の企業だった。今は、韓国や中国の企業が台頭している。電機業界における韓国サムスン電子のようなアジアの競合から受ける影響は企業分析に欠かせなくなっている。欧州の投資家はこのところ韓国や中国の企業を好む傾向。だから日本株は割安のままになっており、アジア株はそれほど割安ではない。
・世界景気の回復が続く限りは、他の先進国株と同様、日本株も上昇するだろう。しかし、それは循環的な回復にすぎない。日本株が継続して評価を得るためには、デフレから脱却できない、内需の継続的な成長が見込めない、という2つの問題を解決する必要がある。ただし、いずれも簡単な問題ではない。例えば移民を制限するのは同質な社会を保つ上ではいいのだろうが、高齢化を反映して経済成長が阻害されている。日本の大きな問題は人口の減少にあり、通常の政策では対応できない。政府は消費を刺激し、予算を増やして経済を活性化しようとしている。しかし、長期的には財政問題に取り組まなければならず、例えば消費税を引き上げようとしているが、バランスを取るのは難しい。
【フレデリック・ハーマン氏(米フィラデルフィア・インターナショナル・アドバイザーズ(PIA)パートナー、日本株の運用に携わる)】
・足元で日本株が上昇してきたのは、景気循環の側面から輸出に依存する日本企業の業績改善期待が高まってきたため。新日鉄と住金が合併の協議を始めたことを歓迎する。再編が進むとの観測から日本株全体にもプラスの反応があった。
・代表的な指標であるPERでみると2011年度の予想ベースで日本株は13.7倍と、欧州の11倍よりも高い。たしかに日本株だけで歴史比較をすればかつてに比べて低くなったが、割安とは言えない。高いバリュエーションが許容されたのはもう過去の話。
・2011年を通じて、世界市場の中で、日本株が大きく上昇するとは考えていない。来期(2012/3期)は日本企業の一株利益は、12〜13%増えるとみてる。一方、欧州企業の増益率は、16%に達するという予測もある。日本企業が相対的に優位とは言えない。
・業績の改善期待の高さでいえば、自動車や一部の小売りなど「消費循環」が有望。自動車は、コスト削減効果もあって利益率が大きく改善している。新興国の需要増とともに米国での販売回復も著しい。この業界ではアイシン精機株を保有している。具体名は明かせないが、小売りではリストラによって収益改善が期待できる企業に投資している。
・資源高によって恩恵を受ける三菱商事や日揮も有望だろう。不良資産の引当金が減っている金融業界にも期待しており、中央三井トラスト・ホールディングスやNKSJホールディングスに投資している。経営者の能力が高いとはいえないメガバンクには関心がない。
・日本株運用の長い経験から、日本で最も有効な投資指標は配当利回りだと考えている。日本企業は継続的に増配や自社株買いに取り組んできた。それでも足元で配当利回りの平均は2%ほどで、3%を超える欧州をまだ下回っている。日本企業にはもっと大胆な株主配分の方針を打ち出すことを期待している。
・日本経済は低成長にあえぎ、企業は資本効率を示すROEが低いまま。PERなどに割安感がないとなれば、投資マネーの持続的な流入を期待するのは難しいのではないか。
・そもそも日本では企業の数が多すぎ。国内の過当競争に疲弊して、グローバルに勝ち残っていけるのか。典型が、自動車や電機業界。自動車は韓国メーカーが猛追し、欧州メーカーにも勢いがある。グローバル競争を勝ち抜くには、規模の拡大と効率性の追求が欠かせない。新日鉄―住金の再編が起爆剤となり、日本の産業全体に再編の波が広がることを期待する。アルセロール・ミタルのような巨人や、急速に台頭する中国の鉄鋼メーカーなどとの戦いに打ち勝つために、日本企業同士の再編は正しい選択だと思う。
・民主党政権は内部の混乱が続いており、リーダーシップに欠ける事態は改善されていない。政治への不信が国債格下げの要因になったのは間違いない。かつての小泉政権のように、日本の進むべき針路を明確に打ち出し、強く推進する指導者は出てきてくれないのか。政府が法人減税を打ち出したことは歓迎。日本企業の利益水準が低いのは法人税率の高さも一因。ただ日本企業に投資する立場からすれば、思い切って20%ぐらい引き下げてほしいというのが本音。
・よく言われるが、日本国債は約95%を国内の投資家が保有している。格下げがあったからといって、ギリシャ危機のような不安が広がるわけではない。ただ長い目で見れば大きな問題。日本の年金基金は高齢化に伴って給付が増え、国債の買い余力はどんどん減っていく。そうなれば世界の投資家は日本の財政問題をより深刻に受け止め、そのまま日本株への不信につながるだろう。日本政府は、支出抑制などで財政規律を取り戻すことに全力を尽くすべき。
【アンドリュー・ローズ氏(英シュローダーで日本株を担当)】
・世界景気が回復している上、法人税の減税という政府の対応も評価されている。日本株はバリュエーションでみると安い。投資家が日本株をあまり保有していなかったことが株高につながっている。2010年、株価の上値を抑えた円高や企業の増資も一巡した。
・2011年2月に入り、ポジティブなニュースが相次いだ。新日本製鉄と住友金属工業の合併協議は、予定時期(2012年10月)がだいぶ先の話ではあるが、前向きにとられている。大東建託など巨額の自社株買いや、MBOのニュースが増えているのも、構造的な変化ととらえている。
・日本株には強気。海外投資家は平均的に見ればまだ日本市場に対して懐疑的で、アンダーウエートしたままだろう。買越額も増えてはいるが、それほど大きくはない。中国や韓国の企業は(成長期待が高いために)株価が割高になる。一方、日本株は、欧米株と比べても割安。PERは似たような水準だが、PBRなど他の指標で見ると割安感が目立つ。
・今後は、化学や製紙業界などで再編機運が高まるとみられる。「日本企業は変わっている」と、イメージが改善する好機になるだろう。たとえ日本のGDPが伸びなくても、再編やリストラ、自社株買いが株主にとって利益になるはず。
・景気敏感株をオーバーウエートしている。輸出関連では商社や自動車、内需では小売株や陸運など。自動車は競争力があってしかも割安な銘柄が多く、今年はよい年になるだろう。内需関連株を買うのは、輸出が伸びることによって内需がいい影響を受けるとみているから。景気ウオッチャー調査や、商工中金の中小企業月次景況観測などを見てもその傾向が見えつつある。食品や電力などディフェンシブ株はアンダーウエートしている。
・スマートフォンやPCタブレットに日本企業の電子部品が多く使われている点に注目している。この分野で中国や韓国企業ではまだ製造が難しい技術を持っており、日本以外の投資家は意外と気付いていない。日本企業は全般に株主への利益配分をさらに拡大するとみられ、現金を豊富に持つ企業にも着目している。
・事業の将来性、中長期的な利益成長、割安感を比べて考える。日本企業は、中国や韓国など新興国より、経済が成熟した先進国の企業と比べる方が妥当だろう。経済統計では、日銀短観などの遅行指標より、有効求人倍率や景気ウオッチャー調査といった先行指標を重視している。最近は、個別企業の宅配便数や、新幹線の乗客数が伸びていることを興味深く見ている。
・名目成長を高めるためには、デフレからの脱却が不可欠。日銀はインフレ目標を定めて、もっと積極的に金融を緩和すべき。米連邦準備理事会(FRB)は国内総生産の7%に相当する量的緩和をしたが、日銀は1%にすぎない。英国ではインフレ目標から外れると、イングランド銀行(BOE)総裁は財務相にリポートを提出しないといけないが、日銀は独立性が高すぎるようにみえる。
・日本企業のROEは7%で、2桁が普通の欧米に比べると低いまます。生産性は高まったけれど、株主資本が膨らんだため。株主配分を09年に大きく減らしたのは残念。フリーキャッシュフローは続けて増えていたというのに。過去10年間で確かに配当は増え、配当利回りは私の経験上、初めて米国に並んだが、まだ不十分。
・日本国債の格下げは、財政悪化に歯止めをかけられない来年度予算案への不信感がきっかけになったのだろう。政治のリーダーシップ欠如に対する懸念もあったかもしれない。財政赤字の規模からして歳出削減だけではもう手遅れで、名目GDPの成長によって税収拡大を目指すしかない。同時に、消費税の引き上げも必要。海外投資家の信頼を高めるにはこのバランスをうまく保つ必要がある。もし悪い方向に崩れたら、再び景気後退に戻りかねない。
・日本の債務残高は長期的には持続不可能な水準だが、貯蓄率は高く、経常収支は黒字。すぐに財政危機に陥る証拠はない。そのため国債の格下げがあったからといって、日本株投資には大きな影響はないだろう。企業の状態は良く、混乱した政治や円高、デフレ下で成功している企業はたくさんある。
ラベル:外国人投資家
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