2014年末に、うちの親が銀行の投信販売のお客様になっていて、その販売現場の調査同行したことの記事をアップしました。
実は、この話には若干の続きが進行しています。この件は封印しとこうかとも思っていたのですが、シルバーウィークなんで(何の関連もないけど)、ちょろっと後日談を書こうと思います。
昨年末に、私はわが親のためをと思い、竹川美奈子さんと朝倉智也さんの本をアマゾンで購入し、実家を配送先にして、「本を送ったからちゃんと年末に読んで今後に役立ててね♪」とプレゼントしました。
送った2冊の本は私は読んでいないのですが(笑)、著者の他の本は読んだことあるし、厳正にピックアップしました。
新・投資信託にだまされるな! ---買うべき投信、買ってはいけない投信
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竹川 美奈子
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〈新版〉投資信託選びでいちばん知りたいこと
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平穏に過ごしていた本年2015年の春頃、たまたま親と別件で用事があり電話で話をしていると、親がおもむろにこんなことを言い始めました。*キーフレーズは太字にしてみました。
親「そういえば、あんたにもらった本に書いてあったようなうってつけの良い商品をD証券さんが案内してくれたわよ」
私「え・・・」(いやな予感)
親「D証券の営業の若い男の子は、うちまで来てちゃんと丁寧に説明してくれるし、強引な営業とかしてくるタイプじゃないから、安心なさい。悪い人じゃないから大丈夫よ。」
ま、まさか、ファンドラップの振りか!?と私は瞬時に察しました。
私が送った本には、「分散投資で長期運用をしましょう」と書いてあったはずです。「長期運用でのコスト低減の重要性」は説いてなかったのかな・・。まあ、ちゃんと読んでくれたことは期待してないけど・・
親「で、案内してくれたのは、最近テレビでCMもやってるでしょ?ファンドラップって言って、長期運用にすごいぴったりの商品みたいよ。」
キ.キタ。ファンドラップ。
渡辺謙の顔が浮かぶ・・。ラストサムライを観て好きだったのに・・
私「お、おぅ・・。ファンドラップってどういうものか知ってる?毎年年間で支払うことになる手数料が3%くらいになるはずだけど・・」
親「ちゃんと安定運用で長期投資にぴったりっていう話よ」
私「そういう安定運用は、長い目で見た時に年間で平均的に得られる利回りって、債券とか中心で仮に年間2%程度くらいとして、それに毎年3%を支払うと、つまり、長い目で見てお金が減っていくことになっちゃう可能性があるんだけど。分かる?」
親「また、そんなこと言って。銀行で買った投資信託だってちゃんと値上がりしてるし、損するなんて、そんなことないわよ」
私「この数年はマーケットが好調だったからコスト以上の運用成果が得られたんだけど、マーケットには良い時も悪い時もあって、長い目でプラスの利回りが期待できる運用をしないといけないんだよ。
それに、同じような運用成果が出る手数料の低い商品を買えば、もっと多くの利益が出たはずで・・」
親「もうー。銀行とか証券会社で働いてる人たちって、みんないい大学を出て、高給な給料をもらってるちゃんとした人たちでしょ。それを信用しちゃいけないみたいに言って、あんたは。」
私(その高給な給料が高コストで期待リターンを引き下げる要因を生んでるんだっていうことが分からんのか!)とは言わず
私「何なら、こっちで、ファンドラップと全く同じポートフォリオで手数料の掛からない運用になるようにやってあげるけど」
親「そんなの、どうやってやるのよ?」
私「ネット証券を使って手数料の掛からない商品を買えば簡単に・・」
親「インターネットの証券口座なんて、使い方もよく分からないし、私だって忙しいのよ」←子どもも独立した専業主婦で忙しいわけがない
私「別に難しくないし、何なら全部やってあげても・・」
親「とか言っても、あんたは全然帰ってこないしねえ。それに、何か、インターネットなんて、勝手にお金が引き出されたとか、詐欺みたいな話が多いじゃない。そんなものの方がよっぽど信用できないんじゃないの?」
ええ、まあ、おおよそマジでこんな感じの話です。
私には目からウロコなことがありました。対面の証券会社で発生せざるを得ない高コストとそれに伴う期待リターンの低下は、うちの親のレイヤーのような一般顧客はその事実と重要性、そして低コストの商品へのアクセスを知らされていないから知らず知らずのうちに手数料を取られているのだと思っていましたが、説明されても響かないことがあるものなのだ、ということです。
ネット証券の画面はごちゃごちゃしているし、そもそも何をどう買っていいのか分からない人にはハードルが高いというのは理解できますが。
ちなみに、D証券に悪気はありませんが、ホームページを拝見させて頂くと、ファンドラップフィーが1.512%という記載があります。(うちの親の預けている資産は5000万以下という想定)
また、不思議なことに、ファンドラップの中の運用商品については私が探した範囲では見当たりません。よくあるお問い合わせには、「売買手数料は掛かりません」とだけ、ドヤ顔で記載があります。
関係者に聞いてみると、「ポートフォリオを売るサービスなのでWEBには晒してないようですね。店頭に行けば一生懸命説明してくれると思いますが笑」という温かいレスポンスが。
仕方がないので、ネットで検索してみると、「投資信託の分配金に騙されるな!」というページのコラム「大和証券のラップ口座の手数料は、非常に高いので注意!」で見つかりました。
(参照 http://investmenttrust.biz/daiwawrap-tesuuryou.html より)
債券中心にして1%超というところでしょうか。
安定運用で、2.5%〜3.0%くらいが年間に負担するコストになりそうです。
コスト年率を2.5%として、過去データに基づいてみるとどうなるのか、ちょろっと客観的な検証をしてみましょう。
ここでは、ポートフォリオはかなり保守的めに、国内債券60%、海外債券20%、国内株式10%、先進国株式10%としました。
ベンチマークは国内債券は野村BPI総合指数、海外債券はシティグループ世界国債指数(除く日本)、国内株式は東証株価指数(配当込み)、先進国株式はMSCIKOKUSAI指数で、配当込み指数・円換算後の月次データを使用。リバランスは毎年末に実施、売買コストや税金は考慮していません。コストありの計算は毎月のリターンから月間コストを引いて算出。計算ミスの有無は責任を負いかねます。
2001年頭から2014年末までのポートフォリオの価格推移は下記のようになりました。
初期投資額 1,000,000円
2014年末の残高 1,750,896円(コストなし)
2014年末の残高 1,237,362円(コストあり)
コストなしの場合の計算
2001-2014年元本増加 1.8倍
平均リターン(年率) 4.1%
変動率(年率) 4.8%
最大下落率(月間) −5.7%
あ、ちゃんとコスト負担以上に利益は確保されるようです。2012年末まではマイナスですが。
すいません、期待リターンがマイナスなんて言ってしまい。年間コストを3.0%にしても、2014年末の残高は1,154,267円、年間1.1%程のコスト控除後利回りで、セーフです。
年間コストがどれくらいポートフォリオの損益に影響するのかは一目瞭然ではありますが、よく考えてみましょう。
この期間の日本債券は日本の長期金利が低下し続けている局面で抜群のパフォーマンスで今後どうなんだとかは、話が長くなるのでここでは止めておきます。
親を想う子の気持ちとしては、とにかく、大損とかされて「ヒャッハー!」みたいになることを回避してもらうことです。
そんなんもあるので、元本保証のあのトヨタの優先株を、私自身は不要と思いましたが、親に教えてあげました。
(参考)2015/5/30 トヨタ自動車の優先株は日本債券クラスを代替する投資対象として適しているんじゃないかと思った件
http://money-learn.seesaa.net/article/419858850.html
N証券とその時に接触を持ったので、ファンドラップの販売状況について聞いてみると、ファンドラップは初めて資産運用をやるという方が多いようで、ほぼみんなが保守的で、日本債券が60%とかのポートフォリオの人が多いようです。
日本債券クラスの期待リターンと長期金利の利回りは完全一致ではありませんが、参考までに、2015年9月の現時点で、日本国債の長期金利(10年)は0.5%を下回って推移しています。ファンドラップは、0.5%以下の利回りに2.5%以上の手数料を払っているようなものです。
私は証券会社出身者に聞いたことがあります。
「営業マンって、長期的に顧客にリターンを提供できないような商品を売っていて恥ずかしくないんですか?」と。
その証券会社出身者は、お前は何も分かってないなという様子で教えてくれました。
「営業マンが売る商品を恥ずかしいと思うことはない。売れなくて会社のみんなの前で上席から激詰めされることこそが恥ずかしいことなんだ。」と。
これもまた目からウロコで、私は自分の想像の範囲の狭さを反省しました。
こんな素敵なファンドラップですが、今後どのように進化していくかが非常に楽しみです。
(参考記事)
・2015/5/25 証券会社が勧めるラップ口座 残高急増で4兆円を突破、専門家は「最も買ってはいけない金融商品」と指摘
・2015/5/30 投信ビジネス後進国の日本 日米で売れている投資信託はなぜ違うのか
【関連記事】
・2014/12/29 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その1)
・2014/12/30 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その2)
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(参考)2015/9/22 ムサコ会に参加してきました。それぞれの資産運用を始めるキッカケ
http://money-learn.seesaa.net/article/426491515.html
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