2015年11月23日

お金のEXPO2015(マネーフォワード主催)に参加してきました。

3連休の真ん中、2015/11/22日耀(いい夫婦の日)に品川インターシティホールで開催された「お金のEXPO2015」に遊びに行ってきました。主催は金融機関データを全て自動で取り込む家計簿アプリやクラウド会計ソフトを提供するマネーフォワードです。
151123-1 お金のEXPO.png

連休の真ん中の日曜、1500円とはいえ有料のイベントです。1000人を超える申込数があったようで、すごい。メインホールはほぼ満席、セッションの合間のミニセミナーは立ち見や満席で入れないほどの盛況ぶりで、スポンサーブースも人だかりが出来ていました。
家計簿アプリというITツールを利用するユーザーが告知の対象になっているため、20代〜40代ほどの若い参加者が多かったように思います。登壇者が豪華メンバーのセッションも、そのような対象者を想定した内容になっていました。
午前中の10時から19時までガッツリの内容です。どうせ行くなら全て見ようということで朝から参加しました。ブログネタも出来たので満足です。カツサンドの小さいサンドイッチが配られましたが、ずっと会場にいたため腹ペコになりました(笑)。

○開会のご挨拶
まずは、マネーフォワードの辻庸介社長から10分ほどのご挨拶。
お金のことを一元的に勉強する機会がないので、そのことを解決するためのイベントとして、ライフプランニング、保険、不動産、資産運用まで幅広く国内を代表する著名な方々からの話を聞けるイベントを用意したということです。
あとは、タイムスケジュールの紹介と、マネーフォワードの進捗(利用者300万人突破、利用者の満足度は90%以上、新サービスの紹介)を軽く。

151123-2 マネーフォワードの辻庸介社長.png

○日本財託・重吉勉社長(ライトニングトーク)
日本財託の重吉勉社長より10分のプレゼン。メインホールでの各セッションの合間の10分間のスポンサーによるプレゼンテーション(ライトニングトーク)が入っていました。
日本財託は都内の中古の投資用ワンルームを販売及び販売後の管理を行う不動産会社です。頻繁にセミナー告知等を日経新聞に載せています。私の知り合い等も何人か物件を買っているので会社のことは比較的よく知っているのですが、社長の話を聞くのは初。
東京23区の徒歩10分以内の中古ワンルームを中心に、5800名のオーナーから15000戸を管理する規模で、98〜99%の入居率を保っているそうです。
*個別セミナーと合わせて詳細は別途まとめるかも。

○ぐっちーさん、双日総研の吉崎さん 米国経済2016〜株価、為替、大統領選挙の行方を占う
ぐっちーさんことグッチーポスト社長の山口正洋さん、双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦さんによるアメリカ経済についてのディスカッション。進行はフリーアナウンサーの内田まさみさん。

このお二人と山崎元さんの3名で「ヤバい日本経済」という本を出していることもあり、仲が良いようです。そういえば、私も読みました。3人が好き勝手なことを話しているのをまとめた本です。深い洞察があるというよりは、本当にそこらで話をしているような内容ですが、それなりに味のある部分もあり読みやすくお手頃感はありました。
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*詳細は別途まとめるかも。

○みずほ銀行・森沙織さん 最新の金融技術(Fintech)を活用した資産運用サービス「SMART FOLIO」のご紹介
「SMART FOLIO」という、いくつかの質問に答えると10段階のポートフォリオが示され、i-mizuhoのインデックスシリーズ商品の購入までの導線が出来ているサービスツールです。いわゆるロボ・アドバイザーのサービスの1つです。各金融機関は最近Fintechと騒いでいますが、その先駆けとなるサービスの1つです。
ペッパー君も同伴していましたが、出番なし。なぜわざわざ置いたのか謎でした(笑)。
プレゼンテーションの画面が出てこずに、しばらく沈黙で凍っていて少し微笑ましい姿もありましたが、このへんのアドリブのなさが緊張していたのか、決められたこと以外の余計なことを言うとみずほみたいな組織だと後で怒られるのかなと思いました。
広報女子なのかなと思いましたが、パンフレットによると運用商品企画・販売促進の部署のご様子。

後ほどブースでも「SMART FOLIO」の実装画面を見てみました。「SMART FOLIO」はなぜかみずほ証券ではなくみずほ銀行の提供だそうです。もちろん、銀行窓口で案内されることはないようで、ネット専用だとのことです。
ちょうどロボ・アドバイザーについては記事を書く予定もあったので、そのへんと合わせて後日まとめようかと思います。

○スポンサーセッション 日本財託・重吉勉社長「成功するマンション投資は実績15,000戸の賃貸管理会社に聞け!」
ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子さんの「「個人型」確定拠出年金を 賢く活用しよう!」を聞きに行こうと思ったら、何と立ち見まで満場で案内係にシッシとされてしまいました・・
竹川さんの確定拠出年金の話は聞いたことないので良い機会だと思ったのにーー。

というわけで、日本財託の重吉社長のご講演。なぜマーケティングされるセミナーに有料で参加して、しかも立ち見で聞かないといけないんだという気持ちもありましたが、ゴリゴリ押してくるセミナーでもなく話も参考になるところはありました。聞いといて悪くなかったと思いました。
スポンサーブースで本の抽選も入れといたけど送られてくるのかなあ(笑)。
*気が向いたら後日まとめます。

○草食投資隊 地に足の着いた投資で人生を変える!〜 長期投資の大切さ 〜
コモンズ投信・渋澤健会長、セゾン投信・中野晴啓社長、ひふみ投信のレオス・キャピタル・ワークス・藤野英人社長の登場。独立系投信をそれぞれやっている3名は草食投資隊という名前で日本で長期投資という文化を作りたいという思いで全国行脚しているそうです。進行はここもフリーアナウンサーの内田まさみさん。
会場で草食投資隊を知っているという人はかなり少数の様子でした。私はもちろん知っているけど。
ただ、3名の話を聞くのは初でした。

内容は、これから資産運用をやっていこうかなーという若い世代に向けて、テクニカルな話は一切なく、投資という考え方や心の持ちようといったものを分かりやすく3名がそれぞれに話をされていました。
良い話をしていたと思います。全国行脚しているだけあり、場数も感じ、3名の息も合ってました。

投信ブロガーのファンド・オブ・ザ・イヤー2015では、独立系投信を選定対象にひふみ投信に5票を入れておきましたが、これもこれで良かったと思いました。

*詳細は下記記事にてアップしています。
2015/12/26 草食投資隊の講演書き起こし「長期投資という文化を日本全体に広げたい」


スポンサーセッションは混むことが分かったので、マネックス証券の「"MONEY"のYの一歩先を行く"MONEX"〜マネックス証券 サービスのご紹介〜」はパス。

○マネックス証券チーフストラテジスト・広木隆さん Investment Forward 〜未来への株式投資〜
普段はネット上でしかその存在を確認できない広木さんのご講演です。
話も上手くて面白い。
内容は投資の理念のようなものでした。ちゃんと投資を学んでない人は多分知らないんだろうなという基本レベルの良いお話をされていました。投資経験が浅かったり、思ったようにリターンが出せない、という個人投資家は知っておくべき内容、といったところでしょうか。

投資とギャンブルという話では、宝くじのことも言及していました。
宝くじは期待値半分でやっちゃいけないものだそうです。そうかなあ?w
(参考)2015/5/4 宝くじを買うことは経済合理的に正しい事である2つの理由【宝くじの経済学】

○漫画家・三田紀房さん インベスターZ 漫画家:三田紀房が語る「人生はカネだ!」
ドラゴン桜を当てて、今は投資漫画のインベスターZを連載している三田紀房さんのご講演。
めちゃめちゃ面白かった。うまい。やはり売れっ子は違う。
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下記のようなことを言っていましたが、ここまで明確に言うことを言える人はなかなかいないですね。素晴らしいタレント力です。

「お金儲けのために漫画を描いている。他の作家とは少しベクトルが違う。このビジネスで成功したいと願っている。インベスターZを売りたい。今日はそのために来た。そういうやつだと思って頂いて結構である。
実は結構稼いでいるし、お金はあるが、この新連載を成功させたい。ハングリー精神で突き進んでいる。お金はいくらあってもいい。
お金を気にせず好きなものを食べる方がいいに決まっている。愛さえあればなんて嘘である。人生はお金である。
税金をたくさん払っているが、取っていかれている感じ、払っている感じはしない。
売れている作家は、バンバン税金を払って国のインフラを作るんだ、というくらいの気概がある。もっと金持ちがテレビなんかに出ていっぱい稼いでいっぱい税金払うのがカッコいいみたいになればいい。」

ドラゴン桜は漫画もテレビもほとんど知らないのですが、インベスターZは、六本木のこつこつの会に1年前くらいに行ったときにジャンケンで勝って景品でゲットした6巻くらいまで読みました。各中学のトップ入学が中学の投資部に入り、投資収益で学校資金の運営を賄うというストーリーですが、これがまた面白く、その日に読破してしまいました。ちょっと「ん?」と思うところもありますが、まあ漫画だし中学生の設定だからな、と許せてしまえるあたりも設定が上手いと思いました。
現在(2015年11月)では11巻まで出ているようです。電子コミックででも読もうかな・・



三田紀房さんがどういう目的でご自身はどういう投資をしているか聞きたかったのですが、手を上げる人も多かったので、質問タイムに手を上げるのはやめときました。

○ここでしか聞けない保険の王道と裏ワザ〜合理的なリスクヘッジ術〜 ファイナンシャルプランナー・山口京子さん
ミニセミナーは、フリーアナウンサーのプレゼン術を学ぼうと思い山口さんの会場へ。
どうやら、チューリッヒ生命のスポンサードセミナーのようでした。私の目的は「フリーアナウンサーのプレゼン術を学ぼう」だったので良いのですが、チューリッヒ生命の保険商品をひたすらご説明いただくというガチ営業でした(笑)。

○竹中平蔵教授 誰も知らなかった「お金」と「日本の未来」の見据え方
竹中平蔵さんのクラスになると、いつ話を聞いても安定感があり、完成度も高いですね。

シェアしておこうかというところのメモを付けておきます。

・お金のことを堂々と議論したり勉強する機会は少ない。
お金のことは考えちゃいけないという雰囲気で育っている。みんな気になるもの、好きなものはお金であるのだから、もっと向き合う機会を作らないといけない。
・小泉内閣時代に原稿を書くときに、世界の歴史の偉人の名言を調べた。
多い名言は男女の話が多い。次が、お金の問題。
ベルルスコーニ(イタリア元首相)「自分の孫よりも若い恋人を作った。「なぜ私が女性にモテたか。金があったからだ」
友人のアメリカ人 金と権力と女性で1つ取るとしたら、金だ。金があれば権力も女性も付いてくる。
お金は現実的に圧倒的な存在感がある。
金とは鋳造された自由である。自由を買うことが出来る。
お金が全てではないが、お金があることで自由を買えることは間違いない。
ゲーテ 財布が軽くなれば心が重くなる
アインシュタイン 宇宙で1番力の強い論理は何か。金利の複利計算である。もし7%を10年で運用すると資産は倍になる。
歴史の名言を取って見ても、お金の問題と向き合うべきである。
・これからオリンピックまでの5年の間にどれくらい頑張れる基礎を作れるかどうかで、それからの日本経済は大きく変わる。日本にとって貴重なチャンスの時期。みなさんには、貪欲にこの5年を生かす工夫をして頂きたい。
・中国経済について。2015年の6月12日をピークに過去1年で2.5倍になった中国の株価は4割下落。株価は重要だが、本質を見る必要がある。上海のマーケットのシェアは世界の2.3%。金融面だけでそんなに心配するものではない。中国の実物経済への心配に目を掛けるべき。中国のGDPは日本の2.4倍になっている。成長率差と円安。規模の大きい中国のGDPの減速はインパクトが大きい。かつて中国の経済成長が脅威と言われていたが、中国が経済成長しないことが日本のリスク。中国の輸入の1番は中国で、2番は日本。9月のリコッキョウの講演。経済学者のリコッキョウはきれいな話をするが腑に落ちなかった。統計データが信用できないから。政府が7%の成長を目指すと言ったら、四半期の統計が7.0%になった。中国の統計を疑う経済学者は鉄道貨物の輸送量、電気消費量、銀行貸し出しを見ていた。リコッキョウがこの3つの指標を見ていることが分かった。今回の株価の下落はしのぐと思う。まだ政策余地が残っている。5〜10年のスパンでは必ず成長率を落としてくるとみている。2020年の成長率は5%。法の支配。自分で頑張って稼いだお金を取られることはない。自分の権利が守られる。イギリスが1番最初に確立し、産業革命につながった。中国は法の支配(ルールオブザロー)が確立していない。イノベーションを起こせるかで経済成長は決まってくる。シュンペーター。自由が保障されていて権利が確立されていないとイノベーションは起きない。5年前、日本と中国が並んだ時、10%だった。2.4倍になった今の成長率で実は増える分は変わらない。
・稼ぐ力をつけるためには競争力を持たなければいけない。
競争力をつけることは競争すること。競争すると人間は必死に何かする。政府が保護しないで世界で競争した自動車産業は強くなった。保護した農業は競争力がなくなった。
農業。日本の農作物は美味しい。企業が入れないのでIT投資も遅れ輸出もできない。企業が入っていこうとすると農民が反対する。改革してるのは兵庫県養父市だけ。
医療。過去36年間、日本で新しい医学部は1つも出来ていない。医師の圧力で全て却下された。医学部は競争がない。世界に出ていく医者がいない。
・オリンピック。2020年までにどれだけ日本を良く出来るか。
世界の7割の人がオリンピックを見る。どこの国でもオリンピックを中心に経済・社会が変わる。締め切り効果。締め切りがあるからやれる。
今の東京は前回のオリンピックの時に出来た。東海道新幹線、ニューオータニなど、オリンピック直前に出来た。
セキュリティビジネス。日本警備保障、今のセコム。代々木の選手村の警備、大阪万博、ビルの警備の外注で広がってきた。日本で53万人が働く産業になった。

○お金のデザイン・北澤直取締役 COO グローバル資産運用を誰でも利用できる時代に。
締めのプレゼンはお金のデザイン。
本ブログの下記記事をご参照で十分でしょう。アップデートとしては、投資単位500万以下から開始できる新サービスを近々ローンチ予定ということで、楽しみにしています。
・2014/12/21 (株)お金のデザインの新サービス「ETFラップ」の説明会に行ってきました。
・2015/9/12 「やり直し相場ではじめるETF超入門」週刊東洋経済(2015年9月19日号)を読み解く

○閉会のご挨拶
おしまい。

なかなか充実した長丁場でした。
これだけの人を集める集客力はすごいですね。みんな熱心に聞いていて、見た限り、寝ている人などはあまりいなかったように思います。マネーフォワード使うくらいだから、一般水準より人生うまくやろうという意欲がある人が集まっているのでしょう。

お金というのは、稼ぐ力と運用する力の両輪で、スキルと実行力を身に付け、うまく使う力で人生の充実度は大きく左右されてきます。若いうちはまずは稼ぐ力ですね。
モチベーション作りと持続させる方策として、このような場もいいのでしょうね。

次があるなら、もっと実践的な内容もあると面白いかな。
成功した個人投資家、努力で成功した実業家によるパネルディスカッションやプレゼンテーションなど。

マネーフォワードさんは準備など大変だったかと思いますが、お疲れ様でした。







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2015年11月12日

IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当金の所得税課税は総合課税のみでなく分離課税適用可能です(確定申告で注意!)

(*訂正あり)当初の調査では海外金融機関で保有する海外ETFの配当金の所得税の配当所得は分離課税が適用できず総合課税になるという記事でしたが、その後、分離課税の適用は大丈夫だということが判明しましたので、訂正とともに再掲いたしております。

一部ネット等の情報では、海外金融機関で投資する外国上場株式の配当金の受領は分離課税が選択できず、総合課税のみであるという論説があります。
これについて、結論としては、総合課税若しくは申告分離課税を納税者が選択することが認められます。なお、海外金融機関の海外の現地国(IB証券であれば米国)で配当に対して源泉徴収された海外国での税金は、日本の確定申告の際に外国税額控除を行うことにより、日本で精算(日本で支払う税金から差し引くことができる)が可能です。また、日本の証券会社を通じないため、租税特別措置法に規定する特典である、譲渡損失が生じた場合における、配当との損益通算や翌年度への繰り越しは出来ませんので確定申告の際にはご注意ください。
海外上場ETFの配当金の米国での課税、また、日本での申告について日本の居住者が米国上場ETFの配当金を受領した場合、源泉地国(米国)において原則30%の源泉税が課されることとなりますが、日本の居住者がW-8BENを米国側に提出することにより日米租税条約で定める軽減税率(10%)が適用されることとなります(日米租税条約第10条第2項(b) )。総合課税、申告分離課税ともに、確定申告により外国税額控除を適用することで上記10%のうち一定金額の還付を受けることが可能となります(所法第95条)。

・上場株式配当の総合課税と分離課税について
分離課税を選択すると20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税率が適用されます。
しかし、総合課税は超過累進税率が適用されます。総合課税の税率は、所得が195万円を超え330万円以下の部分は所得税10%・住民税10%で20%ですので、所得が330万超になると、総合課税が不利になります。最高税率はご存知の通り所得税・住民税合わせて55%になります。
総合課税の場合、配当控除もあります。外国上場株式等の配当では配当控除の適用はありません。
(参考)
・国税庁タックスアンサー No.1331 上場株式等の配当所得に係る申告分離課税制度
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1331.htm
・国税庁タックスアンサー No.1250 配当所得があるとき(配当控除)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1250.htm

・IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当金が総合課税しか適用されなかったらどうなるか
IB証券(海外金融機関)で保有する海外ETFの配当所得に分離課税しか適用できないとすると、インタラクティブブローカーズ証券(IB証券)を使って海外ETFを買うと、多くの個人投資家は、税金を引いた後の手取りを考えると、IB証券を使うよりも国内証券会社の海外口座で分離課税を選択する方が有利になります。(せっかくなので確定申告手続き軽減のため国内証券会社では特定口座対応の証券会社を使うことも必須)
https://www.interactivebrokers.co.jp/jp/home.php
従って、インカムゲイン狙いで海外ETF等の投資をする場合には、為替手数料・取引手数料が格安のIB証券を使うより、課税面で国内ネット証券を使う方が良さそうだということになります。
IB証券のプロ仕様の難しい取引ツールを使いこなせれば、手数料差について、イメージとして、国内ネット証券で米国株取引手数料が1番安いマネックスvs IB証券では、為替手数料は片道25銭vs 1銭、米国株取引手数料は取引1回あたり20ドルvs1ドルみたいな手数料差ですが、総合課税の最高税率で35%もの差があることを考えると、配当の手取りに関して言うと、課税の差の方が手数料差より遥かに大きいことになってしまいます。結論としては、分離課税が適用できますので、このような心配はいらないことになります。
IB証券で米国での源泉徴収はされているようですが、日本での確定申告で外国税額控除は取れるはずです。

・IB証券で分離課税が適用されない理由
上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く。)については、総合課税のほかに、申告分離課税を選択することができます。
外国上場株式等の配当等であれば総合課税と申告分離課税が選択でき、外国非上場株式等の配当等であれば、総合課税のみです。いずれも、配当控除の適用はありません。これが一般的な説明です。

訂正前では、当初調べた解釈により、下記のような見解から申告分離適用できず、との結論でありました。
租税特別措置法第8条の4第1項第1号によると、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」と記載があります。
また、租税特別措置法第8条の5第1項に、対象が「内国法人から支払いを受ける」と限定されていることから、外国金融機関で保有する株の配当は内国法人からの支払いには当たりませんので、分離課税は適用できないものと考えられます。
なお、このとき、国内証券会社経由だと、租税特別措置法第9条の2第5項第1号に「当該国外株式の配当等の国内における支払の取扱者から交付を受けるべき金額」、また、租税特別措置法第9条の2第5項第2号に「これを内国法人から支払を受けるものとみなす」とありますから、選択可能だと考えられます。

簡単にまとめると、こうです。
国内証券会社の米国株口座での売買では、米国籍口座の名義人は、証券会社の名義になっています。米国籍口座に配当金が日本の顧客に対してまとめて入金があり、それが国内に持ち込まれ、国内の個人口座に、振り分けられる際に、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」こととなります。
IB証券(海外金融機関)ではIB証券の米国籍口座の名義人は個人名義(自分の名義)になります。従って、「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」に当たらなくなります。
そのため、分離課税を認める租税特別措置法に海外金融機関での自分名義での口座は該当しない、ということです。

ところが、さらなる調査の結果、下記のような見解が得られ、分離課税適用可との結論になりました。(なお、確かな筋より訂正情報を入手しており、こちらが最終結論と考えます)
租税特別措置法第8条の4第1項第1号、租税特別措置法第8条の5第1項での「株式等の配当等で、内国法人から支払いがされる」との記載について、ここでの「内国法人」とは、株式の発行体の分類での「内国法人」としており、保管証券会社が「内国法人」か否かを指したものではない。その上で、この文言は、「内国法人」から配当を受ける株主で、その株式総額の3%以上を持つ大口株主は申告分離課税を選べないという文脈で述べられている(大口株主に関する規定)と解釈ができます。
また、租税特別措置法第8条の5第1項で、対象が「内国法人から支払いを受ける」と限定されていることから、外国金融機関で保有する株の配当は内国法人からの支払いには当たらないので、分離課税は適用できないものと考えられる、という理解について、上記の上で、この規定は、国内の金融機関が源泉徴収をする場合に限定して述べており、確定申告の要否を見極める際に考慮される配当額を決めるための規定となっている。
IB証券の場合はそもそも国内所得税の源泉徴収はされないので、この規定の対象には入らない、と解釈ができます。
よって、IB口座で受け取った配当は「上場株式等に係わる配当所得」であり、申告分離課税が選択でき、かつ「外国法人」からの配当であるので「内国法人」の大口株主規定も適用されないと考えられる、という結論になります。

・本件の調査経緯
本件、「IB証券でのETFの配当が総合課税と聞いたんだけど、マジすか?」という問い合わせを頂いたことから、調べたのですが、なかなか難航しました。

一般書籍では、どうも、日本国内の証券会社の証券口座の中の外国口座開設していることを念頭に、海外金融商品の税務の説明がされているように見えました。

手元にある「富裕層のための海外分散投資」(永峰潤、三島浩光)という本では、p148-149で、(海外の)現地の証券会社から購入した外国株式の配当に関する課税は、国内での源泉徴収はなく(海外金融機関なので当然ですが)、確定申告で申告分離と総合課税が選択できると記載があります。
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確認のため、国税庁の税務相談窓口に電話してみましたら、私の手元の本とは別の本を見ながら、海外金融機関の配当が上場株の配当であれば分離と総合の選択できるんじゃないですかねーという話でした。(外国が絡む証券税制に詳しいわけではなく、ふつうの職員です。「ETFって分かりますか?」って聞いたら、「なんか聞いたことはあります」という感じでした。)

これらは、租税特別措置法を読み解いた上での理解があるかどうかは微妙だしたが、結論としては正しかったわけです。

サイト自体の情報の正確性は不明ですが、下記等の一部のウェブサイトでは、海外金融機関からの株式等の配当は総合課税だという説明があります。また、確かな筋からの情報でも外国の金融機関の口座から受け取る配当の所得税は総合課税と回答が得らたため、当初、どうやらそのようだ、という結論でした。
・外国株式等の配当所得と損益通算」というタイトルのこのリンクのサイトで、外国の金融機関の口座から受け取る配当の所得税について、総合課税のみが適用されるとの説明があります。
http://www.carlos.or.tv/essay-j/foreign_stock_dividend.html
海外の株式等の配当の申告について
海外の金融機関を通じて買った株式等の配当については、国内証券分の申告に関して分離課税を選択したとしても、総合課税が適用となり、税制面から言えば、HSBC香港やFirstradeを通じて買った株式やETFに関して配当を受け取った場合は、国内証券の米国株口座を通じて買った場合に比べて不利
・水あめのブログ 「外国証券会社・外国証券投資の損益通算、繰り越しに追記」
http://blog.livedoor.jp/watersugar/archives/2014-09-02.html
・投資と資産運用のBB6ブログ 「平成26年度確定申告(その1)」
http://toushibb6.blog.fc2.com/blog-entry-268.html

色々と調べたり、方々からも情報収集し、ようやく解決しました。よかったよかった。
一部のウェブサイト等で解説されている、海外金融機関からの配当は総合課税のみ、とありますが、分離課税を選択して申告できますので、ご注意ください。
確定申告時期ということや、ご存じない方も多いのではないかと思い、本記事にて訂正の上、再掲をしております。お役に立ちましたら幸いです。

【関連記事】
・2014/10/23 国税庁の所得税の調査結果から見る、富裕層の個人課税や海外取引はどこまで補足されているのか
・2015/10/1 マイナンバー対策 マイナンバーで副業がバレる心配への有効な対応策 〜キャバクラ嬢・ホステスのためのマイナンバーと確定申告講座〜
・2012/10/8 日本の給与 年収1000万円超は178万人 2500万円超は9万2千人、全体の2.2%も給与所得税総額へ13.8%の貢献

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