2015年08月25日

日経平均下落や世界同時株安に長期投資家はどう対処すべきか

株式での買いポジションを持つ多くの投資家は、この3営業日だけで、大きな損失が生じたものと思います。私も同様です。
信用取引や先物などでレバレッジを効かせたロングポジションを持っていた短期投資家の悲鳴や、ソーシャルメディアではトレーダーや金融関係者たちの盛り上がりが聞こえてきます。
ニュースではキャスターが大変だと騒ぎます。ニュースは、「今日も平穏な1日でした」と言うよりも、「大変なことが起きてます!」と言いたいインセンティブがあるので、きちんとインセンティブも理解しておきましょう。

このような時、長期投資家はどのように振る舞うべきでしょうか。
まず、何も右往左往する必要はありません。

日経平均株価は、2015年8月21日(金)から翌週24日(月)・25日(火)と大幅な下落に見舞われました。
各日の前日終値からの下げ幅と、変動幅(高値と安値の幅)は非常に大きく、3日間で日経平均は2,226円も値下がりし、20日(木)の終値20,033円52銭から、25(火)の終値は17,806円70銭になりました。ドル/円も大幅に円高が進行し、120円台だった為替レートは一時116円台まで円高になりました。
21日 下げ幅 597円69銭(前日比−2.98%)、変動幅 301円71銭
24日 下げ幅 895円15銭(前日比−4.61%)、変動幅 655円85銭
25日 下げ幅 733円98銭(前日比−3.96%)、変動幅 1,087円85銭

米国株式市場のNYダウ、中国株式市場の上海総合指数も軒並み大幅下落し、他の先進国から新興国まで軒並み大幅な下落にみまわれ、「世界同時株安」と言われています。
経済ニュースでは、中国経済の景気減速懸念によるものと大筋では解説されており、米国利上げへの警戒感などのくすぶりなどもそれらしい理由として言われていますが、マーケットが下がるから売りを呼ぶ展開で、明らかな「起点の事象」がないため本当の理由は誰にも分からず、8月22日に女優の堀北真希さんが俳優の山本耕史さんと結婚したことに大勢の日本人男性がショックを受けたためであるという「堀北ショック」だとも言われています。
150825_堀北ショック.jpg

このような市場の調整というのは、何の前触れもなく起こることはマーケットでは「ふつうのこと」です。昨年や今年から長期投資を志向した方、積み立て投資などを始めた方はびっくりしたかもしれませんし、昨年・今年と堅調なマーケットでしたから、含み益が出てほくほくしていたところに、含み益が吹っ飛んだ、あるいは、一気に含み損にまでいって、気持ちも落ち込んでいるかもしれません。
ですが、資産形成目的の長期投資家であるなら、いつが投資のゴール(売却見込み時期)なのでしょうか?20年後や30年後、もっと先のはずです。
シニアの方の退職金運用などであっても、長期と言うのでしたら、5〜10年程度のスパンでの資産運用を考えていたはずです。
そうでなければ、本質的には「長期投資家」とは言いませんので、自分のスタイルは「価格の値動きで利益を狙うトレーダー」であると認識すべきです。投資のスタイルは様々ですし、投資の成果はスタイルがどうかではなく最終的に自分の目標リターンを上げたかどうかだけで評価されるべきですから、それはそれで構いません。正しく自己認識することが肝要です。

マーケットというのは上げ下げや時として今回のような大きな価格調整を繰り返しながら、長期的にはファンダメンタルに相関して価格形成されていきます。
ファンダメンタルの成長を信じ、長期的に保有している資産を、目先で売却することもないのに、短期的な変動に一喜一憂する必要はありません。
半年もすれば、今回の「世界同時株安」なんてものは、「ああ、何かそんなものもあったね」と人々の記憶からはなくなっているでしょう。

一喜一憂する必要はありませんが、せっかくなので、こういう機会に、いくつかすべきであると私が思うことをご紹介します。

○アセットアロケーションの見直しタイミングや買いのチャンスではないかと考える
自分の長期的なファンダメンタルの見通しに変更がないことを確認しましょう。
長期的なファンダメンタルの見通しに変更がないのであれば、割安になったアセットクラスを仕込むチャンスかもしれません。
マーケット見通しを一切排除し、機械的な定額の積み立て投資に絞っている人は、逆に、中途半端に動いて自分のスタイルをブラさない方が賢明です。

「長期的なファンダメンタルの見通しに変更がないかどうか」を考えることは、アセットアロケーションや、現在のポートフォリオの見直しにも繋がります。
これは、本当は、常に、自分は間違っているかもしれないという認識を持ち、適宜見直す必要がありますが、普段から意識をしていない方は、このような機会は「チャンス」と捉えましょう。

中国経済の景気後退懸念なんてかねてより指摘されていましたし、私は今回の件で、今の時点では、特段の見通しの変更を持つに至るニュースや事象の確認はしていません。

私は、待機資金をきっちり確保しておきつつ、長期的なファンダメンタルの価値の成長を信じる資産クラスを対象に十分に分散投資をしながら、マーケットの調整局面や加熱局面でポジションを調整し、ほとんどの期間において長期的に「ほったらかし」をする資産運用スタイルです。
ご多分に漏れず、既存のポートフォリオは値下がりしましたが、もともと目先での売却予定はないので全然気にしていません。むしろ、買いの絶好のチャンスだと思いますし、今年はマーケットが堅調すぎて不安だったので、安心したくらいです。

*私の場合、普段は何もしないちょっとした「トレーディング枠」もあるので、昨日24(月)・今日25(火)には年に数回あるかないかの「お仕事」をしました。短期的な値動きやベストタイミングは分かりませんので、明日も下げるかもしれないし、下げても大丈夫、というリスクコントロールもしっかり行っています。明日もまた暴落するかもしれませんし、しばらくの間は調整局面がくすぶるかもしれません。喉元過ぎたらあっさりと戻るかもしれません。分からないことを一生懸命に予想したり慌てたりせず、どっちにいっても対処できるようにします。
(ちなみに、私の予想は当たりませんが、現状想定し得ない追加的な事象の発生や大きなイベントが生じなければ、どっちつかずの調整をしばらくした後に、数ヶ月内に今回の下げ局面前か少しディスカウントしたくらいの水準にあっさり戻る可能性は十分にあると思っています)

○リスク許容度は大丈夫か
自分は本来、長期で資産運用すると思っていて、今回のマーケット変動で一喜一憂した方は、リスク量が多くなり過ぎていないかを再度見直しをしましょう。
年間のリスク許容度を理解して、その範囲内で投資をしましょう、と教科書では言われますが、実際に損をしてみないと分かるものではありません。今回の損失で、自分の感情がどうなるのか、このまま続けて行って大丈夫なのか不安になる、という心境を理解し、投資投下量のコントロールを考えることは、レベルアップの機会でもあります。
リスク許容度が高すぎたり低すぎたなら、アセットアロケーションを見直し、ポートフォリオを変更する必要があるかもしれません。

○経済やマーケットの理解を深めましょう
普段、資産運用や投資が、仕事でもなく、趣味ともしていない方は、お金を増やしたいとは思っていても、経済やマーケットへの関心は低いことと思います。
このような関心が向いた時を契機に、経済やマーケットを勉強する本を読んだり、(日経には目を通している前提で)ロイターやBloombergの良質なニュースに目を通すようにすると良いかもしれません。
本は、お金を出して読みましょう。自己投資をしないことは身に付きません。






また、いくつかの運用会社や独立系投信の運用会社は、きちんとレポートの配信などもしています。
こういうのに目を通していくのも良いかもしれません。

・日興アセットマネジメント
「総合チャート集(株価・為替・商品・金利・REIT等)」、「主要国・地域の為替(対円)の推移」、「ハイイールド債等、各種指数の推移」(2015 年 8 月 25 日)
http://www.nikkoam.com/files/fund-academy/data-watch/pdf/chartslist.pdf

楽読(ラクヨミ)「世界同時株安が続く金融市場」(2015 年 8 月 25 日)
http://www.nikkoam.com/files/fund-academy/rakuyomi/pdf/raku150824_01.pdf

・レオス・キャピタルワークス株式会社(2015 年 8 月 24 日)
「ひふみ投信」の 8 月 24 日の基準価額下落について(基準価額:30,500 円 前日比-2,033 円、下落率 –6.25%)
http://123.rheos.jp/investment/monthly_report/report_20150824.pdf

・コモンズ投信株式会社(2015 年 8 月 25 日)
2020 ビジョンを保有しているお客様各位【特別レポート】8 月 24 日「ザ・2020 ビジョン」の基準価額下落について
http://www.commons30.jp/files/uploads/report_20150825_T20.pdf

・野村アセットマネジメント(2015 年 8 月 24 日)
日本株式市場の下落について
http://www.nomura-am.co.jp/market/news/20150824_5BD16810.pdf

日経平均
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上海総合指数
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NYダウ
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2015年08月22日

私の今までの投資遍歴(3) 銀行からの定期預金キャンペーンのお誘いと金融商品セールスを受ける

前回「私の今までの投資遍歴(2) 2000年半ば ライブドアショック前後から・パリバショック前後まで」からの続きです。

2007年8月のパリバショックのあたりから、ほとんどの投資ポジションをいったん閉じていました。
そうすると、ネット証券の資金を預金に戻したり、仕事の収入も預金のままにしておきますので、銀行預金の残高が増えていきます。
明確な時期は覚えていませんが、この頃から、銀行からセールスの勧誘の電話がたまに来るようになりました。
「投資信託いかがですか?」みたいなお電話です。「興味ないですねー」と言うと「パンフレットだけでも送らせて下さい」なやり取りを何度かしました。
2008〜2010年前後だったと思いますが、ある時、定期預金の金利優遇キャンペーンのお誘いがありました。金利優遇キャンペーンは、3ヶ月〜半年程度で定期預金の金利を高めに設定して、預金を呼び込む古くからの銀行のプロモーションです。大した金額ではないのですが、どうせ使う予定のない寝ている資金で数万円のフリーランチをもらえるのなら頂いておこうと思い、申込みの意思表示をすると、窓口へ来るように促されました。

ちゃちゃっと手続きをして、ゴルフの打ちっぱなしの練習に行こうと思って、道具を持っていったのを覚えています。
すると、なんか、話を聞かないといけないということに・・
窓口「定期預金のキャンペーンの申込みありがとうございます。この申込みにあたっては、いろいろな他のサービスのご案内を聞いて頂くと言うのが条件になっておりまして・・・」
私「え?聞いてないんですけど。出直すのも面倒なんで、早く終わるようお願いしますね」
窓口「ではこちらへご移動下さい」

通常の窓口とは別の階の、ちょっと広いフロアーの窓口へ案内されました。平日の昼間だったので、他には誰もいませんでした。

後で分かったことですが、このように「優遇」というキャンペーンで個人顧客を呼び寄せて、投信販売や保険販売に繋げていくというのが、銀行のセールスプロセスです。顧客の預金残高を見て電話出来ますし、顧客側も、預金口座のある銀行から電話が来ると、「何かトラブルでもあったのか?」ということも想定しますので、いきなりガチャ切りされるリスクも低い、最強の金融セールスの営業ツールです。

おばちゃん行員が出てきました。(以下、「おばちゃん」)
おばちゃん「本日はお越し頂きありがとうございます。いくつかご案内をしたいのですが、今までに投資のご経験はありますか?」
私「ネット証券で株式の売買とかはやったことあります」
おばちゃん「外貨での運用はいかがでしょうか。今の円預金を外貨預金にいたしませんか?」
私「え?銀行の外貨預金って、ドルで片道1円くらいの手数料を取られるんですよね?銀行で外貨預金って何かメリットあるんですか?」
おばちゃん「金利も高いですし、円安になれば為替差益も期待できます」
私「いや、そういうことじゃなくて、外貨にしたかったら、他の手数料が掛からないサービスを使いますよね」
おばちゃん「すいません。他行のサービスのことはよく存じ上げておりませんので・・」
私「外貨預金じゃなくても、FXでレバレッジ1倍でやる方が手数料掛からないですよね?」
おばちゃん「FXの取り扱いなどはしておりませんので、よく分かりません・・」
私「・・・・。まあ、外貨預金は大丈夫です」

今から思うと、おばちゃんのセールスプロセスは0点でした。顧客の属性や、どういうニーズや、運用の意向などがあるかを全く探ることもなく、いきなり商品を当ててきました。声のトーンも低いし、明るい感じもありません。
金融商品の提案には、相手がどのようなニーズがあるか、特に、顧客本人が気づいていなかったり認識がなかったものを気付かせて、そこから解決手段として始めて商品を持ち出すのが、あるべき基本プロセスです。優秀な人ほど、この問題提起(「ニーズ喚起」と言われます)がうまいわけです。そして、費用対効果を考えた経済合理性はともかく(多くの場合、銀行の立場からは、「最後の方まで説明しない」か「曖昧にする」ことが正しい)、断る理由を取り除いて勧誘していくのです。

次は、保険です。
おばちゃん「保険には入ってますか?」
私「特に必要性を感じていないですね」
おばちゃん「個人年金保険などいかがでしょうか?」
私「個人年金保険は入ってないし、入るつもりはあまりありませんね」
おばちゃん「必要ないですか?」
私「必要ないですね」

少し粘ってましたが、反応がないのでおばちゃんも諦めました。
恐らく、個人年金保険は初年度の支払額の30〜40%程度のコミッションが銀行に入っていたと思いますので、お勧め商品だったんでしょう。






次は、投資信託です。つまらなそうな投資信託のパンフレットを出してきましたが、私があまり興味がなさそうに並べられたパンフを見つめていたら、おばちゃんが黙っておもむろに立ち上がり、どっかに行くと、若い新人っぽいお姉ちゃんが出てきました。(以下、「新人ちゃん」)

新人ちゃんは、最初、「仕事何やってるんですか?」とか他愛のない会話をしてきて、明るく場を和ますのとともに、情報を引き出していたようでした。
結局、投資信託の勧誘の続きなのですが、当時始まり出した通貨選択型投信を出してきました。
複数のリスクを同時に取ることにどういう意味があるのか?とか、商品の仕組みについて突っ込んで聞いていくと、「私、分からないんで、ちょっと待ってて下さい」と言って席を外し、おばちゃんが戻ってきました。

私「この通貨選択型の外国通貨部分はデリバティブを使ってるんですよね?現物の為替とこのデリバティブの値動きの関係や、運用コスト的な面での現物との違いはどうなってるんですか?」
おばちゃん「ええと、こちらは、株式と通貨の両方から利回りを得られる商品になっています」
私「そうじゃなくて、現物為替とデリバティブの関係を伺ってるんですが」
おばちゃん「この選んだ通貨に連動する値動きをします」
私「連動することは分かってますが、デリバティブ特有のものはどうなってるんですか?」

おばちゃんは、ここで説明を諦めて、「ちょっと待ってて下さい」と言って、副支店長の名刺を持ったおじさまが出てきました。(以下、「副支店長」)
副支店長は商品知識はおばちゃんよりも豊富で、運用会社から直接の説明も受けているようで、おばちゃんよりだいぶ話が通じました。

この通貨選択型投信の通貨の選択の中には人民元が入ってました。中国に口座を作りに行く以外の方法で、長期的に人民元にいくらかを置いておくことには興味があったので、「人民元って規制通貨で簡単に現物の売買も出来ないじゃないですか。そんな通貨でのデリバティブなんて、どういう取引市場での売買で、特有のリスクの有無や、現物との値動きに違いはあるんですか?」という話をしていたら、副支店長も「すいません、そこまでは把握しておりません。確認してご連絡しますね」と、よく分かっていないようでした。
もちろん、後日、「確認してご連絡」を頂くことはありませんでした。

仕組みも説明できないものを平然と勧誘しているのかというのと、全体的な販売窓口の説明のレベルにびっくりして、「世の中、よくこれで業務が回っているものだな」と衝撃を受けました。この業界(個人向け金融サービス業界)は、何かおかしいのかも、という印象も残りました。
今思えば、銀行の個人顧客で、商品の仕組みをこんなに突っ込んで聞いてくる人はいないでしょうが・・

次回に続きます。

【関連記事】
・2014/12/29 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その1)
http://money-learn.seesaa.net/article/411474440.html
・2014/12/30 銀行の投信販売現場に行ってきました。親が銀行のお客様(上カモ)だった!(その2)
http://money-learn.seesaa.net/article/411533719.html

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