【基本的なB/Sの様式】
連結貸借対照表
(平成○年○月○日)
資産の部
T 流動資産
U 固定資産
1 有形固定資産
2 無形固定資産
3 投資その他の資産
V 繰延資産
資産合計
負債の部
T 流動負債
U 固定負債
負債合計
純資産の部
T 株主資本
U 評価・換算差額等
V 少数株主持分
純資産合計
(*純資産の部の内訳)
T 株主資本の内訳
資本金
資本剰余金
利益剰余金
自己株式
U 評価・換算差額等
その他有価証券評価差額金
繰延ヘッジ損益
為替換算調整勘定
B/Sとは会計の仕訳の集計の結果から、資産と負債・資本を集めたものでした。P/Lとは純資産の部の利益剰余金を通じて繋がっているものでした。(会計の仕組みA(試算表とB/S・P/Lについて)⇒http://money-learn.seesaa.net/article/179717866.html)
B/Sの構成ですが、その資産と負債・資本を項目別に並べたものになります。
B/S図のイメージとB/Sの各項目ごとの関係は下記のようになります。
フローであるP/Lは会計に詳しくない一般の方も何となくピンときても、ストック情報であるB/Sは会計の仕組みをきっちり理解していないとピンと来ずらいようです。また、P/Lがどうなるかには注意が払われても、B/Sがどうなるかにはなかなか注意が払われないような傾向が見受けられます。
B/Sの分かりずらいところは、会計における資産の性質に一因があるのではないかと思います。
どういうことかと言うと、会計の仕組み上、ビジネスのおカネの流れとB/Sの関係の中で、財産の換金価値や支払い義務がB/Sの残高になるだけでなく、P/Lの期間損益計算の結果としてB/Sに残高が残ったりしますので(B/Sのあるべき残高の増減の結果が包括利益という形でP/Lにも反映されますが)、どの科目(項目)がどのような性質を持ったものかのイメージがつかないと、なかなかB/Sを本質的に理解できるようにならないためではないかと思われます。
近道もなく、ひとつひとつ理解を深めていくしかないかと思いますが・・・
B/Sの各基本的項目の意味合いについて上から順を追って内容の説明をしていきます。
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【流動・固定分類】
資産及び負債の「流動」と「固定」の分類は、「正常営業循環基準」と「ワン・イヤー・ルール」によってされます。また、特定の項目は、科目の性質によって決まっています。
正常営業循環基準 とは、仕入から販売に至る営業循環の過程にある項目を流動資産または流動負債とする方法です。
主な項目として、売掛金及び受取手形(販売の成果として入金待ちのもの)、棚卸資産(売上原価のうち売上にまだなっておらず、既に支出が行われているもの。商品、製品、仕掛品、原材料、貯蔵品等を全て含んだもの)、買掛金及び支払手形(仕入又は原価の発生をしているがまだ支払っていないもの)が代表的です。
正常営業循環基準で流動資産または流動負債とならなかった項目は、で、流動か固定かを決定します( ワンイヤー・ルール )。1年以内に到来するものが流動資産または流動負債です。それ以外は、固定資産または固定負債とします。
ワン・イヤー・ルールとは、決算日の翌日から起算して1年以内に履行期日が到来するかどうかで判断するもので、入金又は支払いが1年以内に行われる権利又は義務は流動区分に分類し、入金又は支払いが1年超に行われる権利又は義務はは固定に分類するというものです。
主な項目として、資産では貸付金、有価証券(社債)、前払費用、負債では借入金、未払金といったものがワン・イヤー・ルールによって流動と固定に分類されます。
例えば、金融機関からの借入金で、返済期日が1年以内であれば流動負債(短期借入金)となり、1年超であれば固定負債(長期借入金)になります。分割返済で1年以内に返済予定の分は流動負債(1年内返済予定長期借入金)となり1年超部分は固定負債(長期借入金)と分けて流動負債と固定負債に分けて区分します。この1年以内かどうかは、契約上の期日によって分類し、借り換え・期日に返済期日の巻き直し(ロールオーバー)を見込んでいても契約上の期日が1年以内であれば流動負債とするのが通常です。
既にキャッシュである現金や銀行へ預けている預金は「現金及び預金」として流動資産になります。(銀行サイドでは顧客から預っている訳ですから、銀行のB/Sは流動負債の「預金」となります。資産で預って手元にある資金は「現金及び預金」で、貸し付けている資金は「貸出金」等となります)
繰延税金資産は、資産負債法といって、会計と税務の資産と負債の差異に着目して計上されるため、流動区分の項目で生じる差異は流動の繰延税金資産・負債で、固定区分の項目で生じる差異は固定の繰延税金資産・負債となります。
1年内に減算される項目に係る繰延税金資産は流動資産になるものという勘違いがありがちですので、付け足しておきます。
(バックオフィス以外のビジネスマンにとっては、分からなければ「そんなもんか」という程度で特段の実害もないかと思いますので、繰延税金資産の流動固定の分類は飛ばしても問題はないかと思われます)
・(参照)会計の基礎C補足 税効果会計・繰延税金資産とは
http://money-learn.seesaa.net/article/183446783.html
B/Sでの項目の並び順は、原則として、流動性が高い(キャッシュへの変えやすさ)順に上から並べるというのがイメージです。
【流動資産】
流動資産として並べられる項目は、以下のようなものがあります。
(連結財務諸表等規則という規則で決まっています。)
一 現金及び預金
二 受取手形及び売掛金
三 リース債権及びリース投資資産(通常の取引に基づいて発生したものに限り、破産更生債権等で一年内に回収されないことが明らかなものを除く。)
四 有価証券
五 商品及び製品(半製品を含む。)
六 仕掛品
七 原材料及び貯蔵品
八 繰延税金資産
九 その他(総資産の5%以上の金額の科目は別掲表示する)
*その他で一般的な項目は、貸付金、未収入金、前払費用、貸倒引当金など
流動・固定分類で説明の通り、流動性の高い順で、現金及び預金はキャッシュそのものですので、1番上になります。
受取手形及び売掛金はこれから入金されキャッシュになるもの、たな卸資産(商品及び製品、仕掛品、原材料及び貯蔵品等の合計)は既にキャッシュアウトしているが販売されていないため会計上の資産となっているもので、販売されたところで売上に対応して売上原価となるものです。
売上債権のうち未回収が見込まれる額は貸倒引当金としてマイナス表示されます。
たな卸資産は、販売が見込まれなかったり販売価格を超えてしまった分については費用処理され、その分は資産計上がされないこととなっています。「棚卸資産評価損」はP/Lでは通常は売上原価として計上します。(棚卸資産の評価に関するルールに基づいて行われています)
売上債権(受取手形及び売掛金)や在庫(たな卸資産)が大きく増加している場合には、売上の増加要因等を考慮し、その理由について留意が必要です。マネジメントの方はキャッシュフロー(資金繰り)が悪化する兆候の有無に、投資家の方は売上が多少強引に作られている可能性の有無といった点です。
指標としては売上債権回転期間(売上債権/売上÷12ヶ月)で売上の何ヶ月分の債権残高があるか、棚卸資産回転期間(棚卸資産/売上原価÷12ヶ月)で売上原価の何ヶ月分の在庫残高がよく使用されて、分析されたり、時系列で推移の変化がみられたりします。
ただ、受託ビジネス(建設業やIT業の受託開発)などでは、期末月に売上が集中する傾向があったり、新製品の発売のタイミング等で在庫の動きに変化も出ますから、こういった特性や要因もしっかり考慮する必要があります。
流動資産(特に現金及び預金と有価証券の合計)がB/S全体で十分にあるかどうかが、会社の安全性の指標といえます。
よく使用されるのは流動比率(流動資産/流動負債の%)で、おおむね120%程度あれば安全と一般には説明されます。
手元流動性(現金及び預金と有価証券の合計)が流動負債の合計を超えていれば、通常は当面の問題はないと考えて問題ないのかと思います。
なお、本当に資金に余裕のある会社は、定期預金(満期が1年超の定期預金は長期性預金として固定資産になる)や公社債(満期が1年超であれば投資有価証券として固定資産になる)等で安全運用しているケースも多いため、これらも合わせて考慮する必要があります。
有価証券は、売買目的有価証券(トレーディングで儲けるための株式等の有価証券)や1年内に償還期日のある社債券と、また、MMF(マネー・マネジメント・ファンド)、中期国債ファンド、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)は預金と同様の性格を有しているため時価評価しませんが,表示上は預金ではなく有価証券として流動資産に記載されます。
その他の株式や社債等の金融商品は投資有価証券として固定資産になります。
【固定資産】
固定資産として並べられる項目は、以下のようなものがあります。
1.有形固定資産
一 建物(その付属設備を含む。)及び構築物
二 機械装置(その付属設備を含む。)及び運搬具(船舶及び水上運搬具、鉄道車両その他の陸上運搬具並びに航空機)
三 土地
四 リース資産(連結会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である有形固定資産に係るもの)
五 建設仮勘定
六 その他
2.無形固定資産
一 のれん
二 リース資産(連結会社がファイナンス・リース取引におけるリース物件の借主である無形固定資産に係るもの)
三 その他
3.投資その他の資産
一 投資有価証券
二 長期貸付金
三 繰延税金資産
四 その他
固定資産はそれぞれ、目に見えるもの(有形固定資産)と目に見えないもの(無形固定資産)、即座に換金出来ない又は当面換金する予定のない資産(投資その他の資産)といったイメージになります。
有形・無形固定資産は使用期間にわたって会社の事業の用に供するため、支出時に費用とするのではなく、一度会計上は資産とした上で一定の使用期間に渡って費用に振り替えていくものです。
有形・無形固定資産は時の経過及び使用に応じて価値が減価していく分は減価償却により費用化され、減価償却された分の残りがB/Sでの残高になります。取得価額というのが買った値段で、減価償却累計額が買ってからB/S日までに減価償却をした金額の合計で、取得価額から減価償却累計額を引いた金額がB/S残高(簿価)となります。
土地は時の経過に応じて価値の減少がありませんから、減価償却はされず、原則として土地は買った値段のままB/Sに計上されます。
固定資産の時価が簿価と比較して大幅に下落してしまったり、事業が悪化し固定資産の使用により生み出されるキャッシュフローの見込額が簿価を下回った際には、時価や回収可能な額を見積もって減価償却とは別途、減損損失を計上し簿価の切り下げが行われます。「減損損失」はP/Lの特別損益に計上されます。(固定遺産の減損会計に関する基準に基づいて行われます)
*減価償却については下記記事のU@(固定資産を取得した場合)とV@(減価償却による費用化)を参照下さい。
・会計の基礎@ 会計(簿記)の仕組み@
http://money-learn.seesaa.net/article/179642938.html
のれんは、特別な項目でかつ重要であるため、別途説明したいと思います。
(補足)のれんについて別記事で記載:
(記事リンク)http://money-learn.seesaa.net/article/183841799.html
投資その他の資産は、流動・固定分類や流動資産の項目で説明の通り、換金が1年超の資産や費用化が1年超の長期前払費用、当面換金される予定のないものなどです。
主な項目は投資有価証券です。定義上は流動の有価証券に分類されるもの以外が固定資産の投資有価証券となりますが、純投資先や持ち会い株、1年超償還予定の社債等が投資有価証券となります。
投資有価証券は上場株であれば市場時価で、非上場株であれば株式を買った値段(取得原価)で行われます。非上場株で出資先の純資産の株式保有割合分が取得原価を50%超下回った場合には、出資先の純資産相当額まで評価を切り下げます。P/Lでは「投資有価証券評価損」として特別損失に計上されます。
連結対象ではない持分法適用の関連会社の保有株式も投資有価証券となります。
持分法とは、株式の出資割合が議決権の20%以上50%未満であるか、15%以上で一定の影響力のある先について、出資先の損益を投資有価証券に取り込む会計処理です。取り込む際の損益は「持分法による投資損益」としてP/Lの営業外損益に計上されます。
【繰延資産】
繰延資産として並べられる項目は、以下のようなものがあります。
一 創立費
二 開業費
三 株式交付費
四 社債発行費
五 開発費
繰延資産は既にキャッシュアウトをしたが、支出の効果が1年以上に渡る費用については、合理的な期間に分散して償却することが認められている項目です。
繰延資産として計上するかどうかは任意です。政策的に認められているとも考えられ、上記の項目に限定されています。
繰延資産は、繰延資産として計上しないで即時に費用処理されている会社の方が多く、そもそもB/Sに計上がないという場合も多いかと思います。
会計の基礎D-2 B/Sの見方、読み方(負債・純資産の部) へ続く
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