2010年12月27日

株式'後悔' 後悔せずに株式公開する方法 チームIPO(杉山央、茂田井順一、澤井泰良、青嶋康雄)/著

上場準備の色々について、飲みの席で聞けるような話が本で読める、といったイメージがしっくりくる気がします。
とても面白かったです。上場準備中の会社関係者やIPO関係者は「ネタ」として、これから上場を目標に準備をされたいベンチャー経営者の方は「こんなことするのか」「こういうことを突っ込まれるのか」という予習に、良い材料になるかと思います。
内容もきっちりしており、かつ分かりやすく、ここまでさまざまな関係者の見解が分かる本も類書がありませんので、テーマにご興味や関心のある方にはお勧めだと思います。

株式後悔〜後悔せずに株式公開する方法〜 (HS/エイチエス)
杉山央 茂田井純一 澤井泰良 青嶋康雄 チームIPO
無双舎
売り上げランキング: 43821

株式'後悔'
初刷:2010年10月28日
全389ページ ソフトカバー

プロローグによると、本書は、取引所、VC、証券会社、監査法人、IPOコンサルタント、弁護士といったIPOに関わる立場の異なる関係者の方々の勉強会から生まれたそうです。
株式「後悔」という、ややネガティブな表現としたのは、「こういうことをしていてはIPOは難しいのか!」という逆転の発想で、多くの企業が無事に、後悔することなく株式を公開することを願ったネーミングのようです。
IPOを取り巻くバラエティーに富んだ各関係者がコメントし合い、恐らく内容も相互にチェックし合っているのではないかと思いますが、IPO準備の実務で出てくるトピックをとても分かりやすく、時にはユーモア(?)も織り交ぜながら解説されています。
本書の構成は、各章をそれぞれの方がトピックの解説をされ、それについて他の方々からのコメントをされるという形が取られています。

IPOとはInitial Public Offeringで、直訳すると、「最初の公への売り出し」、「始めての公募」というところでしょうか。要は、新規株式上場、つまり今まで未上場だった会社の株式が始めて取引所によって公開市場(取引所)で売買されることを言います。日経新聞の財務欄に(小さいですが)必ず「新規公開株の横顔」と載っていたり、ニュースで見る東京証券取引所で笑顔で鐘を鳴らしている姿が映ったりしているアレです。
既に上場している会社が増資でもって数多くの投資家からお金を集めるのは、始めてではないので、PO (Public Offering)と言います。これは、「公募増資」と言う方が割と一般的です。

上場会社は会社の株式を金融商品として市場で売買するわけですから、いわば会社は「公」のものとなるわけで、さまざまな義務が発生します。その義務を果たす作業はとても大変で、オーナー会社との違いは、公私混同はしてはいけない、会社と社長や役員との取引は原則すべて解消、決算は外部の監査法人による監査を受けないといけない、管理体制の増強が必要、コンプライアンスの徹底、労務管理などなどなど・・。資本政策も重要です。また、上場時に反社会的勢力や反市場勢力と見なされる法人個人が株主や取引先にいることは絶対的にNGとなります。

些細な点なのでどうでもいいですが、証券会社との審査担当者とのやり取りの一部は、引受担当者と見る方がしっくりくるのに何でだろうとか思ったり、弁護士さんの項目になったとたんに文章が固くなったりするところが職業柄が出てるなーと思ったりしました。

個人的に本書がもったいないと思う点は、タイトルや表紙からパッと内容の類推が出来ないことです。
副題が「後悔せずに株式公開する方法」なので、分かると言えば分かるのですが、見た時にパッと受ける印象と比べて内容的にはとてもしっかりしている分ちょっともったいないなと・・・

本書の目次と、取り上げられている主なトピックは以下の通りです(↓「続きを読む」をクリックしてお進み下さい)。
目次
プロローグ P2
序章 IPOへの誘い P19
 IPOへの誘い P20

1 株式後悔物語 P27
 あんなに頑張ったのに P28
 退場した方がいいと思うことも P34
 努力と株価 P38
コラム 上場のメリット・デメリット P44
2 取引所のキモチ P51
 審査担当者もサラリーマン P52
 取引所だって民間企業 P60
 審査担当者だって、人間だもの P66
 資料は語る P72
 黙っているのは、つらいこと! P78
広告塔がいる会社 P84
3 証券会社のキモチ P87
 そんな相談されても困るよ(社長の愛人) P88
 証券会社まかせ(おたくが面倒見てくれるんですよね?) P92
 上場準備と資本市場 P98
 上場審査は大学受験?証券会社は予備校講師? P106
 規程は誰のためのもの? P112
 上場前のタレこみ P118
 社長、それって脱税です1? P124
 社長の車と会社のお金 P130
 調達資金はどこへ行く? P138
 ストックオプションについて P144
 証券会社の審査って、何のため? P152
4 会計士のキモチ P157
 適正なんて言えるか! P158
 ''監査''法人なんです P164
 ''税理士''でもないのです P170
 ''オレが会計基準だ''って誰が決めたの? P178
 だけどボクたちも反省 P184
 研究開発費の処理 P190
 社長、それは無理です! P196
 ご利用は計画的に P202
 営業だけじゃなくて P208
 ガバナンスって何? P214
 厚化粧はキラワレマス P220
君は「FOI」を知っているか P224
5 VCのキモチ P249
 証券会社の断り文句 P250
 リスク回避傾向の監査法人 P254
 派遣役員 P262
 決算を飾るよりも P270
 男女関係は美しく(コンプライアンスという前に) P276
 こんな会社に投資したい P282
 ファンドの投資には期限がある P290
 情報は隠さずに P294
 株価はどのように決まるの? P298
 投資先の上場はうれしいもの P304
寄付金 P308
6 弁護士のキモチ P311
 デュー・ディリジェンスの資料 P312
 国立大学教授に付与した新株予約権は賄賂? P318
 実質的には自己株式取得? P322
 その契約、解除されそうですけれど・・・ P328
 定額残業手当だと、労務管理がラク? P332
 外資系のマネしてみました P340
 管理職って何? P346
 インターネットで私募債? P352
 株主名簿はありますか? P358
 従業員持株会って難しい? P362
7 日はまた昇る P367
 新興市場IPOはどう使うべきか? P368
 種類株による上場 P372
 大地と投資 P378
コラム 日本も、まだまだ捨てたものじゃない P384
エピローグ P386

株式後悔 Amazonへ

本書は目次のタイトルだけでは内容が分かりずらいところもありますので、ブログ運営者より()内はどんな事が書かれているかの補足を簡単につけました。
1 株式後悔物語 P27
 あんなに頑張ったのに(頑張って上場したのに業績不振等で上場廃止へなった会社への想い)
 退場した方がいいと思うことも(「ハコ会社」化してしまった会社について)
 努力と株価(上場後のIR)
コラム 上場のメリット・デメリット(デメリット:上場準備・維持の費用、メリット:資金調達、信用力向上、優秀な人材の確保、社員のモチベーション向上、情報の流入)
2 取引所のキモチ P51
 審査担当者もサラリーマン(内部告発等への対応;取引所が恐れるのは「あんな会社を上場させた」と批判されること)
 取引所だって民間企業(上場後の取引所鞍替え、取引所の人事;上場審査部と上場部)
 審査担当者だって、人間だもの(資料の整備状況への対応)
 資料は語る(資料の質)
 黙っているのは、つらいこと!(情報管理)
広告塔がいる会社(著名人をPRに使うのは逆効果なことも)
3 証券会社のキモチ P87
 そんな相談されても困るよ(社長の愛人)(愛人を役員へ・・、公私混同はNG)
 証券会社まかせ(おたくが面倒見てくれるんですよね?)(証券会社へ資料作成依頼)
 上場準備と資本市場(上場時の株価)
 上場審査は大学受験?証券会社は予備校講師?(上場準備をテクニックで乗り切ろうという心構えでは駄目)
 規程は誰のためのもの?(会社の実態に合った規程を作る必要性)
 上場前のタレこみ(上場承認から上場日までの風評)
 社長、それって脱税です1?(利益相反取引)
 社長の車と会社のお金(会社財産と私物の混同)
 調達資金はどこへ行く?(調達資金の使途)
 ストックオプションについて(ストックオプションの留意点)
 証券会社の審査って、何のため?(証券会社の審査の根拠)
4 会計士のキモチ P157
 適正なんて言えるか!(仕掛品の進捗度の妥当性の対立)
 ''監査''法人なんです(監査人の独立性)
 ''税理士''でもないのです(会計士と税理士は違う)
 ''オレが会計基準だ''って誰が決めたの?(無茶な強行との対立)
 だけどボクたちも反省(会計士の会社への姿勢)
 研究開発費の処理(開発費は資産計上か費用処理か)
 社長、それは無理です!(合併比率の根拠)
 ご利用は計画的に(資金繰り)
 営業だけじゃなくて(管理体制)
 ガバナンスって何?(ガバナンス体制)
 厚化粧はキラワレマス(売上の過大計上か)
君は「FOI」を知っているか(FOI事件の考察)
エフーアイについて(Wikipediaより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%95%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%82%A4
5 VCのキモチ P249
 証券会社の断り文句(証券会社の引受の受諾可否)
 リスク回避傾向の監査法人(監査の厳格化)
 派遣役員(VCからの派遣役員)
 決算を飾るよりも(仲の良い会社との取引の融通)
 男女関係は美しく(コンプライアンスという前に)(社長の恋人が会社にいるとき)
 こんな会社に投資したい(ポイントは市場・業界・経営陣)
 ファンドの投資には期限がある(ファンドの投資期間)
 情報は隠さずに(企業秘密の開示)
 株価はどのように決まるの?(VCの投資する株価)
 投資先の上場はうれしいもの(IPOの達成感)
寄付金(寄付金は必ずチェックされる)
6 弁護士のキモチ P311
 デュー・ディリジェンスの資料(膨大な資料の用意)
 国立大学教授に付与した新株予約権は賄賂?(公務員なので収賄罪の可能性も)
 実質的には自己株式取得?(資金を迂回した株式の取得)
 その契約、解除されそうですけれど・・・(契約上の解除条項)
 定額残業手当だと、労務管理がラク?(労務管理と残業代)
 外資系のマネしてみました(リストラによる従業員の解雇)
 管理職って何?(店長の労務管理)
 インターネットで私募債?(金融商品取引法に注意)
 株主名簿はありますか?(株主名簿の作成)
 従業員持株会って難しい?(従業員持株会の法務)

株式後悔〜後悔せずに株式公開する方法〜 (HS/エイチエス)
杉山央 茂田井純一 澤井泰良 青嶋康雄 チームIPO
無双舎
売り上げランキング: 43821
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