2011年01月31日

会計の基礎C補足 包括利益とは

平成23年3月期の期末決算から、損益計算書の当期純利益から、「包括利益」という概念が加わっています。簡単には、包括利益とは今までP/Lに反映しなかった保有株式の時価の変動等も含む概念で、会計における「利益」と呼ばれるものの概念のイメージが拡大したといった感じのものです。
包括利益の計算は、当期純利益からの調整計算の形で示すこととなっています。
「包括利益」の増減を「損益計算書」の中に含めるか、「損益計算書」と別に「包括利益」の増減を表した「包括利益計算書」の2つの計算書とするかは会社の選択によります。もちろん、内容的にはどちらも同じです。

(P/Lの当期純利益以下:1計算方式による様式の場合)
 当期純利益
   少数株主損益(加算)
 少数株主損益調整前当期純利益
  その他の包括利益:
  その他有価証券評価差額金
  繰延ヘッジ損益
  為替換算調整勘定
  持分法適用による持分相当額
   その他の包括利益合計
 包括利益

(内訳)
親会社株主に係る包括利益
少数株主に係る包括利益

説明の続きは下の「続いを読む」をクリックしてお進み下さい。





包括利益については、財務会計基準機構(FASF)内の企業会計審議会(ASBJ)が作成する企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」において定められています。
ASBJの「包括利益の表示に関する会計基準」のページへのリンク:
https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/hokatu/

「包括利益」と「その他の包括利益」は下記の通り定義されています。
・「包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の少数株主も含まれる。
・「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益及び少数株主損益に含まれない部分をいう。その他の包括利益は、個別財務諸表においては包括利益と当期純利益との間の差額であり、連結財務諸表においては包括利益と少数株主損益調整前当期純利益との間の差額である。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と少数株主に係る部分が含まれる。
その他の包括利益の内訳項目は、その内容に基づいて、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定等に区分して表示されます。
各項目の簡単な内容です。
その他有価証券評価差額金は、会社の保有する投資有価証券(株式や社債)のうち、売買目的、満期保有目的、子会社や関連会社に該当しないものの取得した金額と時価の差額です。
繰延ヘッジ損益は、企業がデリバティブ等でリスクヘッジした場合に、ヘッジ手段として利用されるデリバティブ取引については時価評価される一方、ヘッジ対象である現物資産について原価評価されることにより損益の計上時期のミスマッチを補正する等のために、デリバティブ取引の評価額をP/Lを通さずに純資産の増減により認識することが認められている処理によるものです。
為替換算調整勘定は、外貨建て在外子会社の純資産の為替の影響による変動部分です。
これらの項目は、従来より純資産の変動項目ではありましたが、変動額が「利益」としての扱いはされていませんでしたが、包括利益と規定され、その増減額も広義に利益として捉えられるようになったものです。


「包括利益を表示する計算書は、次のいずれかの形式によります。連結財務諸表においては、包括利益のうち親会社株主に係る金額および少数株主に係る金額を付記する。」と定められており、2つの様式があります。本質的には、P/Lと繋げて一つにしているか(1計算方式)、包括利益の過程を別々の計算書として分離しているか(2計算方式)で、相違はありません。
(1) 当期純利益を計算する損益計算書と、包括利益を計算する包括利益計算書とで表示する形式(2計算書方式)
(2) 当期純利益の計算と包括利益の計算を一つの計算書(損益及び包括利益計算書)で表示する形式(1計算書方式)
IASBとFASBの共同プロジェクトでは1計算書方式への一本化が提案されていますが、現行の日本の基準では2計算書方式も認められています。
"*IASB:International Accounting Standards Boardの略で訳すると国際会計基準審議会。IFRS(International Financial
Reporting Standards:国際財務報告基準)を策定する組織。"
*FASB::Financial Accounting Standards Boardの略で訳すると米国財務会計基準審議会。米国の会計基準を策定する組織。
*一方、日本では、財団法人財務会計基準機構内の「企業会計基準委員会」という組織が日本の会計基準を策定している。

【本ブログでの関連記事】
・会計の基礎C P/Lの見方、読み方
http://money-learn.seesaa.net/article/183402072.html


導入前に知っておくべき IFRSと包括利益の考え方
高田橋 範充
日本実業出版社
売り上げランキング: 50439


包括利益経営  IFRSが迫る投資家視点の経営改革
ビジネスブレイン太田昭和 会計システム研究所 所長/アロウズコンサルティング 顧問 中澤 進 公認会計士 石田 正
日経BP出版センター
売り上げランキング: 144612

posted by ASK at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 会計/税金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。