バンガード・ジャパンの三上和久さんによる「なぜバンガードが投資家に選ばれるのか?」と、GCIアセット・マネジメントのチーフ・マーケティング・オフィサー太田創さんによる「’ GCI投資戦略’とGCIエンダウメントファンドについて」という二部構成での1時間の説明会と、その後、説明会場近くの飲食店での懇親会という内容でした。
GCIアセット・マネジメントは、2000年4月に設立した、機関投資家(国内の年金など)向けにヘッジファンドを提供している独立系資産運用会社ですが、GCIエンダウメントファンド(安定型/成長型)というヘッジファンドを組み込んだバランスファンドを2015年9月25日より設定・販売しています。
今回の「投資ブロガーの会」は、GCIエンダウメントファンドの販売に先立ってGCI山内英貴社長が出版された書籍「エンダウメント投資戦略」の感想記事を書いたところ、もともと知己のあった同社の知人を経由して投信ブロガー向けにイベントを開催してみたいという話を頂いた経緯から、ブロガーや一部メディア関係者をお声掛けお呼びして開催されました。GCIアセット・マネジメントの関係者の皆さま、お疲れ様でした。
(参考記事)2015/8/1 [感想・書評]エンダウメント投資戦略 山内英貴/著 ハーバードやイェールが実践する最強の資産運用法
(今回のエンダウメント投資戦略のコンセプトについての概略は本書の読書記事で大よそのことは記載しています)
GCIエンダウメントファンド(安定型/成長型)の各種資料はGCIアセット・マネジメントのサイトにて参照できます。
購入できる証券会社は、SBI証券と楽天証券です。
インデックス投資ブロガーの濃い面々、少しお声がけしたメディア関係者、GCIエンダウメントファンドのヘッジファンド以外の部分に組み込まれているETF運用会社のバンガードの方々も含め、懇親会での飲み会も含め楽しい機会を頂きました。
下記のブロガーの方々とも懇親会での交流が出来ましたし、実際にお会いするのはお初の方もおり、楽しかったです。
・kenzさん
・ゆうきさん
・すぱいくさん
・虫とりさん
・WATANKOさん
・おぱるさん
・NightWalkerさん
・夢見る父さん
効率的市場仮説を前提とする「インデックス投資」と、アルファ(超過収益)を追及する「ヘッジファンド」という相反するコラボがどういう化学反応を起こすのかというのは、皆さまをお声がけした手前からの心配半分、楽しみ半分だったのですが、何とか無事に終了しました。
GCIアセット・マネジメントの代表取締役CEO山内英貴さんもお見えになり、懇親会では直々に真摯にお話も頂きました。
懇親会では、ブロガーが取り囲む席の中心で、普段はなかなか顔の見えないヘッジファンドについて詳しくお話を聞かせて頂く貴重な機会となりました。私はテーブルが違ったため、一部分しか話に参加できず残念でしたが、山内社長が自ら誠意をもって対話頂く姿勢からは、個人投資家に中長期的な資産形成に役立つ商品提供をしたいという真摯な姿勢が伝わってきました。
GCIエンダウメントファンドの最大の特徴は、バンガードのETFを入れた各種アセットクラスのアロケーションに加え、GCIエンダウメントファンドの安定型・成長型ともに30%の割合で「GCIシステマティック・マクロファンド」が入っているところです。
ヘッジファンド戦略には色々な種類がありますが、「GCIシステマティック・マクロファンド」では、GCIが運用しているヘッジファンド戦略の複数あるうちの1つで、いわゆるマネージドフューチャーズーズ(CTA)に区分される運用戦略で、高度な数理モデルに基づき世界中の通貨・金利・債券先物・株式先物といった指数の買い・売りのポジションによる売買を機動的に行う運用がされています。ヘッジファンドならではの、収益ポジションとヘッジポジションを合わせた安定的絶対収益を目指しているとのことです。
(運用戦略の特徴)
・ダウンサイド・リスクを抑制した絶対収益重視
・動的ロング/ショート戦略
・グローバルの多資産クラスに投資
・運用モデルに基づくシステマティックな運用
今回の説明会では時間の関係もありヘッジファンドマネージャーの説明はありませんでした。インターネットの情報を調べると分かりますが、GCIのクオンツリサーチ&ストラテジー山本匡さんが運用マネージャーをしています。東京大学の理学部数学科を卒業、東京大学大学院では経済学研究科金融システム専攻を修了しており、学位論文では「ヘッジファンドの数量分析と特異摂動展開法の確率的ボラティリティモデルへの応用」という研究をされたそうで、要旨をささっと一読して一般人が理解するのは難しいですが、とても頭が良さそうだということは伝わってきます。
簡単に言うと、「GCIシステマティック・マクロファンド」は、このような理数系の頭脳を駆使したモデル運用がされているということです。
また、今回の説明でヘッジファンド業界向けの「ユーリカヘッジによるマネージャーインタビュー」もお配り頂きましたが、個人的にはなかなか興味深い内容です。
Bloombergのニュースでも紹介がされていることが確認できます。
・Bloomberg(2015/09/10)高収益の米名門大学流に日本の個人資金運用、ヘッジファンドのGCI
・Bloomberg(2015/03/16)【クレジット市場】収益167%、国債先物でヘッジファンドのGCI
機関投資家向けには2014年7月からの運用実績があり、今回の説明会資料で開示いただいた情報では、2014年7〜2015年3月は+115.37%という驚異的なパフォーマンスを出しているようです。ただ、トレンドフォロー型であるため、トレンドが出にくかった2015年4月〜10月ではマイナス18.51%となっているようです。
GCIエンダウメントファンドの販売用資料では、「GCIシステマティック・マクロファンド」は目標リターン年率40-50%、目標リスク(標準偏差)年率25%程度とされています。
山内社長も言っていましたが、「年率25%を想定するリスク(ボラティリティ)の高い運用をしている」とのことです。説明がないと分かりずらいですが、GCIエンダウメントファンドのオルタナティブ30%のうちヘッジファンドへの実際の配分が10%しかありませんが、「GCIシステマティック・マクロファンド」は濃い中身になっているため全体の中ではヘッジファンド運用部分のリスクを量10%程度に調整する意図のようです。
また、管理報酬年率3%、成功報酬20%というヘッジファンド報酬ですが、山内社長によると、これも、ヘッジファンド運用部分の割合を考慮すると通常の機関投資家向けと同水準の設定とのことです。(成功報酬20%というのはヘッジファンドの報酬体系として標準的と思いますが、そういえばハイウォーターマークの有無は聞き忘れました。)
一般的なアクティブ投信などと比べても一見ヘッジファンド部分はコストが高いようには見えますが、本ヘッジファンドの運用戦略とパフォーマンスの持続性・再現性を信じられるかどうかで個々の投資家が判断すれば良いのかと思います。
ポートフォリオにヘッジファンドを組み込みたいかどうかという判断は、既存のアセットクラスとの相関やヘッジファンドのリスク・リターンの判断で行うことになりますが、ヘッジファンドという特殊領域のアセットクラスに投資するかどうかは、そのリスク特性を理解したそれなりの金融リテラシーが本来求められます。いきなり投資初心者がヘッジファンドを組み込んだバランスファンドが良いのかどうかというのは慎重な判断が必要でしょう。一方、ヘッジファンドの特性を理解し、投資したいという判断を出来る金融リテラシーがあると、投資家サイドからは、バランスファンドではなくヘッジファンド「単品」で自分でポートフォリオに入れる割合を決めて入れたいというニーズが生じるのではないかと思います。ヘッジファンド「単品」での商品設定の問題としては、ヘッジファンドの運用の機動性の観点と投信での運用では日次解約による資金の流出入が起こるので、資金の予期せぬ流出入が運用パフォーマンスを阻害してしまうという問題があり、実現に課題もあるようです。
今回、きちんと説明を頂けたので、個人的な疑問点はかなり解消されました。
私が自分自身が投資するかどうかというところでは、ヘッジファンド「単品」には興味がありますが、バランスファンドの一部分を目的に買ってみようか、というのはただちに判断するのは悩ましいところであります。
とは言え、個人的にはポートフォリオの「遊び」の部分を妙味のあるヘッジファンドに投じることにネガティブな気持ちは全くなく、むしろ非常に興味深く思っています。今まで機関投資家向けにしか提供がされていなかったヘッジファンドへの投資のアクセスが、個人投資家にも扉が開かれたという点は、個人的には大いに歓迎しています。
ヘッジファンドを投資信託にした「リキッド・オルタナティブ」という分野は、いくつかの商品は出ていますが、日本でまだまだこれからの分野なので、広範な投資機会の提供と投資の選択肢と広げるという意味でも間口の広がりには今後期待したいところであります。
あとは、マネージドフューチャーズーズ(CTA)という分野では、MANとかWintonといった運用会社が有名ですが、海外のヘッジファンドへ海外金融商品を直接買い付けるという手段はあります(最低投資口数や解約制限はありだし、手続き等は面倒)。他のマネージドフューチャーズー(CTA)との運用面での比較はどうなのですかね。
GCIアセット・マネジメントの真摯で誠実な姿勢も今回よく伝わってきましたし、月次レポートによる情報開示も既存の投資信託と比べて充実しており、日本の個人投資家の運用環境の向上のためにも、オルタナティブ商品の先駆けとなるよう是非うまくいって欲しいと思うところであります。
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