インデックス投資ナイトは、個人投資家の個人投資家による個人投資家のためのボランティアの手作りイベントで、スポンサー等は一切付いておりません。私も実行委員の一人として運営に参加し、本年は第三部のセッションで司会を務めさせていただきました!本年実行委員長のybさん、お疲れ様でした。
100名を超える参加者とともに楽しく過ごすことが出来ました。無事に終了して何より。
チケット発売管理や当日の会場の運営面を全面的にカルカルさんがやってくれるため、ボランティアメンバーだけで何とか開催できております。カルカルさん、毎年ありがとうございます。
インデックスファンドを積立投資している方が参加者の9割以上、つみたてNISAを利用している方も3割程度というインデックス投資ナイトという名前にふさわしい参加者層で、懇親会も盛り上がりました。
帰り際には山崎元さん他2名の参加者とビル下で遭遇し、実行委員のybさん、水瀬さん、セロンさんと3次回へという流れになりそこでもまた議論の続き(?)を楽しみました(笑)。(山崎さんご馳走様でした!)
インデックス投資ナイト2019の当日の様子です。
第一部「インデックス投資の生みの親 John C. Bogle氏追悼」
インデックスファンドの父と呼ばれる、Vanguardの創設者の一人、John C. Bogle氏がご逝去されたことに伴う特別企画でした。
<登壇者>
・塚本俊太郎氏(バンガード・インベストメンツ・ジャパン 投資戦略部長)
・今井利友氏(総務企画局 政策課 総合政策室 金融税制調整官)
・田村正之氏(日本経済新聞社 編集委員兼紙面解説委員)
・水瀬ケンイチ氏(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記))
・司会 イーノ・ジュンイチ氏
ボーグル氏がインデックスファンドと共に歩んだ軌跡を振り返り、個人の資産運用にもたらした変革などを登壇者に語ってもらいました。
バンガード・インベストメンツ・ジャパンの塚本さんよりボーグル氏の人物像やバンガードの生い立ちをお話いただきました。投信業界との出会いは20歳の頃で、金融雑誌のフォーチュンを読んでいて、まだまだ投信業界は小さかったが、今後伸びるという記事を読んだということで、運用会社のウェリントンに入り、その後、ファンドの管理だけを行う会社を作り、2〜3%のアクティブファンドが多いなか、1976年にSP500のインデックスファンド(0.5%)を作ったのが最初のインデックス商品とのことです。(・・1976年って、私まだ生まれていないです。今でこそインデックス商品は大きな市場ですが、当時としては画期的なことだったのだと思います。長い歴史です。何事も先人の最初の一歩あり。)
また、金融庁の今井さん、日経新聞の田村さんからも談話をいただきました。
つみたてNISAの商品選定がボーグル氏の影響を受けているという今井さんのお話は興味深かったです。
水瀬さんからはバンガードの訪問記をボーグル氏の名言と共に語られました。
「投資の世界では、感情は必ず間違った方向に投資行動を導くものである」
「気分の高揚している時(大抵は市場がピーク)、買いたくなり、気分が低迷していること(市場が低迷しているとき)売りたくなる」
「複利の魔法は、驚異的である」
「常に成功するファンドマネージャーは存在しない」
「長期の複利で計算される利回りの奇跡を、長期のコストで制圧されないようにすること」
「お金はゴールではなく、ゴール達成の手段」
「投資家は自分のコントロールできるもの(手数料や税金)をコントロールし、できないものは諦めるべき」
「投資家にとって勝利の戦略はインデックスファンドを購入し、それを保有し続けること」
(・・・インデックス運用の要諦ですね。)
第二部 投資ブロガー座談会「若手投資ブロガーさん、集まれ!!」
若手投資ブロガーさんに、投資のことやブログのことをお聞きし、同世代へエールを送ってもらうセッションです。
<登壇者>
・シオイ氏(お気楽インデックス投資ジャーニー)
・青井ノボル氏(インデックス投資で長期縦走へ)
・柴崎シュンスケ氏(インデックス投資で長期航海)
・ザリガニ氏(ザリガニの米国株と資産運用の日記)
・カン・チュンド氏(司会:インデックス投資のゴマはこう開け!)
各ブロガーの生の資産運用やマネーマネジメントのお話です。着ぐるみを着ての登場と登壇者の気合を感じました(笑)。
実際の身近な人の話は大いに参考になるところです。登壇者は皆さん既婚者で、30代から40前後の年代。マネーフォワードを奥さんとも連携して全てを見える化してるというのが今風な感じだなと思いました。「共有しているけど、興味なさそう」との声も。(・・共有しているよという信頼が大事なのかも。)
さすがブログをされているような皆さん、しっかりと軸をもって取り組んでいるようで、カンさんのテンポの良い仕切りとともに楽しいセッションでした。
第三部 ゲスト座談会「なぜインデックス投資は広まらないのか?日本のインデックス投資の未来」
<登壇者>
・山崎元氏(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
・柴山和久氏(ウェルスナビ代表取締役)
・虫とり小僧氏(いつか子供に伝えたいお金の話)
・司会 ASK
インデックス投資ナイトも12年目。「インデックス投資」という言葉はだいぶ市民権を得てきてはいますが、まだまだ主流ではないのが現状といったところでしょうか。実際、投信残高に占めるインデックスファンドの比率は約15%程度と伝えられています(日経記事「つみたて元年、インデックス型投信の選択肢広がる」2018/12/3より)。
本年はロボアドのサービス会社のウェルスナビ柴山さんを初登場でお迎えしました。
山崎元さんと柴山和久さん(ウェルスナビ代表)の「プロレス」を期待(?)する向きもあったようですが、楽屋での事前の打ち合わせでは山崎さんも言葉少なげで、虫とりさんは「試合前のボクサー」だと言ってたり、どうなるかと思いましたが、お互いの主張はし合いながらも温和に進行できて主催者としてはホッと一息w。
柴山さんのそもそも投資をしていない人たちにいかにインデックス投資を広げていくかという熱いパッションと、大事なのは必ずしもウェルスナビのサービスよりも「長期分散国際投資」なのだという誠意あるお話ぶりが来場の皆さんにもしっかり伝わったようです。柴山さんご自身も、ウェルスナビ創業前からインデックス投資を実践していて今でも続けているとのこと。「支え合う仲間が大切」「投資は孤独」「説得力ある成功体験の共有」という言葉が印象的で、まだまだ少ないインデックス投資の仲間を増やしていこうという今回のテーマにふさわしい話をいただけてとても良かったなと。
山崎さんから柴山さんに「提案」として、お金全体のファイナンシャルプランニングやお金全体が最適かされているかのチェックが大事なので、どうせロボアドに資産運用を任せるなら、悪い部分を排除した、家計や資産全体を見る良心的な腹黒くない電子FPみたいなものがあるといいという話もあり、柴山さんが「作ります」と即答し、「そのときは私を雇ってくれますか?」という融和モードな展開は面白かったです。
虫とりさんも適切に合いの手を入れて頂きながら、「年金報告書は炎上商法として成功」「インデックス投資を広げるには、芸能人に歌ってもらったり、やらざる得ない、勉強せざる得ない状態にする」というお話も。手間や時間を使いたくないし、世界に分散投資したいので、消去法でインデックス投資だとのこと(ブログに使ってる時間はw)。
司会進行の反省点も多かったですが、概ねは事前の想定通りにスムーズに進行・終了が出来て、ツイッターも盛り上がって一安心です。
最後に第三部のテーマに補足した私の所感も少し述べておければと。
長期分散投資で低コストは意識すべきは重要な要素です。私自身もインデックス商品は最低コストのものを選びますし、特にインデックス投資ナイトに参加されるような層の方々はコスト意識に敏感で、そうすると、ロボアドの手数料(1%)ってどうなのだろう、という考えにいきます。ただ、運用の仕方がきちんとしていないと簡単にコスト以上の損失を出してしまいます。
自分で運用設計・管理・実行が出来る人はロボでも人間でもアドバイザーは不要で自分でやればいいのですが、世間のほとんどの人は資産運用プロセスのトータルを自分で正しく実行するのは難しいのが現実です。投資教育なんて他人に強制できるものでもないし、インデックス投資をどう広げるかという観点で言うと、そもそも投資や資産運用に絶対の正解などないので、より投資への第一歩を踏み出す実行の後押しだったり、UIの使い勝手や安心感を持って続けていけるサービスの工夫が一助になるのだと思います。
どんなに低コストのインデックスファンドがあっても売買するのは自分自身の意思決定と行動です。
バンガードのレポートに人間のアドバイザーの付加価値を分析し定量化した「Quantifying Vanguard Advisor's Alpha - Vanguard Funds」というレポートがあります(残念ながら英語版しかないようですが)。それによると、人間のアドバイザーの付加価値で最も大きいのは「行動のコーチング」とされていて、これにより1〜2%の付加価値があると分析されています。コスト効率的な実行、リバランス、アセットアロケーションよりも、相場環境に右往左往しないような「行動」こそが大事だと分析されています。
私も投資を始めて緩いながらももう15年以上になりますが、長く経験していて自分自身の実感や他の人たちを見ていて思うのは、長く投資を続けリターンも上がるためには、上げ相場で調子に乗らず下げ相場で悲観的になりすぎず、高値で沸いている時に流されず相場の底で買いにいく、欲張りすぎず感情のままに下手に売買してしまわない行動様式を身に着けることが大事な気がします。何に投資するかとか、売買の技術的なことよりも、マーケットに向き合うマインドや正しい行動と経験がリテラシーなのではないかと。
特にリーマンショックから10年以上が経ち、アベノミクス相場からもう7年以上経ち、アベノミクス開始以降は暖かいマーケット環境がずっと続いてます。本格的な下げ相場や大きな金融ショックが起きた時に、同じように投資行動を続けて行けるかどうか、一時的な損失や不安を乗り越える後押しがあるかどうかは大きいかもしれません。日本で長期分散投資の文化を増やすには、身の回りで資産形成をうまくやった友人知人の成功体験があることで輪が広がっていくことが要因として大きいのだと思いますが、これには時間も掛かるでしょう。
今回、インデックス投資ナイトに先立ち予習をしていて、「WealthNaviの運用アルゴリズム」というホワイトペーパーが公表されていて読んだのですが、ファイナンスを勉強した人にとってはなかなか興味深い内容で、分かりやすく書かれていると思いました。他社のものも読んでみましたが、ウェルスナビのものがよく出来ている印象です。まさにこれを作成したという、牛山さん(ウェルスナビ執行役員 リサーチ&クオンツ)ともお話が出来て楽しかったです。
ウェルスナビのサービスは運用残高1500億円を超え、利用者数はおよそ15万人、1人当たり約100万人が投資をしているようです。約7割が積み立てで利用しているとのこと。つみたてNISAは2018年で口座数103万、買付額931億円で、ざっくり1人当たり約10万円です。年間40万円の枠は使い切ってない人が多いのですね。スタートアップ1社のサービスがつみたてNISAより使われているというのはなかなか凄い。
ロボアドのサービスのスケールのためには、長期分散投資の文化の裾野を広げることと、手数料の問題でいうと、運用残高も増えて経営も安定すればローコストにしていく余地もあるようですが、資産に掛かる料率なので、100万円を預けて年間1万円ですが、仮に1億円を預けると年間65万円(3000万円超の手数料率は0.5%)で、金額が大きいと支払額が大きくなる中で大口の流入をいかに増やせるかで、山崎さんのお話のような資産の全体設計のアドバイスのような付加価値を付ける1つのアイデアなのかもですね。オンラインでユーザーにどう「行動のコーチング」をするかは容易ではないですが、個人的には興味深いテーマでもあります。話が逸れましたが。
柴山さんのご著書も大変読みやすく面白いです。興味がある方にはお勧めです。
他の参加者のブログ記事のレポート等は水瀬さんの記事でリンクがまとまっています!
梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー「インデックス投資ナイト2019」が無事終了しました! ほっ
来年も楽しみです。