2010年12月27日

道具としてのファイナンス 石野雄一/著


ファイナンスの入門書として最もお勧めの一冊であると思います。
ファイナンス理論を、実際に実務で使える「道具」として使えるようになることを目的としています。
随所にエクセルでの基礎的な計算の仕方をきちんと説明しているので、実務で携わるビジネスマン向けです。

本書では大きな声では言えないので小さな字でということでフォントを小さくして(笑)、「本書の内容をマスターすればそこらのMBAホルダーより、ファイナンスが使えるようになる。普通のビジネスマンならこの本だけで十分」という趣旨のことを書かれています。個人的には決して大げさではないのではないかと思われます。MBAを取りに行ったファイアンス初学者の私の知人は本書が大変役立ったそうです。

もちろん、本書のトピックの内容をそれぞれ掘り下げていく必要のある方はそれぞれの専門書へ進んでいく必要がありますが、ファイナンスの全体像を学習したい、復習したいという方、企業の財務部や経理部の実務ご担当者をはじめ、財務畑以外でこれからMBAへ行かれる方、証券アナリストや公認会計士の受験生などが理解を深めるのにもお勧め出来るかと思います。

道具としてのファイナンス
石野 雄一
日本実業出版社
売り上げランキング: 4231

初版:2005年9月1日
全286ページ ソフトカバー

著者自身がファイナンスの勉強に苦労され、その成果を集約したのが本書とのことです。
ご自分の苦労をもとに、ファイナンスの勉強に必要以上の時間を掛けずにすむよう、そして、苦労するのとは別の違う経験をして、そこから得たものを次の世代に伝えていって欲しいとの願いが込められています。
著者は現在、株式会社オントラック(http://ontrack.co.jp/outline/)にて経営コンサルティング等をして、「ビジネスで使えるファイナンス」の知識の習得と普及を目指しておられるそうです。91年上智大学理工学部卒業後、東京三菱銀行に入行。10年間勤務し銀行を退職後、単身渡米。2002年インディアナ大学ケリー・スクール・オブ・ビジネス(MBA課程)修了。帰国後、日産自動車(財務部)入社。キャッシュマネジメント、リスクマネジメント業務を担当。日産では「サプライヤー信用リスクモデルの開発」を受賞。2005年3月、日産自動車を退職し、「道具としてのファイナンス」出版後、独立系財務戦略コンサルタントとして活動しています。

また、同じ著者の「ざっくり分かるファイナンス」という本が新書で出ていますので、さらに手軽に学習されたい方は手にされると良いかと思います。

初版:2007年4月20日
全238ページ、新書


目次と本書で主に説明がされているトピックは以下の通りです。(下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい)






目次
はじめに
序章 ファイナンスの武者修行 P16
第1章 投資に関する理論 P26
1-1 将来価値とは P26
1-2 現在価値とは P29
1-3 将来もらえる年金の値段を計算してみよう P32
1-4 正味現在価値による投資判断 P37
Column プロジェクトの割引率とは? P41
1-5 正味現在価値(NPV)以外の指標による投資判断 P42
1-6 資本支出予算 P51
第2章 証券投資に関する理論
2-1 リスクとは P72
2-2 平均と標準偏差 P76
Column 期待値 ― どちらのくじ引きがお得? P83
2-3 共分散と相関係数 P84
2-4 ポートフォリオによる分散投資 ― リターンと分散の求め方 P89
2-5 効率的市場仮説 P109
第3章 企業価値評価 P114
3-1 加重平均資本コスト(WACC)とは P114
3-2 CAPMを使って株主資本コストを求めよう P121
3-3 会計の基礎 P126
3-4 フリーキャッシュフローとは P131
3-5 企業価値表とDCF法 P133
3-6 EVAって何? P145
第4章 企業の最適資本構成と配当政策 P150
4-1 資本構成と企業価値(MM理論) P150
4-2 配当政策と企業価値 P166
4-3 資金調達の方法 P171
第5章 資本市場に関する理論 P180
5-1 債券とは P180
5-2 利回りと価格はどう決まるか P184
5-3 債券のリスク P193
5-4 金利の期間構造 P198
5-5 株式の基礎 P204
5-6 類似企業比較法(マルチプル法) P211
第6章 デリバティブの理論と実践的知識 P218
6-1 デリバティブの種類 P218
6-2 先物取引の特徴 P223
6-3 スワップ取引とは P229
6-4 オプションとは P237
6-5 オプション価格を決める P248
6-6 ワラントと転換社債 P255
第7章 ブラック=ショールズ・モデル P262
7-1 ブラック=ショールズ・モデルとは何か P262
7-2 日産でのブラック=ショールズ・モデル活用法 P269
7-3 リアルオプション P273
索引
参考文献


本書で主に説明がされているトピックは下記の通りです。
(注)こちらは、本ブログ運営者が整理したもので、必ずしも著者の見解と一致するものとは限りません。
目次トピック補足
第1章 投資に関する理論将来価値、現在価値将来価値は複利で計算する 将来の価値を現時点まで割り引いたものが現在価値
正味現在価値(NPV)による投資判断NPV=将来発生するキャッシュフローの現在価値の合計額−初期投資額 NPV>0 の場合は投資すべき
正味現在価値(NPV)以外の指標による投資判断
資本支出予算NPV、IRRのそれぞれの留意点や相違、キャッシュフロー予測の留意事項(埋没コスト・機会コスト、ワーキングキャピタル、資金調達コスト
第2章 証券投資に関する理論リスクとはリスクとは予測のできない「不確実性」
平均と標準偏差
共分散と相関係数
ポートフォリオによる分散投資におけるリターンと分散の求め方効率的フロンティア、資本市場線、マーケットポートフォリオ、シャープレシオ、市場リスク、β、証券市場線
効率的市場仮説
第3章 企業価値評価加重平均資本コスト(WACC)WACCの計算式、計算式の内容(株主資本コスト、負債コスト、株主資本、負債、実効税率について)
株主資本コストCAPM、β、リスクプレミアム
会計の基礎貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書の大まかな仕組み
フリーキャッシュフローフリーキャッシュフロー=EBIT(1-税率)+減価償却費-設備投資-ワーキング・キャピタル増加額
企業価値評価とDCF法企業価値=株式時価総額+ネット・デット 企業価値=事業価値+非事業価値 ワーキング・キャピタル=売上債権(売掛金・受取手形)+在庫-支払債務(買掛金・支払手形) DCF法で企業価値を割り出す手順 企業価値を高めていく方法
EVA@EVA=NOPAT(税引後営業利益)-資本コスト 資本コスト=投下資本×WACC 投下資本=有利子負債+株主資本(簿価) AEVA=(ROIC-WACC)×投下資本 ROIC=NOPAT(税引後営業利益)÷株主資本 EVAの現在価値の合計がNPVと一致する
第4章 企業の最適資本構成と配当政策資本構成と企業価値(MM理論)財務レバレッジ MM理論 ペッキング・オーダー理論
配当政策と企業価値配当か自社株買いか
資金調達の方法エクイティ・ファイナンス デット・ファイナンス
第5章 資本市場に関する理論債券社債
利回りと価格の関係利回りは、債券の価格変動によって、変化する 債券利回りの要素-利息収入(インカムゲイン)、償還・売却時の差益(キャピタルゲイorキャピタルロス)、受取利息の再投資のリターン 利回りについて-直接利回り、単利最終利回り、割引債の利回り、複利最終利回り
債券のリスク格付
金利の期間構造スポット・レート(ゼロ・クーポン債の価格から算出される複利最終利回りは、それぞれの期間に応じた利回り) イールドカ−ブ 純粋期待仮説 逆イールドカーブ 流動性プレミアム仮説 市場分断仮説
株価決定の理論1.株価は企業の業績や将来性とは無関係に市場参加者の心理の相乗作用として形成される 2.基本的には、株価は企業の将来性や収益力を反映する 株価の法定理論 株価=将来の配当を株主資本コストで現在価値に割り引いたものの合計
類似企業比較法(マルチプル法)マルチプル法の手順 EVITDA倍率
第6章 デリバティブの理論と実践的知識先物為替予約 直先スプレッド 先物取引の特徴
スワップ取引スワップとは、将来の特定期日に、ある対象物を交換すること 金利スワップ 通貨スワップ スワップの価値
オプションオプションの用語 オプションの価値=本質的価値+時間価値 コールオプションの価値 プットオプションの価値 プット・コール・パリティ=コールの価格+権利行使価格の現在価値=株式の価格+プットの価格 オプション価格変化の要因 二項モデル
ワラントと転換社債転換社債の価値=max(普通社債としての価値、転換価値)+オプションの価値 ワラント債の価値=普通社債としての価値+ワラントの価値
第7章 ブラック=ショールズ・モデルブラック=ショールズ・モデルブラック=ショールズ・モデルの数式 ヒストリカル・ボラティリティ インプライド・ボラティリティ 日産でのブラック=ショールズ・モデル活用
リアルオプションリアルオプションの具体例 リアルオプションの評価 リアルオプションの種類 通常のNPV法では、本来のプロジェクトの価値を正確につかんでいるとはいえない プロジェクトの価値=プロジェクトのNPV+リアルオプションの価値


道具としてのファイナンス
石野 雄一
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