2010年12月22日

獅子のごとく 黒木亮/著


黒木亮さん作の「獅子のごとく」が面白かった。



ジャンル:金融経済小説
出版年月日:2010年11月26日
全517ページ

著者は、銀行、証券会社、総合商社勤務を経て作家になった方で、経済小説を多く出版されています。

投資銀行部門とトレーディング部門を交互に描写し投資銀行の歴史とともに味わえる前作の「巨大投資銀行」も非常に面白かったが、「獅子のごとく」は個人的にはさらに上を行く面白さ。

「巨大投資銀行」は上、下の大作でしたが、「獅子のごとく」は上、下とは分かれていないものの長編ですが、間延びなく物語が進み、一気に読み終えました。
登場人物や社名がフィクションだったり実在する名だったりして混在しますが、登場人物等の説明をその都度くどくなく必要な説明が繰り返される配慮もあり、非常に読みやすいです。

物語は、主人公である逢坂丹(オウサカアカシ)が、邦銀に就職し、数年間支店勤務の後米国留学。MBA取得後、社費であるため邦銀とは出禁状態で米国にて投資銀行エイブラハム・ブラザーズへ就職(*エイブラハム・ブラザーズは小説中での架空の会社)。そしてエイブラハム・ブラザーズ日本支店へ異動となり、パートナーへ駆け上がっていき日本法人トップとして君臨する様子が描かれています。
外資投資銀行のパートナーとして、数百億の資産を持ち、それでも走り続けるのは自分のいた邦銀に実業を営んでいた実家が追い込まれ長年住んだ家を取り上げられたことを反動に、世間にオーバーウェルム(圧勝)することをモチベーションとしています。パートナーになってなお、それだけでは「金のあるちんぴら」くらいだと邁進していきます。

商品紹介で「ひたすら勝つことにこだわり、違法すれすれの手段も厭わない獰猛な“獅子”」と表現されていますが、あらゆる手を尽くして時にはえげつなくディールを取りに行く、また社内でのプロモーションを巡る駆け引きの壮絶さが、フィクションとはいえ投資銀行業界の競争の激しさを物語っています。
超のつく肉食系業界の中で勝ち残っていくだけではなく、圧倒的な勝利を目指しどこまでも妥協なく諦めない姿勢は刺激になります。

ディテールも細かく描写されており、投資銀行の中でもいわゆるIBD(投資銀行部門)と呼ばれるセクションの様々な様子が想像出来ます。投資銀行業界を知りたい、興味のあるビジネスマンや学生は、一定部分はフィクションであることを考慮しつつ一読してみると参考になりそうです。

【関連リンク】
黒木亮さんの本書出版に関するインタビュー記事はこちら。
・【本の話をしよう】作家 黒木亮さん 「獅子のごとく」 社会的意義のあるもの追求(2010年12月14日)
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/101214/bks1012141321001-n1.htm
・(日経ビジネスオンライン)外資系金融、出世の内幕−『獅子のごとく』の著者、黒木亮氏が語る(2011年1月4日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20101224/217729/


目次は以下の通りです。(「続きを読む」をクリックしてお進み下さい)

頁  目次
p5 プロローグ(2005年エイブラハム・ブラザーズでの一場面)
p16 第1章 獅子ジャージー(1977年大学時代〜邦銀内定〜邦銀就職〜米国留学〜米国投資銀行就職)
p48 第2章 三六五度評価(エイブラハム・ブラザーズ-投資銀行部門ジャパンデスクのアソシエイト-)
p84 第3章 七首(あいくち)の男(1987年〜 エイブラハム・ブラザーズ東京支店投資銀行部アソシエイト〜バイスプレジデント)
p120 第4章 パートナー昇進(1989年〜 バイスプレジデントからパートナー昇進へ)
p154 第5章 蛆虫(1996年〜 東京支店の投資銀行トップとして盤石の地位を築く)
p191 第6章 寝技主幹事(1997年〜 「寝技」も駆使して大型案件の主幹事を獲る)
p222 第7章 女性大蔵官僚(1999年〜 エイブラハム・ブラザーズIPO逢坂丹は180億の資産を得る。JT株案件を巡る女性大蔵官僚とのバトルなど)
p284 第8章 エレファント・ハンター(2002年〜 三井住之江銀行への1500億優先株出資など*「エレファント・ハンター=でかいディールを獲れ」というような意味のようです)
p345 第9章 ヒルズ族(2003年〜 帝都鉄道(西部鉄道がモチーフ)に係るディールなど)
p410 第10章 二人の阿修羅(2006年〜 帝都鉄道に係るディールなど)
p509 エピローグ
p519 主要参考文献
経済・金融用語集(20頁)

エイブラハム・ブラザーズは何となくゴールドマン・サックスを連想させます。小説中はゴールドマン・サックスも別法人として出てきますが、かえって陰が薄い感じです。
逢坂丹のモデルは、一部の描写において、たびたびメディアで取り上げられるゴールドマン・サックスの東京トップの持田昌典氏が連想されます。週刊誌の記事などで読んだ記憶のある内容が一部のエピソードとして引用されていたりします。
実際にモデルになったのが誰かは定かではありませんが、日経ビジネスオンラインのインタビューで、「主人公のモデルは、ある日本人の投資銀行家」とコメントがあります。また、日本企業にも「ここまで徹底する人が現れて欲しい」と語っています。

また、こちらのブログによると、小説中のジェフ米本はユニゾンの江原氏、小説中の八尋はメリルの川島氏がモチーフとみられるようです。
このあたりは、ゴールドマン・サックスの正体「文藝春秋」も参考になります。





日本での出版が2001年なので少々古いですが、IBDの様子を伝える本として、投資銀行ドナルドソン・ラフキン・ジェンレットに入社した2人の著者が書いた「投資銀行残酷日記」がよく知られていると思います。一応実際の体験記とフィクションという違いはあります。どちらも面白いですが、「獅子のごとく」は小説ならではの躍動感があると思います。







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