前回、過去データ実績に基づくアセットクラス別のリターンとリスクを確認しました。
各アセットクラス別に、過去データでは、どのように毎年のリターンがあったのか、どれくらいの価格変動の振れ幅があるのか、ということを見てみました。
大よそ、期待リターンは株式・REIT>>債券、価格の変動率の大きさも株式・REIT>>債券で、為替変動の影響も受けるため、国内のものよりも海外のものの方が変動率は大きくなる(国内株式よりも先進国株式や新興国株式の方が変動率が大きい)、ということが分かりました。
アセットクラス毎の2001年初から2014年末までの値動きをチャートにしてみました。(アセットクラスが増えるとゴチャつくため、主要どころのみ掲載)
ポートフォリオを組むと、複数のアセットクラスの組み合わせなので、基本的にこのチャートの間のどこかにポートフォリオの損益は入りそうですね。期初にポートフォリオを一括で組むと、チャート線の上限と下限の間のどこかに入ります。リバランスや期中の追加投資等があると、単純にチャート線の上限と下限の間に入るわけではありません。
例えば、新興国株式はパフォーマンスは上位だがリーマンショック時には新興国株式(ドル建)と為替の円高の進行により大きく値を崩している、国内債券は安定的に上昇しているが長期的なパフォーマンスが上位なわけではないことが分かります。
全体的に、同じような値動きをしているように見えますが、値動き自体は個々のアセットクラス別にバラバラのようです。
長期志向でグローバル分散投資をするためには、これらを踏まえてどのようにアセットアロケーション(資産配分)を決めるかを考えることになります。
ここで、ポートフォリオのリスク分散効果というものも知っておく必要があります。そのためには、複数のアセットクラスの組み合わせを考えるのに当たって、アセットクラス間の値動きの「相関」というものを考慮に入れます。「相関」を見るには相関係数という統計データを取ります。相関係数は‐1〜1の間で算出され、1は全く同じ値動きで、0は全くお互いが影響し合わない独立した値動き、‐1は全く逆の値動きをする、ということになります。
ポートフォリオのリスク分散効果は、簡単に言うと、「相関の低いアセットクラスを組み合わせることによってポートフォリオ全体のリスク(変動率)が低減する」というものです。(詳しく説明すると長くなるので、何かの機会か誰かから要望でもあればまた詳しく別途解説します)
直観的に分かりやすく説明すると、相関係数が1だと、全く同じ値動きをするので、ポートフォリオのリスク分散効果はないということです。相関係数が1だとしたら、リスク低減という観点からしたら、ポートフォリオを組む必要はなく、期待リターンが高い資産だけに投資するのが合理的ということです。
また、相関係数が‐1だと、全く逆の値動きをするので、例えば、両方とも期待リターンが3%・リスク20%の資産Aと資産Bがあったとすると、資産Aと資産Bに50%ずつ保有すると、全く値動きのブレがなく直線的なチャートで期待3%が理論的には実現できるという神運用になることになります。
もちろん現実には、異なるアセットクラス間で、相関係数が1なものも‐1なものもありません。
同じくらいの期待リターンのアセットクラスがあった場合には、値動きの相関がより低いアセットクラスの組み合わせでポートフォリオを組むことで、個別のアセットクラスよりもポートフォリオのリスク(変動率)が低減するということです。
これが、期待リターンが同じであればリスク(変動率)は小さい方が好ましいという前提があるファイナンス理論において、分散投資が推奨される理論的な背景です。
誤解や勘違いが多い点ですが、ポートフォリオのリスク分散効果は。期待リターンを上げるためのものではありません。期待リターンを高めるためには、リターンが高いアセットクラスに集中投資を行い、それを当てる必要があります。どのアセットクラスの将来のリターンが高いのかは「分からない」ということも、ポートフォリオを組んで資産運用しましょうと推奨される理由です。
次回は、実際のアセットクラス間の値動きの過去データに基づく相関係数を見てみることにします。
・2015/10/11 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(3) アセットクラス間のリターンの相関係数
http://money-learn.seesaa.net/article/427668554.html
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