2015年10月12日

おすすめのアセットアロケーションを考えよう(3) アセットクラス間のリターンの相関係数

前回「おすすめのアセットアロケーションを考えよう(2) ポートフォリオのリスク分散効果ってなに?」からの続き

前回までに、アセットクラス別のリターン、リスク(変動率)の実績と、ポートフォリオのリスク分散効果を理解するためのアセットクラス間のリターンの相関係数の意味合いについて解説してきました。

ここで、実際の過去実績データに基づくアセットクラス間のリターンの相関係数を計算してみました。
データは2001年初〜2014年末までの各アセットクラスの月次リターン(円建)に基づき算出しています。
*アセットクラス毎に使用しているベンチマークの指数は「おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1)」にて記載しています。

151011 アセットクラス間のリターンの相関係数(2001-2014).png

相関係数は、相関関係の強さ(ここではアセットクラス間の値動きの連動の度合い)を下記のように示すと言われています。
0.0〜±0.2  ほとんど相関がない
±0.2〜±0.4 やや相関がある
±0.4〜±0.7 相関がある
±0.7〜±0.9 強い相関がある
相関係数が「より1に近いほど,直線性がある」(ex. 資産Aが1%上昇した場合に資産Bも1%上昇する)と言え、「0に近ければ,直線的な傾向がない」と言えます。
実務上で重要で注意すべき点は、相関関係はあくまで「そうなりやすいという傾向」であり、相関関係があることは因果関係があることではない、ということです。相関係数が0.5で相関があると言っても、必ずしも同じ方向に値動きするわけではありません。データの見た目に惑わされないよう、これはしっかり覚えておきましょう。

表を見ると、アセットクラス間のリターンの相関係数は概ねプラスであるということが分かります。唯一、相関係数が負になる組み合わせは、国内債券のみとなります。これは、過去実績を見る限りでは、例えば、日本株(国内株式)が下落した場合に、国内債券は上昇する傾向があった、ということです。「債券を保有することは株式の下落に対するヘッジになる」という説明を多く見ますが、このような根拠があるわけです。
リーマン・ショックのあった2008年、各アセットクラスは大幅な下落率となりましたが、国内債券はプラス3.4%を確保し、米国債はドル建てで13.3%というむしろ良好なパフォーマンスでした。ただし、2008年は。円高の進行により、米国債は円建てではマイナスリターンとなっています。
(ポートフォリオに債券を組み込むべきかどうか、私の個人的見解はまた別途論じたいと思います。)

相関係数を見る上で、もう1つ注意すべき重要なポイントがあります。
近年、グローバル金融市場のアクセスが容易になり一斉に資金が流出入しやすくなりアセットクラス間で同じような値動きをするようになったと言われています。特にリーマン・ショック後においては、世界の投資家がリスクに敏感になり、グローバルなリスクオン/オフと呼ばれる投資家行動により、投資家心理が改善しリスク許容度が高まると、株式などのリスク資産が一斉に買われ(同時に円安になりやすく、相対的に低金利かつ安全通貨とみられている円が売られると説明されることが多い)、逆に、投資家心理が悪化し、リスク回避姿勢が強まると、株式などのリスク資産が売られ(同時に円高になりやすい)、安全な国の債券等が買われやすい、という状況が起きています。

ここで、国内株式と主要なアセットクラス(J-REIT。国内債券。先進国株式。新興国株式。円ドル為替)の過去24ヶ月の月次利回りの相関係数の推移を取ってみました。
確かに、リーマン・ショック後に2009年以降から、相関係数は高い水準に寄っているように見えます。外貨資産は円建てなので、国内株式は円安になると上がりやすく、円高になると下がりやすい、為替の影響も受けています。
国内債券は、国内株式との低い相関が維持されています。
151011 国内株式との過去24ヶ月の相関係数の推移.png

このことから、アセットクラス間の値動きの相関の高まりによりポートフォリオのリスク分散効果が低減する時代になってきている、ということが分かります。
分散投資すればリスク(変動率)が緩和されるのだ、と安易に考えるのはいかん、ということです。
とは言え、長期的にグローバル分散投資で着実に利益を上げようするときに、どのアセットクラスがどの年に勝って利回りが良いかというのを事前に予測して当てるのはやはり簡単ではありませんから、分散投資をしなくていい、というものでもありません。

次回(自分のアセットアロケーションの損益ってどうなの?という検証ツール@(一括投資の場合) おすすめのアセットアロケーションを考えよう(4))に続く

【おすすめのアセットアロケーションを考えようシリーズ】
・2015/10/5 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1) アセットクラス別のリスク・リターンの計算と分析
http://money-learn.seesaa.net/article/427190162.html
・2015/10/10 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(2) ポートフォリオのリスク分散効果ってなに?
http://money-learn.seesaa.net/article/427594244.html






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2015年10月10日

おすすめのアセットアロケーションを考えよう(2) ポートフォリオのリスク分散効果ってなに?

前回「おすすめのアセットアロケーションを考えよう(1) アセットクラス別のリスク・リターンの計算と分析」からの続き

前回、過去データ実績に基づくアセットクラス別のリターンとリスクを確認しました。
各アセットクラス別に、過去データでは、どのように毎年のリターンがあったのか、どれくらいの価格変動の振れ幅があるのか、ということを見てみました。
大よそ、期待リターンは株式・REIT>>債券、価格の変動率の大きさも株式・REIT>>債券で、為替変動の影響も受けるため、国内のものよりも海外のものの方が変動率は大きくなる(国内株式よりも先進国株式や新興国株式の方が変動率が大きい)、ということが分かりました。

アセットクラス毎の2001年初から2014年末までの値動きをチャートにしてみました。(アセットクラスが増えるとゴチャつくため、主要どころのみ掲載)
ポートフォリオを組むと、複数のアセットクラスの組み合わせなので、基本的にこのチャートの間のどこかにポートフォリオの損益は入りそうですね。期初にポートフォリオを一括で組むと、チャート線の上限と下限の間のどこかに入ります。リバランスや期中の追加投資等があると、単純にチャート線の上限と下限の間に入るわけではありません。
例えば、新興国株式はパフォーマンスは上位だがリーマンショック時には新興国株式(ドル建)と為替の円高の進行により大きく値を崩している、国内債券は安定的に上昇しているが長期的なパフォーマンスが上位なわけではないことが分かります。
全体的に、同じような値動きをしているように見えますが、値動き自体は個々のアセットクラス別にバラバラのようです。
151010 アセットクラス別の時系列データ推移.png

長期志向でグローバル分散投資をするためには、これらを踏まえてどのようにアセットアロケーション(資産配分)を決めるかを考えることになります。
ここで、ポートフォリオのリスク分散効果というものも知っておく必要があります。そのためには、複数のアセットクラスの組み合わせを考えるのに当たって、アセットクラス間の値動きの「相関」というものを考慮に入れます。「相関」を見るには相関係数という統計データを取ります。相関係数は‐1〜1の間で算出され、1は全く同じ値動きで、0は全くお互いが影響し合わない独立した値動き、‐1は全く逆の値動きをする、ということになります。
ポートフォリオのリスク分散効果は、簡単に言うと、「相関の低いアセットクラスを組み合わせることによってポートフォリオ全体のリスク(変動率)が低減する」というものです。(詳しく説明すると長くなるので、何かの機会か誰かから要望でもあればまた詳しく別途解説します)

直観的に分かりやすく説明すると、相関係数が1だと、全く同じ値動きをするので、ポートフォリオのリスク分散効果はないということです。相関係数が1だとしたら、リスク低減という観点からしたら、ポートフォリオを組む必要はなく、期待リターンが高い資産だけに投資するのが合理的ということです。
また、相関係数が‐1だと、全く逆の値動きをするので、例えば、両方とも期待リターンが3%・リスク20%の資産Aと資産Bがあったとすると、資産Aと資産Bに50%ずつ保有すると、全く値動きのブレがなく直線的なチャートで期待3%が理論的には実現できるという神運用になることになります。
もちろん現実には、異なるアセットクラス間で、相関係数が1なものも‐1なものもありません。
同じくらいの期待リターンのアセットクラスがあった場合には、値動きの相関がより低いアセットクラスの組み合わせでポートフォリオを組むことで、個別のアセットクラスよりもポートフォリオのリスク(変動率)が低減するということです。
これが、期待リターンが同じであればリスク(変動率)は小さい方が好ましいという前提があるファイナンス理論において、分散投資が推奨される理論的な背景です。

誤解や勘違いが多い点ですが、ポートフォリオのリスク分散効果は。期待リターンを上げるためのものではありません。期待リターンを高めるためには、リターンが高いアセットクラスに集中投資を行い、それを当てる必要があります。どのアセットクラスの将来のリターンが高いのかは「分からない」ということも、ポートフォリオを組んで資産運用しましょうと推奨される理由です。

次回は、実際のアセットクラス間の値動きの過去データに基づく相関係数を見てみることにします。

・2015/10/11 おすすめのアセットアロケーションを考えよう(3) アセットクラス間のリターンの相関係数
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