2011年02月02日

会計の基礎D-2 B/Sの見方、読み方(負債・純資産の部)

(前回からの続き)
・(前回)会計の基礎D-1 B/Sの見方、読み方(資産の部)

負債の部及び純資産の部における各基本的項目の意味合いについて上から順を追って内容の説明をしていきます。

続きは下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい。




【流動負債】
流動負債として並べられる項目は、以下のようなものがあります。

一  支払手形及び買掛金
二  短期借入金(金融手形及び当座借越を含む。)
三  リース債務
四  未払法人税等
五  繰延税金負債
六  引当金 (賞与引当金 等)
七  資産除去債務
八  その他(総資産の5%以上の金額の科目は別掲表示する)
*その他で一般的な項目は、未払金、未払費用、前受金、預り金など
*引当金は、原則として当該引当金の設定目的を示す名称を付した科目をもって掲記します。

流動・固定分類で説明の通り、営業上で発生する仕入債務(支払手形及び買掛金 )や1年内に支払い義務のある債務が中心となります。
資産除去債務とは、平成22年4月1日以降開始事業年度より開始していて、主に有形固定資産の除却等に係る費用を取得時に見積り、その費用分を有形固定資産の取得原価に上乗せする相手科目といったイメージでまずは捉えておけば良いかと思います。(資産除去債務に係る会計基準に基づいて会計処理が行われます)
リース債務は、リース契約とは実質的に固定資産の割賦購入なので一定のリース契約は資産計上されますが、支払いはリース期間にわたって行われますので、リース資産の未払の残額のようなイメージで捉えておけばまずは問題ないかと思います。(リース資産に係る会計基準に基づいて会計処理が行われます)

*流動・固定分類については会計の基礎D-1 B/Sの見方、読み方(資産の部)を参照下さい。
http://money-learn.seesaa.net/article/183706955.html
*引当金という概念については下記記事のVA(引当金)を参照下さい。
・会計の基礎@ 会計(簿記)の仕組み@
http://money-learn.seesaa.net/article/179642938.html

【固定負債】
固定負債負債として並べられる項目は、以下のようなものがあります。

一  社債
二  長期借入金(金融手形を含む。以下同じ。)
三  リース債務
四  繰延税金負債
五  引当金 (退職給付引当金 等)
六  資産除去債務
七  その他

流動・固定分類で説明の通り、営業上で発生する仕入債務(支払手形及び買掛金 )や1年内に支払い義務のある債務が中心となります。

流動負債の短期借入金や一年内返済予定分と合わせて社債や長期借入金といった有利子負債の残高は、資産の部の流動性との比較で、債務の履行が困難であるとみられるような場合は会社の危険性が高まりますので、チェックしておきたい項目といえます。会社が倒産する時というのは債務の返済が出来なくなる時ですから、特に流動の部に有利子負債が多い場合には、返済又は借り換えが出来るかは重要なポイントとなります。

固定負債には引当金で、退職金の支給に備えるための退職給付引当金があります。B/Sの引当金の残高の多さも重要ですが、B/Sではなく注記情報で開示されている「未認識差異」もチェックする必要があります。(退職給付に係る会計基準に基づいて会計処理が行われます)
退職給付債務の注記(連結財務諸表の財務諸表の後の注記情報に(退職給付関係)として載っている事項)には通常、下記のような内容があります。
(1) 退職給付債務(△)
(2) 年金資産
(3) 未積立退職給付((1)+(2))
(4) 未認識数理計算上の差異(+or△)
(5) 未認識過去勤務債務(+or△)
(6) 連結貸借対照表計上額純額((3)+(4)+(5))
(7) 前払年金費用(△)
(8) 退職給付引当金((6)−(7)) (←B/Sの退職給付引当金の額と一致)

退職給付債務は将来従業員の退職以後に支給される給付のうち認識時点(決算日)までに発生していると認められるものをいい、長期にわたるため割引計算がされ、決算日現在での支給が生じているべき現在価値の金額が算定されています。
年金資産は生年金基金制度及び適格退職年金制度といった企業年金等に支給され退職金の支給目的で運用されているものをイメージしましょう。
この差額を引き当てれば会計上の手当ては出来ている、ということになりそうですが、他に未認識数理計算上の差異と未認識過去勤務債務があります。
過去勤務債務とは、退職給付水準の改訂等に起因して発生した退職給付債務の増加又は減少部分であり、退職金規程等の改訂に伴い退職給付水準が変更された結果生じるものです。これは、現行の日本の会計ルールでは、遅延認識といいますが、従業員の平均残存勤務期間内の一定の年数で分割計上することが認められています。この分割計上のうち未処理額が未認識過去勤務差異となります。
数理計算上の差異は、退職給付債務等を見積もる際には算定において仮定が色々おかれます。昇給率、脱退率、割引率年金資産の期待運用収益率等です。この結果、見積と実績とで差が出ますが、過去勤務債務と同様に、従業員の平均残存勤務期間内の一定の年数で分割計上することが認められています。この分割計上のうち未処理額が未認識数理計算上の差異となります。
数理計算上の差異については「見積りの前提と実績の差」により恒常的に発生しうるもので、資産運用の結果や市場金利の変動だけでなく、さまざまな要因によって発生します。差異が生じることは必然なのですが、多額にマイナスの差異が出ると、見積りが甘かったとも考えられます。

未認識数理計算上の差異は金額も大きくなる傾向もあり、たびたび「退職給付の隠れ債務」等として、金額の大きい会社のリストが新聞や週刊誌で出ることもあるので目にしたことがある方も多いかと思います。
また、破綻したJALでは平成21年3月期当時、会計基準変更時差異と未認識数理計算上の差異を合わせて3,314億円の未認識の差異があり、未認識数理計算上の差異が多額だったことから隠れ年金問題などと話題になったことでも知られている問題です。
*なお、日本基準でもIFRSとの統合作業において、未認識数理計算上の差異はオンバランス化になる方向です。


【純資産】
純資産として並べられる項目は、以下のようなものがあります。

一  株主資本
    資本金
    資本剰余金
    利益剰余金
    自己株式
二  その他の包括利益累計額
    その他有価証券評価差額金
    繰延ヘッジ損益
    為替換算調整勘定
三  新株予約権
四  少数株主持分

従来は、資本の部と言われていましたが、純粋な資本以外の要素も加わっていく中で、名称も純資産の部となりました。

株主資本は株主からの拠出金である資本金・資本剰余金と利益剰余金(過年度の利益の積み上げと当期純利益の合計)、自己株式は自社の株式を取得した分になります。

その他の包括利益累計額は、包括利益の累計残高です。
・包括利益は、会計の基礎B補足 包括利益とは を参照
http://money-learn.seesaa.net/article/183442928.html

新株予約権は、新株を取得する権利(自社株取得のオプション)を付与した場合に会社が受け取ったオプション料です。権利行使された時に資本金に振り替わります。

少数株主持分は、子会社の純資産のうちの少数株主の所有割合分(100%−親会社による子会社持分)の割合です。
連結貸借対照表は、B/Sの作成の主体となる親会社とその子会社のB/Sを合算したものでした。
企業グループは実質的に支配している子会社が含まれ、基本的には議決権が過半数(50.1%以上)の株式を保有する全ての子会社や議決権が50%未満でも40%以上を保有しており意思決定を実質的に支配している会社を含んで構成されています。連結子会社は関係会社と呼ばれます。
子会社の親会社以外の株主は、少数株主と呼ばれます。この子会社の少数株主に帰属する純資産を少数株主持分といいます。

メジャーな指標として、株主の持分に対してどのくらいの利益を上げたかというROE(Return on Equityの略称)という指標があります。
株主に最終的に帰属する利益である当期純利益を、前期及び当期の株主資本の平均値で除したものです。
(計算式)
自己資本当期純利益率=当期純利益/{(純資産の部合計−新株予約権−少数株主持分本)}×100(%)
(東証のホームページより「自己資本当期純利益率」の上記計算式:http://www.tse.or.jp/glossary/gloss_s/si_roe.html )
なお、計算にあたっては、その他の包括利益を含まない当期純利益を分子に、その他の包括利益を含む自己資本で算定されることから、例えば、保有株式の株価暴落によってその他有価証券評価差額が減少すなわちROEの分母が縮小し、結果としてROEが大幅に改善してしまうことが問題点として指摘されています。従来どおり、分子に当期純利益を用いるべきか、それとも包括利益を用いるべきかは議論があります。



posted by ASK at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 会計/税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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