2010年12月24日

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか グレゴリー・ザッカーマン/著 山田美明/訳

魅惑的なタイトルです。そして面白い。2007年にサブプライムローンの下落に賭けた戦略で成功を収め、150億ドルの利益を上げたポールソン&カンパニーを中心に、サブプライムローンに係る逆張り取引で利益を上げた逐一を追ったドキュメントです。
原書名は「The Greatest Trade Ever」。
「ボロ儲け」に共通する取引は、サブプライムローンに係るCDSのロングをした投資家たち。ボロ儲けと表現されていますが人とは違う洞察力と決断力があってこそ、簡単に儲けたわけではありません。
後、ポールソン&カンパニーはその後もサブプライムローンで傷を負った金融機関等へのショートポジションで多額の収益を上げました。
サブプライムローンのCDSやCDOといった一般的には分かりにくい取引ですが、しっかり仕組みや背景等も含めて分かりやすく説明されており非常に文章も上手です。
アメリカのヘッジファンド、投資銀行とはどのような世界なのかが垣間見れます。

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか
グレゴリー・ザッカーマン
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出版日:2010年12月9日(原書出版日:2009年11月3日)
全406頁、ハードカバー
原書はこちら⇒
The Greatest Trade Ever: How One Man Bet Against the Markets and Made $20 Billion
Gregory Zuckerman
Penguin
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著者のグレゴリー・ザッカーマン(Gregory Zuckerman)氏は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で(執筆時)12年ペンを取り続け、人気コラム「Heard on the Street」を担当するほか、ヘッジファンドや投資など、ウォール街関連のさまざまな記事を執筆しているシニアライターです。

主要人物たちへ200時間以上に及ぶ取材をし、ジョン・ポールソン氏は著者のインタビューに50時間以上対応したそうです。

ほぼ同時期に出版されている「世紀の空売り」(マイケル・ルイス著)も同様の手法で利益を上げた投資家を追ったドキュメントで、同様の面白さです。話の内容も重複しますが、ポールソン氏関連の話は逆に少ないので、別々に楽しめます。
サイオンキャピタルの隻眼の元医師の投資家のマイケル・バリー氏、ドイツ銀行のトレーダーのグレッグ・リップマン氏は両書で活躍です。
「世紀の空売り」は何名かの投資家の話が同時並行で進行するため、私は時間が空いた時に少々誰がどうだったのかでごっちゃになりました。「史上最大のボロ儲け」はジョン・ポールソン氏を中心に追っていますので、途中にマイケル・バリー氏とジェフリー・グリーン氏のいきさつが少し入ってくる程度です。


世紀の空売り
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ポールソン&カンパニーについては、米証券取引委員会(SEC)によるゴールドマン・サックス・グループ提訴につながった債務担保証券(CDO)への関与、すなわち2007年にCDO「アバカス」の組成にあたりCDOを構成する中のサブプライム・ローンの選定にポールソン&カンパニーが関与したことを取引の相手方の機関投資家(IKBとACAキャピタル・マネジメントの2社)に知らせなかったことが詐欺的行為に当たるとしてSECがゴールドマンを提訴した件が2010年4月に日本でもニュースで大きく取り上げられたことでも知られているかと思います。
Bloombergニュース「SECがゴールドマンを提訴、CDO組成で詐欺的行為(Update2)」2010年4月17日
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aM1YAIYrY.nA
ゴールドマン・サックスのプレスリリース「米国証券取引委員会による提訴内容について」2010年4月16日
http://www.goldman-sachs.com/japan/our-firm/press/press-releases/SECComplaint.print.html


ポールソン氏の運用スタイルは企業合併投資と訳されていますが、M&A等に係るイベント・ドリブン型のヘッジファンドと言う方が分かる人には分かりやすいと思います。
検索しましたら、ポールソン・アドバンテージ連動ファンドが引っ掛かり、下記のように説明されています。
http://www.sc.mufg.jp/products/trust/pdf/lyxor_hfs.pdf
・合併裁定戦略
企業の買収案件に際し、関連法、企業の評価、事業戦略、投資タイミングなどの要因から案件の成否を判断し収益を狙う戦略
・イベント裁定戦略
企業のイベント(部門売却、リストラクチャリング、株式買戻し、資本構成の変更、破綻、経営陣の交代など)から収益機会を狙う戦略
・破綻証券戦略
既に米国連邦破産法の適用を申請した企業、裁判所外で負債再編のプロセス中の企業、あるいは、間もなくそのような状況に陥る危険性のある企業の証券を買い、収益の獲得を狙う戦略






ジョン・ポールソン氏の報酬は、日本では考えられない金額ですが、
2007年40億ドル(本書P348より)
2008年20億ドル(業界誌アルファ・マガジンから発表を基にした記事より)
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0421&f=business_0421_052.shtml&pt=large
2009年120億ドル(米経済誌フォーブスが先日発表した2009年の世界長者番付を基にした記事より)http://media.yucasee.jp/posts/index/2852
だそうです。

しかも巨額の報酬を得ているのはポールソンだけではありません。
下記、2008年ヘッジファンド運営者、2009年の高額報酬者のランキングです。
2008年ランキング(業界誌アルファ・マガジンから発表を基に作成)
1 ジェームズ・シモンズ ルネサンス・テクノロジーズ 25億ドル
2 ジョン・ポールソン ポールソン&カンパニー  20億ドル
3 ジョン・アーノルド ケンタウルス・エナジー 15億ドル
4 ジョージ・ソロス Soros Fund Management  11億ドル
5 レイモンド・ダリオ ブリッジウォーター 7.8億ドル
6 ブルース・コフナー キャクストン 6.4億ドル
7 デイビット・ショー D.E. Shaw & Co.  2.75億ドル
8 スタンレー・ドラッケンミラー デュケーヌ 2.6億ドル
9 デービッド・ハーディング ウィントン 2,5億ドル
9 アラン・ハワード ブレバン・ハワード 2.5億ドル
9 ジョン・テイラー Jr. FXコンセプツ 2.5億ドル

2009年ランキング(フォーブスを基に作成)
1位 ウォーレン・バフェット バークシャーハサウェイ 470億ドル
2位 ジョージ・ソロス ソロスファンドマネジメント 140億ドル
3位 ジョン・ポールソン ポールソン&カンパニー 120億ドル
4位 カール・アイカーン アイカーンパートナーズ 105億ドル
5位 ジェームズ・シモンズ ルネサンステクノロジー 85億ドル
6位 スティーブ・コーエン SACキャピタル 64億ドル
7位 ステファン・シュワルツマン ブラックストーン 47億ドル
8位 レイ・ダリオ ブリッジウォーターアソシエイツ 40億ドル
9位 ロバート・ジフ オクジフ 40億ドル
10位 ブルース・コブナー カクストンアソシエイツ 35億ドル
10位 デビッド・テッパー アパルーサマネジメント 35億ドル


本書の目次は以下の通りです。(下の「続きを読む」をクリックしてお進み下さい)

【本ブログでの関連記事】
2010/12/28 世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち マイケル・ルイス/著
http://money-learn.seesaa.net/article/176723522.html






序 P3
プロローグ P13

1 ジョン・ポールソン P20
2 住宅バブル P60
3 パオロ・ペレグリーニ P80
4 マイケル・バリー P105
5 バブルの証拠 P130
6 難航する資金集め P157
7 ジェフリー・グリーン P182
8 追い詰められる男たち P209
9 CDOのからくり P237
10 アンドリュー・ラーデ P253
11 ついに始まった崩壊 P267
12 混乱を続ける市場 P297
13 金融史上最大の大儲け P321
14 男たちのその後 P349

エピローグ P374
終 ペーパーバック版あとがきより P387

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか
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登場人物の備忘録です(途中)。
ジョン・ポールソンJohn Paulson
・ニューヨーク大学とハーバード大学を優秀な成績で卒業
・長い時間をかけて徹底的に調査を行う投資スタイルのイベント・ドリブン型のヘッジファンドを運営
・控えめな態度で穏やかに話をする

パレオ・ペレグリーニPaolo Pellegrini
・ポールソン&カンパニーのアナリスト
・住宅市場の危機を見込んだサブプライムローンのCDSをポールソンに提案した
・イタリア出身、ミラノ大学
・ポールソンより1つ若い

マイケル・バリー
・義眼の医師
・自分で運用を行っていたところバリーの書いている記事を目にしたヘッジファンド運営者のグリーンプラットから100万ドルの出資を受けサイオン・キャピタルを運営。
・2003年には2.5億ドルの資金を運用し、年500万ドルの利益を上げていた
・住宅市場の危機を発見し、住宅ローンのCDSを大量に購入

グレッグ・リップマン
・ドイツ銀行の証券化商品トレーダー
・サブプライムの下落に賭けたCDS取引でドイツ銀行に多額の収益をもたらす


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