2015年10月02日

マイナンバー対策 マイナンバーで副業がバレる心配への有効な対応策 〜キャバクラ嬢・ホステスのためのマイナンバーと確定申告講座〜

来年2016年1月からのマイナンバー制度(社会保障・税番号制度)の導入に向けて、本年2015年10月中旬から随時、日本国内の全住民の各家庭に12ケタの個人番号が付された通知がされます。
マイナンバー制度の導入に伴い、「課税の強化!」「国家による国民のプライバシーの管理」「副業がバレる」など、玉石混交の様々な情報が錯そうしています。
マイナンバー制度は、資産隠しや所得隠しなどの悪い事に心当たりがなく、健全・全うに生活している人には、特にビビる必要があるものではありません。

その中でも、マイナンバーによって副業で水商売(キャバクラ嬢やホステス)をしている女性たちが副業がバレることを恐れて、大幅に減少するのではないか、という説があります。
151001 キャバクラ嬢.jpg
(画像は http://matome.naver.jp/odai/2135722824779123401 より引用)

これが本当だとすると、後述の通り、約972億円もの経済損失があるという試算もあり、労働力や所得配分の健全な調整機能や日本経済の景気に与える影響も大きい、実に由々しき問題であるため、当 ASK資産運用実践研究会は、適切な対処法を伝えることは極めて社会的意義が高い問題であるとの認識に至りました。
実は、きちんと正しい知識を身に付け、適切に対策を取れば、マイナンバーの導入がキッカケでどうこうなるということはなく、何も心配はいりません。

マイナンバーでどういう問題が起こるのか?どういう対策を取ればいいか?についてが本稿のテーマです。






・マイナンバーで副業で水商売(キャバクラ嬢やホステス)をしている女性が大幅に減少する!?
週刊東洋経済の2015年10月3日号では、マイナンバー特集が組まれ、p60-62の3頁で、「ホンマでっか!?TV」にも出演していることでおなじみのBRICs経済研究所代表の門倉貴史先生より「ネオン街から女性が消える!?」というタイトルで、キャバクラ嬢のマイナンバー問題が解説されています。
この記事によると、マイナンバーが始まると、税務署が副業を知ることになり、本業があり副業でキャバクラで仕事している場合に必ず確定申告をしなくてはいけなくなり、それが住民税額を通じて本業の会社にバレてしまうので、会社にバレことを嫌がる多くのキャバクラ嬢が仕事を辞めてしまうのではということが指摘されています。
門倉貴史先生のアンケート調査によると、東京都内の67名のキャバクラ嬢に自ら調査をされたようで、そのうち約30%がマイナンバーをきっかけに辞める、という回答とのことです。
全国のキャバクラ嬢はおよそ12万万人弱で、そのうち副業でのキャバクラ嬢は約8万人で、うち約30%が辞めるとなると2015年内で2万4千人がリタイアしてしまうという計算です。副業キャバクラ嬢の平均年収を200万円として計算し、キャバクラ嬢への人件費原価を50%とすると、約972億円の経済損失が発生すると推計されています(約2万4千人×200万円÷50%=約972億円のキャバクラ店の売上が失われる計算)。

この記事は、日本社会と日本経済に非常に重要な示唆を与える意義深い記事ですが、有効な対策があることに触れられていないことなど、いくつか補足すべき事項がありますので、下記で解説をして参ります。

・マイナンバー制度ってなに?
まず、マイナンバー制度とは何か、簡単に確認しておきましょう。
マイナンバーという12ケタの個人番号が付され、これが、今後、税務署関係や、年金や健康保険といった社会保障のデータと個人番号が結び付けられます。
身分証として使うには、10月中旬に簡易書留で送られてくる「通知カード」に「個人番号カード」の申請書が付いているので、「個人番号カード」を申請すると、顔写真付きの「個人番号カード」がもらえ、運転免許証等の本人確認書類の代わりにすることが出来ます。
送付されてきた「通知カード」は、絶対に、ゴミ箱にポイして捨ててはいけません。

今まで、日本の縦割り行政では、各役所で別々の個人情報を管理していて、一元管理がロクに出来ていないというITが発達する現代においてあり得ない前近代的な時代の延長のまま続いてきました。これをマイナンバーという番号を国民につけて、行政に関わる国民の情報を一元管理して行政活動を効率化しよう、というものです。
小栗旬さんと石原さとみさん出演の2013年の月9ドラマ「リッチマン・プアウーマン」で出てきた「パーソナルファイル」が、ちょっとダサくなって現実に登場してきた、というようなイメージです。

政府の公式コメントでは、「行政の効率化」、「国民の利便性の向上」、「公平・公正な社会の実現」というフワフワしてよく分からない3つのメリットが説明されています。

政府広報オンラインでは、マイナンバー制度について分かりやすく説明されていますので、詳しく知りたい人は、ちらっと見ておきましょう。
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/point/

当初は給料の情報や年金などの情報管理から始まり、今後、順々と対象が広がり、例えば、銀行口座や証券口座にもマイナンバーがひも付けられていくことになります。

・どうやってマイナンバーが税務署に捕捉されるのか?
特に皆さんが気にするのは税金に関する情報でしょう。
皆さんが給料や報酬をもらう勤務先・仕事先では、会社員(正社員)であれば会社が「年末調整」という手続きで、年間の給料の支払額に基づく所得税額を確定する計算手続きを勤務先・仕事先がやってくれて、翌年初に「源泉徴収票」を従業員は受けとります。この「源泉徴収票」の情報は、「給与支払報告書」(法定調書)という書類で勤務先・仕事先から税務署や市役所などに送られています。
副業で報酬をもらっていて源泉徴収(報酬をもらう時に額面から所得税などが差し引かれて手取りでお金をもらうのが額面より少なくなりますが、これが源泉徴収です)をされている場合は、「支払調書」という書類が税務署に送られています。
勤務先・仕事先は、2016年度分で提出する法定調書や支払調書から、従業員のマイナンバーを収集し、法定調書や支払調書にマイナンバーの記載をして提出するように定められています。「通知カード」が送られてきてから、順次、勤務先・仕事先にマイナンバーの提出を求められることになります。(2015年度分の支払調書はマイナンバーは記載されませんので、今年2015年度の収入には影響はありません)

要するに、水商売の副業をしている場合、本業の会社とお店がきちんとした税金の手続きをしていれば、マイナンバーが導入される前の今の時点でも、支払先の氏名・住所の情報は税務署へ通知されているはずです。ただ、税務署も職員の数が限られていて忙しいので、水商売の副業の確定申告がされていなくても、いちいち全てが捕捉されずにスルーされているものと思われます。

なぜスルーされていると考えられるのか?

キャバクラ嬢やホステスは、報酬の支払時に源泉徴収することが必須という法律なので、源泉徴収されているはずです。源泉徴収は所得税の前払で、確定申告すれば実は還付になるというケースも多く想定されます。実際に、副業での収入が数百万程度なら確定申告すればほぼ還付になるだろうというということで、税務署は取りっぱぐれがないから確定申告がされないことによる実害がないからだろうというのが有力説です。以前、このことの詳しい説明と検証を本ブログでは行っていますので、合わせてご参照下さい。
・2013/1/20 キャバ嬢を喜ばせるお話!? そうだ!確定申告をしよう
http://money-learn.seesaa.net/article/314475515.html
(給与か報酬かといった確定申告時の所得税の分類によっても話は変わってきますが、ここではいったんお店からもらう報酬は事業所得という取扱いとしておきます。また、これは、源泉徴収がされているお仕事が前提で、例えば風俗のお仕事では源泉徴収が必要な報酬分類の限定列挙の対象外のため源泉徴収がされていないという説もあり、この範疇からは外れる可能性があります。)

マイナンバー制度導入によって騒がれていることの背景は、法定調書や支払調書にマイナンバーが記載されることによって、税務署職員が、今までも情報はあったけど忙しくて手が回らなかった本業と副業の給料や報酬の名寄せ作業が簡単に出来るようになることで、今までスルーされていたものがスルーされなくなるのではないか、という心配があるからです。
とは言え、やはり税務署も人手には限界はあるので、このあたりの網がどの程度広がるかは不明です。マイナンバーがなくても、氏名と住所での名寄せなんて従前でも出来るはずですし、多くが還付になるお知らせを税務署側から積極的にしてくるとも思えず、意外とそんなに変わらないんじゃないかという予想も成り立ちえます。確定申告すれば還付になるくらいの数百万の下の年間収入レベルでは今まで通りスルーされる可能性はあるのではないかと予想されます。

確定申告をすると、所得に応じて住民税が変わり、翌年の給料計算の住民税の控除の算出に際して、同じ給料水準の人よりも住民税が変わり、差し引かれる金額が変わるので、会社の担当者に副業を持っていることがバレる可能性がある、と言われています。
税務署へ確定申告するのは所得税という税金で、住民税は所得税とは別に所得(儲け)をもとに一律10%が取られる税金ですが、所得税は国に、住民税は市区町村に取とられる税金で、面倒なことに徴収体制が別々になっています。
確定申告書で住民税を「自分で納付」というチェック欄がありますので、確定申告時に忘れずにこれにチェックすると、確定申告をした分で変わる住民税の支払いを会社を通さずに自分で行うように出来るため、会社にバレないで済む、ということが言われています。
ただ、事業所得の場合に経費をアグレッシブに付けて副業を赤字で確定申告すると、給料の所得を減らせることで住民税の還付になり、この場合、本業の給料でしか住民税を払っておらず、本業の所得で払っている住民税が原資になって住民税が減ることになって会社にバレる可能性があるので気を付けましょう。(*通常、赤字にはなりません)
また、実務上の有効性を当研究会では確認していませんが、会社に住民税の金額で副業を疑われた場合の対処法の1つは、臆面もなく「あ、おじいちゃんから不動産を相続して、ちょっとだけ不動産賃貸の副収入があって確定申告したんですよ」と言ってしまえばそれ以上は追及されないような気がします。副業禁止でも、本業に影響ないレベルで不動産収入があっても、「管理とか面倒は全て業者に任せてますし」と言ってしまえば業務上の支障はほとんどありませんから、通常は副業の禁止規定には該当しないと考えられます。住民税額が誰がいくらかとしか役所から会社へ通知されず、内容は分かりません。そもそも控除とかの関係で同じ給料でも人によって住民税は変わりますし、よほど副業の所得が大きくて飛びぬけて住民税額が大きかったり、会社の給与計算担当者が細かい人でなければ、心配するほど副業がバレるとはあまり思えません。ただし、これはウソがバレた場合に、より状況が悪くなる可能性もありますので、自己責任でお願い致します。

本職で、確定申告で所得税の追加納付になるようなレベルだと(数百万後半以上)、お店がきちんと支払調書を税務署に提出している限りは、税務署から連絡が来る可能性がありますが、これはマイナンバーがあってもなくても事情は変わりません。
税務署は、高額の無申告など悪質度が高くない場合は、いきなり家に来たり電話が来たりせず、通常は「お尋ね」という書類を送付してきます。高額の無申告というのは、所得税法違反という立派な犯罪で、1億円以上やって見つけられると逮捕されて刑事罰も受けるというのが一般的な相場と言われています。

なお、スルーされるかどうかに関わらず、副業の所得が20万円以上ある場合に確定申告をすることは、国民の義務でありますので、ちゃんと確定申告しましょうというのが本ブログでの推奨スタンスです。

補足ですが、制度導入当初にマイナンバーを人に知られても特に実害はないと考えられますが、今後、あらゆる行政手続きの場面でマイナンバーが使われていくと想定され、自分からはむやみに人に教えるものではありません。
情報を入手した事業者は厳重な管理が求められていて、情報流出すると罰則規定も設けられています。用途も社会保障および税に関する手続書類の作成事務などに限定されていて、保存期間の経過した書類は破棄または削除しなければなりません。ただ、税務署へ提出する源泉徴収関係書類は7年間の保存が義務付けられていますので、仕事を辞めてからも仕事先には記録がその間は残ることになります。

・マイナンバーへの有効な対策は?
マイナンバーの概要や、税金関係については、上記で大よそご理解いただけたかと思いますが、マイナンバーに伴う問題の具体的対策は、どうすればいいでしょうか。
マイナンバーの導入後による特有の心配は下記の2点に集約されると思います。
・税務署への副業の提出書類を通じて余計な税金を取られたり、本業に副業がバレないか
・マイナンバーを記載した書類が水商売の仕事先に7年も残るのは気持ち悪い

この問題についての明快な対処策があります。
マイナンバーは、雇われている個人から仕事先への告知義務がなく告知しないことに個人への事実上の罰則もないため、副業の仕事先に対して「教えません」で通すことです。仕事先からマイナンバーの提出を求められた際に「告知義務がないので教えません」と提示を断ることです。
これで、マイナンバーに関する問題は全て解決です。
ただ、本当は、法の趣旨に則り、行政手続きに協力することが国民としてはすべきである、ということは頭に入れておきましょう。また、繰り返しますが、確定申告することは、マイナンバーには関係なく義務なので、これも正しく覚えておきましょう。

一方で、事業者は、マイナンバーの収集への努力義務があり、「教えてくれなくてもいいよ」と積極的に言うと税務署から叩かれる微妙な立場なので、お店からははっきりとは従業員個人がお店への告知義務がないことを教えてくれない可能性があります。
自分の身は自分で守ることです。

国税庁のよくある質問の回答には、下記の通り、マイナンバーの収集が出来なかった場合にそれをもって責めはしないが、マイナンバーの収集を努力して、出来なくても、きちんと理由を記録するよう求めています。

(国税庁の解説ページより)
https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/04kokuzeikankei.htm
「従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。(Q2‐10)
(答)
法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。
それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。
経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。
なお、法定調書などの記載対象となっている方全てが個人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号を記載することはできませんので、個人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。」

当面は、マイナンバー対策は、「教えない」で通せば良いと思いますが、今後のリスクとして考えられることは何でしょうか。
まず、お店が真面目にマイナンバーを収集している場合、お店の要求を断ることになるので、お店の経営者からの心証が悪くなることです。ただ、お店も商売が第一のはずなので、もともと嫌われたりしていなければ、それをもってクビになるような問題ではないかと想定されます。
また、あまりにも世の中全体での水商売のお店でのマイナンバー収集状況が際立って悪くて税務署が問題視して一斉指導のようになると、強烈な税務署の圧力でマイナンバーの提出を事実上では強制させられるかもしれないのと(マイナンバーの提出がないと採用しないなど)、法改正で告知義務が義務付けられるようになることです。

上記が現状でのベストな解決策であると思いますが、マイナンバーはまだ実務開始前で、流動的な要素があるかもしれませんから、情報のアップデートがありましたら追ってお知らせ致します。


週刊東洋経済 2015年 10/03号[雑誌]

東洋経済新報社 (2015-09-28)


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(参考)門倉先生の記事のウェブ版URL
夜の街で働く「副業キャバ嬢」がいなくなる日"副業する人"を襲う「マイナンバー」の恐怖
http://toyokeizai.net/articles/-/86111

【関連記事】
・2013/1/20 キャバ嬢を喜ばせるお話!? そうだ!確定申告をしよう
http://money-learn.seesaa.net/article/314475515.html
・2014/10/23 国税庁の所得税の調査結果から見る、富裕層の個人課税や海外取引はどこまで補足されているのか
http://money-learn.seesaa.net/article/407639939.html
・2015/5/4 宝くじを買うことは経済合理的に正しい事である2つの理由【宝くじの経済学】
http://money-learn.seesaa.net/article/418419230.html

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