理論編では多少小難しいことも書かれていますが、そのへん(*)は各人の趣味によっては飛ばすとして、経験談や実際の簡単な商品説明もありますので、一般のビジネスマンの方には参考になるところも多いのではないでしょうか。
下記の両氏のブログやコラムと合わせて目を通せば、内容的にもかなり補強され、必要なことは理解できるのかと思います。
(*)例えば、本書の前半にインデックスの指数についての結構詳しい解説がありますが、本は最初から順序立てて読みたい方はつまずく可能性がありますが、投資の実践にはあまり関係ないところかと思われます。
「インデックス投資実践ガイド」ですので、インデックス投資を実践しているブロガーの水瀬ケンイチ氏と理論面から啓蒙する山崎元氏がそれぞれの立場からインデックス投資の概要、利点、優位性、どのように行うか、各種インデックス商品ガイドまで、どういうものかの理解から実践できるところまで概ね網羅されています。
「ほったらかし」というのは、いきさつの詳細は本書内で書かれていますが、水瀬氏が長年個別株等で投資生活を送った末に最終的にインデックス運用に辿り着き、銘柄選定に費やされた膨大な研究時間が大幅に削減でき、「毎月インデックスファンドを積み立て投資しあとはほったらかしが基本」であるところから、キャッチーに付けられたタイトルと思われます。
ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド (朝日新書)
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山崎 元 水瀬ケンイチ
朝日新聞出版
売り上げランキング: 920
朝日新聞出版
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初版発行日 2010年12月30日
全227ページ 新書
本書の著者は、山崎元氏、水瀬ケンイチ氏の両氏です。
著者の山崎元氏は、@経済評論家、A楽天証券経済研究所客員研究員、B株式会社マイベンチマーク代表(投資と投資教育のコンサルティング会社)です。金融機関を中心に12回の職場を経験しているとのことです。資産運用に関する著書も多く、職業専門家の立場からインデックス投資を推奨する伝道師的な方です。
○山崎元氏
ブログ 評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」:http://blog.goo.ne.jp/yamazaki_hajime/
コラム DIAMOND online 山崎元のマルチスコープ:http://diamond.jp/category/s-yamazaki
Teitter :@ yamagen_jp
もうお一人の水瀬ケンイチ氏は都内のIT企業勤務でインデックス投資実践記を綴っていらっしゃるブロガーです。投資スタイルは本書でも述べられている通り、紆余曲折の末、インデックスファンド・ETFを中心にした国際分散投資を実践されています。
○水瀬ケンイチ氏
ブログ 梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記):http://randomwalker.blog19.fc2.com/
Teitter :@minasek
ブログタイトルの梅屋敷商店街のランダム・ウォーカーは、ウォール街のランダム・ウォーカーからいただいたタイトルだそうです。
【本ブログでの参考記事】
・ウォール街のランダム・ウォーカー バートン・マルキール/著:http://money-learn.seesaa.net/article/177621542.html
本書の内容及び目次は以下の通りです。(下の「続きを読む」をクリック下さい。)
○ 本書の内容
*「・〜」は本ブログ運営者の趣味によるmemo(備忘録)です。
水瀬ケンイチ氏のブログでの解説記事:
http://randomwalker.blog19.fc2.com/blog-entry-1590.html
「序章」
水瀬氏によるインデックス投資家になった経緯とインデックス投資概要
・水瀬氏のインデックス投資は、ある程度のリスクさえ覚悟してしまえば、基本的には「毎月インデックスファンドを積み立て投資をしてあとはほったらかし」で、あとは年に1〜2回、リレー投資やリバランスを行うくらい(p25)。1商品が100万円程度まで積み上がった段階でETFに買い替える「リレー投資」をやっている(p24)。
「理論編」
山崎氏による本格的インデックス投資論
・インデックス投資は「明快」「安価」「負けない」(p30)
・インデックスは時価総額ウエイト型と株価ウエイト型(等株数ウエイト(p198))がある(p44)。
・TOPIX(東証株価指数)やS&P500は全銘柄の時価総額ウエイトで計算(p44)
・TOPIXは2005年10月31日算出分から株価×発行株数から株価×浮動株数での計算に改められている(p54)
・日経平均、ニューヨーク・ダウは採用銘柄の株価が指数の中でほぼその銘柄のウエイトを決めるという意味で「株価ウエイト」(p44-45)。日経平均の場合、通常の最小取引単位で保有したポートフォリオの評価額をベースに決まる。取引単位による銘柄ごとのウエイト差はされているが最小取引単位の評価額により指数の動きへの影響が異なる(p45-46)。
・銘柄入れ替えや銘柄ウエイトが変化する際に指数の動きで多少の損をこうむることがある(p49)。「採用銘柄の買い」「除外銘柄の売り」を先立ってやられるため。現役インデックスファンドマネージャーによると感覚的に年間10ベーシス(1ベーシスは1%の百分の一)よりももう少し多いくらいやられているのではないかというもの(p58)。
・日本版ISAと呼ばれる仕組みの導入が予定されていることは注目材料(p82-86)
コラム インデックスファンドのアセットアロケーションについて(P92〜)
・山崎氏の前著「超簡単 お金の運用術」(2008/12)ではほぼベストな組み合わせは国内株40%+外国株60%を紹介。「超簡単 お金の運用術」アマゾンへ
・アップデートした配分 (A)国内株60%+先進国株30%+新興国株10%又は(B)国内株50%+先進国株40%+新興国株10%、あるいは(C)国内株50%+先進国株50%。山崎氏のお勧めは(B)国内株50%+先進国株40%+新興国株10%(p98-101)
・p93アセットアロケーション計算の一例で計算式の詳細は省略されている
山崎氏の別著「資産運用実践講座T」の第2章に説明がある。*エクセルの入れ方は簡単に再現可能なレベルでは説明がないので説明シートの作り方は後日検討。
「実践編」
水瀬氏による初心者向け実践ガイド。
ご自身の実体験で、不思議に思った点や苦労した点を踏まえてまとめられています。特に、マインド面というか心構えに力を入れたそうです。
・口座開設のお勧めは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社(p109)
・情報収集にお勧めのサイト
モーニングスター:http://www.morningstar.co.jp/
わたしのインデックス:http://myindex.jp/
「商品ガイド編」
投資候補になる具体的商品を水瀬氏がチョイスし、山崎氏とともにランク付けしてご提案されています(銘柄は下記目次参照)。
・ETFは「基準価格」と「市場価格」の乖離には留意が必要(p151-152)
「もっと知りたいあなたへ」
現役インデックスファンドマネージャーへのインタビュー企画。
山崎氏と水瀬氏で、インデックス運用現場の実態に迫るべく対談形式でいろいろ話を聞き出しています。
・インデックスファンド選びのチェックポイント@ベンチマークA各種コストBファンドの資産規模(p205)
「終章」
山崎氏と水瀬氏の対談。読者へのメッセージになっています。
○ 目次
はじめに P3
序章
人はどのようにしてインデックス投資家になるか〜水瀬ケンイチの投資遍歴 P11
インデックス投資家列伝 1 Night Walkerさん P27
理論編
なぜ、普通の人にとってほぼベストの資産運用法なのか?〜山崎元が教えるインデックス投資の基礎知識 P29
コラム インデックスファンドのアセットアロケーションについて P92
インデックス投資家列伝 2 rennyさん P102
実践編
インデックス投資、こうやったら大丈夫〜水瀬ケンイチのすぐにできる徹底ガイド P105
インデックス投資家列伝 3 イーノ・ジュンイチさん P143
商品ガイド編
インデックスファンド、ETF商品完全ガイド P145
インデックス投資家列伝 4 じゅん@さん P188
もっと知りたいあなたへ
ファンドマネジャーに聞く! ここが知りたいインデックス投資 P191
インデックス投資家列伝 おまけ 水瀬ケンイチ P213
終章
「ほったらかし運用」の魅力とあなたの未来 P215
あとがき P225
本書で紹介されているブロガー
・NightWalkerさん NightWalker's Investment Blog:
http://nightwalker.cocolog-nifty.com/
・rennyさん rennyの備忘録:
http://renny.jugem.jp/
・イーノ・ジュンイチさん 投資信託のブログファンドの海〜 投資信託で世界の経済と一緒にゆっくり豊かになろう!:
http://www.fund-no-umi.com/
・じゅん@さん 投信で手堅くlay-up!:
http://www.lay-up.net/
商品ガイド編で紹介されている商品(P158〜)
・インデックスファンド
1 STAM TOPIXインデックス・オープン
2 CMAM 日本株式インデックスe
3 ニッセイ 日経225 インデックスファンド
4 CMAM 外国株式インデックスe
5 eMAXIS 新興国株式インデックス
・国内ETF ()は証券コード
6 TOPIX連動型上場投資信託(1306)
7 MAXIS トピックス上場投信(1348)
8 上場インデックスファンド 海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(1680)
9 上場インデックスファンド 海外新興国株式(MSCIエマージング)(1681)
・海外ETD ()はティッカー
10 SPDR S&P 500 ETF トラスト(SPY)
11 バンガード・トータル・ストック・マーケット・イーティーエフ(VTI)
12 iシェアーズ MSCI EAFE インデックス・ファンド(EFA)
13 iシェアーズ MSCI KOKUSAI インデックス・ファンド(TOK)
14 iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット・インデックス・ファンド(EEM)
15 バンガード・エマージング・マーケット・イーティーエフ(VWO)
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