2011年01月27日

お金の流れが変わった! 新興国が動かす世界経済の新ルール 大前研一/著 (書評、内容、目次)

大前研一氏の新刊です(2011年1月)。
新書ですので、簡単な書き下ろしといった感じです。
著者の近著である
民の見えざる手 」(2010年7月)
大前流心理経済学 」(2007年11月)
あたりを読まれていれば、内容的に重複するところも多く、最新の動向についてのいつもの大前節があるような内容ではありますが、私個人としては大前氏の本は好きなので、楽しく読めました。

著者の見解が全て正しいのかどうかという点に関しては色々な意見はあるかと思いますが、少なくとも、大前氏の目というフィルターを通して現状の世界がどのようにあり、どのような展望であるかを掴んでおくことは、多くの方にとって参考になるものと思います。

大前氏のトーンは、従前と比べるとかなり下がってきているように感じられます。
2000年代には、何度も「今ならまだ間に合う」「これが最後」だと迫力のある文章を繰り返してきましたが、本書では、日本は今の状態は低迷ではなく正常、ポテンシャルはあるんだから頑張れといった引いた感じが伺えてしまいます・・・。1943年生まれの大前氏ももう67歳。著者の心の中でもう何を何度言っても無駄だから日本が活力を取り戻すことは諦められてしまっているのか、少々気がかりな点ではあります。

お金の流れが変わった! (PHP新書)
大前 研一
PHP研究所
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初版発行日 2011年1月5日
全243頁 新書

著者の大前研一氏は、著名な経営コンサルタントです。
長年にわたり戦略コンサルティング会社のマッキンゼーアンドカンパニーの日本支社長を務め、現在は、(株)大前アンドアソシエーツや(株)ビジネスブレークスルーの代表等、様々な活動を行っています。
大前研一氏についてのwikipedia での解説:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%89%8D%E7%A0%94%E4%B8%80
大前研一氏の構想する国家シンクタンク(TBJ:The Brain Japan):
http://www.thebrainjapan.com/


著者は、一般に成熟した新興国や原油国等で余った余剰資産と説明されるものをホームレス・マネーと名付けています。そして、世界経済は次に挙げる「4つ」のリスクにさらされているとされています。
1「米国ドルの崩壊」、2「欧州経済危機の連鎖」、3「隣国である中国で起きる可能性のある不動産バブルの崩壊」、4「日本の国債暴落」です。
世界経済恐慌のリスクを避けるには、先に挙げた「ホームレスマネー」を制御する仕掛けを構築する必要があるとしています。(大前研一ニュースの視点より)
本書は、上記の先進国の状況に加え、台頭する新興国を含めて、著者の目から世界経済を俯瞰した一冊となっています。

以下、各内容別のブログ運営者によるmemo(備忘録)です。
○アメリカ 「唯一の大国」はいかにして崩壊したのか
・この10年、アメリカを目指してアメリカに降り立ったのは1度しかない(p3)
・著者の見解では、いまや黄昏の大国(p14)で、いっそう混迷の色を強めている(p31)
○中国 バブル崩壊はいつやってくるか
・これからの世界経済はアメリカと中国が支配するというG2の地位まで中国は成長した
・いくつか問題も抱えている。年8%の経済成長を続けないと大量の失業者が出て暴動が起こるという強迫観念が中国政府にはある(p34)。共産党が最も恐れているのは国民が反政府運動に目覚めること(p46)。不動産価格、高級自動車の停滞、銀行貸し渋りなど、中国バブルに歯止めがかかりそうな気配が見受けられる(p49)。
○「ホームレス・マネー」に翻弄される世界
・ホームレス・マネーというのは大前氏独特の言い回しで、投資先を求めている世界の投資マネーを言う。最盛期は6000兆円だったが、リーマンショックで半減し、現在は4000兆円(p54)。OECD加盟国や石油国、中国のマネーで、世界的に高齢化とモノあまりが進み、需要が低調でモノに転換されなくなったのが原因と著者は見ている(p55)。非常に足が速く、状況に応じて国家間を容赦なく素早く動いていくためホームレス・マネーと名付けられている。エマージングマーケットや原油等商品市況の高騰等を招いてきた。世界中を翻弄する神出鬼没の巨大なカネとなっている(p66)。
○EU―帝国拡大から防衛へのシナリオ
・加盟国の財政危機等の問題はあるが、世界経済に大きなウェイトを占める。ユーロの健全性は世界の利害とも一致する。それを担保する仕組みをつくり、本来の厳格な財政規律に立ちもどれば、EUは真の意味で信頼性の高い「国家」へ昇格するだろう(p81)。
○新興国 21世紀の世界経済の寵児
・いまや世界経済の中心は新興国。
・著者はメキシコ等の講演ではVITAMINという親しみやすい名前で売り込めと言っている(VITAMINは大前氏の造語)。VITAMINとは”ベトナム”、”インドネシア”、”タイ”、”トルコ”、”アルゼンチン”、”南アフリカ”、”メキシコ”、”イラン”、”イラク”、”ナイジェリア”の英語の頭文字を取ったもの(p85)
・著者がグローバル化のアイロニーと呼んでいる現象がある。経済の国境がなくなると同時に資金が国家を跨ぎ、企業や人材がリターンの高い新興国に流れ込むこと(p96)
・新興国の発展の個別具体的な国で、インドネシア、タイ、フィリピン、トルコ、ロシアについて説明(p96-116)
○マクロ経済政策はもう効かない
・経済のボーダーレス化、サイバー化、マルチプル化により(p118-142)、従来の財政政策も金融政策も効かなくなっている(p118)。
○市場が日本を見限る日
・今の状態は正常である。日本は内向きではあっても巨大で安定した経済圏を持っている(p144)。
・民主党は機能不全で、外交と内政で日本の財産をぶち壊している「無能なだけでなく、危険かつ破壊的な」政権である(p168)
○新興国で成功するための発想
・日本企業の高度成長時代が今の新興国、「むかしの芸」で十分に戦える(p170)
・新興国の攻略ポイントは、官公需・公共事業、法人需要、コンシューマー重要(富裕層、中間所得層、貧困層/BOP(Bottom of Pyramid)層)(p173)
○日本経済再成長の処方箋
・日本は、そこそこではなく、そんな次元を突き抜けて、はるか高いレベルに達することのできるポテンシャルを持っている(p201)
・所得税は下げた方が全体の税収は上がる。ロシアやインドネシアのフラット・タックス(単一税率所得税制)が注目される(p203)。金持ちから税金を取りたいなら、保有資産への課税がよい(p204)。高齢者に溜まっているカネを呼び覚ますためにも相続税は撤廃してもよい(p204-206)
・国民の税金を経済成長の原資にするという発想を根本からやめるべき(p210)
・著者が考える政策:「湾岸100万都市構想」(p213-221)
・日本に求心力のある場所は、秋葉原、渋谷、北海道(p234-236)

【本ブログでのリンク】
BRICs、VISTA、NEXT11 、MENA とは

本書の目次は以下の通りです。(「続きを読む」をクリック下さい。)



<目次>
はじめに P3

第1章 超大国「G2」の黄昏 P13
Tアメリカ―「唯一の大国」はいかにして崩壊したのか
U中国―バブル崩壊はいつやってくるか

第2章 お金の流れが変わった! P53
T「ホームレス・マネー」に翻弄される世界
UEU―帝国拡大から防衛へのシナリオ
V新興国―二十一世紀の世界経済の寵児

第3章 二十一世紀の新パラダイムと日本 P117
Tマクロ経済政策はもう効かない
U市場が日本を見限る日

第4章 新興国市場とホームレス・マネー活用戦略 P169
T新興国で成功するための発想
U日本経済再成長の処方箋

おわりに P237

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