2011年01月18日

PO投資についてまとめ(PO発表後の一般的な株価推移、儲け方、問題点、規制まで)2011/1/18

PO(Public Offering))とは、IPO(Initial Public Offering)が新規株式上場であるのに対し、既に上場されている会社の公募増資(株式売り出しを含む)のことをいいます。新聞等では一般的には公募増資と呼ばれます。
PO株の投資法とは、ある会社がPOを発表、実施というイベントにおいていかに利益を上げて儲けるかという方法です。
リーマンショック後、2009年、2010年の日本の株式市場において(2009年末から2010年前半あたりがラッシュだったでしょうか)、大企業による大型POが相次いで実施される中、PO投資は安定的・効果的に利益を上げられる方法でした。*ここの過去形には意味がありますので興味のある方は最後までお読み下さい。

一般的によく見られたケースは、下の図のようなイメージです。
公募発表後の値動き.JPG


このイメージは、公募増資発表又は公募増資の観測記事の公表と同時に株価が大きく下落し、その後値決め日(発行価格決定日)にかけてゆるやかに下落していき、値決め日(発行価格決定日)近辺で底をつき、その後は比較的安定していくというものです。
その後、払込が行われ、比較的ゆるやかに推移していきます。新株受渡し日は公募増資により新株を取得した投資家が始めて売却出来るようになるので、需給悪化から注意と言われます。
(1件ずつデータを取ってはいませんが、有名な大企業の大型POを中心にほぼ当てはまる流れです。なお、私の感覚では、公募増資発表又は観測記事公表直後に急落した後、ゆるゆると値決め日まで一貫して下落していき、大型POは結果的に値決め日が底であったケースが多いように見受けられます。新株受渡し日には一応注意を払いましたが、大きく下落するような混乱はあまりなかったように思います。また、値決め日を底に一定期間ゆるやかに株価が推移した後また上昇していくケースの方が、その後また下落するケースより若干多かったように思っています。)

公募増資の発表と同時に「希薄化懸念」が生じる理由としてよく説明されるのは、増資前後で利益が一定であるとすると、発行済株式数の増加によりEPSが低下するためPERが高くなることを嫌気されること、同様に、配当総額が一定であるとすると発行済株式数の増加により一株当たりの配当金が減ることが嫌気されること等があります。
増資による資金を活用することにより発行株式数の影響以上に将来キャッシュフローが増加することが見込まれれば、理論的には株価への影響は中立あるいはプラス材料となることも考えられますが、現実の株式市場では多くの場合は「希薄化懸念」により下落するケースが多いです。企業の成長ストーリーとしてのエクイティ・ストーリーが明確でないような公募増資が多いのも原因なのかもしれません。

公募増資の正式発表に際して、「新株式発行及び株式売出しに関するお知らせ」などといったIRが出ます。
IR文の中で、新株式発行公募による新株式発行(一般募集)に、「払込金額の決定方法 日本証券業協会の定める有価証券の引受け等に関する規則第 21 条に規定され. る方式により、平成●年●月●日(●)から平成●年●月●日(●)まで.の間のいずれかの日(以下「発行価格決定日」という。)に決定する。 」といった文章があります。この発行価格決定日が値決め日です。

さて、このイベントに乗じてどのように儲けるかです。
あまり難しい方法ではありません。(下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい。)



@公募価格の決定は、通常の場合、値決め日の終値より3%ディスカウントにより決定されます。そのため、幹事証券会社に新株の申込を行い、決め日の引け値で空売り(普通はネット証券を使うと思います)をします。その後、受渡し日の後に、公募新株の売却と空売りの買い戻しを反対売買により行います。そうすると、3%に空売りの金利と売買手数料を差し引いた分が利益になります。
A発表と同時に空売りします。幹事証券会社に新株の申込を行います。その後、受渡し日の後に、発表と同時に空売りした株と公募新株の値決め日の近辺で買い戻すのでもいいでしょう。
B(資金調達理由等含めて優良だと思える会社に限りますが)発表と同時に空売りします。幹事証券会社に新株の申込を行います。空売りした株は公募新株の値決め日の近辺で買い戻します。上記の理由で値決め日が当面の株価の底となると読めば、公募新株は少し持ち続け、値上がりしたところで売却します。

概ね上記の方法がメインで、あとはアレンジをどうするかの問題です。
@の方がABより儲かる確実性は高いが利益は小さく、BAは儲かる確実性は落ちるが利益は大きくなる可能性があります。

@は一見確実なように見えますが問題はあります。
・値決め日(発行価格決定日)は数日の一定期間の中で定められるため、特定の日ではありません。公募価格決定の発表は発行価格決定日に指定されたいずれかの日の引け後に行わます。ただ、初日に公募価格が決まる可能性が高いと言われています。実際、7〜8割は値決め日(発行価格決定日)の初日に決まっているように思います。(有名大企業ほど初日に決まる可能性が高いような印象はあります)
・公募の申込を行っても割当が教えられるのは公募価格の決定の発表の後です(私の知っている場合では、公募価格の決定の後の夕方か翌日朝に電話がきます)。割当の株数を正確に予測するのが困難です。
・多くの投資家が値決め日の引け値で空売りしようとするため、うまく引け値で空売り出来ない場合があります。また、増資発表とともに空売りも増えるため、空売り出来なくなる売り禁になる恐れがあります。
*下で記述のように、2011年以降は、公募発表後の値動きの原因と思われる動きに規制がかかる、また、公募発表時の空売り自体が出来なくなるかもしれません。

また、増資懸念のある企業は増資の発表を見込んだ空売りがされており、そのような投資家は逆に増資発表後に買い戻しを行うため、増資発表により逆に値上がりするケースもありますので、増資発表までの値動き等には注意が必要です。


(やはり難しいと思われるのは、証券会社に動向を聞いてもなかなか明確な返答をもらえないため、割当の株数の読みです。何故か、「早めに申し込んで下さい。その方が当選確率は高いです。」と必ず言われます。人気がありそうと思っていたら満額割当だったり、人気がないと思っていたらゼロ回答だったり、なかなか読みが難しいと聞いたことがあります。
 個人的な見解ですが、公募株の申込は、引受証券会社は主幹事がほとんどの割合を取るため、主幹事のみで良いと思っています。証券会社との連絡は平日の昼間ですので、申込や割当の連絡だけならまだいいのですが、募集の目論見書の電話確認など、少々面倒だったりします(逆に言えば手間はそれくらいですが)。大型POの国内主幹事はほとんど(というか他を圧倒した比率で)野村証券です。
 なお、気になる方もいるのではないかというところで、PO申込とともにネット証券で空売りをすること自体は良いのかという問題ですが、私は、証券会社に確認したことがあります。返答は「証券会社サイドからは絶対にそういう方法があると教えたりはしないがPOで申し込んだ銘柄をネット証券で空売りすること自体は問題はない」でした。また、公募割当新株の現物売りと空売りの買い戻しの反対売買を同時・同値で行って良いかという問題ですが、私の知人が金融庁に問い合わせたところ「流動性の低い銘柄で行うと問題となる可能性があるが、流動性が高く価格形成に影響のない範囲であれば一般に問題になることはない」といった回答であったと聞いています。特に、当段落に関しては絶対大丈夫かという保証はないので、各人の判断と責任でお願い致します。)




さて、このような値動きの特徴のあった公募株ですが、何故公募発表から値決め日までに株価が一貫して下落するのかと思っていましたが、公募発表の前後にヘッジファンド等による強烈な空売りが行われていたからのようです。
2008、2009年の頃から公募発表から値決め日までの日程が長いといった問題点が指摘されたり、ヘッジファンドが一定額を取得する場合に公募価格が低くなるほど取得する株数が増えるため公募による株数を増やすために空売りで株価を下げようとするといった動向についてメディア記事で取り上げられていました。
(私もいつも値動きを見ていてそれにしても一方的なので、何故だか不思議に思ったりしたものです。こんなに株価が下がっては当初の想定の資金の調達がされず、健全ではないのではないかとも思う方も多いのではないかと思います。また、買い持ちしている既存株主にとっては損害が発生します。)

さらに、増資発表「前」にも不自然な動きがあったとのこと。2010年冬に日経新聞でも大きく取り上げられている問題なので、ご存知の方も多いかもしれません。
関連記事は下のようなものがあります。
2010/12/25, 日本経済新聞 朝刊 増資発表後新株の取得、空売りしたら禁止、金融庁、新成長戦略の最終案。
2010/12/14, 日本経済新聞 朝刊 「事前聞き取り」日証協も調査へ、増資インサイダー疑惑で。
2010/12/06, 日本経済新聞 増資に伴うインサイダー疑惑――東証が提唱、新規制案に賛否交錯(法務インサイド)
2010/12/03, 日本経済新聞 朝刊 増資インサイダー変革迫られる異質な市場(下)ルール整備、当局間に温度差。
2010/12/02, 日本経済新聞 朝刊 増資インサイダー変革迫られる異質な市場(中)事前聞き取り、国内だけ規制。
2010/12/01, 日本経済新聞 朝刊 増資インサイダー変革迫られる異質な市場(上)発表直前、空売り膨らむ。
日経新聞及び関連メディアによる記事の主な要旨は以下の通りです。
・公募増資発表前から空売りによる不自然とみられる動きがある。
・増資引き受けの主幹事証券会社が海外で行うプレ・ヒアリング(事前需要調査)でインサイダー情報が漏れた」と推測がある。2010年夏以降に実施した国際石油開発帝石や日本板硝子といった公募増資でも公募の公表前に株価が急落しており、情報を事前に入手した可能性のある投資家が大量の空売りで不正に利益を得ていた疑いが浮上している。
・東京証券取引所、証券取引等監視委員、日本証券業協会といった各機関で調査を実施している。
・金融庁は、すでに米国が導入している規制期間中に空売りをした投資家はその公募増資に応募できないという類似規制である「レギュレーションM」の日本版を想定している。同規制の例外規定の導入も検討する。「公募増資について不自然な動きがあったことには関心を持っている。ただ、新たな規制については必要性を含めて検討を始めたばかりだ」(市場課市場機能強化室)と、東証に比べてやや慎重な姿勢(2010/12/06日経)。

2010/12/01の日経新聞「増資インサイダー変革迫られる異質な市場(上)」では不自然なケースの典型として日本板硝子の株価の推移について解説図がありますので、下で引用させて頂きます。詳細は日経新聞本誌をご購読下さい。
日経記事-公募値動き日本板硝子.JPG


このような中、下記のような方針が打ち出されています。
金融庁HPから2010年12月24日公表資料:金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(最終版)の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/22/sonota/20101224-5/01.pdf
1.アジアの主たる市場(メイン・マーケット)たる日本市場の実現
(5) 公募増資に関連した不公正な取引への対応
「上場会社が公募増資により資金調達を行う場合において、@増資公表前に内部情報に基づく不公正な取引が行われているとの指摘や、A増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った上で新株を取得するという新株の発行価格を歪める取引が行われているとの指摘がある。
こうした取引が行われた場合には、我が国市場の公正性や透明性を害するとともに、我が国市場に対する内外投資家の信頼性を欠くことにつながりかねない。このため、@自主規制機関に対し、増資公表前における上場会社や引受証券会社等の情報管理の徹底について検討を要請する。また、A増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った上で新株を取得する取引を禁止することとし、平成23
年度上半期を目途に金融商品取引法の関連政府令の改正を行う。」
引用元:金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプラン(最終版)


このため、今後のPOの値動きは従来と異なってくる可能性がありますので、注意が必要です。

また、金融庁の発表の通り、「増資公表後、新株の発行価格決定までの間に空売りを行った上で新株を取得するという新株の発行価格を歪める取引」との記載がありますので、PO銘柄は全面的に空売り出来なくなる可能性もありそうです。

その他関連記事
2011/1/19ロイター:COLUMN-〔インサイト〕増資インサイダー疑惑にどう対処すべきか=野村総研 大崎氏

2011/1/12 日本証券新聞【 りそな PO 】 ファイナンス増でも相場は打たれ強く、空売り規制の効果?
posted by ASK at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 金融・資本市場 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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