成長戦略としてVCからの資金調達やIPOを視野に入れているイケてるベンチャー企業(注)の起業家・経営者の方は読んで損はないかと思います。
(注)本書では、優秀でやる気があって成功の可能性が高そうなベンチャー企業のことを「イケてる」と表現されています。(本書P20より)
本書でのファイナンスは「エクイティ」(株式)が中心で「デット」(借入)ではありませんので念のためご注意下さい。
本書では、Start-Up、未上場のベンチャーのファイナンス論だけでなく、多くのベンチャー企業と関わった著者だからこそのベンチャーとはどうあるべきかを熱く説いています。
本書を読んで、起業とは、ベンチャーとは、はたまた国の政策はどうあるべきか、感銘を受ける方も多いのではないでしょうか。
起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
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磯崎 哲也
日本実業出版社
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初版発行 2010年10月1日
全334ページ ソフトカバー
著者は、ブログ「isologue」でも有名な磯崎哲也事務所代表で公認会計士の方です。
長銀総合研究所を経て、ネットイヤーグループ・カブドットコム証券への参画を始め、多くのベンチャー企業へ関与されており、mixiのIPO時の監査役としても知られています。
ブログ:http://www.tez.com/blog/
磯崎哲也事務所:http://www.tez.com/
内容も分かりやすく、あまり広く世に知られていない部分もあるベンチャーのファイナンスについて詳しく解説をされていて、本書は著者のその経験豊富な知識に裏打ちされた良書です。
上場審査上、根拠のない株価での増資やストックオプションの発行、(特別利害関係者間の)株式異動等や手続にミスがあると、かなり痛いことが想定されます。増資の価格やストックオプションの有償価格は間違えると取り返しも付きませんので。
経営者の方には難しいところもあるかもしれませんが、ベンチャーの経営者の方で将来IPOを見据える場合は、「資本絡みでミスったらIPO的にヤバイらしい」ということを覚えておいて、事前に最寄りの専門家等へご相談されることを強くお勧め致します。
他にも、テクニカルで話を複雑にしてしまうからか本書ではストレートに触れられていないようにお見受けしましたが、税制適格の要件を満たすことが出来ない方(未公開会社の発行済株式の1/3超を有する経営者とその親族等、監査役、外部のコンサルタントなどの方々)へストックオプションを発行する場合に税制上の理由から有償発行により行うケースがあるかと思いますが、この有償発行のオプション料を合理的な根拠なく発行してしまっているケースなどもまれに見受けられると聞きますので注意が必要です。
新株予約権/ストックオプションについて専門家の方向けの参考書はこちら↓
新株予約権の税・会計・法律の実務Q&A―ストックオプション
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山田&パートナーズ TFPコンサルティンググループ 東京ファイナンシャルプランナーズ= ティーエフピーコンサルティンググループ= 優成監査法人
中央経済社
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現状の我が国のIPO市場は非常に悪環境となっていますが、本書のような良書の浸透によって、日本において、イケてるベンチャーが次々と生まれ、世界をリードする新サービスや新技術が次々と登場することを願ってやみません。
例えば、ソフトバンク、イーアクセス、ライフネット生命、ファーストリテイリング等等のような。。。
目次はと主な内容は以下の通りです。(下記の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい)
【本ブログでの参考記事】
(本の紹介)2010/12/27 株式'後悔' 後悔せずに株式公開する方法 チームIPO/著
http://money-learn.seesaa.net/article/176393751.html
<目次>
序章:なぜ今「ベンチャー」なのか? P10〜
第1章:ベンチャーファイナンスの全体像 P31〜
第2章:会社の始め方 P75〜
第3章:事業計画の作り方 P111〜
第4章:企業価値とは何か P153〜
第5章:ストックオプションを活用する P183〜
第6章:資本政策の作り方 P225〜
第7章:投資契約と投資家との交渉 P267〜
第8章:種類株式のすすめ P293〜
おわりに P322〜
索引 P331〜
起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと
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磯崎 哲也
日本実業出版社
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(主な内容)
第1章:ベンチャーファイナンスの全体像
ベンチャー企業とは何か、なぜ株式で資金調達をするのか、日本のベンチャーの資金に関連する全体像などについて
第2章:会社の始め方
起業をするのにスタート時の設計が最も重要であること、どんなゴールを目指すかを考えること、など会社設立の基本的な話の後、会社設立の実際や現物出資などについて
第3章:事業計画の作り方
事業計画がどういうものであるか。事業計画は分厚いものを作れば作るほどいいわけではない、また、事業計画を通じて、ベンチャー企業が成功するというのは、そもそもどういうことか、について
第4章:企業価値とは何か
ベンチャーファイナンスにおいて核となる概念「企業価値」について
第5章:ストックオプションを活用する
ベンチャー企業(特に上場前)の最大の武器の1つであるストックオプジョンについて。ストックオプジョンとは何か、どう使えば効果的なのか、陥りやすいミスは何か、などについて
第6章:資本政策の作り方
資本政策で失敗する例は多く非常にもったいないこと。ベンチャーにおける資本政策がなぜ重要なのか、資本政策はどうやって策定すればいいのか、どういう失敗が多いのか、良い資本政策とは何か、などについて
第7章:投資契約と投資家との交渉
投資家から投資を受ける過程での投資家との交渉、投資を受けるまでのプロセス、投資契約の注意点などについて
第8章:種類株式のすすめ
日本ではまだ活用が進んでいないがアメリカではベンチャー投資の常識になっているのに、「優先株(Preferred Stock)」について、どういった場合に役立ち、なぜそれが必要になるのか、について
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